ココアがチノの髪の毛をお手入れしている間、悠はピコピコハンマーを片手にうとうとしていた。
「お客様、もうすぐ高校生ですが、意気込みはどうですか?」
「そうですね……。やっぱり、マヤさんやメグさんと同じ学校にするべきだったでしょうか」
チノがココアにそう告げると、ココアが硬直し、『ザックッ!』と何かが一気に切れ落ちた音がする。
「——わあああああっ!?」
「なんだ!?」
ココアの叫び声でうとうとしていた悠の意識が元に戻る。
「————」
チノは鏡に映る自分を眺めながら目を点にしていた。
ココアは、悠の元へ足を進め、頭をこちらに向けてくる。
「ピコピコハンマーで頭を殴れと!?」
「——今言うべき冗談じゃありませんでした……」
その後、ココアは自分で椅子に座り、チノに叫ぶ。
「お詫びに私も断髪して!!」
「伸ばすんじゃないんですか」
「——やっぱり、私は私で、髪を伸ばしてもお姉ちゃんになれるわけじゃないよね」
ココアは苦笑いしながらハサミを持つチノに伝える。
「——でも私、いつもの髪型も好きですよ」
「今なんて!?」
「動かないでください」
「——で、結局この有様と」
「えへへ」
チノとお揃いの前髪になったココアに悠がジト目になる。
「すまない、付き合ってもらっちゃって」
「それはかまわんが——リゼも旅行前に髪いじるのか」
「まあな。旅行もあるけど——ほら、私もうすぐ大学生だろ?これを機にイメチェンしたくて」
翌日、リゼに誘われて街へ。
「リゼと2人きりでデートって何気に久しぶりだな……。なんか照れるな」
「変な言い方するなー!——お前、そんなふうにしてると、いつかチノに襲われるぞ」
「チノに襲われる?——リゼの方こそ変な言い方するなよ!」
顔を赤くする悠にリゼが「えっ?」としばらく考えた後、自分の発言を振り返って叫ぶ。
「べ、別にそう言う意味で言ったわけじゃないぞ!!?」
「本当かよ、変態め」
「変態はどっちだ!」
「あっ、リゼはなんだかんだで、こういうヘアアクセとかしてそうだな」
悠がリゼに見せたのは、花弁のヘアアクセ。——一見、ココアが好きそうな部類だが、リゼもなんだかんだこういうものに手を出してそうなイメージがある。
「あー……私はこう言うの似合わないよ。前に試したんだが、おかしくて自分で笑っちゃったよ」
苦笑いするリゼに悠は「そうか?」と首を傾げる。
「むしろ——」
リゼが意味深にこちらを見つめてくる。
「悠、ちょっとお前もイメチェンしよう」
「俺も?俺は別に——」
「いいからいいから——」
そう言ってリゼが半ば強引に悠を連れ込む。
「最高に不愉快なんだけど——」
鏡に映る自分を見て悠は思わずジト目になる。
「なんでお前は似合うんだよぉ……」
「泣き出した!?」
「これ、俺がさっきリゼに勧めたアクセじゃないか!?」
「お前になら似合うと思ってな」
「うわすげぇ複雑な気分なんだけど!?」
「リゼにはこれかなー」
今度はクローバーのヘアアクセをリゼにみせる。
「うーん、こう言うのは、自分じゃよくわからないな……」
困惑するリゼ。
「悠もこれならどうだ?」
「おい、お前は俺を女装させる気じゃないだろうな?」
「違うって。さっきの色違いさ。黒なら違和感ないだろ?ぶっちゃけさっきのも違和感ないけど……」
「ん?」
最後の方が聞き取れなかったので聞き返すと、リゼが慌てて
「な、なんでもないぞ!」
悠が先ほど見せたクローバーのヘアアクセの色違いだ。
「黒か……。まあこれなら」
「私は紫を買うよ」
「——待て、俺とお揃いになるけどいいのか?」
「私はかまわないが——チノがかまいそうだ」
「確かに——。まあ、チノのヘアピンも併用すればチャラにできそうだし、問題ないだろ」
「なんだそのシステム!?」
悠のよくわからない発言にリゼがツッコミを入れた。