IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第49話

 

 

 

臨海学校の二日目。

あわてんぼうの山田先生は、いつになくドモリ気味で織斑先生に耳打ち。

すると、どうじゃろうか。「全員、注目ッ!」の声と共に「面倒臭いけど授業だから仕方ねぇな」と高を括っとったテスト稼働が”中止”になりよった。

しかも・・・なんでか知らんが、先生の連絡が来るまで生徒は各自室内での待機を通達された。

 

「やった!」と、俺ぁ内心でニカッとはにかむ。

俺は他の連中と違って、同室のモンがいない一人部屋じゃ。

その”先生方からの連絡”とやらが来るまで、内緒で持って来たスパロボと新しく買った地元の酒で一杯やりながら優雅なひと時過ごす・・・・・筈じゃった。

 

「では、現状を説明する」

 

なんでか知らんが、俺を含めた専用機持ち連中は旅館の宴会用の大座敷へ集合。

そんでもって、頭に疑問符を浮かべた俺らの前へいつも通り偉そうにふんぞり返った織斑先生がご丁寧にいらん状況説明をしてくれた。

 

「二時間前、ハワイ沖で試験稼働にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用IS『銀の福音』が制御下を離れて暴走。監視空域より離脱したとの連絡があった」

 

なんでも米国のISが暴走して、米軍監視区域を離脱。その後にどーいう訳か知らんが、この旅館からだいたい二㎞離れた先の空域を通過する事が予測されたそうじゃ。

 

ここまで聞いた話から捻りだした俺の感想は、「ふ~ん、あっそう・・・で?」と言った淡白なもんじゃった。

「別に、アメリカのISが暴走したけんなんなんな?」と言ってやりたかったが・・・そういう雰囲気じゃなかったけん、俺ぁ此処は空気を読むことにした。

・・・つーか”軍用IS”って。アラスカ条約でISの軍事利用は禁止されとったんと違うんか? 流石は”自由の国”じゃのぉッ。

 

「福音の目標地点までの到達時間は現時刻より、五十分後。学園上層部からの通達により、我々がこの事態に対処こととなった。教員は学園の訓練機を使用し、空域及び海域の封鎖を行う。よって、本作戦の要は専用機持ちのお前達に担当してもらう」

 

「・・・・・ッは!?」

 

えッ・・・ちょっと待って、ホントに待ってッ。織斑先生、なに言いよーるんですかッ?

 

「なんだ、清瀬。意見があるのなら、挙手するように」

 

「いやいやいやッ、なにをさも当たり前のように俺らぁが軍用ISの相手をする話になっとるんですか?!」

 

普通、此処はアレじゃろう。先生らぁ教員部隊がその銀の福音やらを相手にして、俺らぁ生徒が海域封鎖をするんと違うんか?

 

「それに、なして俺らがアメリカの尻拭いをせにゃあおえんのんですかッ? こう言うんは、それこそアメリカのIS部隊か自衛隊がやりゃあええでしょう! 俺らは関係な―――「清瀬、お前は話を聞いていたのか?」―――阿?」

 

話を遮ったんは、ギロリッときっつい目を俺へ向けた篠ノ之さんじゃ。

 

「あぁッ、話ならバッチし聞いとったよ。じゃけど、なんで俺らが戦わにゃあおえんのじゃ?」

 

「それは我々が期待されているからだろう。それに私達は専用機持ちだ。機体のスペック上、私達のISが対処するのが得策だ」

 

「それは解っとるよ。その暴走機体言うんは第三世代なんじゃろう? じゃったら打鉄やラファールのような第二世代型量産機よりも、同じ第三世代型のISで叩いた方がええ事は俺でも解る。じゃけどなぁ篠ノ之さん・・・これは試合でもなけりゃあ、訓練でもない。命をやり取りするかもしれん”実戦”なんじゃぞッ!」

 

専用機体を持ってる言うても、所詮は学生じゃ。

学徒出陣でもあるめぇし、なんで俺らが命を賭けて戦わにゃあならん?!!

 

「なんだ清瀬、怯えているのか? フフッ・・・意外にも小心者なんだな、お前は」

 

「・・・きょーてーに決まっとろうがな。殺されるかもしれんのんじゃぞッ!」

 

「なら、此処からすぐに出ていけ! 覚悟のない軟弱者に用はな―――「やめんか、篠ノ之ッ!」―――しかし、織斑先生!」

 

「今は内輪揉めをやっている場合ではないッ」

 

織斑先生の一喝にシュンとする篠ノ之さん。

じゃが、君の気持はよく解るで。貰ったばっかの新しい”玩具”で遊んでみたいって言う気持ちは。

 

「・・・いんや先生、篠ノ之さんの言う通りじゃ。俺はこの作戦を降りるで」

 

「・・・良いのか、清瀬?」

 

「はい。今の俺にそねぇーな”覚悟”はないですけんね」

 

そう言うて、俺はこの大座敷を後にせんと襖の方へ顔を向けるんじゃけど。

そねーな俺に・・・

 

「待てよ、清瀬!!」

 

