※シリアス→シリアル?→かなり攻めたハニーストロベリー→不穏の順でお送りします。
「・・・・・」
体育祭の開催が目前に迫った或る日の放課後の事。
学校行事で浮足立つ生徒達が集まる食堂に陽の光の様な美しいブロンドヘアーの女生徒がポツンと授業終わりの御褒美であるケーキをつついていた。
其の表情は何とも言えぬものであったが、端麗な彼女の容姿と相まって傍から見れば一枚の絵画の様であり、雰囲気も相まって何処か声を掛けづらい。
「ちょっとどうしたのよ、シャルロット? そんな辛気臭い顔して?」
「・・・鈴」
しかしそんな彼女、シャルロット・デュノアへ声を掛ける者が一人。
振り返ってみれば、其処にはクラスメイトにして同じ専用機所有者である凰 鈴音が居るではないか。
彼女は疑問符を浮かばせつつもシャルロットの前へと座を構える。
「なんか、最近のあんたって表情がいっつも暗いけど・・・何かあったの? やっぱり、この間の事が原因?」
「ッ・・・別に、そんなんじゃ・・・ないよ」
そう言って取り繕うシャルロットだが、其の表情は更に更に渋くなった。
其れを察してか。鈴はあからさまに話題をすり替える。
「・・・そう。それにしてもなんか変な感じよね」
「なにが?」
「だってそうじゃない。ついこの間、学園のシステムが乗っ取られて、何だかわからない連中が入り込んできたなんて思えないじゃないの」
「ちょ、ちょっと鈴! その事は機密の筈だったよね・・・!」
「別にいいでしょ。他の皆の耳に入ったって何の事かわかりゃあしないわよ」
余りにもサバサバした彼女の理由に「え、え~・・・ッ」とシャルロットは驚いた表情を晒したが、其の後すぐにクスクスと笑みを溢した。
「やっと、笑ったわね」
「え?」
「さっきみたいな辛気臭い顔よりも、あんたは笑った顔の方が似合ってるわよ」
「鈴・・・」
「ありがとう」と礼を述べる先程よりも表情が柔らかくなったシャルロットに安心したのか。鈴は「別に気にしないで」と笑みを返す。
・・・そんな時だ。彼女の瞳に”あの男”が映ったのは。
「・・・あ」
「うん?」
鈴の声にシャルロットが振り返ると二人の視線の先に居たのは、数人の女生徒と喋り歩きながら食堂の前を横切る白髪の男子生徒・・・『学園の狂気』等と云った異名を持つ二人目の男性IS適正者、清瀬 春樹であった。
「あいつも・・・春樹も随分と他の皆に慕われるようになったわよね。最初の頃は皆、あいつを怖がってたのに・・・今じゃ、ワルキューレ部隊だっけ? それを率いてるんだから。ま、今でもあいつを怖がってる連中は多いけど」
「そう・・・だね・・・・・ッ」
「・・・シャルロット?」
ふとシャルロットの顔を伺う鈴。
すると彼女の表情は先程よりもずっとずっとずーっと暗くなっており、玉の様な瞳は陰りに陰って光を失っているではないか。
「シャルロット・・・やっぱり、あんたが調子悪かったのって―――――」
「鈴・・・ボク、春樹にフラれちゃったんだ」
「・・・え?」と空気が凍るのが鈴には理解できた。
「「お前の事は好きだけど・・・”愛してる”って気持ちじゃない」って・・・言われちゃった。ボクじゃなくて、ラウラに惚れてるって言われちゃったんだ」
ハイライトの消えた目から幾つかの雫が零れ、下にある生クリームの上へと落ちる。
「ボクは・・・ボクは選ばれなかったんだ。愛して欲しい人に拒まれたんだ。頭では、わかってるんだけどね。どうしても・・・ッ、どうしても受けいられないんだ。なんで、かな? 諦めなきゃダメなのに・・・・・まだ・・・まだ、ボクは彼の事が・・・春樹の事が好きなんだ、忘れられないんだ・・・!」
「シャル、ロット・・・」
袖口を濡らす彼女に鈴はどう声を掛けたらいいのか解らず、唯只息を飲む事しか出来なかった。
「鈴も・・・どうする?」
