偽りの笑顔の先に   作:黒っぽい猫

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過ぎてしまった……0:00にっ……投稿したかった…!!

※若干本編のネタバレ(?)の要素が含まれている可能性がありますがご了承ください




誕生日特別編〜形のない想い〜

「……待ち合わせ30分前…予定より早く着いちゃったかな」

 

時刻は朝の9時半、僕は今秋葉原駅にいる。集合は10時なのでまだ絵里先輩は来ないだろう。

 

「さて、今日の予定のおさら……「勇人〜!」!」

 

そう思い油断していたから後ろからかけられた声に驚いてしまった。そして、絵里先輩を見て頭の回転が止まってしまった。

 

「ゆ、勇人……?」

 

「っ!い、いえ……なんでもありません…お早いですね、先輩」

 

絵里先輩は黒が基調のマルチニット、薄灰色のニット帽にキャメルのスカートとを見事に着こなしていた。思わず見とれているところに、絵里先輩が少し顔を近づけてきてドギマギしてしまう。

 

「…勇人が誘ってくれた……で、デートなんですもの…遅れるわけにはいかないから……」

 

……後ろで手を組んで頬を赤らめながらモジモジするのやめてください、僕を殺す気か。

 

「ズルいですね、先輩」

 

「ええっ?!な、何が?」

 

「いえ、なんでもありません。そのお洋服、とてもお似合いだと思いますよ」

 

「なっ……?!」

 

「さ、先輩。行きましょうか」

 

顔を真っ赤にした絵里先輩の手を引いて駅の改札に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハラショー……」

 

「絵里先輩、ここに来るのは初めてですか?」

 

「ええ、そうよ。勇人はあるの?」

 

「一度姉さんに引き摺られて行きましたね」

 

「容易に目に浮かぶわね……」

 

苦笑した僕と先輩がいるのは池袋。その一角には某赤白ヒーローが屹立している。

 

「それじゃあ行きましょうか。人が多いのではぐれないように──」

 

言い切る前に、僕の左手にはひんやりした感触が伝わってきていた。

 

「……はぐれないように…ダメ?」

 

「………さ、行きますよ」

 

上目遣いは反則だと思う。わざとやってるのかと思うほどあざとい。カウンターでチケットを二人分購入するが、カウンターのお姉さんに話を振られる。

 

「彼女さん、お綺麗ですね」

 

「いえ……そういう訳では…」

 

「見てましたよ〜、手を繋いでるところ。初々しいですなぁ〜」

 

そんなの見てないで仕事しろ、と突っ込みたくなるのを堪える。

 

「はい、二人分のチケットです。頑張って下さいね!」

 

「あはは……」

 

とりあえずチケット二人分を貰って絵里先輩の所へ戻る。

 

「お待たせしました、先輩………先輩?」

 

何やら、先輩は不機嫌そうだ。

 

「……ねぇ、勇人。お願いがあるのだけれど」

 

「?なんですか?」

 

「その先輩っていうの、やめにしない?」

 

「へ?」

 

突然の事に間抜けな声が出てしまった。

 

「だって……私達その…そんなに離れた関係でもないでしょう?だから…名前で呼んで欲しいの」

 

友達以上恋人未満、そんな微妙な関係性を僕と先輩は築いている──というより、僕が待たせている状態だ。それなら、先輩の意になるべく添いたいというのは当然だろうか。

 

「いや、でも………」

 

「い、嫌ならいいわ……ただ、そうしてくれた方が嬉しいなって…」

 

「……わかりま…いや、わかった………え、絵里」

 

僕の顔が今どうなっているのかわからない。ただ火照り具合からして、赤くなっているのは間違いないだろう。

 

「うん……ありがとう、勇人」

 

名前呼びにして、敬語を取っただけなのに、せんぱ…絵里は胸に手を当ててとても幸せそうに笑ってくれた。その事だけで、僕の中にも温かい気持ちが流れ込んでくる。

 

「さ、行きましょう勇人?今日を精一杯楽しみたいわ!」

 

「うわぁっ!?」

 

急に絵里に手を取られて、僕は水族館の館内に入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ハラショー…すごく綺麗ね」

 

「そうだね……」

 

順番に見ていく中、今はクラゲの水槽だ。赤、青、緑と順番に変わっていく照明を透明なクラゲの体が写していて、何とも幻想的な光景だ。

 

不意に、繋がれた手がぎゅっと強く掴まれる。心臓の鼓動が早くなるのを感じながらチラリと絵里の方を見るとイタズラが成功したかのように舌を出していた。

 

