ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

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第二百三十四話 ホラー・ルーム

部屋はなかなかの広さだ。少々古びているが、内装はロビー同様とても豪華に作られている。

 

「ちょっとお手洗いに——」

 

「ああ」

 

チノは荷物を置くと、お手洗いに向かう。

 

「お邪魔するわ」

 

千夜が部屋にやってきた。

 

「千夜か。どうした?」

 

「いいえ、大した用はないの。このホテル、雰囲気が少しアレじゃない?だから2人がどうしてるか気になって」

 

そういう千夜の目は輝いている。——言葉と態度が一致しないのはなぜだろうか。

 

「チノはともかく、俺は千夜の期待に応えられる反応はできないかな」

 

悠が苦笑する。悠の言葉に千夜は「ふふっ」と微笑むと

 

「夜が楽しみね——。青山さんにいいホテル紹介してもらってよかったわ」

 

「おい、まさか肝試しとか計画してないよな!?」

 

千夜の意味深な発言に悠がツッコミを入れる。

 

「開かずの部屋や呪われたトイレ——」

 

「うわああああ!!!」

 

千夜が言いかけたところで、トイレの方からチノの叫び声がする。

 

「チノ!?どうした!?」

 

悠が慌てて駆けつける。

 

「扉が開かなくて——」

 

「千夜が変なフラグ立てるからだぞ!」

 

「あらやだ!まだ昼間なのに楽しくなってきちゃったわ!」

 

チノのハプニングにテンションが上がる千夜。悠は頭を抱える。

 

 

「大変だ!チノがトイレに閉じ込められた!援軍を!」

 

悠がリゼの元へ向かうと、リゼは「なに!?」と驚く。

 

「シャロの次はチノか——」

 

リゼがボソッとつぶやく。どうやら前例があったようだ。

 

 

「鍵が壊れたみたいだな。チノ、大丈夫か?泣いてないか?」

 

「な、泣いてません!子供扱いしないでください!」

 

悠の問いかけに扉を叩くチノ。

 

「今、リゼが受付にいたおばあちゃん呼んでもらってるから安心しろ」

 

「大丈夫なんですか、それ……」

 

正直なところ、悠も不安だ。受付のほんわかしたおばあちゃん一人増えたところで事態が好転するとは思えない。

だが——。

 

「リゼは大丈夫だって自信満々だったけどな……」

 

「チノちゃんの気を紛らわせるために怪談でも——!」

 

「千夜は一旦部屋に戻れ」

 

「やだ悠くん!そんな乱暴に——」

 

「千夜さん!?——扉の向こうで一体何が起きているんでしょう」

 

 

 

「全く——さっきといい今といい、騒がしいですね。これで何度目ですか」

 

「誰!?」

 

リゼが連れてきたのは受付のおばあちゃん——ではない。

 

「このホテルの支配人です。扉を開けるコツを教えます」

 

そう言って懐からハンマーを取り出す。

 

「つまり破壊しないと出られないってことか!?」

 

ドカドカ音を立てながら扉を破壊していく支配人に悠がツッコミを入れる。

その光景を見てリゼが

 

「デジャヴ……」

 

とつぶいた。

 

 

「もう——どうなるかと思いました」

 

チノがホッと一息つくと、ココアが駆けつけてくる。

 

「チノちゃん!?お姉ちゃんが今助けて——ってあれ?」

 

「なんだその武器は!?」

 

鎖で繋がれたトゲ付きの鉄球——モーニングスターだろうか。

そんな武器を片手に駆けつけてくるココアにチノが震える。

 

「え……?だってこれがないと扉壊せないでしょ?」

 

「感覚が麻痺してる……」

 

もはやそれは『扉』と言えるのだろうか。先が思いやられる。

 

 

 

 

「とりあえず無事でよかった」

 

「そうだな」

 

悠の言葉にリゼがうなずく。

 

「助かりました。ありがとうございます」

 

チノが2人と支配人にお礼を言う。

 

「トイレの扉は助かってないけどな……」

 

木っ端微塵に破壊されたトイレの扉を見て悠は目を瞑った。

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