「コンサート、どうだった?」
「とってもよかったです」
「そ、そうか——」
リゼがチノにコンサートへ行った感想を尋ねると、チノは少し首を傾げる。
「リゼさん、何かあったんですか?」
「な、なにもないぞ!心配するな!」
「そうですか……」
チノは少し不思議そうな顔をしたが、それ以上追求することはなかった。
「でも、シャロさんがコンサートの途中で寝てしまって……。感想を語り合いたかったのに」
チノが残念そうにシャロへいうと、シャロは申し訳なさそうに
「ごめんねチノちゃん」
と謝罪する。
「仕方ないわ。とっても心地が良くて、私も寝そうになったもの」
「そんなに良かったのか!?」
千夜の言葉に悠が驚く。どうせ自転車2台しかないのなら、コンサートへ行っておけば良かったかもしれない。——といっても、ドレスコードを突破できそうな服は持っていないが。
「ふふっ。シャロちゃん、もったいないことしたわね。あんな感動的なコンサートを寝過ごすなんて。私なんか胸がいっぱいではちきれそうになったわよ」
千夜がそう告げた途端、チノとシャロが硬直した。
夕食を摂りながら、今日あったことやこの街について話が弾む。
「そういえば、シャロちゃんのご両親はこの街でなにしてるの?」
ココアがシャロに尋ねると、シャロは「あぁ、そういえば言ってなかったわね」と前置きして答える。
「陶器職人よ。主に作ってるのはこういう感じの食器」
シャロの言葉に千夜以外の全員が「えー!」と声を上げる。
「シャロもいずれは陶器職人に?」
悠がそういうと、シャロは「いいえ」と否定する。
「私は陶磁器
そう言って夕食の乗った食器を愛おしそうに撫でる。
「シャロが陶器フェチなのはご両親の影響か……」
シャロの変わりようにリゼがつぶやいた。
「じゃあ、シャロは将来どんなものになりたいんだ?」
リゼが尋ねると、シャロは「そうですね……」としばらく考えて
「人を輝かせる仕事ってのも悪くないなーと最近は思ってますね」
シャロがそう答えると、ココアと千夜が「なになに!?」と食いつく。
「シャロちゃんの夢はかわいいものを集めた雑貨屋さん!?」
「それとも、内から輝かせるハーブティーアドバイザー!?」
「まだ決まってないわよ!」
「無事?2日目終了か……」
「そうですね。どっと疲れました」
ベッドにダイブする悠とチノ。無事と言い切れないのが悔しいところだが、朝っぱらからリゼたちと徘徊、ドレス騒動を鎮圧、自転車1台足りない問題、ココアとの自転車レース——。
「1日が濃すぎるな……」
普段の3倍は落ち着かない1日になってしまった。
だが、楽しさが疲れを上回っているためか、気分はとてもいい。
「チノたちの方はどうだった?ドレスを調達しにデパートに行ったんだろう?」
悠はベッドに預けた体を動かさず、目線だけチノの方へ向ける。
チノが「はい」と短く答えた。
「疲れましたが、とっても楽しかったです」
チノはそう前置きして今日1日の出来事を悠に語り始めた。
夢中でチノと会話していると、いつの間にか遅い時間になってしまった。
「もうこんな時間ですか。だいぶ早くに起きたようですが、大丈夫ですか?」
「ああ、問題ない!チノと話していれば眠気も吹っ飛ぶ」
「また適当なこと言って……」
悠の発言にチノが枕で顔を隠す。
「ほら、そろそろ寝ますよ。明日は千夜さんも入れて3人で喫茶店巡りです」
「はーい」
パチンと音を立てて部屋が暗闇に包まれた。