偽りの笑顔の先に   作:黒っぽい猫

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どうも、黒っぽい猫です

今回もよろしくお願い致します


第十二話〜やらぬ善よりやる偽善〜

翌日、アイドル研究部の部室にはμ'sの全員が集まっていた。

 

「それで絵里ち。手伝って欲しい事って?」

 

私は希だけに話をしたはずなのに、いつの間にこんなに話が大きくなったのかしら……?

 

「希…これは私が勝手にやろうとしている事なのだから、皆を巻き込むなんて……」

 

「何水臭い事言ってんのよ絵里」

 

私の話をにこが遮った。

 

「私達は、今まで勇人に支えられてきています。恩を返す機会を逸する事などできません」

 

そして続いた海未の言葉に全員が強く頷く。

 

「絵里ちゃんだけに格好いい思いはさせないのにゃ!!」

 

「私も合宿の時に言ったはずよ、サポートするって」

 

私は、今更ながら強く仲間の頼もしさを感じていた。

 

「ありがとう………!」

 

「よーーーーしっ!!ライブも文化祭も大成功させるぞっ!!頑張ろーーーっ!!」

 

『おーーーっ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、私はそれぞれの仕事の分担をする為に生徒会室へ向かっていた。勇人が倒れた時に鞄は生徒会室に置きっぱなしだったので、彼が目覚めるまでその場で管理することにしていた。

 

その中には持ち帰って仕事をやるつもりだったのであろう、生徒会用のノートパソコンも入っていた。

 

「……勇人をここまで追い込んだのは、私の責任でもある」

 

正直、私達九人だけで全ての仕事の代わりを務めるのは厳しいかもしれないが、やれる事をやるしかない。

 

生徒会室の鍵は職員室から借りているので鍵穴に入れて回すが鍵は開いている。

 

「………?」

 

不思議に思いながらもドアを開ける。すると…

 

『お疲れ様です!!!』

 

「あ、貴方達──どうして?」

 

私が扉を開けた先には、辞めていった元生徒会のメンバーが勢揃いしていた。突然の事に驚きが隠せない。脇から出てきたのは穂乃果の友人のフミコさんだった。

 

「私が、皆さんに声をかけてみたんです。勇人の事は聞いていましたから。そうしたら──」

 

「私達にも、手伝わせてください。あの時逃げてしまったこと、ずっと後悔していたんです」

 

「自分勝手で、ただの偽善行為なのもわかってます。それでも、私達も──」

 

『文化祭を、成功させたいんです!!!』

 

全員が声を重ねる。この場の思いは一つ──それなら私がやるべき事も一つだ。

 

「そう…それじゃ、仕事の分担を始めるわよ!みんな席に着いて!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……って言うことがあってね」

 

場所は変わって勇人の病室。少なくとも彼が目を覚ますまでは毎日通うと決めた。既にあれから3日経ち、文化祭は前日へと迫っていた。

 

「μ'sの皆だけじゃないの……辞めていった元生徒会のメンバーやフミコさん達まで手伝ってくれて。それはきっと、貴方が頑張ってきたからなのよ。勇人は否定するでしょうけど、そうやって皆が協力しようって思わせる程のものが貴方にはあるのよ」

 

この3日間、私達は悔いのないように準備に取り組んできた。

 

「貴方は怒るかしら……勝手なことをしたって」

 

それでも私は、勇人の力になりたかった。頭を撫でながら、そんな事を考える。彼らの中の誰かが言っていたように、例えそれが独善的な行為なのだとしても、彼が望まない結果だとしても。

 

「……僕は、怒りませんよ。絵里先輩」

 

「えっ?!」

 

零した独り言に返事が返ってきて驚くと、ベットで横になりながらこちらを見て微笑んでいる勇人の姿があった。

 

「おはよう……ございます」

 

「本当に……目が覚めたのね?」

 

「はい……まだ、少しぼんやりしますけどね」

 

お手数をお掛けしました、と申し訳なさそうな顔をしている。ゆっくり起き上がると、彼はそっと私の頬をなぞりながら不思議そうに呟いた。

 

「絵里……先輩?」

 

「え……あ………」

 

気がつくと、私の目からは暖かいものが流れていた。それは次から次に私の頬を伝い、制服のスカートを濡らしていく。

 

彼の手が、私の頭に触れていた。その温もりによって涙の量が増える。我慢しきれなかった私は、起き上がっている彼の胸に自分の顔を埋めた。

 

「とっても、心配したんだから………」

 

「…………はい」

 

「だからもう少し…このままでいて………」

 

「……はい」

 

私がこうしている間、勇人はずっと頭を撫でてくれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええっと……ごめんなさいね。取り乱して…」

 

「いえ……大丈夫です。気にしないでください」

 

数分後、絵里先輩は落ち着きを取り戻して座っていた。目元が赤く腫れている彼女を見ると自分がどれだけ迷惑をかけたのか、その重さが心にのしかかってくる。

 

