ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

244 / 249
第二百四十一話 濃縮された1日

「コンサート、どうだった?」

 

「とってもよかったです」

 

「そ、そうか——」

 

リゼがチノにコンサートへ行った感想を尋ねると、チノは少し首を傾げる。

 

「リゼさん、何かあったんですか?」

 

「な、なにもないぞ!心配するな!」

 

「そうですか……」

 

チノは少し不思議そうな顔をしたが、それ以上追求することはなかった。

 

 

 

「でも、シャロさんがコンサートの途中で寝てしまって……。感想を語り合いたかったのに」

 

チノが残念そうにシャロへいうと、シャロは申し訳なさそうに

 

「ごめんねチノちゃん」

 

と謝罪する。

 

「仕方ないわ。とっても心地が良くて、私も寝そうになったもの」

 

「そんなに良かったのか!?」

 

千夜の言葉に悠が驚く。どうせ自転車2台しかないのなら、コンサートへ行っておけば良かったかもしれない。——といっても、ドレスコードを突破できそうな服は持っていないが。

 

「ふふっ。シャロちゃん、もったいないことしたわね。あんな感動的なコンサートを寝過ごすなんて。私なんか胸がいっぱいではちきれそうになったわよ」

 

千夜がそう告げた途端、チノとシャロが硬直した。

 

 

 

 

 

夕食を摂りながら、今日あったことやこの街について話が弾む。

 

「そういえば、シャロちゃんのご両親はこの街でなにしてるの?」

 

ココアがシャロに尋ねると、シャロは「あぁ、そういえば言ってなかったわね」と前置きして答える。

 

 

「陶器職人よ。主に作ってるのはこういう感じの食器」

 

シャロの言葉に千夜以外の全員が「えー!」と声を上げる。

 

「シャロもいずれは陶器職人に?」

 

悠がそういうと、シャロは「いいえ」と否定する。

 

「私は陶磁器()()()よ。愛でるだけで十分なの——こんなふうに!」

 

そう言って夕食の乗った食器を愛おしそうに撫でる。

 

「シャロが陶器フェチなのはご両親の影響か……」

 

シャロの変わりようにリゼがつぶやいた。

 

 

 

 

「じゃあ、シャロは将来どんなものになりたいんだ?」

 

リゼが尋ねると、シャロは「そうですね……」としばらく考えて

 

「人を輝かせる仕事ってのも悪くないなーと最近は思ってますね」

 

シャロがそう答えると、ココアと千夜が「なになに!?」と食いつく。

 

「シャロちゃんの夢はかわいいものを集めた雑貨屋さん!?」

 

「それとも、内から輝かせるハーブティーアドバイザー!?」

 

「まだ決まってないわよ!」

 

 

 

 

 

「無事?2日目終了か……」

 

「そうですね。どっと疲れました」

 

ベッドにダイブする悠とチノ。無事と言い切れないのが悔しいところだが、朝っぱらからリゼたちと徘徊、ドレス騒動を鎮圧、自転車1台足りない問題、ココアとの自転車レース——。

 

「1日が濃すぎるな……」

 

普段の3倍は落ち着かない1日になってしまった。

だが、楽しさが疲れを上回っているためか、気分はとてもいい。

 

「チノたちの方はどうだった?ドレスを調達しにデパートに行ったんだろう?」

 

悠はベッドに預けた体を動かさず、目線だけチノの方へ向ける。

チノが「はい」と短く答えた。

 

「疲れましたが、とっても楽しかったです」

 

チノはそう前置きして今日1日の出来事を悠に語り始めた。

 

 

 

 

 

夢中でチノと会話していると、いつの間にか遅い時間になってしまった。

 

「もうこんな時間ですか。だいぶ早くに起きたようですが、大丈夫ですか?」

 

「ああ、問題ない!チノと話していれば眠気も吹っ飛ぶ」

 

「また適当なこと言って……」

 

悠の発言にチノが枕で顔を隠す。

 

「ほら、そろそろ寝ますよ。明日は千夜さんも入れて3人で喫茶店巡りです」

 

「はーい」

 

 

パチンと音を立てて部屋が暗闇に包まれた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。