「な、なにが?」
「鈴も・・・一夏から選ばれなかったら、どうする? 一夏が鈴じゃなくて、箒を・・・もしかしたら他の別の人を選んだら・・・・・君ならどうする?」
「ッ、な・・・なによ、ソレ・・・・・!」
其の発言に眉をひそめる鈴。此れにシャルロットは短く「・・・ごめんッ」と言い残して席を立つ。
後に残ったのは、少し苦い空気だけであった。
◆◆◆
学園内で”此の男”を織斑 一夏の”オマケ”等とは誰も言わなくなった。
其れ処か、今や敬服するものからは『守護者』と、畏怖するものからは『怪物』と呼ばれる様になった世界で二番目の男性IS適正者、清瀬 春樹は今現在・・・悩んでいた。
「阿~~~ッ・・・やっぱし十二分の壁は高ぇなぁ」
テラス席へ腰掛けて手元の資料やストップウォッチと睨めっこしつつ頭を抱える春樹。
其の彼の前では同じく渋い顔をしている私設学園防衛部隊ワルキューレの主要メンバーが居た。
「最低でも八分・・・いや、ギリ十分以内で納めたいんじゃけどなぁ」
「だから、それは無理だって言ってんの! 最短でもやっぱり十二分が限界!」
「じゃけど、其れ以上の時間かけっとヤッコさん逃げてしまうでよ。つーか最悪、人質とられてしまう可能性もあらぁな」
「やはり・・・”制圧場所”を別の場所にするほかありませんね」
「問題はそれをどこにするか・・・それが問題ですわね」
「で、何処にするんの?」と恋人と御揃いの黒く厳つい右眼帯端を小指で掻きながら問い掛ける春樹に対してセシリア、四十院、ハミルトンは声を合わせて「うーん・・・?」と首を捻った。
話の内容としては、学園に潜伏する不届き者を如何にしてひっ捕らえるか、何処でひっ捕らえるかの作戦会議である。
「てゆーか・・・清瀬が捕まえた方が早いじゃないの?」
「おいおいおい、ハミルトン・・・俺に任せてみろい、どうなるか解っとるんじゃろうな?」
春樹の返答に三人は「あー・・・ッ」と顔を見合わせる。
どう考えたって此の蟒蛇は必要以上に其処等一辺で暴れ回るだろう。そうなると後片付けが酷く面倒だ。
「其れに、こりゃあワルキューレ部隊の力を示すには絶好の機会じゃ。大丈夫じゃっちゃ、ホントにヤボーなったら俺が助太刀するわな」
「阿破破ノ破!」と呑気に笑う春樹にハミルトンは呆れ、四十院とセシリアは彼につられて笑う。・・・だが次の瞬間、そんな三人の表情が一瞬にして強張った。
其のギョッとした顔にどうしたどうしたと眉をひそめた春樹は三人の視線を追って行って、グルんと見上げる様に振り返れば・・・・・
「ありゃ、織斑先生ぇ?」
「・・・・・」
網膜に映るは、酷く眉間に皺寄せたしかめっ面を晒す世界最強。
彼女の表情にセシリア達三人はビビってしまっているが、其の鋭い視線を直に差されている肝心の春樹はケロッとしている。
「・・・三人とも、悪いが席を外してはもらえんか?」
明らかに纏っているオーラが並々ならぬ殺気が立っている事に気付いた三人は「はッ、はい!」と声を上げると同時に席を立つ。
立ち退く三人へ彼は「ほいじゃあ、俺の方で場所は考えとくわぁ」と云って手を振ると忌々しそうに視線を直す。
「・・・・・何ぞ、俺に何か用ですかいねぇ? 授業中でもナイフみてぇな視線を突き付けられて堪ったもんじゃなかったでよ」
天下に名を轟かせる戦乙女に相変わらずの軽口をたたく春樹だが、千冬の方はニコリともしない。
そんな明らかにどう見ても不機嫌な彼女に春樹は心の中で「畜生、面倒臭いのぉ」と舌を打つ。
「・・・先生、俺も今度の体育祭の警備の事で忙しいんですが・・・・・何も用がねぇなら―――――」
「清瀬・・・貴様、ボーデヴィッヒと正式に恋仲になったようだな?」
「・・・阿い?」と春樹は思わず一瞬呆気にとられるが、即座に態度を取り成す。
