偽りの笑顔の先に   作:黒っぽい猫

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いやね、もう何も言いません、はい。
同じ時期に投稿し始めた方がもう私の六倍も七倍も書いてるんだとか、気にしてませんよ。

突然ですが、本日は2話連続投稿となります。
こちらはその前半の方です。どうぞご理解をお願いします


第十四話〜希望のカケラ(前編)〜

いつも通り、慣れた道を歩いていた。雑草一つ生えていない、キチンと整備された石畳の上を歩いていく。手に持つのは数本の花だ。僕自身、特に花に興味は無いのであまり色のしつこくないものを選んでもらった。

 

「…………こんな所まで隣同士なんて、本当にお似合いの二人なんだよな、君達は」

 

そう呟いてそっと花を隣合う墓にそれぞれ置いていく。線香も1本ずつ備え手を合わせ目を瞑る。思い出すのは二人の笑顔だ。

 

ここには、僕の親友だった人達がいる。だった、というのは僕には彼らにそのような関係を望む資格などないからだ。

 

「向こうで、君達は仲良くやっているのかい?僕はきっと君達には会えないのだろうから、幸せに笑ってる事を祈るよ」

 

そう呟いて、暫くの間閉じていた目を開く。随分と長い間そうしていたらしい。線香はとっくに燃え尽きてしまっていた。

 

持参した小さな箒とちりとりで灰を回収、その後は濡れた布で灰の残る部分を綺麗に拭き取っていく。

 

最後に供えた花を灰を入れたのと同じ袋に投げ込む。基本的に墓参りをする時に物は残さない。僕は彼らの家族でもなんでもないのだから。ただの他人だ。

 

「──もうきっとここには来ない。サヨナラだ伊月、日向」

 

重い足を持ち上げ寺を出る。一瞬だけ振り返りたいという衝動に囚われるもどうにかそれを堪えて外へ踏み出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその翌日、生徒会室には僕を除いて複数人の生徒が居た。アイドル研究部の部長であるにこ先輩、恐らくその連れ添いの真姫さん、絵里先輩の三人だ。

 

「どういう事よ勇人!この通知書は何?!」

 

判断が不服なのだろう。こちらに怒声を飛ばしながら掴み掛からんばかりにこちらに顔を近づけてくるにこ先輩。それには取り合わずたんたんと処分の内容を改めて伝えていく。

 

「見た通りですよ。貴女達アイドル研究部所属のユニット『μ's』には今回ラブライブへの出場を辞退していただきます。これは学校としての判断であり十分に審議がなされた上での決定事項なので拒否権などありません。直ちにスクールアイドルランキングから名前を消して下さい」

 

「だから!その決定が納得いかないって言ってんのよ!なんで私達の活動をアンタに制限されなきゃなんないの?!」

 

「……先程も言いましたが、これは学校長、理事長、生徒会長代理の僕の三人で話し合い、満場一致で決められたものです。部活動はあくまで生徒会の自治範囲の元で、生徒会長と教師達の了解の元で行われるものですので貴女達にその決定を覆す権利は──」

「違うわよ、勇人さん」

「──何だい、西木野さん」

 

「私達が聞きたいのはそんな御託じゃない。何故そうしなければいけないのかよ」

 

ピリ、と一段と強い緊張が室内に走る。こちらを真っ直ぐに見つめる彼女の目にはハッキリとした敵意があった。

 

「わかった。ならば理由を示そうか。君達に今回出場を辞退してもらう理由はこれだ」

 

プリントの山から一枚を抜き出しテーブルに叩きつける。それを見た三人の目が丸くなった。

 

そこには理事会から『来年度の入学生受け入れについて』と書かれており来年度も入学試験を行い、新規生徒の受け入れを行う旨が記されている。

 

「見ての通りだ。この学校は来年度も生徒を受け入れる。そんな中で学院の品位が疑われるような行いをされると迷惑なんだ」

 

「品位を──なんですって?」

 

ピクリ、と西木野さんの指が動き顔が険しくなる。どうやらよっぽど気に障ったらしい。

 

「品位を貶めるような行いをされては困る、という事だ。文化祭の話は人伝に聞いたが酷いものだったそうじゃないか。ライブの1つに自分の体調を整えられない様な愚か者達が全国の舞台に立てたとして、その先は?恥を晒すのがオチなのでは無いのかい?」

 

「それはっ……でも勇人!」

 

「絵里先輩。大切なのは貴女達が失敗する可能性がある、という事です。それも全国という大舞台で。他の部活動であれば負けるで済む。ですが貴女達は違う。貴女達μ'sは、学校の為にやり過ぎてしまった」

 

悪魔の証明だ、こんなものはと内心せせら笑う。こんな事を言われては感情的になってしまうだろう。特に本気の彼女達は。

 

「高坂穂乃果さん、園田海未さん、そして南ことりさんの三人から始まった貴女達μ'sがここまで学院の知名度を上げたのは事実です。だからこそ、貴女達の失敗は音ノ木坂学院全体の不評に響きかねない。

 

僕には生徒会長として、この学校を守る為に、それを止める義務がある。だから今回僕自身から理事長達にこの働きかけを行いました」

 

「アンタねぇ…………!!!」

 

最後の一言がにこ先輩の限界を超えたらしい。顔を怒りに染めてこちらの胸倉を掴みあげる。

 

「ふざけないで!!学校がどうとか、そんなの関係無いわよ!!私は誰かの為に踊ってるわけじゃない!!!」

 

