ある日の休日。またチノと悠の部屋でジグゾーパズルで遊んでいた。
「ほぼ完成まできたな!しかし、疲れたわ——」
「そうですね……」
気がつけば、いつもならとっくに布団に入っている時間になっていた。
ココアと里恵は途中まで手伝ってくれていたが、すでに夢の中。
「コーヒー、淹れますか?」
「ああ、手伝うよ」
チノとダイニングに向かう。
「ココアはいまだにコーヒーの違いを当てられないのか?」
「はい——。全く、困ったものです」
チノが呆れた様子でいう。悠もそれには「うんうん」と頷く。
「町の国際バリスタ弁護士で小説も書くパン職人への道はまだまだだな」
「夢が多すぎます」
悠がそういうと、チノはクスッと笑ってそう言った。
「そういえば、この前マヤさんに映画を借りたんです。よかったら見ませんか?」
「ああ、俺の部屋はココアと里恵が寝てるから、チノの部屋でみよう」
「はい!」
チノは少し嬉しそうな顔で、コーヒーを部屋まで運んだ。
「3本あるんですが、どれにしましょうか」
チノがマヤから借りてきたという映画を並べる。
特撮、アクション、ホラー——マヤの性格がよくわかる。
「よし、ホラーだな」
「そんな!寝られなくなります!」
「ふーん……チノってホラー映画見たら寝られないんだ……」
悠がジト目で煽ると、チノはすぐに「し、仕方ありませんね——」と意地を張る。
「今日のところはその挑発に乗って、ホラー映画見てあげます!」
ホラー映画を再生。
序盤はどちらかというと「意味がわかると怖い話」に似ているような雰囲気で、細かいところを見なければ怖くない話だった。
が、中盤から徐々にホラー要素が強くなっていき、チノの顔も徐々に怯えていく。
「怖いのか?」
「だ、大丈夫です!」
「手、震えてるぞ」
悠は意地を張るチノをさらに煽る。
「怖いなら特別に手を握ってあげてもいいですよ!」
「そりゃこっちのセリフだ!——ああ、じゃあ遠慮なく!」
「つ、冷たい……」
そういえば、さっきコーヒーを入れているときにこぼしてしまい、手を洗っていた。
これを逆手にさらにビビらせる。
「そりゃあな、だって俺——ゾンビだもの」
「————」
「チノ?おい、冗談だぞ!しっかりしろ」
さすがにやりすぎた。
「まったく、本当にしょうがない悠さんですね」
「ごめんって」
少し怒っているようだが、チノは手を握ったままだ。
「ほら、もう少しで終わるぞ」
「た、たいしたことない映画ですね」
「強がるなよ、肩震えてるぞ」
先ほどよりエスカレートしている。
「さ、最近、肩が凝ってしまって」
「——いや、その言い訳はちょっと無理があるかと」
「で、ですよね……」
ついに観念したようだ。
「やっと終わりました……」
拷問から解放されたような顔でチノが言う。
「ああ、だな。もう一回見るか?」
「からかわないでください。もう寝ますよ!」
「そうだな。おやすみ」
悠が部屋から出て行こうとすると、チノが裾を引っ張る。
「な、なんだよ。ちょっとだけキュンとしちゃっただろ!」
「そ、その——今夜だけ……」
チノがとても小さな声で言う。
「なんだ?すまん、聞こえなかったぞ」
別におちょくっているのではなく、本当に聞こえなかった。
「ですから!今夜だけ一緒に寝てほし——寝てもいいですよって言ったんです!」
「————はぁ!!?いや言い直しても意味ないからな!?」
悠が驚きのあまり大声を出してしまう。
「静かにしてください。皆さんが起きたらどうするんですか」
「あ、ああ……。俺が総理大臣だったらマヤは国民栄誉賞だな……」
悠は感動のあまり涙を流すと、チノは
「悠さんも怖いんですか?」
と言う。
「いや、感動の涙だ。まさかチノからそんな提案を——」
「ち、違います!調子に乗らないでください、今日だけですよ!」
「まあいい、俺は床で寝るから、あんまり気にすんなよ。俺は超気にしてるけど」
悠がそう言うと、チノは悪いから、悠の方がベッドで寝るべきだと言った。
悠はチノがベッドで寝るべきだ、と説得するが、それでは埒が明かないのでじゃんけんで決めることに。
「な、なあ——一緒に寝るという選択肢は」
「な、な……そんな!」
「冗談だ、ほらじゃんけんするぞ」
「冗談だ」と言いつつ内心かなりショックを受けている。
じゃんけんの結果、悠が勝ったので悠がベッドで寝ることになった。
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振り回され隊 × 悠