「えぇ。なりました、なりましたよ。ラウラちゃんとやっとこさ手に手を取り合う深い仲に。いやー、その節はどうも。周りの人達にゃあどうもヤキモキさせちゃったみたいで」
「・・・・・」
彼は若干照れ臭そうに言葉を述べるが、相対する千冬は何も言わず鋭い視線だけを突き刺すばかり。
其れが春樹には心底気に喰わなかった。
「何ですか・・・織斑先生は、俺とラウラちゃんの交際に反対なんですか?」
「あぁ」
彼女の短い其の返答に春樹は「ギリッ」と奥歯を噛み締め、「・・・何でですか?」と作り笑いを浮かべて見上げる。
「隠しているつもりだろうが、貴様は必要以上に人を甚振る残忍な性格をしている」
千冬は知っている。目の前に薄ら笑みを浮かべて佇む此の男の残酷な一面を。
彼は敵とは云えども満身創痍の負傷兵の耳を切り、鼻を削ぎ、生皮を剥ぎ、骨を折り、殺さぬ程度に其の命をもてあそんだ事を。
そんな悪影響の塊でしかない人間がドイツ軍教官時代からの教え子であるラウラの恋人である事が彼女には心配でならなかった。
「清瀬・・・貴様はボーデヴィッヒには相応しくない」
「・・・・・」
千冬の言葉に春樹は視線を落として俯く。
けれども此の男が高々こんな事で落ち込むタマであろうか。・・・・・んな訳がない。
「・・・比比ッ・・・阿比比ッ、阿比破破破!!」
春樹は落ち込むどころか、あのいつもの奇天烈な笑い声を響かせたのである。
「・・・何が可笑しい?」
「破破破ッ、だって、だってそうじゃなですか! ラウラちゃんに俺が相応しくない? なら・・・ならどうして、俺に彼女を”あてがった”んですか?」
嘲笑う様に口角を歪ませた彼から発せられた言葉に千冬は益々眉をひそませた。
「ラウラちゃんが転校して来た時、貴女は彼女を疎ましがっていたじゃないですか。だから―――――」
「違う。私は―――――」
「いや! いやいやいやッ、違わない! あんたはラウラちゃんが疎ましかったんじゃッ! じゃけん、あんたはいつでもトカゲの尻尾切りが出来る俺に彼女を押し付けたんじゃ!! 其れを・・・今更、何じゃ? お前にゃあ相応しゅうない? 知らんわなッ!!」
反論の隙を与えず、春樹は捲し立てる。
「あの娘ぁ・・・ラウラちゃんは、もう俺のもんじゃ! 俺だけのもんじゃ!! 誰にも渡してなるもんかッ!!」
「貴様ッ・・・人を物の様に云うのは―――――」
「何を言うか!! 最初に人を物の様に扱ったのはオドレの方じゃろうがな!!」
有無を言わさずに捲し立てる。
「返せ言うんじゃったら、オノレは今まで何をしょーたんじゃ?! あの子が寂しさに枕を濡らす夜も、空虚な悲しさに晒されよーる時も、何をしとった? 何をしょーた? 安全圏から見下ろしょーるだけで、事が終わったらさも当たり前の様に掌を返すんじゃねぇーでよ!!」
今まで溜まっていた不満をぶちまける様に。
けれども最初は目を見開いて怒りの表情を含んでいたが、捲し立てれば捲し立てる程に彼の口角は吊り上がって行く。
「すーはぁー・・・まぁ、何が言いたいのかって言うと・・・・・貴女にもう彼女の人生を歪める権利はないって事、DEATHッ!・・・最早、其の権利は俺にある。俺だけがラウラちゃんの人生を滅茶苦茶にしてもエエんじゃッ!!」
「・・・・・言いたい事はそれだけかッ?」
「まさか! まだまだ言いたい事は、よーけーあります。ですが・・・今は此処までにしときます。突然に大声上げて、喉が痛うなってしもうたけんね。じゃけぇ、此れで終わりにしときます。」
そう言うや否や、スクッと立ち上がった春樹は微笑む様に千冬の瞳の奥を覗いた。
「貴女の御蔭で俺はラウラちゃんを手に入れる事が出来た。貴女が早々に俺を見放し、面倒事を押し付けてくれた御蔭で俺ぁ今の地位を手に入れる事が出来た。どうも、”ありがとう”ございました」
