曲ぎめは各自が決めていた曲を全員で聞いてどれがいいかを決めるだけだったのでそこまで時間がかかることでは無かった。しかしここからが地獄だった
「ねぇねぇちょっといいかしら〜」
「どうしたんですか」
「今回のライブに出るバンド調べたんだけどね、あることに気づいてしまったのよ…それはね…」
ミナさん以外が固唾を呑む
「私たちのバンド名の語感の悪さよ!」
一同が呆気に取られる
「考えてみてよ、Abenteurerなんて、略称すらできないじゃない!」
「でもそれってみんなが全然考えつかなかった結果、こうしようって」
「問答無用、言語道断よ!」
「ちょっと意味が違うと思うけど…」
「とにかく!覚えやすい、言いやすい、省略してもわかりやすい、な名前をつけるのよ!」
なにその『早い、安い、飯がうまい』的なやつは
不満を言おうにも全くもってその通りなので考えるしかない
33-4
66-8
99-12
30分経過しても全く案が出てこない。なんでや阪神関係ないやろ!
「またこれは辛いものかあるね…」
全員頭から蒸気が出ているように考え込んで死にかけている。このバンド、全くもってネーミングセンスが無いのが一番の弱点かもしれない
「誰も思いつかないの〜?」
「まずはミナが思いつかないとじゃないの?」
「私はもう頭が動かないのよ」
「じゃあ明日に回しましょうか?」
「みゃあ」
そんな時に軍曹が鳴いた
その刹那全員が軍曹に目を向けた
そう言えば軍曹は黒猫…
「Schwarze Katze?」
「いいんじゃないかしら!」
「でも黒猫っていっても名前負けっていうか」
「ならライブの先頭で軍曹出せばいいんじゃない〜?」
この人何言ってるの
だけど軍曹は何も言わず俺をずっと見ているだけだ。でも伝えたいことはわかる
「(別に、俺はどっちでも構わない。お前がやりたい方を選べ)」
そう言ってきているのだ
「じゃあ出てみるか?Schwarze Katze」
そう言うと何も言わずに離れていって毛繕いし始めた
「なら決まりね」
「じゃあバンドリーダーは…」
「もちろん軍曹でしょ〜」
は?
「いやいや、さすがに出ますけどリーダーって」
「だって名前が黒猫なんでしょ?ならやっぱりリーダーは軍曹でしょ」
「分かりました…リーダーは軍曹として、人間代表は?」
「まぁここは年長者の私でしょ〜」
「ナオトとシュミは?」
「ミナがやるならそれでいいと思うよ」
「右に同じ」
「じゃあ決まりねぇ〜じゃあとりあえず明日は練習なしで、よろしく〜」
そういってミナさんは洗面所に行った。あとどのくらいなのか把握してるのかなぁ
そういう自分は軍曹のところにいって抱き上げた
「いいのか?軍曹」
特に返答もないのに言った。でも軍曹はずっとこっちを見ている
「いいんならいいんだ。ありがとう」
撫でてやるとはっきりとは喜んでいなかったが喜んでいることはわかる
「世界が幻である確率は、世界が現実である確率よりも論理的に上である」
「んにゃ」
「割とすごい言葉だと思うんだよな、多少のことなら気にならなくなるしな」
「にゃ」
「まぁもし現実だとしても、結局やらなきゃ成功もしないし失敗もしないな」
わけのわからない言葉ばかり羅列したけどいつもこうやっていたのだから正直あっちにとってもいつも通りらしい
軍曹は俺の両親が殺された後に仲良くしていたご近所さんから譲り受けた。寂しくならないようにってことだったけどその時にはもう他のことを考えないで父の技術に追いつくことだけを考えていた。初めて来た時の感想は「邪魔はするな」とかいう心無いものだった
でも軍曹はその頃思いっきり子猫だったのでずっとついてまわってきた。さすがに放置するのは気が引けた。そうやって自然と軍曹と触れ合っている時間が増えた。終いには練習しない日すら出てきた。まぁミナさんはそうなって欲しかったらしいけど。でも断ち切ってやる日もあった。そういう時は肩とかに乗っけて練習していた。それ断ち切ってないやん。まぁその延長で頭に乗っかるようになったんだけどな。結構今は重い。
で、日本から帰ってきた後に、本格的な練習を始めた。約2年間軍曹と離れていたのだがその間はそのご近所さんに預けていた。その時に驚くほど賢く、利口になっていて今のように人の言葉を理解していた。なぜ自分が軍曹の言葉がわかるかはわからない。おかげで練習には集中できるようにあまり寄ってこなかったり、帰ってきたらくっついてたり。ほんとに賢い。かわいい。
朝になりいつも通り朝ごはんを食べて軍曹と遊んでいるとインターホンがなった。ミハさんが玄関に向かうと
「ナオト、お客さん」
すこしリビングに顔を出して言った
「あ、おはよう直人」
「なんで朝から来てるんだ?沙綾」
「いやまぁ…また来てなかったから届けてあげようかなぁって」
「だから何も頼んでないって…わかった。少し待って」
すぐに準備していた荷物を取って玄関に戻った
「ごめんな、じゃあ行くか」
「なんだか、昔を思い出すな」
「昔?」
「あぁ、小学5年生の夏からのことだな。有咲に出会ったあとに毎日朝登校する時に一緒に行ってたなって」
「へえー有咲がそんなことしてたんだ」
「あの時は有咲毎日目をキラキラさせてたよ」
「あはは、よっぽど直人のことが好きだったんだね」
「さぁどうだかな。でも俺と有咲は別の学校だったから途中で別れてたんだよ、でさなんでか気になって帰った後になって調べたらさ、有咲、ずっと全力で走って間に合うか間に合わないかぐらいの距離だったの」
「まさか有咲がそんなことしてまで会いたがったんだからやっぱり好きだったんじゃない?」
「うーん…分からないな。なんなら有咲に直接聞いてくれ」
「絶対答えないでしょ」
俺もそう思う
学校につく手前にもはや見慣れた弦巻のところの黒服がいた。するとこちらに近づいてきて紗綾にだけ小さな封筒を渡した
「なんですか?これ」
「後で内容を確認してください。あと隣にいらっしゃる小原さんには絶対に見せないように」
「あの、なんで沙綾だけなんですか?」
あちらが沙綾の耳元で話していたのでわからなかった
「小原さんには関係ありませんのでご心配なく」
「いや余計気になります」
「そういえば今日は小原さんは記録を測定するのでは?」
「あ、たしかにそうですね。てかなんで自分のスケジュール知ってるんですか」
さすがに怖くなるわ
「なぁ香澄」
教室について、前の席にいる香澄にこえをかけた
「なに?直人君」
「今日の朝、なんか弦巻のところの人からなんか貰わなかったか?」
「あ!これのこと?」
すると目の前に朝に見た封筒が出てきた。馬鹿め、目にも留まらぬ速さで奪って中身を確認するのだ!
