IS/Drinker   作:rainバレルーk

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第72話

 

 

 

「どうぞ。熱いから気を付けてね」

 

「はい、ありがとうございます。おぉッ、ええ香りじゃのぉ」

 

春樹が虚から受け取った紅茶の香りを堪能する横で、ソファの隅に追い詰められた一夏が生徒会長である楯無から何故に生徒会室へ呼ばれた説明を受けていた。

 

「部活動?」

 

「そう。織斑君に是非とも我が部に入って欲しいって要望の手紙がこんなにも送られてきて、お姉さんとっても困ってるの」

 

「ほぉ~ん」

 

彼女はそう言って、彼に手紙で溢れかえった目安箱を見せる。

興味を持った春樹がその中の一つを手に取って見てみると、中はとても綺麗な字で清書された欲望丸出しの内容が書かれていた。

 

「うわぉ・・・そりゃあ、こねーにようけぇの要望の手紙を出されたらアンタら生徒会も無視できんって訳じゃなぁ。そんで、朝にあねーな事を言うたんか」

 

「そうなのよ。解ってくれたかしら?」

 

「なんとなく」「いんや、ちっとも」

 

「あららッ?」

 

返答が全く違う二人に眉をひそめる楯無。

そんな彼女に全く納得のいっていない春樹が反論を紡いでいく。

 

「大体・・・部活動に入って欲しいって言われとんのは、織斑の野郎じゃろうがな。それなのに、なして俺まで景品扱いされにゃあおえんのじゃ?」

 

「そうだよ、お姉ちゃん・・・なにも春樹まで巻き込む事はなかった筈だよ・・・ッ」

 

明らかに機嫌が悪い事を隠そうともしない春樹と、彼に同調した簪が楯無へ怪訝な視線を突き刺す。

之に対し、彼女は大きな溜息を一つ吐いた後に目を細めて言葉を連ねた。

 

「清瀬君・・・君、自分の立場がどういう状況下に置かれているか・・・解っているの?」

 

「どういう状況下、じゃと?」

 

「そうよ」と楯無は頷き、彼がこの学園に入学してから関わった事件について述べだした。

有名どころとしては『ゴーレム事件』『VTS事件』『銀の福音事件』に始まり、『シャルロット男装騒動』やベルギーで起こった『テロリスト襲撃事件』と、春樹が首を突っ込んだ事件は多い。

 

「特にドイツの秘術だったヴォーダン・オージェに完全適応してしまった件は大きいわ。今や君は―――「阿ぁッ、なるほど。そう言う事ね」―――ちょっと、まだ説明してる途中なんだけど?」

 

「ええっちゃ、なんかもう粗方解ったけん。ゆーな、ゆーな、皆までゆーな。じゃけど・・・大分、まどろっこしい遣り方じゃのぉ」

 

「はッ・・・え?」

 

「ん~? どういう事、きよせん?」

 

二人のやり取りと春樹の納得へ一夏や本音達は何が何だか理解できずに頭を傾げる。

そんな周囲に彼は「要するにこういう事じゃ」と説明を述べて行く。

 

確かに春樹は多大なる功績と実績を積み上げて来たのだが、其れは決して表沙汰にはならないものばかり。

学園内での彼は人気者の一夏に突っ掛かるだけの能無しと認識されている。

 

「そねーな嫌われモンの俺を学園祭投票決戦が終わった後、最下位の部が可哀想だからという面目で生徒会が仕方なく拾う・・・こーすれば、会長閣下は合法的に俺を生徒会に引き入れることが出来るって訳じゃ。これで色んな意味で問題児な俺を手の届く監視下に置けれるけんなぁ」

 

「所々、語弊がありそうだけど・・・大方はそんな所ね」

 

『大体正解』と中央に書かれた扇子を広げる楯無に「阿破破ノ破ッ」と笑っていない眼で笑い声を響かせる春樹の隣で、「なら、俺も?」と一夏が自分に指を差しながら呟く。

 

「まぁ、そうじゃろうなぁ。その方が火種が小そうて済むし」

 

「なんだよ、それッ。要するに出来レースってことじゃないか!」

 

『争奪戦』と銘打っておきながら、最終的には美味しい所を全部持っていく事に何故か一夏は声を張った。

彼としては、そのような謀に対して怒りの感情があったのだろう。

だが・・・。

 

「阿呆か、オメェは」

 

「なにッ?」

 

「考えてもみられぇ。オメェが固定の部に入ってしもうたら、それこそハッキリとした確執が生まれるじゃろうがな。女いう生物は恐ろしいけんのぉ」

 

「はぁ?」

 

春樹の言っている事の意味が解らないのか、表情を困惑に曇らせる一夏。

そんな彼に対し、春樹は茶請けに出されたクッキーを頬張りながら更にこう続けた。「其れに・・・オメェはこの中で一番”弱い”からな」と。

なんとも自然に軽~く出たこの言葉に一夏は「・・・・・はッ?」と、表情を険しいものに変えた。

 

「うわ~、きよせんってば直球だ~」

 

「こら、本音」

 

「ええんですよ、布仏先輩。織斑の野郎が弱いんはホントの事なんですから。あと、紅茶の御代わりください」

 

「な、なんだよ・・・それ・・・ッ!」

 