「………心臓に悪いよ、絵里」

 

「ふふっ、なんとなくよ。なんとなく」

 

溜め息を吐くも、嫌な気分ではない。その後も色々な場所に振り回され、売店で飲み物を買って休憩することにした。

 

「どうぞ」

 

「あ、ありがとう。お金は……そういえば、チケット代も──」

 

座った絵里が慌て気味に財布を取り出す手をそっと抑え込む。

 

「今日は気にしなくていいよ。このくらい僕に出させてほしいから」

 

「え、でも──!!」

 

そっと今度は唇にそっと人差し指を当てる──いつかそうされた時のように。

 

「いいんだよ。今日は絵里の誕生日だろ?」

 

「えっ──そ、そう言えばそうだったわね…」

 

「え?」

 

絵里の発言に言葉を失ってしまった。

 

「ま、まさか自分の誕生日──忘れてた?」

 

「ええっと……その、最近色々あったでしょ?」

 

主に僕の失踪とか僕の手術とか……あ、あれ?よくよく考えたらそれって──。

 

「僕のせい……かな」

 

流石にいたたまれない気持ちになってしまう。僕の行動は、思っていた以上に彼女の負担になってしまったようだ。

 

「ごめん……そこまで絵里に負担をかけてしまったのは僕の──「はい、そこまで!」」

 

ピシャリ、と手を叩いて話をぶった切られた。

 

「私はさっき言ったでしょ?今日を精一杯楽しみたいって。だから湿っぽい話は一日禁止!!」

 

「……」

 

「もし、君がまだ申し訳ないって思っているのなら──」

 

両手で僕の右手を包み込み僕の顔を見つめる。

 

「今日、ちゃんと私をエスコートして頂戴?」

 

思わずその目に惹き込まれそうな魅力を感じながら、何か言わねばならないと必死に言葉を探して紡ぐ。

 

「わかった、こんな僕なんかでよければ「違うわよ、勇人」──?」

 

彼女は立ち上がり、その綺麗な金髪を弾ませながらこちらを振り返る。

 

「私は勇人だから、エスコートして欲しいの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

水族館を出たあと僕達は同じビルの上の階にあるプラネタリウムを見て、そのあと昼食を取っていなかったのを思い出し、遅めの昼食をとるために喫茶店に入ることにした。

 

注文を済ませて料理がくるまでの間、絵里はずっと興奮しっぱなしだった。

 

「勇人、さっきのプラネタリウムは凄かったわよね〜!一年間全部の夜空を見せてくれるなんて思わなくってびっくりしちゃったわ!」

 

「確かに、しかも有名な星座は全部細かい説明までしてくれるなんて随分と親切な作られ方をしてたよね」

 

「やっぱり夜空を見るのっていいわよね……いつか本物を見に行ってみたいわ」

 

うっとりとした表情をしている絵里を見て、なぜだか僕は吹き出してしまった。

 

「な、何よ……変な事言った?」

 

「だって、綺麗な夜空を見ようと思ったらどうしたって明かりのないところに行かないと厳しいんじゃない?絵里は暗い場所苦手だし、どうするのかなーって思ってね」

 

「ふっふっふ、その点は問題ないわね」

 

「??」

 

「だって、勇人と見に行くもの」

 

予想外の返答に、今度はお冷を噴き出しそうになる。

 

「えほっえほっ……ぼ、僕となら平気なの?」

 

「ほら、夏合宿の時もさっきのプラネタリウムでも平気だったでしょ?あれは、多分勇人がずっと手を握ってくれてたからなのよ」

 

急にそんなことを言われると些か恥ずかしさを感じてしまう。絵里も耳が少し赤くなっているのが見えた。

 

「その……多分勇人がそこでも手を握っていてくれれば、平気なのかなって」

 

「はあ……絵里は全く僕のこと考えてないんだな」

 

思わず声に出して言ってしまった言葉にショックを受けたのか、絵里は涙目になってしまう。

 

「えぇ?!い、嫌だった………?」

 

「あー…いや、そうじゃなくて……その、そんなにずっと手を繋いでたら、そっちに気を取られて星を見るのに集中出来なくなっちゃうからさ…勿論良い意味で、だけど……」

 

実際、夏の星座あたりまで握っている手の方に緊張して説明がまともに聞けなかった。

 