「貴女がどうかなんて知りませんよ。ただ、μ'sというグループはその為に生まれたグループなのでは?そこに居る以上は貴女もそうレッテルを貼られるということです」

 

「黙りなさい!!」

 

「ぐっ──」

 

思い切り壁に押し付けられる。思わず苦悶の声が漏れ、反射的に手をどかそうと両腕を振りほどこうとするが上手くいかない。

 

「ちょっと!に──」

「にこちゃん、ダメよ」

 

割って入るのは絵里先輩かと思ったが、意外なことに西木野さんだった。彼女は矢澤先輩の腕を離すように促す。それに従い渋々とこちらを睨みながら先輩は僕を解放した。

 

制服の襟を直していると西木野さんが声をかけてくる。夏の合宿でも聞いたこちらを気遣う声だがどこか雰囲気が違っている。

 

「大丈夫?勇人さん。呼吸器系に異常は?」

 

「ああ、幸いな事になんともないよ」

 

「そう、それは良かった。それなら──私が一発入れても問題ないわね」

 

今回はグーだった。気遣ってからの突然の一撃に流石に対応しきれず奥の机に激突してしまう。後頭部を若干打ったせいなのか、上手く視界が纏まらない。そんな中、追い打ちをかけようとネクタイを掴んでこちらを引き摺り上げる西木野さん。

 

再び顔に鈍痛。今度もまともに食らいそのまま倒れ込む。どうにか歪んだ視界を正常な形に取り戻して上を見上げれば、肩で息をし、涙を流す西木野さんの姿が目に飛び込んできた。

 

「最っ低よ……貴方。自分が何を言ったかわかってるの?私達のっ……私達の活動が恥晒しですって!?ふざけないで!」

 

「真姫!!!!」

 

「絵里の気持ちを汲んで黙って聞いていれば言いたい放題!いい加減にしてよ!!私達は自分達のためにスクールアイドルになったのよ!決して誰かのためじゃない!!にこちゃんだって、私だって……きっと、きっと穂乃果達だって──」

 

「…………だったら、聞いてみればいい。今の穂乃果さんに、海未さんに、ことりさんに。本当に彼女達が踊り、歌う意味を持っているのか」

 

立ち上がり口の端が切れて出てきた血を拭う。口の中はきっと血塗れなのだろうな。だがここで黙っていても仕方ない。最後のもう一押しだ。

 

「いいか、もう一度だけ言う。今回の処分は決定事項だ。明日中にはスクールアイドルランキングから君達の名を消しておくように。もしもそれが確認できないようなら部活動自体の活動停止処分も有り得るのでそのつもりでいるように」

 

「────っ!!!!この──」

「…………真姫、絵里。行くわよ。いつまでもこんな場所に居たら不愉快でおかしくなりそうだわ」

 

三度目が来るかと身体を強ばらせたが、その必要は無かった。にこ先輩がそれを止めたからだ。淡々と感情を押し殺してこちらを睥睨するとにこ先輩は続ける。

 

「アンタの気持ちはよくわかったわ、保科 勇人。スクールアイドルのランキングからは名前を消しましょう。ただし、一つだけ条件をつけさせてもらうわ──もう二度と、私の前に姿を現さないでちょうだい」

 

そう言ってにこ先輩は西木野さん、絢瀬先輩を連れ立って部屋を出ていった。チラリ、とこちらを最後に一瞬だけ見た絵里先輩の目は酷く悲しげで、それでいて疑問を浮かべているようだった。

 

『どうして?』と。

 

そんな事を考えた矢先、グラリと視界が揺れた。どうやら西木野さんに殴られた際に脳震盪を起こしたらしい。立っていることも出来ずに床に座り込む。

 

本当に受け身すらまともに取れなくなっているのか、と自身の情けなさにそのまま倒れた机に寄り掛かった。そして安堵と何かが混ざった溜め息を吐きボヤく。

 

「思ったより痛かったな、西木野さんのパンチ。まさかグーで殴られるなんて思いもしなかったけれど」

 

それはそれとして、打てる布石は全て打った。後はあの六人が三人を上手く繋ぎ止めてくれればと思う。僕という仮想敵を仕立て上げるのも完璧に成功した。

 

「敵というか、怒らせているだけのような気もするけれど……」

 

まあそれはこの際深く考えない。目的は彼女達と僕の間にある縁を彼女達に気負わせない形で断ち切ること。僕が本当にどう思っているのかなどは大して重要でも無いのだ。

 

フラフラと揺れ続けていた視界がようやく収まった。ゆっくりと立ち上がるがもう問題はなさそうだ。口の中をティッシュで軽く拭き取るとやはり口腔内でかなり大量の出血をしていた。幸いにも歯は折れていない。

 

手当が終わったら先程彼女達に見せた廃校取り消しの通知を校内の掲示板に貼っていかないといけない。それが恐らく、前年度から始まった今期生徒会最後の仕事になる。

 

「本当にしんどかったよなぁ、生徒会の仕事を一人でこなすってのも。まあそれでも──」

 

それでも、悪くなかったと思う。こういう終わり方をしてしまったけれども、僕にとっては思い出になったのだから。

 

 

 

 

きっとあの九人ならなんであっても乗り越えてくれる。安易にもこの時の僕はそう考えてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

μ'sが活動を停止したという事態を知ったのはこの数日後の事だった。




はい、というわけで後半に続きます。急展開とは思いますが、頑張って書きあげておりますので着いてきてくださると幸いです。
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