IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第45話

 

 

 

「・・・ッケ、まったく一体誰じゃあ言うんじゃ?」

 

春樹は少し不機嫌気味に客が待っているという本館へと向かう。

服装は未だ海に入っていなかった為、そのまんまで良いだろうと上は赤いアロハシャツと下はキャラクター海パンのまま。それにサングラスと本音から被らされた麦わら帽子をしているので、完全なリゾート観光客の風貌だ。

・・・しかし。

 

「阿ッ? ありゃあ・・・・・阿”ッ!?」

 

自分を待っているという”客”の正体を知った瞬間。春樹は、どんな客であろうと礼節を弁えるべきだったと後悔する事となる。

 

「おッ。やぁ、暫くだったね清瀬君」

 

「た・・・『高良』さんッ?!」

 

春樹へ会いに来たという客人の上質なスーツを身に纏った青年の名は『高良 健』。

春樹がISを動かしてしまった当初から懇意にしている内閣IS統合本部副本部長『長谷川 博文』の秘書官だ。

 

「す・・・すいません、高良さん。知らなかったとは言え、こんな格好で出迎えてしもうてッ」

 

「いや、別に構わないよ。先生方から聞いたけど、今は臨海学校なんだろう? 楽しんでいるようで安心したよ」

 

「は、はぁ・・・」

 

年相応の春樹の姿に安心したような表情を見せる高良に対し、学校行事のイベントにはしゃぐ姿を見られ、バツが悪そうに春樹は頭を掻いた。

 

「そ、それで・・・俺に何の御用で?」

 

「あぁ。遂に出来たんだよ、専用機が!」

 

「え・・・専用機? 誰の?」

 

高良の言葉に「・・・何のこっちゃ?」と言わんばかりの疑問符を浮かべる春樹。

そんな彼に高良も拍子抜けしたかのように声のトーンが下がる。

 

「誰のって・・・清瀬君の専用機だよ」

 

「俺の?・・・なんで?」

 

「「なんで?」って!? 君が病室にいた時に話した専用機の事だよッ! 一応、君の希望通りの機体を作ったと製作チームが言っていたんだけど」

 

「・・・・・ッ?」

 

高良からの話にイマイチぴんと来ない春樹は思い出す。VTS事件後、自分の病室に長谷川と高良が来た日の事を。

 

「・・・あぁッ、あれですか! 冗談じゃなかったんですか、アレッ?!」

 

「えぇッ!? 冗談だと思っていたのかいッ?」

 

「えぇ、まぁ。俺を元気づける為の冗句かなんかじゃと・・・阿破破ッ・・・」

 

「ハハハハハ! 清瀬君、君って人は!」

 

まさか、あんな大真面目で話していた専用機計画を当の本人は冗談だと思っていた事に高良は思わず笑いを溢してしまう。

そんな彼の背後へ春樹が初めて見る顔が近づいて来た。

 

「なーに笑ってるんだ、高良?」

 

「ハハハッ、すいません壬生先輩。あぁ、清瀬君。此方、君の専用機製作チームの現場責任者である『壬生 柾木』さんだ。壬生先輩、此方が―――」

 

「言うな、言うな、皆まで言うな。初めまして、壬生 柾木だ。よろしくな二人目の・・・っと、これは失礼だな。我らがホープ、清瀬 春樹君」

 

「ホープだなんてとんでもねぇッ。清瀬 春樹です、よろしくお願いします」

 

「あぁ、よろしく。ところで、その恰好は・・・」

 

「あッ・・・すいません・・・」

 

再び自分の恰好を指摘された事に申し訳なさそうな表情を見せる春樹。

そんな二人のやり取りに、高良は再度つい笑い声を溢してしまう。

 

春樹はそんなスーツ二人組に傍から見れば連行される形で旅館の表に停められているコンテナ車へ誘導され、自らの専用機が待っているであろうコンテナの中へと足を踏み入れた。

 

「おおッ・・・!?」

 

中はコンテナとは思えない程の整備と設備が整っており、小型の研究施設と言っても過言ではない造りとなっている。

そして、そのコンテナ中央部分にまだ見ぬ主を待っている機体が佇んでいるのであった。

 

「これが・・・」

 

自分の身の丈よりも若干背の高い体躯と、白と赤の装飾が施された甲冑のような機体に春樹は息を飲まずにはいられなかった。

 