ズズッと口の中のクッキーを紅茶で流し込む彼をギロリと睨む一夏。

そんな彼にお構いなしと、春樹は虚から受け取った御代わりの紅茶へ口を付けた。

 

「俺だって・・・俺だって、”あの時から”ずっと鍛えてるんだ。だから、福音事件の時に白式を二次移行させる事も出来たんだッ」

 

「そりゃあ・・・オメェが強うなった訳じゃのうて、白式”だけ”が強くなっただけじゃろうがな。それに『鍛えてる』じゃと? 阿破破ッ、”乳繰り合う”とるの間違いじゃねぇか?」

 

「ッ! 清瀬、テメェ!!」

 

春樹の発した言葉が、自身の鍛錬に付き合ってもらっている箒や鈴を侮辱しているように感じられた一夏は彼の胸倉を掴む。

 

「やめなさいッ、織斑君!」

 

「止めないでくれ、更識会長! コイツは―――「離せや、ボケ」―――ッぶ!?」

 

「織斑君!」

 

自分の胸倉を掴んだ一夏の顔面に躊躇なく裏拳をメキリとめり込ませる春樹。

顔を抑える彼の隣で、春樹は「あ~ぁ、オメェのせいで紅茶がこぼれてしもうたでよ」と呑気にティーカップの残った紅茶を飲み干した後、「阿ぁ、美味かったでよ。布仏先輩、馳走になりました」と立ち上がり、懐に忍ばせていたスキットルを一気に呷る。

そして、意気揚々と生徒会室の出入口へと足を向けた。

 

「待てよ、清瀬!」

 

「阿?」

 

ちょうどその時。打たれた鼻を抑えながら、一夏が春樹を呼び止めた。

なんだなんだと振り返ってみれば、「勝負しろッ・・・俺と勝負しろ、清瀬!!」と彼は自分に向かって叫ぶではないか。

 

「ヤレヤレ」と溜息でも吐きそうな春樹に対し、一部始終を見ていた楯無が『真っ向勝負』と書かれた扇子を広げ、こう言い放つ。「その勝負、私が預かるわ!!」と。

 

「おい、勝手に預かるな。俺ぁやる気ねぇぞ」

 

「いいじゃない。それに君、そう易々と生徒会に来る気ないんでしょ?」

 

「応ッ」

 

「即答って・・・まぁ、良いわ。なら、この勝負で負けた方が私からの”特別授業”を受けるというのはどうかしら?」

 

「お前は何を言っているんだ?」と言わんばかりに顔を歪める春樹の隣で、「解った、そうしよう」と一夏が二つ返事で之を了承してしまった。

 

「オメェ、なにを勝手な事しとるんじゃ!?」

 

「なんだよ。あれだけの事を言っといて、逃げんのかッ?」

 

「あぁッ・・・もう・・・!」

 

春樹は煽り返してくる一夏を見て、これ以上考えるのを止めた。

この展開はクラス代表を決める時、セシリアと決闘騒ぎになったのと同じ流れだ。

彼を焚きつけてしまったのは自分だとはいえ、この状況を春樹は酷く面倒臭いと頭を抱えてしまった。

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

「阿~・・・ホントにやんの?」

 

生徒会室の一件から一時間と経たぬ内に、二人の姿は関係者以外立ち入り禁止となった完全貸切状態のアリーナへあった。

其れも二人と因縁の深いVTS事件が起こったアリーナで、一夏が吹っ掛けた勝負が行われようとしていた。

 

「当たり前だろッ!」

 

「あっそう・・・そんで勝負の方法はどねーするんよ、会長閣下?」

 

締まらない顔の彼は、そのまま自分達の勝負の行く末を見守るであろう楯無が居る管制室に目をやる。

 

≪そうね。ここは男同士の熱い戦いを見せて貰いたいから・・・どちらかが戦闘続行不可能か、相手に「参った」の一言を言わせた方が勝者ってのはどうかしら?≫

 

「其処は国際法に合わせたISバトルの方がエエんと違うか? ”やり過ぎ”言うんがあるでよ」

 

「ゴチャゴチャ言ってないで構えろよ、清瀬!!」

 

「熱いのぉ・・・残暑で余計に暑苦しいでよ。オメェって、そねーなキャラじゃったか?」

 

心どころか頭までヒートアップしている一夏に対して、一方の春樹はぬるま湯へ浸かったようにだらけていた。

これから行われる戦闘に緊張感の欠片も持っていなかったのである。

 

「来いッ、白式!!」

「はぁ・・・行こうか、琥珀ちゃん」

 

そんな相反する二人が同時に専用機を身に纏うと、指定された位置へと立つ。

 

一方は、日本が世界に誇るIS企業『倉持技研』が造り上げた機体。

もう一方は、日本政府直属の機関である『内閣IS統合対策部』が造り上げた機体。

ある意味この試合は、代理戦争とも言えなくもないものである。

 

「阿~、大義ぃなぁ・・・なんでこんな事になったんだっけか?」

 

其れは春樹がウィスキーに酔った勢いで、煽らなくて良いモノを呷った為なのだが・・・もうそんな事は関係ないだろう。

頭に血の上った馬鹿程、後先を考えぬ者は居らんのが通説なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 





・・・・・はい。という訳で今回は此処まで◆◆◆◆◆
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