ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

245 / 249
第二百四十二話 喫茶店巡りに出発!

「起きてください。いつまで寝てるんですか」

 

チノに揺さぶられて目を覚ます。重いまぶたを開けると日の光が目に刺さる。

 

「あぁ……もう朝か——」

 

ふらつく体を無理やり起こして支度を始める。

 

 

 

「みんなは今日なにするー?」

 

今日も朝ごはんを食べながらココアが尋ねてくる。

 

「今日は、私と悠さんと千夜さんで喫茶店を巡ろうかと」

 

「いいねー!!」

 

チノの言葉に目を輝かせるココア。

 

「どの辺を周るんだ?」

 

リゼがそう首を傾げるので、悠は懐に潜らせておいた本を取り出す。

色分けされた大量の付箋が本から頭を出している。

 

「これ全部」

 

悠が短く答えると、チノも千夜も「うんうん」とうなずく。

 

「喫茶店の跡継ぎとして、勉強は大切よ」

 

「その通りです!」

 

意気投合するチノと千夜。

 

「お、おう……。そうか、健闘を祈る……!」

 

あまりの量にさすがのリゼも反応に困っているようだった。

 

 

 

 

「さあ、出発しましょう!」

 

チノが張り切って先頭に出る。

 

「チノちゃん、それって——」

 

千夜がチノのかばんにつけられたティッピーのぬいぐるみを指差すと

 

「あっ、これはリゼさんに作ってもらったティッピーのぬいぐるみです」

 

「そうなんだ……!」

 

心なしかホッとしたような口調でそう言う千夜。

本物をそのままかばんに結びつけたのだと思ったのだろうか——。

 

 

 

「千夜、震えてるけど大丈夫か?」

 

「む、武者震いよ!」

 

悠の言葉に強がる千夜。

 

「ずっとあの街で暮らしていたから——都会の喫茶店、どんなところか楽しみだけど緊張してるの」

 

「そうか——」

 

無理もないだろう。千夜の言葉を聞いたチノが悠と千夜の手をとる。

 

「私もですよ。でもこうすれば安心です」

 

「まぁ!今日のチノちゃん、積極的ね、悠くん?」

 

「なんで俺に振った!?」

 

何かあったのか、とでも言いたそうな千夜の視線を躱す。

 

 

 

 

「1軒目——この街で有名な老舗カフェだ」

 

悠が本に乗っている写真と建物を比較する。完全に一致した。

 

「突撃〜!」

 

千夜の号令とともに中へ——。

内部は恐ろしいほど天井が高く、宮殿のような立派な作りになっている。

 

「まるで宮殿だな……」

 

悠のつぶやきに、千夜とチノは

 

「でも怯まず堂々と!」

 

「常連のように振る舞いますよ!」

 

と正々堂々足を踏み入れる。

 

 

 

だが、先ほどの発言は嘘のように消えて無くなる。

 

「あーっ!見てください皆さん!あんなコーヒー初めてみます!」

 

「ケーキやパフェも素敵よ!」

 

「——お前ら、はしゃぎすぎだ」

 

店内を興味深そうに行き来するチノと千夜に引っ張られる悠は静かにツッコミを入れた。

 

 

 

ひとまず、注文を終えて手ごろな席に腰を下ろす。

 

 

「なんか千夜、楽しそうだな!」

 

朝から緊張しつつもニコニコしている千夜に悠が微笑む。

 

「あらやだ、表情に出てた?」

 

「別に悪いことじゃないと思うぞ」

 

悠がそう言うと千夜は少し笑って「実はね——」と話を始めた。

 

「昨夜、とっても楽しい夢を見たの」

 

「夢?」

 

「そう……!悠くんが私たちと同じ高校で、みんなで生徒会に入るの!」

 

「生徒会、ですか……?」

 

「みんなの役職は?」

 

チノと悠が尋ねると、千夜はさらに夢の内容を語り始める。

 

「ココアちゃんが生徒会長!」

 

「ココアさんが生徒会長!?」

 

チノが驚きの声を上げる。——その学校、大丈夫なのだろうか。夢の話なのに冷や汗を流す。

 

「それでね、悠くんが副会長で、チノちゃんが会計!」

 

「私が会計!?千夜さんは?」

 

「私は書記!」

 

「なんかゾッとする夢だな——」

 

悠が背中に走る異様な感覚に震える。

 

「あら、どうして?とっても楽しそうじゃない?」

 

「なんかわからないけど、その役職配置はマズいような気がするんだ!」

 

「それはココアさんが生徒会長だからだと思いますよ」

 

「そうかなぁ……」

 

よくわからないが、きっとそうなのだろう——。

 

 

 

「ところで、注文はなににしたんだ?」

 

「まずは『アインシュペンナー』です」

 

「あっ、噂をすれば〜」

 

千夜の言葉で振り向くと、後ろから年配の店員が『アインシュペンナー』を持ってきた。

 

「じゃあ、記念に写真撮りましょうか!」

 

千夜がシャッターを切った。




千夜ちゃんの夢の元ネタについては触れないでおきます笑
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。