「体の痛みとかは無いの?」

 

「…問題ありませ「きちんと言いなさい。誤魔化すのは許さないわよ」……少し、呼吸が苦しいです」

 

見透かしたかのように機先を制してくる先輩に素直に白状する。

 

「よろしい。それなら、横になっていなさい」

 

「わかりました…」

 

大人しくベッドに潜り込むと頭を撫でられる。照れくさくて少し早口に思っていたことを言う。

 

「……本当に、ご迷惑をおかけしました。後で皆さんにも謝罪しなければなりませんね」

 

絵里先輩は呆れた表情をして溜息を吐いていた。

 

「な、何かおかしいこと言いましたか?」

 

「もし、本当に申し訳ないと思っているのなら、君が言うべきなのは謝罪ではないと思うのだけれど?」

 

本当はわかっている。ただ、僕もいい加減危機感を持っているのだ。

 

これ以上近づいてしまえば、本当に離れられなくなってしまう。

 

「…………」

 

無言を貫くことしかできなかった。だが、絵里先輩は優しく僕の頭を撫でる。その温もりを何度も受け取るうちに、僕の心にも迷いが生じてきているのかもしれない。

 

「急ぐ必要なんてないわ。何回でも言うけど、貴方は自分のペースで変わればいい」

 

「そう……ですね………」

 

もしも、まだ時間があったなら。そんな事を考えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それから少しの間、他愛のない話をして先輩は帰っていった。明日が文化祭だから早く寝て備えるとのことだ。

 

「明日……か…」

 

結局、僕には何も出来なかった。最後の仕事と息巻いておきながら、だ。

 

知らず知らずのうちに、握りしめた拳を布団に打ち付けていた。

 

「クソ!」

 

「随分と荒れているね──勇人」

 

「?!」

 

突然投げかけられた野太い声に入口を睨みつける。聞き慣れた、それでも今一番聞きたくない声だ。

 

「……何しに来たの?今、僕は機嫌が悪いんだ。用がないなら帰ってくれよ」

 

「ハッ、何を偉そうに。病弱で貧弱な勇人クン?」

 

その声に神経を逆撫でられる。咄嗟に立ち上がろうとするも──

 

「ゴホゴホッ!!?」

 

咳き込み、動けなくなる。まだ体は本調子とは程遠いのかもしれない。その男はゆっくりと近づいてくると、その嫌味な態度とは裏腹に優しく布団をかけ直してくる。

 

「ったく……病人らしく寝てりゃいいんだよ。どうせ体こき使って無理してたんだろ?お前は昔っからそういう所が「能書きはいいから、用事は何?早く言って帰ってよ、叔父さん」……へいへい」

 

白衣を纏った男──僕の叔父である保科春馬は、頭をガシガシとかく。

 

「あー、報告は二つ。

 

まず一つ目はお前の担当医は今日から俺になるってこと。これは俺の兄さん、つまりお前の父さんの願いだ。

 

んで二つ目、お前の手術日は三週間後に行われることになったからそのつもりでいろって事。

 

簡潔に述べたが、質問は?」

 

「…僕は手術は受けない。そんな話ならもう帰ってよ。僕の体のことは僕が一番よくわかっているし、申し訳ないけどこれ以上僕自身の命を長らえさせることに意味があるとは思えない。

 

何より、僕の親友を見殺しにしたあなたに体を弄られるくらいなら死んだ方がマシだ」

 

だんだんと語調が強くなってくるのを感じる。もう自分の中で止められそうにない。

 

「大体さ、アナタは何故あの時アイツを見捨てたのに僕を助けようとするの?血が繋がってるから、とでも言うつもり?」

 

一瞬表情を固くした叔父さんは僕から目を逸らす。

 

「そうだ…お前が………俺の甥っ子だからだ」

 

それを聞いた瞬間、僕の中で何かが弾けた。

 

「甥っ子………?ふざけるな!!いつまでもいつまでも僕が何も知らないと思っているのか?!お前達嘘つきの言うことなんて誰が信じるものか!!

 

血の繋がりで助けると言うなら、僕だってアイツと同じはずだ!

 

僕とアンタにだって!血の繋がりなんてないだろう!!それどころか僕がずっと両親だと思っていた人達だって僕の両親じゃない!!ずっとお前は『あの二人の息子』って、僕に言っていたクセに!!」

 

「!!!」

 

呼吸が苦しくなり、一旦語気を抑える。続いて出た声は自分でも驚く程にか弱く、細い声だった。

 

「…小学六年の時、血液型を調べたんだ。その時僕が普通なら両親から産まれるはずのない血液型だったことがわかった。その時聞いたのさ

 

『僕は本当に父さん達の実の子供なの?』って。あの時あの人はそうだって答えた。煮えきらなかった僕はこっそり調べた。

 

………僕は『養子』だった!」

 

苦虫を潰したような顔をする目の前の男に、僕は言葉を続ける。

 

「どうして嘘をあなた達が吐いたのか。僕には何もわからなかった。

 

