ご注文は家出人ですか?   作:Alkali

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第二百四十六話 チェス勝負

「いつもと違うのを着ると、いつもと違う性格になれる気がするよ」

 

「——そうか?」

 

ココアの発言に困惑するリゼ。

それとは対照的に千夜は「わかるわ!」と同意する。

 

「今日はスポーティーな水着だから泳げる気がする!」

 

「千夜が溺れそうだ!!」

 

調子に乗って深いところに入ってしまい、息をするのもやっとな千夜に悠がツッコミを入れる。

 

 

「大人っぽい水着のココアさんは、いつもよりちょっと大胆だよ〜」

 

ココアはそう言って近くにいた同年代——否、年下であろう2人に話しかける。

 

「君たちどこかで会ったことない?」

 

「ナンパするな」

 

 

「外のプールに連れていきましょう」

 

チノが調子乗るココアを外のプールに島流しする。

 

「そうだな。千夜も泳ぐならあっちにあるプールのほうがいいぞ」

 

リゼも千夜を引き上げる。

 

 

 

 

「やっぱり外は涼しいね〜!」

 

「そうですね」

 

ココア、チノ、悠の3人は外へ。

 

「あっちでチェスやってる……」

 

悠がボソッとつぶやくと、チノが興味ありげに近く。

チノと同い年くらいの少女が大人を相手に戦っている。

 

「あの子……私と同い年くらいなのに大人相手に勝ってます」

 

「はーい!!次の対戦相手に立候補します!!」

 

ココアが手を上げるが、すぐにその手を横へ移動させ

 

「チノちゃんが」

 

「私がー!?」

 

 

ココアが半ば強引にチノを戦わせる。

 

「よ、よろしくお願いします」

 

緊張するチノとは対照的に、少々困惑しつつも冷静な少女。

 

 

——若干チノが不利な戦況の中、ココアは

 

「君いくつ?かわいいね、お姉さんとかいる?」

 

「勝負中にナンパするな。チノ、ココアはなんとかしておくから集中して頑張ってくれ」

 

「はい」

 

「あっ悠くん!まだ話の途中ー!!」

 

ココアを連行する悠だった。

 

 

 

 

「ココアちゃ〜ん」

 

「千夜ちゃん!?」

 

「千夜!?」

 

千夜の声がした方に目を向けると、千夜がぐるぐると回転しながら流されている。

 

「千夜ちゃん!今助けに行くからね!」

 

ココアがプールに飛び込むが、ココアもぐるぐると回転する。

 

「——流れるプールかよ。焦って損した」

 

悠の呆れた声をよそに、ココアと千夜がはしゃぐ。

 

「呆れるわ。そんなので満足してるなんて子供ね」

 

シャロの声がした。シャロは浮き輪ボートに乗って優雅に流れるプールの水流に乗る。

 

「ずるいずるい〜!」

 

ココアと千夜がシャロのボートを揺らしてひっくり返す。

 

「過激!平和に遊んで!?」

 

軽く紛争地帯になってる流れるプールに悠がツッコミを入れる。

 

「この勝負私たちの勝ちね!」

 

勝ち誇る千夜とココアにシャロがまたため息。

 

「はぁ……。そんな子供っぽいものを奪ってはしゃぐなんて恥ずかしいと思わないの?」

 

「——さっきシャロも楽しそうに乗ってたじゃん……」

 

悠のツッコミにシャロがそっぽ向く。

 

 

 

 

「悠さん……」

 

「チノ、勝負はどうだ——どうした!?」

 

ゾンビのように徘徊するチノに悠が驚く。

 

「負けました……同年代の子に初めて……ははは……」

 

力なく笑って膝をつくチノに悠とココアが駆け寄る。

 

「お姉ちゃんたちが慰めて……」

 

「ほら、なんかプールが光はじめて音楽が聞こえてきたぞ!」

 

慌てて慰めたり話題を逸らしたりする2人にチノは

 

「今は一人にしてください……」

 

と手を振り払った。


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