「ッ、貴様・・・!!」
ズイッと近づいて彼は笑う。
『バットマン』の『ジョーカー』の様に、
『からくりサーカス』の『フェイスレス』の様に、
『ヘルシング』の『少佐』の様に、
笑う、嗤う、哂う、わらう、ワラウ。
「お前のせいだ、ざまぁみろ」と言わんばかりに嘲笑った後、春樹はあの奇天烈な笑い声を挙げ乍ら逃げる様に其の場を跡にした。
さぁ、此れから反論に転じようとした千冬にとっては口惜しい限りであったろう。
◆◆◆
―――――「(言ってやった、言ってやったぜッ、ド畜生め! なぁにが「貴様はラウラには相応しくない」じゃ、ボケカスが!!)」
天下に名高いブリュンヒルデへ一方的に文句を言ってやった春樹の精神状態は高ぶっていた。
其れも其の筈。今まで溜まりに貯まっていた彼女への不満を一部でも吐露する事が出来たのだから。
春樹は前々から高々ISを使った競技の世界チャンピオン”風情”が軍事作戦や専門でもない学園防衛のプロトコルに関わっている事が気に入らなかった。加えてプライベートの事にも口を出して来たのだから癪に触って仕方がない。
だからこそ、今回の一件はほんの少しの意趣返しが出来たと彼はほんの少しの満足感を得ていた。得ていたのだが・・・・・
問題なのは、彼の今の異常に昂った精神状態だ。
「ラウラちゃ・・・ん・・・ッ!」
「イひッぃぁああ♥♥♥」
・・・現在、春樹はラウラを壁へ半ば押さえ付ける様にして”致していた”。
「気持ちええか? えぇッ? 気持ちエエか、ラウラちゃん?」
「き、きも・・・きもひぃい♥ きもひっぃいから・・・ンひぃい♥♥」
―――――ブリュンヒルデとの一件の後、自室へ帰宅した蟒蛇は、玄関まで出迎えに来てくれた白き黒兎を心の昂りのままに押し倒す。
勿論、此れに黒兎は驚いたが、彼の長い舌が口内を蹂躙した後に抵抗する力など残っている訳がなかった。
獣欲剥き出しで彼女の矮躯へ背後から覆い被さった蟒蛇は、乱暴に黒兎から衣服を剥ぎ取ると其の絹ごし豆腐の様に白き肌へ齧り付く。
そして、控えめなれども確かに膨らんだ胸を含んだ上から下までを味わった後―――――
「いく・・・でよ!」
「ッ、ひぐぅうッ♥♥♥」
・・・サカッた獣の様に腰を振る蟒蛇の荒い息遣いと黒兎の喘ぎ声が部屋一杯に木魂する。
「可愛え・・・かわええなぁ、ラウラちゃん。どこが・・・どこが一番気持ちエエ?」
「おッ・・・おくが、おなか、のおくがゴリュゴリュって♥♥ ごりゅごりゅって・・・んひぃいいいいい♥♥♥」
「ありゃ? ラウラちゃ、ん・・・もしかして、イッちゃった? 辛いなら、もう・・・やめようか?」
「ッ、い・・・イってない♥ イッひぇないもん♥♥ だひゃら・・・だきゃら、もっと・・・もっとぉおお♥♥♥」
「・・・そうか。なら!」と春樹は”繋がった”ままラウラをベッドへ運ぶと今度は前から力強く圧し掛かる。
「これならもっと”奥”まで・・・挿入れられるけん、な!」
「ッ、お”ぉお”お”お”お”♥♥♥」
更に更に奥へ奥へとラウラへ春樹は再び何度も何度も叩き込む様に掘削機の如く撃ち込む。
其のあまりの衝撃と堪え難い淫猥な快楽に幾ら軍事用遺伝子強化素体と云えども・・・いや、痛みに強い彼女だからこそ意識を保つのに精一杯であった。
カプリカプリとラウラは彼の皮膚を噛み、ガリガリと爪が剥げる勢いで春樹の背中を掻き毟る。
・・・因みにだが、二人が初めての肉体的逢瀬を果たした後日。
あの若干頭の異常さを疑われている博士から「紳士の嗜みだよ?」と”ゴム”を渡されたのだが、今の此の時点では既に”完売”状態であった。
とどのつまり・・・・・
「ッ・・・や、やっべ・・・!」
「ひゃ・・・ひゃるひぃッ?」
「そ、そろそろ俺もイクわ」
流石に”中へ出す”のは不味かろうと春樹は腰を引かせる。
・・・・・・・・だが!