病気がわかって、両親と姉さんが海外に行く時僕が日本に残ったのも、それを知るためだ。

 

調べて得た結論は、もう僕の血縁はどこにもいないって事だけだった」

 

全てを知られていたことにか、おじさんの目が見開かれる。

 

その態度を見て、心の底に燻っていた熱が冷めていき、そのまま凍りついていくのを感じる。僕は何を熱くなっている。目の前の男に怒鳴っても仕方ないじゃないか。

 

「もう放っておいてくれ。人に騙されるのはもう真っ平御免だよ。あなた達が僕に嘘をついていた事ももういいからさ。一人にしてよ」

 

どれだけの間そうしていたのだろうか。無言で去っていく叔父さんの背中を眺めていくうちに、目尻から涙が流れていくのを感じる。

 

そして、その扉が閉まるのを確認した後──

 

「本当に最ッ低だな…僕は………」

 

僕は、確かに騙してきたあの人達のことが大嫌いだ。本当の事を言わず、何もかも嘘で塗り固められたあの人達のことが嫌いで嫌いで仕方ない。

 

でもそれ以上に、僕は僕が嫌いだ。何時までもそんな事に縛られて、それに意味が無いことは解っていても、それを変えようと思えない。そんな自分が大嫌いだ。

 

「なぁ……今の僕を見て、お前はどう思うんだ?なに難しく考えてるんだよって笑うのかな………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〜side 絵里〜

 

お見舞いからの帰路、ふとお参りをしてから帰ろうかと思った私は神田神社に来ていた。

 

お賽銭を入れて鐘を鳴らす。そして手をあ分けて心の中で願い事を呟く。

 

(どうか……ライブが成功しますように。そして勇人が早く良くなりますように…)

 

欲張りかもしれないけど、いつも頑張っているから、少しくらいいいわよね?

 

そうして、帰ろうと思った時、私はふと男坂の方で聞き慣れた声が聞こえた気がした。

 

「ハッ……ハッ……あと四往復!」

 

聞き間違いじゃない──私の体は考える前に男坂の方へ向かって叫ぶ。

 

「──穂乃果!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えへへへ……なんか、明日が本番なんだって考えるといても立ってもいられなくって「だからって雨の日に、それもライブ前日にこんな夜遅くまで!!ダメに決まってるでしょ?!」……はい」

 

私は神社の屋根に穂乃果を引っ張りこみ、彼女の髪を拭いていた。

 

「全くもう……私の周りには、どうして自分を顧みないで頑張る人がいっぱいいるのかしら…」

 

勇人も穂乃果も、一度決めたことには一直線でブレなくて……。

 

「それって穂乃果のこと褒めてる?!」

 

「褒めてない!もっと自分を大事にしなさい!」

 

調子に乗ってる穂乃果の額をペちっと叩く。

 

「あう〜……クシュン!」

 

「ちょっと穂乃果、本当に大丈夫なの?」

 

私の心配を他所に、鼻を啜りながら穂乃果は笑う。

 

「うん!このくらいお風呂はいってご飯食べてパン食べてから寝れば平気!」

 

「ご飯とパンって……太るわよ?」

 

なんでそう炭水化物ばっかり食べられるのかしら…穂乃果といい花陽といい、全くの謎よ……。

 

「さ、そんな事よりも穂乃果。私が送るから帰りましょ?」

 

「え……でも絵里ちゃんのお家の方向って真逆じゃ──」

 

「放っておいたら、また練習するでしょ?明日は、絶対に失敗したくないのよ……わかってくれるわよね?」

 

明日には勇人だけじゃない、今まで必死に準備してきた皆の期待がある。

 

「………うん」

 

「ならよし!もしも倒れたりなんかしたら、ほむまんをメンバー全員分奢ってもらうんだから♪」

 

「ええっ?!そんなぁ〜……」

 

「ふふっ、もし嫌ならちゃんと今日は寝なさいね?」

 

「え、絵里ちゃん……笑顔が怖いよ?!」

 

そんな軽口を言いながらも私の胸の中には、何故かライブが失敗するような、そんな予感があった。そしてそれが、なにか大変なことに繋がっていくような、そんな気もしていた。

 

(気のせいに決まってるわ……今は、前に進まないと!)

 

私は拭えない不安を抱いたまま、穂乃果の家へ向かうのだった。




目覚める主人公、早すぎですかね?

とはいえ、眠り姫みたいにしても動かせないからね!仕方ないね!

はい、いつもの如くお礼です

高評価を下さった

☆10:柊 黒葉様、かきめり さょをざ様
☆9:園田海未様、可愛い=世界様、鵄3263様、takatani様、最弱戦士様

ありがとうございます

また、その他評価を下さった方、ありがとうございます
評価をつけるに値するとこの作品を判断して頂けたことに御礼申し上げます

最後にはなりますがここまでお読みくださった皆様
ありがとうございます

次回もよろしくお願いします
黒っぽい猫でした
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