そう思って手を伸ばした瞬間、その封筒が誰かに取ってかれた。
おたえだった
「香澄、だめだよ。この封筒を見せちゃ。だからなお、はいこれ、私の」
そう言っておたえがその封筒を渡してきた
「おたえ!だから渡しちゃダメなんだよ!?」
「「香澄がツッコミをした!?」」
「もー!二人とも!」
そういって馬鹿やってるうちに見る機会を失った。自分がバカでした
「皆、集まったわね!」
そうこころが注目を集めるように言った。周りにはハロハピと、ポピパとイヴとなぜか紗夜先輩が混じっていた
「で、これはどういうことですか?」
紗夜先輩が聞いた
「そのまんまよ、直人のオフショットを皆で見てみましょうってことよ」
「それは一種の盗撮ではないのですか?」
「盗撮?なんのことかしら?」
それはとぼけているのかどっちなのか…
結局紗夜先輩も一緒に弦巻邸にやってきた。こころの部屋に入ると一人一人に用意されたタブレットがあった。これ位は朝飯前だろう。早速起動させてみると
「うおっ…なんだこれ…」
有咲が驚くというか引くのも当たり前のようなものだった。なぜならそこには大量の直人の写真があったのだから
中はそれこそ色々な場面での直人が写っていた。車椅子を紗夜先輩に押してもらっている時の写真、クラスメイトと笑っている時、それによくテレビに出てる議員の人と話している写真…
「この人ってよく見るけどなんで直人としゃべってるのかな」
周りに聞いてみた
「あぁ、確か小原…小原!?」
有咲が自分で二度言った。
「これって皆知ってるのかな?」
「雰囲気が違いすぎて誰も気づいてないだろ」
それはそうかもしれない
そして特に多かったのは飼い猫、軍曹だったと思う。と一緒にいる写真だ。どれだけ直人が溺愛してるかがわかる。そして猫もそれに応えている。この間に入るのはすごい難しそう…ほんとどれだけ好きなんだろう
「あ!りみりんが抱き合ってる写真!」
「えええ!」
りみがすぐに顔を赤くして確認している
「どれ!」
「どこですか!?」
おたえとイヴが速攻で探し始めた
「落ち着けよお前ら…」
「あ!あったよ!」
はぐみが見つけるとすぐに全員に転送した。おそらく何度も使っているんだろう。転送されたものを見てみる。それはあの日に見たものを横から撮ったものだった
「あれ?でもなんかここら辺がぼやけてるような…」
美咲がなにか見つけたようで色々と操作している。
「うわぁ!な、なにこれ…」
美咲が思わず叫んだ
「どうしたの?美咲?」
「いや、これ見間違いじゃないよね…とりあえず転送する」
その画像には赤いマルが付けられていた。その中が少しぼやけていた
「で、次に送る2枚目だから、びっくりしちゃうかもしれないけど…」
次のものには完全な状態として写っていた
「これって…幽霊?」
おたえがそう聞いた
「多分…そうだと思う。で、この後ずっと写ってるんだよ」
おそらく連写したんだろう。一連の流れがそのまま写っていた。そして、その全てにその幽霊が写っていた
「ねぇねぇこれよく見ると、直人君まんまじゃない?服とか夏服だよ!」
たしかに透けて入るが顔を見ても直人そのものだった
「これって結局なんなの?」
最終的にこの場では答えは出なかった
「とにかく、もうこれ以上小原さんの写真を勝手に撮らないことです」
なぜか紗夜先輩は黒服の人たちに説教?ではないけど言っている。そのままそれぞれの家に送ってもらった。なんかおたえと有咲とイヴは写真をもらってたけど…
家に着くと特に何も考えずベッドに寝転がった。こんなことなら今日は行かないでずっと測定している直人を見ていれば良かった…
ほんっと意味無い回を続けて申し訳ない