「だ・・・ダメぇッ!!」
「ッ、ラウラちゃん!!?」
其の退こうとする腰へ彼女は両足を絡ませる。細くなれども鍛え上げられた脚力はガッチリと彼の腰を挟み込んで逃がさない。
此れには自分から襲っておきながらも春樹の身体へ焦燥感が奔った。
「ちょ、ちょっと! ラウラちゃん、流石にヤバいって!!」
「やだッ・・・やだやだやだやだ、ヤダぁ! はるきの、はるきのほしぃいのぉお♥♥」
懇願する様にラウラは叫び、背中へ回した腕に更に力を籠める。
「ほしいッ、ほしいの・・・はるきのあかひゃん♥ はるひとのあかちゃんがほしい♥♥」
「・・・ラウラちゃん」
「わ、わたし・・・わたひを・・・・・ママに・・・おまえのこどもの、ままにしてくれぇえッ♥♥♥」
さて、此れを聞いて滾らぬ男ではない。
「・・・覚悟しろよ」と云わんばかりに春樹は再び長い舌を彼女の口内へ差し込んで其のピンク色の歯茎をジュルジュルリッ侵すと、逃げ腰から一転の本腰を入れた。
「なら・・・なら、孕んじまえ! 俺の種で子供を身籠っちまえ!! そんでもって俺の子を産んでくりんさいやッ!!」
「は・・・ハラむ♥ はるきの、はるきのこどもいっぱい・・・いっぱいうむから、ちょうだい♥♥ ちょうだぃいい♥♥♥」
「あッ・・・い、イ―――――」
「ッ、くぅうウウうううッ♥♥♥」
春樹は自分の遺伝子をドプリドプリッと想い人へ注ぎ込む。
「ひ・・・ひあわへぇえ・・・・・ッ♥♥♥」
想い人から注ぎ込まれた感覚にラウラは恍惚の表情を晒した後、琥珀色と灼熱の眼から温かい雫を落とした。
◆
「・・・うわぁ~~~、やっちもうた~~~・・・・・」
”激戦”の後、春樹は洗面台で項垂れていた。
玄関からベッドへの一戦から其れから事。二人は何度も何度も体力の続く限りの手合わせを重ねた。
気付けば、時計の針は深夜三時を回る頃。
よくもまあ飯も食わずにやれたものだと自分でも呆れるが、相手は最後の一戦で意識と共に果ててしまい、今はスースー気持ち良さそうな寝顔を浮かべている。
〈「十代のカップルじゃあるまいし」などと云ったセリフがあるが・・・まさしく其の通りだな、ハルキ?〉
聞きなれた声に頭を上げれば、洗面台の鏡に映るのは自分の顔・・・ではなく、スタイリッシュな寝間着に身を包んだヨーロッパ系の白人であった。
〈フフフ・・・若さを振り乱しているな、ハルキ。腰は大丈夫か?〉
「・・・御心配頂き感謝するよ、ハンニバル。大丈夫、ちょっとばっか罪悪感に打ちひしがれてるだけじゃ」
春樹の心の宮殿の住人であるハンニバル・レクターの微笑に対し、彼は微笑み返す。
ほんの少し前まではハンニバルの顔を見ただけで口をへの字に歪めていたが、度重なる騒動によって若干の改善があったのか?
「あ・・・そう云やぁ、ハンニバル。お前、ワールドパージ事件の時に俺の肝臓を半分盗ったろ? 返せや」
〈・・・・・〉
「急に真顔になって黙んな! 返せや!! つーか、もしかしてもう喰っちまったのか?」
・・・どうやらまだまだ二人の間には溝があるようだ。
「あと、ハンニバル・・・お前、あの精神世界でなんかやったろ?」
〈・・・さて、どうだろう?〉
「この野郎・・・・・まぁ、エエわ。ところでハンニバル、相談があるんじゃけどさ。次の作戦・・・場所は何処がエエと思う?」
「ハルキ・・・私は精神科医であって、軍略家ではないのだが?」
「参考にじゃよ。獲物を捕まえるんは得意じゃろう?」
ソシオパスからの相談事にサイコパスは嬉しそうに微笑むのであった。
全くもって体育祭は始まる前から波乱の予感しかしない。
・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