ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

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第二百二十三話 日常はわくわくとともに

「ここでバイトするのもあとわずかか……名残惜しいな……」

 

「旅行に行ったまま帰ってこないつもりなんですか……」

 

悠の発言にチノがツッコミを入れる。

リゼが厨房でまかない料理を作り、チノと悠はホールで接客、ココアは——。

 

「ココア、いつまで寝てんだ」

 

「あと20分……」

 

「やれやれです」

 

『春は日向ぼっこの季節』などと言って、先ほどからぐっすりだ。

 

「正直羨ましい。俺も寝たい」

 

「——心の声漏れてますよ」

 

口に出てしまった。ここはひとつ「ごほん」と咳払いしてから、先日から店員になった青山ブルーマウンテンに尋ねる。

 

「青山さん、本当にここで働いてていいの?」

 

「大丈夫です。皆さんを観察させていただき、小説をネタを提供していただければ!」

 

「また俺たちをネタにするつもりか!?」

 

青山の発言に悠が驚く。——青山ブルーマウンテンの作品には、度々チノやシャロをモデルとした小説がある。

新作のために、再びモデルになってもらおうと企てているのだ。

 

「まあ、俺はいいけど……」

 

「私も別に気にしませんが」

 

「それでは、新作はお2人の物語を——」

 

「それはちょっと」

 

「嫌な予感しかしないです」

 

「あら……残念ですー」

 

青山ブルーマウンテンは悠とチノが一歩引いたことを確認すると、落ち込んだ様子でそう告げる。

 

 

「料理できたぞー」

 

厨房からリゼが出てくる。

 

「って、ココア、まだ寝てたのか!?」

 

未だにティッピーを枕にして眠るココアに驚きを隠せないリゼ。

 

「ガツンと言ってやってください」

 

チノがリゼに指示を出すが、リゼはココアの隣に座ると

 

「ココアの寝顔——」

 

と意味深につぶやく。

 

「リゼ——順調に変態への道を歩んでいるな」

 

「そういう意味で言ったんじゃない!」

 

悠の挑発に乗って、2人がドタバタと争う。

 

 

「はぁ……先が思いやられます」

 

まとまりのない一同に、チノが目を瞑る。

 

 

 

 

 

「——さん——悠さん!閉店ですよ」

 

「えっ?あっ……」

 

いつの間にか寝てしまったようだ。

 

「すまない、いつの間にか寝てしまった」

 

「悠さんまでココアさんに影響されないでくださいね」

 

「えへへ、さすが私の弟だね!」

 

「弟ではないけどね」

 

「え〜……」

 

悠の冷たい一言にココアがガックリと落ち込む。

 

「ほら、お喋りはその辺にして、閉店の準備してください」

 

「はーい……」

 

開いたばかりの瞼を擦りながら、悠はチノにそう返事をする。

——結局、お客は何人ほどきたのだろうか。

これから始まるであろう大冒険のことより、ラビットハウスの今後が心配だ。

 

 

 

その翌日はラビットハウスに一同が招集された。

『百の橋と輝きの都』までのルートと、向こうの駅についてからホテルまでのルートをまとめておくのだ。

——いわゆる『しおり』作りだ。

 

 

「しおりって——修学旅行かよ……」

 

面倒な作業を渋る悠に、リゼが「まあまあ」となだめる。

 

「これはある意味、私たちの修学旅行だ!だからしおりもちゃんと作るぞ!」

 

「修学旅行のしおりに『喫茶店一覧』とか、『都会のカジノで一攫千金する方法』って書く必要あるか!?」

 

やたら分厚くなっていくしおりの内容に悠がツッコミを入れる。

 

「では、付録に私の新作小説を——」

 

「それは早く編集者さんに提出して!?」

 

付録に自分の小説を追加し始める青山ブルーマウンテンに悠がツッコミをいれる。

——またページ数が増えた。

 

 

 

 

「よーし!完成だよ!」

 

「内容がカオスすぎてどこに欲しい情報があるかわからねぇ……」

 

ココアが自慢げに完成したしおりをテーブルに並べるが——内容が濃すぎるというか、無駄な内容が多すぎて情報を探すのに苦労しそうだ。

喫茶店一覧は百歩譲って認めるとして、都会のカジノで一攫千金する方法や、新作小説の付録はいらない気がする。

 

「青山さんの新作、確かに気になるが——何もしおりの付録にする必要なくない?」

 

「えー、移動の時間、結構長いんだから暇つぶしも必要だよー」

 

「やれやれ」

 

ココアの発言に呆れる悠だった。

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