「可能な限り、君の希望通りに製作した。コンセプトとしては『パワースーツ型ナイトメアフレーム』。君の身元不公表の元、装甲は頭部まで覆うフルスキン。推進機関は地上用のランドスピナーと飛行用のフロートユニット。フロートシステムには、チーム内の議論の末に小回りの利く飛翔滑走翼を採用していて―――「壬生先輩・・・多分ですが、聞いてないと思いますよ」―――ッえ?」

 

高良の声に壬生が其方を見ると、其処には幼稚な感嘆詞を漏らしながら少年のように目を輝かせる春樹の姿があった。

そんな姿を見せられてか、壬生は小さな溜息と共に口角を吊り上げる。

 

「清瀬少年、乗って見るかい?」

 

「ええんですか!?」

 

「いいも何も、その機体は清瀬君用に開発されたものだよ。壬生先輩、早速フォーマットのセッティングに移りましょう」

 

壬生の「勿論」の言葉と共に春樹は上半身のアロハシャツを脱ぐ。

本当はISスーツに着替えなければならないのだが、興奮冷めやらぬ彼の為にと水着一丁でのセッティングへ移行した。

 

「ありゃあ? この機体って・・・」

 

春樹の生体認識を設定し、いざ身体に専用機を纏ったその時。何故かは理解できないが、心地の良い久方ぶりの感触が肌へと伝わって来た。

 

「おッ、やはり気づいたか少年。その通り、その専用機のISコアは君がVTS事件時に纏っていたラファール・リヴァイヴのものだ」

 

「えッ・・・でも、あの機体は・・・」

 

春樹がVTS事件時に搭乗していたラファール・リヴァイヴは事件後にデュノア社へ返還されたのだが、日本とフランスの共同開発においての実験機体ISコアへ採用されたのである。

 

「それにそのISコア・・・向こうで何回も初期設定にしたのに、清瀬君以外の搭乗者を拒否し続けたって言う話があるんだ」

 

「阿? どういう事っすか?」

 

「さぁね。詳しい話は解らないけれど、そういう噂話を小耳に挟んだんだ」

 

「・・・・・」

 

高良の話に春樹は『ISコアには意思がある』と言う根も葉もない噂話を思い出すと、表情を緩めた。

 

「(そうか・・・君は・・・)あの、壬生さん?」

 

「ん、どうした少年?」

 

「この子の・・・この機体の名前はなんて言うんですか?」

 

「機体名か・・・あー、そう言えば、正式なのはないな」

 

「長谷川先生や僕らの方でも形式番号の『NH-00型』とかで呼んでましたね」

 

「こっちは皆で好き勝手呼んでたぞ。カラーリングが似ているから、『ニルヴァーシュ』や『タウバーン』。少年が希望コンセプトで書いた『コードギアス』関連から、『紅蓮参式』だとか『アレキサンダ・リヴァイヴ』って呼んでたやつもいたなぁ」

 

「ほへ~・・・」

 

この形式番号『NH-00型』は、春樹の希望通りに製作チームが造り上げた機体である。

しかし、当の搭乗者本人がこの開発製作計画を冗談だと思っていたので、希望欄にこれでもかと具体性のないものを書いた。

その為に最初は計画に難航が生じたのだが、個性的な技術者連中の変態性が発揮されて生まれたのが当機体である。

 

「・・・・・『琥珀』って言うのは、どうですか?」

 

「琥珀? なんでそんな名前を?」

 

「あぁ、いや。別に深い意味はないんです。・・・ただ理由を上げるなら、このISコアでこんな目になっちまったからでしょうかね」

 

そう言うと春樹は自らの眼を指差す。鳶色の瞳から、”琥珀”色へ変わってしまった自らの瞳を。

 

「琥珀か・・・そう言えば、清瀬君の好きなものも琥珀色してるからかな?」

 

「ん~・・・それもあるかもですね」

 

「何の話だ?」

 

「いんや、こっちの話ですだよ。ねぇ、高良さん?」

 

「あぁ。そうだとも、清瀬君」

 

「・・・なんか、感じ悪いぞ二人とも!」

 

「阿破破破破破ッ」と、そのままお三方はケラケラ笑いながら設定作業を続ける。

途中、正式な機体名が決まった記念として頭部パーツの額部分へ名前と同じ琥珀色のクリスタルがはめ込まれた。

 

最初は不機嫌だった春樹の表情も、こんな豪勢なプレゼントに陽が夕焼けに沈むまでの間、終始ニヤケ顔が治まらなかったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

≪こ・・・はく・・・こはく、コハク・・・琥珀・・・・・わタシの、名まえ♪≫

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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