「——いつも私の勘違いと早とちりで恥ずかしい目にあっているから、今度は最初に聞いておこう」
リゼはそう前置きすると、着替えたチノと悠に話をする。
「これは偶然だな?」
リゼが確認するとチノと悠がうなずく。
「そうだぞ。停電したのはしょうがないとして、そもそもリゼがいきなり扉を開くから、その音でこうなったんだ」
「別に驚いたわけではありませんよ」
チノが強がって最後に補足する。
「そうか——。だけど一応言っておくぞ、旅行でテンションが上がるのはわかるが、ぐれぐれも間違えないように」
「引率の先生みたい……」
「ですね」
「先生!?」
悠の言葉を聞いてリゼが若干顔を赤くする。
「そんな、先生なんて——」
「嬉しそうです」
照れるリゼにチノがジト目でいう。
ひとまず、誤解が解けて何よりだ。
「それで、プレゼントがなんとかって言ってなかったか?」
悠がリゼに確認すると、リゼは「そうそう」と同意して懐を漁る。
「これを渡しておこうと思ってな」
リゼが懐から取り出したのは——
「「圧縮ティッピー!?」」
思わずチノと悠がハモってしまう。
リゼが懐から取り出したのは、圧縮袋に入れられたティッピー。
「お、おいリゼ……?」
悠が若干震えた声で確認するが、リゼは「違う違う」と掌を横に振る。
「本物じゃなくて、これはぬいぐるみだ!」
「だよな——。一瞬リゼなら本当にやりかねないと思ってしまった」
「私をなんだと思ってる!」
悠の言葉にリゼがツッコミを入れる。
チノは圧縮ティッピーを受け取ると、首を傾げてリゼにいう。
「でも、どうしてこれを?」
「本当は私が旅行中、抱き枕として使おうかなと思っていたんだけど——」
「ぷっ」
リゼの言葉に悠が吹き出すと、リゼは顔を赤くして
「何がおかしいんだ!私だってぬいぐるみを抱いて寝たいと思うことぐらいあるぞ!」
と反論する。
「——本物のティッピーが来ないって聞いて、チノにプレゼントしようと思ったんだ」
「ありがとうございます、リゼさん」
「気にするな。本物より少しサイズが小さいが、感触はほぼ同じはずだ」
リゼはそういうと、部屋から出て行った。
「また明日な。チノ、夜に悠が事件を起こしたら、鎮圧しに行くから私を呼んでくれ」
「なぜ俺が事件を起こす前提で話をしている!?」
「さて、疲れたので早めに寝ましょうか」
「そうだな」
こうして、ドタバタの1日目が終了した——。
翌日。まだ日が昇っていないが、早寝したおかげで早起きできた。
チノはまだ夢の中。ティッピーを抱き抱えて寝ている。
「『ティッピーは安眠グッズじゃないです』とか言っておきながら——」
普段からティッピーを抱き抱えて寝ようとするココアにツッコミを入れていたチノだったが——。
「さて、みんな起きてるかな……?」
悠は一人で部屋を出る。——朝は少し肌寒いが、上着を着れば問題ない。
「おっ、悠!早いな!」
廊下でリゼと遭遇した。
「シャロを起こす前に飲み物を調達しようと思って」
どうやらシャロもまだ寝ているようだ。——無理もない。1日目はドタバタして疲れただろうし、そもそもまだ日が昇っていない。
リゼの飲み物を購入した後、一緒に部屋へ向かう。
「おーい、シャロ!起きろ、朝だぞ〜」
リゼがシャロを揺さぶる。
「ぷぷっ。シャロ、寝相が面白いことになってる」
シャロのおかしな寝相に悠が笑うと、シャロが起き上がる。
「あっははははは!寝癖もすごい!ここまでひどいのは初めてじゃないか?」
大爆笑するリゼと悠。鏡を見たシャロは、扉破壊用の武器を手に取ると2人に
「消しましょう。記憶を」
と告げる。
「——シャロ?寝ぼけてるだけだよな!?」
リゼが武器を構えるシャロにツッコミを入れた。