楽器を決めた翌日
「はぁ……」
「どうした駿輝、景気悪そうな顔して」
「いやさぁ、バンドやってるって自分言ってたじゃん」
「言ってたな」
「それがさぁ、リードギターやってるやつが事故で手をやっちゃったみたいで羽丘の文化祭に間に合わなそうって」
「そいつはご愁傷さまだ」
「せっかく女子高でやらせてくれるってのに」
「でもお前、ここら辺じゃ埋もれちまうだろ」
「だとしてもさぁ」
「ま、せいぜい頑張りたまえよ」
「なんだその上から目線」
「あはは、面白いであろう」
「いや全く」
「ノレやこの馬鹿」
「なんじゃと!?」
「いやぁ面白いねぇ」
あいつにとっては全く面白くないようだけど
もうすぐ10月だというのにまだ暑い日が続いたりしていた。しかしココ最近は温い日々があり、どうしても眠くなってしまうあまり学校で寝るのはどうかと思ったので少し歩くことにした
「ふあぁ、昨日夜まで練習しすぎたかなぁ」
あの後、夢中で夜中まで練習してしまい、若干の寝不足が否めない
「…おおっと」
少し立ちくらみがした。少し屈むと眠けが一気に襲ってくる
「…ん?」
ちょうどいい感じにスペースがあった
「仕方ない、少し寝よう」
アラームを設定して寝る気はなかったはずなのに、寝てしまった
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「あれ?」
いつも私が秘密の昼寝場所としていたところに なおが寝ていた
「ねぇ起きてよ、そこ私の場所なんだけど」
「すまぬ、だが今は引けぬのだ…」
やけにはっきりしているけど、なおが寝ているのは明らかだった。
「どうしよう?」
久しぶりに昼寝が出来ると思ったのに…でも、ここまで寝ながら話せるなら試したいことがある
「ねぇウッチャン」
「ん…」
「私のこと可愛いってどうして言うの?」
「ん…ふ…かおもある…けど…ぬけ…てるとこ…」
「抜けてるところ?」
私が聞きたいのはウッチャンがいつも言っていたこと
「そう…ひとの…こせいは…いい…ところの…ときも…あるけど…けってん…にでる」
「欠点」
「うん…そこをどうみせるか…だよ…かんぺきってやっぱりつまらないから…」
うん、間違いない、ここまで完璧であることを嫌ったのはウッチャンぐらいしか知らないから。だから最後の仕上げ
「ウッチャン、はいこれ」
取り出したるはまるごとレモン
半分に切ってあげる
「ん…」
鼻に近づけてみると
「…!」
すぐさま半分に切ったレモンにかぶりついた
ものの数秒で中の果汁を吸い尽くした
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「うおっ」
いきなり体当たりされた
「ん?おたえ?」
「なお…」
なにか愛おしそうにしながら顔をうずめている
「ちょおたえ、いきなりどうした」
なんか腹が冷たい
半分に切られたレモンが押し付けられている
そして口にはレモンの味が広がっている
「ど、どういう状況?」
「なおの正体が分かったの」
「お、おうそんなことか、ちなみに何で分かった」
「レモン」
この状況から見てわかるように俺はとにかくレモンがとんでもなく大好物なのだ
どのくらいって?そりゃ200mlのレモン汁をがぶ飲み出来るぐらいだ
「ねぇねぇなお」
「なんだ?」
「久しぶりに練習見てもらいたいなぁって」
「なんだ?まだ1人でやってるのか?」
「ううん、1人じゃないよ。私、今バンドやってるんだ」
「楽しいのか?」
「うん!とっても」
「そっか、なら良かった」
その後、おたえが持ってたレモンは当然のように食べ尽くした
レモンは飲み物
自分?ほんの少しだけいけますよ