大泥棒イナバの伝説が街中で噂されるようになってから、数日後のことだった。
ラビットハウスに千夜が持ってきたチラシを見てチノと悠は驚愕する。
『怪盗ラパンシリーズ最新作 義賊対決!怪盗ラパンvs大泥棒イナバ』と書かれている。
怪盗ラパンのイラストは、やはりどこかシャロを連想させるデザインだが、大泥棒イナバのイラストは、千夜を連想させるデザインになっている。
「もしかして、大泥棒イナバって——千夜か!?」
「千夜さんがモデルってことでしょうか……?」
「甘兎庵とフルールで怪盗コラボ——なんてできるのかしら」
そう言って微笑む千夜とは対照的に、シャロはご機嫌斜めだ。
「シャロは見ないのか?」
「ふんっ!」
悠の言葉にそっぽ向くシャロに千夜が
「シャロちゃん、もしかしてまだ正体言わなかったこと怒ってるの?」
と尋ねると、シャロはしばらくしてから涙目で叫ぶ。
「——怪盗ラパンより人気になったら許さないっ……!」
そんな話をしていると、厨房にいたココアとリゼがやってくる。
「なになに、みんな揃ってどうしたの〜?」
ココアがこちらに駆け寄ってきて、チラシを覗く。
「これって——千夜ちゃん!?」
「あれ、これは……この前の——」
「リゼは心当たりありそうだな」
悠の言葉にリゼはうなずく。
「あ、ああ。大泥棒イナバが私に直接対決を挑んできて——公園で大騒ぎしてしまった」
「私たちも、イメージキャラクターを作るべきだよね!」
「このままだと、甘兎庵やフルールに負けてしまうぞ!」
千夜とシャロが帰って行った後、ココアとリゼはそう言ってチノと悠にじわじわと詰め寄る。
「何を着せるつもりだ!?」
「やめてください。仕事してください」
以前、ココアがチノに作った魔法少女の衣装や、ティッピーの被り物をこちらに差し出してくるココアとリゼに猛抗議する2人だった。
「あ、あの——悠さん、起きてますか?」
扉の向こうからチノの声がした。
「ああ、起きてるよ。あっ、もしかして、明日からの旅行が不安で眠れないのか?」
「そんなわけないじゃないですか。逆に悠さんの方こそちゃんと眠れるんですか」
悠の言葉にチノが反論する。
「あれ、そういえばココアは?」
「さっき部屋に行ってみたらぐっすりでした」
「旅行前に眠れないタイプかと思ってたが——意外だな」
「そうですね」
「むしろチノの方が眠れないタイプだったとは」
「だから違うって——」
チノが言いかけるが、悠は「まあまあ」となだめて、チノを座らせる。
「明日、楽しみだな」
「はい。いろんな喫茶店見てまわりたいです」
「そうだな。都会の流行を取り込んでいかないと、ラビットハウスも『古臭い』って言われちゃう」
「なんじゃと!?」
廊下からティッピーの声がした。
「ティッピー?」
チノが扉から顔を覗かせて、廊下の様子を伺うが、ティッピーの姿はなかった。
「気のせいかな……」
「ティッピーも明日連れて行くんだよな?」
悠がチノに確認すると、チノがうなずく。
「もちろんです。おじいちゃんにも面白い喫茶店や、流行の最先端をいく喫茶店をたくさん見せてあげたいです」
「だな〜。頑固な爺さんだけど、コーヒーへの情熱は都会にも負けてないぜ!」
「はい!」
そんな2人の会話を廊下で盗み聞きしていたティッピーの目は、涙で潤んでいた。
【お知らせ】
いつも読んでいただきありがとうございます!
ありがたいことに、もうすでに200話を超え、ごちうさのSSの中では長編の部類に入るのかなと思い、前々から使おうと思っていた「章機能」を、このタイミングで導入することにしました。
そっちの方が、最近この小説に出会っていただいた読者様も、どこから読むべきか迷いにくくなるかな〜なんて。
第1章「木組みの家と石畳の街編」 無事、完結です!
さて、いよいよ次回から、本作も第2章に突入します!
第2章では、原作の旅行編にあたる「百の橋と輝きの都編」です!原作をベースにしつつ、旅行ならではのオリジナルも挟んでいくつもりです!
最後に、次回の投稿は2020年4月1日からとなります。
第1章では、後半溜まりに溜まったストックを一気に放出できたため、物凄いペースでの投稿となりましたが、生憎第2章のストックはほぼありません。
よって、第1章より投稿ペースは落ちますが、最低でも週1のペースで投稿したいと思っていますので、よろしくお願いいたします。