・・・この空気の読めん忌々しい劣化バナージが声をかけて来よった。

 

「・・・ッチ、なんじゃーな織斑?」

 

「お前、逃げようとするなよ! 皆が困ってるんだぞッ!」

 

「困ってる? あぁ、困っとるじゃろうな。条約で禁止されとる軍事転用のISが暴走して、米国は大慌てじゃろうな」

 

「だったら、尚更ッ!」

 

「悪いが織斑くぅん、俺はこんな常識外れな迷惑事は勘弁じゃ。じ-さんばーさんが道端へ買い物袋をぶちまけるんと訳が違うんぞ」

 

「なんだよ、それ・・・シャルの件で見直そうと思ったけど・・・見損なったぞ、清瀬!」

 

「・・・ッケ。今更オメェなんぞに見直されても仕方ねぇし、嬉しゅうもないわな」

 

酷く眉間に皺を寄せた織斑を背に俺はずんずん出入口へ向かう。

途中、俺を心配そうな顔でセシリアさんやシャルロットが見て来るが知れた事か。

・・・じゃけど・・・。

 

「(・・・ちっとばっかし、この面倒事は”オカシイ”ぞ」

 

「ッ!」

 

俺は擦れ違いざまにラウラちゃんへボソリと耳打ちする。

本職が軍人である彼女ならば、俺の何とも言えんこの面倒事への”異様さ”をちったぁ解ってくれるじゃろうと思うてじゃ。

 

「・・・なんか知らんが。絶対、”裏”があるぞコレ」

 

自室へ戻った俺は、触らぬなんとやらに祟りなしとばかりに内緒で持って来たゲーム機の電源をONにした。

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆◆◆

 

 

 

言いたい事だけ言って、早々にこの特殊作戦から離脱を表明した春樹を余所に残ったメンバーたちは作戦の準備段階へと移行。

 

「それでは作戦会議を始める」と言った千冬の言葉を皮切りに早速「はい」と手を挙げるセシリア。

作戦離脱を表明した春樹に動揺はしたものの、自分のなすべきことを彼女は弁えていた。

 

「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」

 

「わかった。ただし、これらは二ヵ国の最重要軍事機密だ。けして口外はするな。情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低二年の監視がつけられる。いいな」

 

「了解しました」

 

セシリアの懇願に敵IS『銀の福音』、通称呼称名『福音』のスペックデータが皆の前にある簡易モニターへ映し出される。

 

「広域殲滅を目的とした特殊射撃型・・・私のブルーティアーズと同じく、オールレンジ攻撃を行えるようですわね」

 

「攻撃と機動の両方を特化した機体ね、厄介だわ。しかも・・・スペック上では私の甲龍を上回ってるから、向こうの方が有利ね」

 

「この特殊武装が曲者って感じはするね。この間、お父さんが送って来てくれたリヴァイヴ用の防御パッケージが来てるけど・・・連続しての防御は難しい気がするよ」

 

様々な意見が出される中、ラウラが千冬へ福音の細かな状況を確認するための『偵察』をするべきではないかと具申する。

しかし、この福音は現在も超音速飛行を続けており、その最高速度はマッハ2を超えるとの指摘を受けた。

 

「つまり、福音へのアプローチは一回が限界と言う訳ですわね」

 

「・・・そうなると・・・一撃必殺を持った機体が・・・この福音へ対処するしかない」

 

「そうなると・・・・・ッ」

 

簪の言葉にその場へいた全員が一夏へ視線をやった。

 

「・・・あぁッ、俺が零落白夜でやってやる!」

 

彼の言う通り、単一能力の特性で確実に相手を落とす事が可能な『零落白夜』を使用する事が白式には出来る。

今まで話についていけず弱っていた一夏だったが、皆が自身を指名した事で直感的に納得の言葉を連ねた。

 

「・・・・・」

 

だが、そんな決意を秘めた彼に簪は何故か怪訝な顔をする。

自分で言っておいてなんだが、今作戦を離脱した春樹に対し、一夏から当てつけのような感情が感じられたのだ。

それを感じ取った彼女は一夏に過度な期待はしないでおこうと内心へ思う。

 

「なら、問題は『どうやって、其処まで一夏をそこに運ぶか』だね。エネルギーは全部攻撃に使わないと難しいだろうから、移動をどうするか・・・」

 

「その福音に追い付ける速度を持った機体・・・この中で一番速い速度を出せるのって、確かセシリアのブルーティアーズよね?」

 

鈴の言葉にセシリアは強く頷く。

何故なら、まるでこの日を予想していたかのようにイギリス本土から強襲用高機動パッケージなるものが送られて来ていたのである。

 

「オルコット、超音速下での戦闘訓練時間は?」

 

「二十時間を超えますわ」

 

「よし、それならば白式の移動にはブルーティアーズが適任―――――」

 

「待った待ったー! その作戦は、ちょっと待ったなんだよ~ッ!!」

 

作戦事項が纏まりかけた矢先。このシリアスな現場には似つかわしくない陽気な声が聞こえて来た。

何事かと思えば、座敷の襖をババンと開け放って束が登場したのである。

 

