恋、したいよ
「――だって、今のあたしが誰かと付き合ったって上手くいきっこないもん」
そう。あたしは男の子とは付き合えない
「そんなことは」
「あるよ」
だって
「あたし、腐ってるから」
男の子からしたら気持ち悪い趣味
うぅん、女の子からしても、かな
「なら、しょうがないな」
「そう、しょうがない……」
でも
「へへ、へへへへ」
あたしだって女の子、なんだよ
「あたし、ヒキタニ君となら上手く付き合えるかもね」
あたしだって、男の子と付き合いたいよ
「冗談でもやめてくれ」
あっ―
「あんまり適当なこと言われるとうっかり惚れそうになる」
「そうやって、どうでもいい人には素直になるとこは、嫌いじゃないよ」
やっぱり、あたしじゃだめ、だよね
「奇遇だな。俺も自分のそういうところが嫌いじゃない」
「私だって、こういう心にもないことスパッと言えちゃうとこ、嫌いじゃないよ」
嫌いじゃないっていうのと、好きっていうのは違う
「私ね、今の自分とか自分の周りとかも好きなんだよ」
そう、
「こういうの久しぶりだから、失くすのは、惜しいなって」
私は、今までに失くしてきたから
「今いる場所が、一緒にいてくれる人が、好き」
だからこそ、失くしたくない
「だから、私は自分が嫌い」
でも
それでも
「私、ヒキタニ君と付き合えるなら、全部失くしちゃってもいいかな」
そう、思っちゃった
「は？」
「ふふ、あはは」
本当に、びっくりしてる
本気に、してくれたかな
「おま、しつこい冗談は面白くないぞ」
そうやって、はぐらかす
そういう人、なんだよね
「冗談じゃ、ないよ」
きっと、上手くいかない
私じゃ、きっと届かない
「冗談なんかじゃ、ないんだよ」
でも、私は踏み込もう
「え、いや、……」
勘違いは、しない
彼は、きっと混乱してるだけ
脈があっての反応じゃ、ない
「私、掛け算は絶対にやめられない」
これは、どうしようもないこと
「でもね、それ以外はね、普通、なんだよ？」
そう、だから私は、苦しんできた
「普通に男の子が好きで、普通に友達が好きで、普通にエッチなことが、好き」
だから私は、仮面を被った
「だから、――」
高校生でいる間
一か月だけ
一週間だけでもいい
「私を、普通の女の子にしてください」
それは、きっと今しかできない
それは、きっと誰にもできない
それでも、期待、しちゃったんだ
「――っぁ、悪い」
「そう、だよね」
それしか、言ってくれないんだ
目を見て、言ってくれないんだ
「ごめんね、変なこと言って」
やっぱり、私は失くしちゃうんだ
やっぱり、私は……
はい、すいません
男のキモイ妄想です
こういう妄想して、切なくなって、そしてモーレツに好きになる
何かのために普通の恋を諦めちゃってる女の子って、こういう場面で凄く訴えてくるのがイイよね
一応、あたし→私は心情の変化を表してるつもり