それまでも手を繋いではいたけど、静かな中で隣に好きな人がいて手を繋いでる環境でそっちに気を逸らすなって方が無理な相談だ」

 

「そ、そうなの……その…えーっと………」

 

顔を真っ赤にしていきなり項垂れる絵里。

 

「え、絵里?」

 

「いきなり好きって言われると、恥ずかしいわよ……バカ」

 

ま、まさか………

 

「い、今の口に出してた?」

 

「出てたわ、それに聞こえてたわよ……」

 

やばい。死にたい……。恥ずかしすぎる。気まず過ぎてこちらも何も言えずにいると丁度店員さんが料理を持ってきてくれた。

 

「お待たせしました、料理をお持ちしました」

 

「ありがとうございます」

 

「これは美味しそうね!」

 

二人とも恥ずかしかったのか、全力で話を明後日の方向に逸らすことにした。

 

僕が頼んだのはオムライスで、絵里が頼んだのはナポリタンだ。

 

「「いただきます」」

 

オムライスを口に運ぶと卵の焼き加減が絶妙でとても美味しい。ここまで美味しいオムライスを食べたのは初めてで目を丸くしてしまう。

 

「美味しい……これはあたりを引いたかも」

 

「ナポリタンも美味しいわ……ねえ、勇人」

 

「ん?どうしたの?」

 

「一口ずつ交換しない?料理が得意な勇人が美味しいって言うなら間違いないでしょうし」

 

「別に構いませんけど…」

 

新しくフォークとスプーンを貰いましょうと提案する前に、僕の前にはパスタが巻き付けられたフォークが差し出されていた。

 

「はい、あーん」

 

「新しいフォークとスプーンを」

 

「あーん」

 

「いや、あの……」

 

同じ笑顔をキープされててなんだか怖い。

 

「せめてフォークを渡して」

 

「あーん」

 

同じ反応しか返ってこない……。無言で早くしろと言われてるような気が…「勇人、早く」言われちゃったよ。

 

「……むぐ」

 

「ふふっ、やっと折れたわね。どう?美味しいでしょ?」

 

私が作ったわけじゃないけどね、と付け足して苦笑いする絵里。

 

確かに、美味しいのだと思う。だが、恥ずかしさのせいかあまり味がしない。

 

「勇人、次は私に食べさせて?」

 

当然と言わんばかりにニコニコしてる絵里。ここまで来ればもう諦めるしかないだろう。それにこちらも既に食べさせてもらっているのだ、今更拒否権などないのだろうし。

 

諦めてスプーンでオムライスをすくって差し出す。

 

「……はい、あーん」

 

「あーん……」

 

口に入れて飲み込むと、ふむふむと今度は考え込み始める絵里。

 

「この味が勇人の好みなのね……少し研究が必要かしら」

 

「ええーと、絵里?」

 

「いえ、なんでもないわ。美味しかったわよ、ありがとう」

 

この後、他のお客さんが次々ブラックコーヒーを注文したりマスターがブラックコーヒーを飲んでいたりしたのは何故だろう?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勇人?どこに向かっているの?」

 

「もう少し目を開けないでね。もう少しで到着するから」

 

「わ、わかったわ……その代わり手を離さないでね?!」

 

「わかっているよ、ちゃんと最後まで絵里をエスコートするって約束したじゃん」

 

「で、でも少し不安なのよ」

 

僕は駅の改札を出てから最後の場所に到着するまで、絵里に目を閉じていてもらうようにお願いした。彼女は快く引き受けてくれたのだが、やはりどこに連れていかれるのか分からないのは不安なのだろう。

 

「よし、到着したから目を開けていいよ」

 

「う、うん……え?勇人の……家?」

 

「そういう事。さ、中に入りますよ、お嬢様」

 

「ちょ、ちょっと勇人──」

 

真っ暗にしてある玄関に絵里を無理矢理連れ込み明かりをつける。

 

パン!!パン!!