「ちーちゃん、ちーちゃん。そんなのよりも、もっと良い作戦が束さんの頭の中にナウ・プリンティングゥッ!」

 

「出て行け」

 

「あうッ!」

 

突如として現れた束の顔面目掛け、千冬はアイアンクローをかます。

されど、その攻撃に負けじと彼女は我を通した。

 

「ここは断然ッ! 紅椿の出番なんだよ!」

 

「何?」

 

「紅椿のスペックデータ見てみて!パッケージなんかなくても超高速機動ができるんだよ!」

 

その言葉と共に数枚のディスプレイが千冬を囲むようにして現れる。

 

「紅椿の展開装甲を調整して・・・ほいほいほいっと。ホラ! これでスピードはばっちり!!」

 

陽気な声でディスプレイを操作し、「えっへん!」と子供っぽく胸を張る束。

そんな彼女の言ったある単語に簪が疑問符を浮かべながら、オウム返しをする。「『展開装甲』・・・って?」と。

 

「おや、眼鏡のお前は理解できないって顔をしているね? この展開装甲というのはだね、この天才束さんが作った第四世代型ISの装備なんだよー。それでこの第四世代ってのは『パッケージ換装を必要としない万能機』という現在絶賛机上の空論中のもので、具体的には白式の雪片弍型に使用されてまーす」

 

『『『・・・・・えッ!!?』』』

「はッ・・・え・・・えッ?」

 

束の説明にチンプンカンプンな一夏を除いた全員が、あんぐりと口をチョウチンアンコウのように開けたままフリーズしてしまう。

 

「それで巧くいったので、なんとなんと紅椿は全身のアーマーを展開装甲にしてありまーす! システム稼働時にはスペックデータはさらに倍プッシュッ♪ ちなみに紅椿の展開装甲はより発展したタイプだから、攻撃・防御・機動と用途に応じて切り替えが可能。これぞ第四世代型の目標である『即時万能対応機』ってやつだね。束さん、箒ちゃんのために頑張り過ぎちゃったよ。ぶいぶいッ・・・って、はにゃ? あれ? どうしたの、皆?」

 

はしゃぐ束を余所に皆がシーンと静まり返るのも無理はない。

世界の現状的に言うと、皆が膨大な時間と莫大な資金でようやっと第三世代機を実験段階まで造り上げたというのに。それをこの天才もとい・・・自称、天”災”科学者は無に帰してしまったのだ。

 

「はぁッ・・・束、言ったはずだぞ。『やりすぎるな』・・・と」

 

「そうだっけ? えへへ、ついつい熱中しちゃったんだよ~・・・って、待ってちーちゃん! その振り上げたグーは―――グエッ!?」

 

振り上げた拳を束の頭上へ振り下ろした千冬は話を元に戻さんと、言葉を連ねる。

 

「・・・束、紅椿の調整にはどのくらいの時間がかかる?」

 

「えッ・・・!?」

 

「お、織斑先生ッ!?」

 

驚いた声をあげたのは簪とセシリアだった。

 

「わ、私とブルーティアーズならば今作戦を必ず成功させてみせます!!」

 

「私も・・・オルコットさんの方がいいと思います。それに・・・実践経験の薄い篠ノ之さんと織斑くんでは危険・・・だと思います」

 

「私も簪の言葉に同意見です。経験の浅い二人だけでは作戦に支障を来す恐れがあります」

 

「なんだとッ! 私と一夏では無理だと言うのか?!!」

 

「止さんか、篠ノ之」

 

簪へ噛み付く箒をとりあえず落ち着かせた千冬はセシリアの方に視線をやる。

 

「オルコット、その高機動パッケージはブルーティアーズへ量子変換してあるのか?」

 

「そ、それは・・・ッ」

 

追加パッケージの量子変換には時間がかかる。

その点、紅椿の調整には時間がかからないとなると、残り時間が少ない彼女等には選択の余地はない。

 

「しかし、織斑教官。やはり、一夏と箒だけで今作戦を実行するのは些か危険です。私も同行する事を許可してください」

 

「心配には及ばん、私と一夏だけで十分だ。ラウラの手はいらないぞ」

 

「だが、箒!」

 

「そこまでだ、二人とも! では本作戦は織斑と篠ノ之、両名をメインとした目標の追跡及び撃墜を目的とする。・・・いいな、ボーデヴィッヒ?」

 

「・・・ッ・・・教官がそう仰るのであれば」

 

諭されるように千冬から引き下がるラウラへ箒は「フンッ」と鼻を鳴らす。

その態度は見るからに自信がある者でなければとれないようなものであった。其れほどまでに束から受け取った紅椿と自身の技量に自信があるのだろう。

 

「よし。作戦開始は三十分後。各員、ただちに準備にかかれッ!!」

 

手を叩いて促す千冬の声に皆が大きく「はいッ!」と返事をする。

しかし、浮かれる箒といつになくやる気を見せる一夏をラウラと簪は若干怪訝な目で見たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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