ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

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第二百四十三話 喫茶店巡りは忙しい

「煌びやかで居心地の良い店内、そして目を引く美味しそうなケーキ……」

 

「新しくて味わい深い、上質なコーヒー……」

 

圧倒的な差を見せられガックリする千夜とチノ。

 

「1軒目にして2人のメンタルがやばい!!」

 

悠は慌てて2人を励ます。

 

「落ち込むな!ラビットハウスや甘兎庵にしかない良さもある!」

 

悠がそういうと、千夜はパッと顔を上げて

 

「ほんと?」

 

とこちらに顔を近づけてくる。

 

「あ、ああ——クセになる奇怪さ、カオスさ、その他もろもろ!」

 

「褒められてるの!?」

 

悠の中途半端な言葉に千夜が困惑する。

 

 

「チノも元気出せ、ラビットハウスにはコーヒーとパンというコラボレーションが——」

 

「悠さんが語り始めた……」

 

チノを元気付けようとラビットハウスの良さを力説する悠にチノが思わず頬を緩める。

 

 

 

 

 

そして2軒目は——。

 

「この喫茶店は、最近流行っているらしいわね」

 

千夜がガイドブックを片手に解説する。

 

「この店——前に行ったところの別店舗か……」

 

「そうですね」

 

悠とチノがそういうと、千夜が頬を膨らませる。

先に街をある程度探索したことへの嫉妬か、焦りか——。

だが、それも店のメニュー表を見た瞬間、一瞬で困惑の表情へと移り変わる。

 

 

「——?」

 

メニュー表を見て首を傾げる千夜。

 

「え、えっと——これは……?」

 

困惑する千夜にチノが「大丈夫です」と声を掛ける。

チノは深く息を吸うと、店員に注文を告げる。

 

「クリーミー・ヘブンズ☆ナッツパッション・アイスモカチーノ」

 

「チノちゃん!?」

 

突然呪文のような、奇妙な言葉を発するチノに千夜が驚く。

 

「私がお姉ちゃんなのに、エスコートされちゃったわね」

 

「慣れの問題です。千夜さんもすぐ慣れます」

 

照れ臭そうな千夜にチノが微笑んだ。

 

 

 

「この店——『ブライトバニー』っていうのか……」

 

「特に若い人たちに人気のお店らしいわね」

 

「千夜さんも若い人です」

 

千夜の年寄り臭い発言にチノがツッコミを入れる。

 

 

「あ、向かい側にも喫茶店があるみたいだな。こっちはあまり客がいないような——」

 

悠が『ブライトバニー』の反対側にある店に視線を向けて、一同にそう告げる。

——どうやら、チノはその店が気になるようだ。ラビットハウスと状況が似ているからだろうか。

 

チラチラとその店の様子を伺うチノ。早く中に入ってみたいが、千夜がまだ『クリーミー・ヘブンズ☆ナッツパッション・アイスモカチーノ』を飲んでいるので言い出せないのだろう。

 

悠はその様子を見て半ば強引に2人の腕を掴む。

 

「さあ、次いくぞー!」

 

「はい!」

 

「あ、あの、お腹がタプタプ——」

 

 

 

 

店の中に入ると、1軒目の喫茶店や先ほどの『ブライトバニー』とは異なり、歴史を感じる雰囲気——俗に言う『エモい』雰囲気漂う、落ち着いた雰囲気の店。

客の年齢層も『ブライトバニー』より高めだ。

 

「来てみてわかったわ。——それぞれの良さがあるから、お客さんの取り合いにならないのね」

 

千夜がコーヒーを飲みながら納得した様子でそう語る。悠も「うんうん」と共感するが、チノは頭を抱える。

 

「でも、『ブライトバニー』がうちの隣にきたらダメかも……」

 

震えた声で俯くチノに千夜が「そんなことないわ」と否定する。

 

「さっき、悠くんも言っていたでしょう?ラビットハウスには、ラビットハウスの良さがある。ラビットハウスのコーヒーは特別な味。しばらく飲めないのが寂しくなっちゃうわ」

 

「千夜さん……」

 

「その通り!おまけにココアのパンやリゼの料理、そしてチノのコーヒー——。その絶妙なバランスは他の店には真似できない!」

 

「悠くんは?」

 

「俺は——在庫の管理とか……?」

 

圧倒的な雑用感にチノと千夜がひっくり返る。

 

「悠さんもコーヒーの勉強してください。最近はかなり上達してきましたが、まだまだです」

 

「わかってるよ〜」

 

チノと悠のやりとりを見て千夜が「あらあら、まだ先は長いわねー」と微笑んだ。

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