 

破裂音と共に火薬の匂い、そして色とりどりの紙が絵里に降り注ぐ。最初こそびっくりして目を瞑った絵里だが、今度は目を大きく見開いた。

 

『絵里(ちゃん)(さん)(お姉ちゃん)!!お誕生日おめでとう(ございます)!!!』

 

「え……亜里沙…皆?ど、どうして……?」

 

「一週間くらい前にな、うちら勇人君から頼まれたんよ」

 

希先輩が真っ先に口を開く。それに同調してにこ先輩も話し始める。

 

「絵里の誕生日パーティーを開きたいから協力してくれって頭を下げられた時は流石に驚いたわよ…ほんっと絵里の事になると勇人は必死なんだから」

 

海未さん、ことりさん、穂乃果さんが大きく頷いていたのは少し腹が立った。

 

「ふふっ、勇人さん、場所も費用も自分が提供するからって本当にすごい頼みようだったんですよ?」

 

「流石にちょっと呆れちゃったわね……」

 

花陽さんと真姫さんも酷い言いようだ。

 

「またまたー、真姫ちゃんだって結構必死に準備してたにゃ〜」

 

「誰かさんが楽しようとするからでしょ!!」

 

それを凛さんがからかってワイワイ騒ぐ。

 

「あのー……皆さん、主役をほっぽり出すのはやめてそろそろリビングに移動しませんか?せっかくのお料理が冷めちゃいますよ?」

 

「あー!ご飯が冷めちゃいます!」

 

「か、かよちん!!今日の主役はご飯じゃなくて絵里ちゃんだにゃ!落ち着くのにゃ!!」

 

「乾杯のドリンクを用意するわよ!海未、ことり!手伝って!穂乃果は零すから動いちゃダメよ!」

 

「あー!にこちゃん酷い!穂乃果だってやれば出来るもん!!」

 

雪穂ちゃんの号令で慌てて亜里沙ちゃん以外は皆リビングに戻ってしまう。

 

「勇人お義兄ちゃん、お姉ちゃん、お帰りなさい。やっと仲直り出来たんだね」

 

「まあ、ようやくって感じかな…?」

 

「これで亜里沙とじゃなくてお姉ちゃんと結婚だね!」

 

「あ、亜里沙?!ま、待ってちょうだい!勇人と結婚ってなんの話?!」

 

先程までフリーズしていた先輩を最悪の状態で復帰させると、笑いながら亜里沙ちゃんは奥に入ってしまう。

 

「絵里、僕達も中に「待ちなさい勇人」…な、なんでしょうか」

 

絵里はにっこりと笑っているはずなのに、何故だか後ろには般若が映し出されていた。

 

「説明、してくれるわよね?」

 

「………はい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勇人、今日はありがとう」

 

皆が絵里を囲ってワイワイしてる間にこっそり抜け出して夜風に当たっていたのだが、どうやら見つかってしまったらしい。後ろから声をかけられた。

 

「主役が抜け出してきて良かったの?」

 

「誰かさんが抜け出さなければ、私も抜け出す必要もなかったのだけれど?」

 

ジト目で睨まれてしまう。

 

「皆からのプレゼント、どうだった?」

 

「ふふ、嬉しくないわけないわよ。皆が選んでくれたものならなんでも、ね」

 

「そうか……それなら、これも喜んでもらえるといいけど」

 

「え?」

 

「何度も申し訳ないんだけれど、少しの間目を閉じててもらえるかな?僕からの誕生日プレゼントをまだ渡してないから」

 

「わかったわ」

 

ポケットからあるものを取り出し、素早く絵里の首元に巻き付けて後ろで止める。

 

「もう、いいよ」

 

大体首元に何かが触れる時点で察してしまうのだろうが、それでも良かった。

 

目を開けた絵里は首元を確認して、目を見開いた。

 

「パライバトルマリンっていう宝石で、10月の誕生石、オパールの一種なんだ。色合いとしても絵里に似合うと思って」

 

「これを……私に…?」

 

「うん……今までのお礼の気持ちを込めて………おっと」

 

いきなり抱きつかれ、驚きながらも絵里を支える。そこで見上げてきた絵里の瞳は輝きを湛えており、とても美しかった。互いの鼓動が溶け合うような、そんな錯覚に囚われていると絵里が口を開いた。

 

「胸がいっぱいで、まだ多くの事を言うことは出来ないのだけれど──本当にありがとう、勇人。今までで……最高の誕生日になったわ」

 

(そんな笑顔の前だと、どんなに綺麗な宝石を送っても霞んじゃいそうだ……)

 

「え?何か言った?」

 

そんな恥ずかしいセリフを聞かれていなかったことに安堵しつつ、僕はあることを忘れていたことに気付いた。

 

「あ、そうだ。言い忘れてた」

 

「?」

 

「お誕生日おめでとう、絵里」




絢瀬絵里ちゃん!!お誕生日おめでとう!!!

初めてデートを書いたので至らない点があるのはご了承ください……。

また、次回投稿はしっかり本編です。
お礼なども次回投稿時にさせていただきます。
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