「言われてみれば、長期滞在で生活も一緒っていうのは初めてだな」
リゼがココアの発言に同意する。
これまで、ラビットハウスでお泊まり会などというイベントはあったが、長い間生活を共にするというの初めてだ。
「でも、一緒に暮らすとお互いのダメなところが見えてくるっていうわよね」
「ココアちゃんたちが順調だもの。大丈夫よ」
シャロと千夜がそういうと、チノは
「確かに、ダメなところ見えまくりで困ってます」
と否定する。
「やだな〜照れるからやめてよ〜」
ココアがチノの言葉にデレデレするが、チノは「褒めてないです」と一蹴する。
「そうだな。チノが実はとんでもない甘えん坊だったり——」
悠が言いかけるが、チノが口を塞ぐ。
「捏造です!真っ赤な嘘です!」
顔を赤くして全力否定するチノに思わずにやけてしまう。
「腹が減ってきた」
リゼがお腹を押さえていう。
「ふっ。この時を待っていたんだよ……」
リゼの言葉を聞いてココアが謎のドヤ顔とイケメンな声で語りかける。
「ココア特製サンドイッチでーす!!」
「お姉ちゃんっぽいことしてる……だと……」
ココアの気遣いに悠がつぶやく。
「私も実は特製のハーブティーを……」
シャロもココアに便乗して、自分の荷物から水筒を取り出す。
「出す機会を伺ってたわね」
恐る恐る水筒を取り出すシャロに千夜が微笑む。
「じゃあ、私からは手作りの抹茶プリン!」
「初日から贅沢だな……」
贅沢な昼食に悠がつぶやくと、チノも「うんうん」とうなずく。
「サンドイッチが上書きされてるー!!」
ココアの悲痛な叫び声が車内に響いた。
サンドイッチを頬張りながらも窓の外を眺めるチノに悠が話しかける。
「チノは、外の景色に夢中だな」
「景色がどんどん変わっていきます!——もっと、みんなでいろんな景色が見れたら、家族っぽいでしょうか?」
チノがそう言って悠の方を振り向くと、悠がチノにもたれかかってぐっすりと眠りについてた。
「——寝てるし……」
「わああああん!!!」
「誠に申し訳ございませんでした……」
泣き出すチノに詫びる悠。
「悠さんが起きなくて降りそびれました……」
「まさかこんなに熟睡できるとは思ってなくてだな!——申し訳ない……」
しょんぼりする悠にチノがジト目で問いかける。
「——で、どうするんですか」
「な、なんとかするよ……」
ひとまず、次の駅で降りてリゼに連絡を入れた。
「悠さんのせいでこうなったんですからね」
「ごめん……」
「もう……本当にしょうがない悠さんで——ふぁぁぁ!?」
それまで怒っていたチノが、駅の壮大さに目を輝かせる。
「怒りが治まった!?」
「みてください!天井がドームです!」
「みてるみてる〜」
壮大な景色に興奮するチノに頬が緩んでしまう。
「あっ、喫茶店発見したぞ!次の列車が来る前に休憩しよう!」
「えっ……」
喫茶店の看板を見て震えるチノに悠は首を傾げる。
「ん?」
「都会のチェーン店は意識と敷居が高いと聞くので、警戒しろと……」
「大丈夫だってー」
「で、でも……まだ心の準備が……。あっ!リゼさんからメールで、トラムに乗ればホテルに合流できるそうです!」
「まじか。それならトラムのほうに行ってみよう」
「はい!」
話題をすり替えられたような気がするが、今はリゼたちと合流するのが優先だ。ここはチノに話を合わせておこう。
「さあ、出発です!」
そう言って前を歩き出すチノだが——。
「チノさん?出口はこっちですよ……?」
「し、知ってましたよ!ココアさんの真似です!」
顔を赤くして悠の後ろについてくるチノだった。