ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

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第二百二十四話 旅行前の身嗜み

旅行前に、甘兎庵の和菓子を食べておきたいという悠のわがままで、チノを連れて甘兎庵へやってきた。

 

 

「悠さんはこの前、床屋さんで髪の毛切っていましたよね」

 

「え?あぁ、さすがに長いと思ってな。チノは?」

 

「そうですか。——私は前髪をちょっといじろうかなと」

 

「そっか」

 

たわいもない話をしていると、すぐ甘兎庵へ到着した。

しかし——。

 

「本日臨時休業——どうしたんだろ」

 

「まさか、体調でも悪いんでしょうか……」

 

扉の前に『本日臨時休業』と書かれた紙が貼り付けられている。

千夜か、もしくは千夜の祖母が体調を崩したのではないか、と心配する2人だったが、それは杞憂だったようだ。

 

甘兎庵の隣にあるシャロの家から千夜の声が聞こえる。

 

「さあ、お客さん。今日はどうします?」

 

「——いつも通りで」

 

「はーい」

 

「千夜さん?シャロさん?どうしたんですか」

 

どうやら、千夜がシャロの髪の毛を切っているようだ。

 

「シャロちゃんが、旅行前にって」

 

「倹約家だなぁ……」

 

悠がシャロの節約っぷりに感心していると、シャロが少し顔を赤くしていう。

 

「うるさいわね!旅行前でいつも以上に節約してるのよ!」

 

「ふふっ。そんなこと言いながら、昔から私に切ってもらうの好きでしょう?」

 

シャロの言葉に千夜が微笑みながらいう。

 

「いいから早く切りなさいよー!」

 

「はーい。——濡らしますよー」

 

「つめたっ!」

 

 

チノがシャロと千夜を羨ましそうに眺めているのが見えたので、悠はひとつチノに提案する。

 

「——ココアに頼んでみたらどうだ?」

 

「ココアさんに?——考えただけで寒気がします」

 

辛辣なチノの言葉に苦笑い。

 

「さあっ!一緒にもふもふ〜」

 

「ココアかーっ!」

 

抱きついてくる千夜にシャロが怒鳴る。

 

「あんなふうに、動けないのをいいことに、もふもふされそうです」

 

「——確かに」

 

 

 

甘兎庵訪問は後日に変更したチノと悠はラビットハウスへ帰宅。

 

「「ティッピー!?」」

 

ラビットハウスでチノと悠の帰りを待っていたはずのティッピー。

出発前と現在で、姿の変化が激しすぎるあまり2人はハモる。

 

「なんだこれ!?」

 

「おじいちゃん、その毛並みはどうしたんですか!?」

 

毛並みが整えられ、より『もふもふ感』が強化されたティッピーに悠とチノは驚きを隠せない。

 

「ココアがトリミングした」

 

そう一言短くティッピーが返答した。

 

 

「もふもふへの情熱が見事に発揮されてる……」

 

悠のつぶやきにチノが「うんうん」とうなずく。

 

「もしや、ヘアカットも——」

 

チノのつぶやきに悠はストップをかける。

 

「もしかしたら、うさぎ限定かもしれないぞ」

 

「うーん……」

 

チノは長い時間悩んだ後、ココアの元に向かった。

 

 

 

 

「ココアさん、私の髪もトリミングしてください!」

 

「えー!!?」

 

チノの言葉にココアが驚く。

 

「そういえば、ココアも髪伸びたな」

 

「最近伸ばしてるんだ〜!少しでもお姉ちゃんに近づけたらなーって!」

 

「伸ばしたからってモカさんみたいには——うぐっ!?」

 

喋っている途中でチノに口を塞がれる。

チノは悠の耳元に顔を近づけると——

 

「待ってください。せっかくココアさんがしっかりしようとしているんです。ここは否定せずにいきましょう」

 

「なるほど——。ココアならきっとチノの髪を素敵にカットしてくれるから、安心だな!」

 

「はい。ココアさんに全てお任せします」

 

「ゔぇっ!?何このプレッシャー!?」

 

悠とチノの言葉に青ざめるココア。

 

 

 

 

「お客様!痒いところはありませんか〜?」

 

「——美容院ごっこですか」

 

「今日の私は一流の美容師だよー!」

 

ココアが自信満々にそういう。——不安でしかない。

 

 

「こうしてると『家族』って感じしない?」

 

「——美容師設定はどこへ」

 

あっという間に消失した美容師設定にチノがツッコミを入れる。

 

「さ、ささささあ!お、お客様!覚悟するんだ!」

 

そう言って「はぁはぁ」と呼吸を荒くするココア。——心なしか腕が震えている。

 

「変な真似しながら緊張しないでください!」

 

「悠くん!もし失敗したらピコピコハンマーで私をぶっ叩いてね!」

 

「「失敗前提!?」」

 

ココアの弱気な発言に、またハモる2人だった。

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