本当に当時のままで手直し無しなので恥ずかしいのですが、読んで下さった方がほんの少しでも楽しんで下さったなら幸いです!
先程ウルベルト様に手ずから剥いで頂いた自身の皮を、プールから引き上げる。私自身の血で汚れ、濁った水から生皮を取り出すと、内側の部分に肉や脂肪が大量に付いたままなのに気付く。だが、それも最初の物だけ。皮剥ぎの枚数を重ねる毎に、残る部分は少なくなっている。
ウルベルト様は皮を剥ぐのは初めてだと仰っていたが、皮に破れなど無く全て
ウルベルト様からお借りした
そうしてプールの水が汚れなくなったら、今度は生皮を物干しに引っ掛け、余分な水滴を落とす。それから、私が独自に開発した薬剤を入れた手製のドラムに生皮を投入し、繊維を柔らかくする作業を行う。今のこの人型形態だと表面に産毛が生えているから、それを綺麗に抜き去る為だ。
ウルベルト様に皮を剥いで頂く事が決まってからすぐに作った、新品のドラム。それを使って自らの生皮を処理し、革にしてゆく作業はとても倒錯的だとは思うが……私の全てをウルベルト様に捧げる為だと思えば、作業の一つ一つが素晴らしく崇高な行為のように思える。
下処理が完成したら、今度は別の薬液を入れたドラムに生皮を入れ、鞣し作業に入ってゆく。少々時間は掛かるが、丁寧に鞣した革の美しさと耐久性は折り紙付きだ。敬愛するウルベルト様が日常的に使って下さるソファの材料になるのだから、手を抜く訳にはいかない。
(それに……完全悪魔形態の私の革ならば、丁寧に加工したドラゴンハイドに優るとも劣りませんしね。いえ……私はウルベルト様に創造されたのですから、私の革の方が上質でしょうか……?)
そんな事を考えながら丁寧に皮を鞣し、皮が革に変わった瞬間。今度は丁寧に表皮を剥いでゆく。最も優れた革……銀面付きに加工する為だ。羊皮紙の加工とはまた違っているが、今まで何枚もの皮を加工していた経験があるから、問題無く美しい銀面に加工が出来た。極限までギリギリの所を削いで、最も美しく価値が高いとされる銀面にしたそれを、今度は設計図通りにカットしてゆく。完全悪魔形態の革で、座面と背面両方を作るのだ。背面は背もたれの表部分と、後ろの部分を一枚革で作成出来る。座面も、余裕だ。余った分は、ウルベルト様が前々から造りたいと仰っていた魔道書用にお渡ししようと思う。
人間形態の革と、半悪魔形態の革は、思ったより量が無かった為、アクセントにするのも難しかったので……こちらは縫い合わせてクッションに加工する。そうすれば、ウルベルト様がソファでリラックスされる際に愛用して頂けるだろう。
(あぁ……そういえばウルベルト様はランプシェードも造りたいと仰っていたな。どちらにせよ、ランプシェードでもこの量だと足りない筈だから……また、剥いで頂かなくては。恐らくは、人間形態と半悪魔形態でそれぞれ二枚くらいが必要量だろうか)
またウルベルト様に手ずから剥いで頂く為には、今度はどんな手柄を立てたら良いのだろうか。お褒め頂くに相応しい事を行わないと、このような極上の褒美はいただけまい。
(牧場の経営も上手く行っている……ナザリックとの繋がりは隠しているし、至高の方々にもバレていない。皆様のカルマ値の関係もあり、牧場の経営は秘密裏に行わなければならなかったのだが、其れに思い至れなかった私の失態を、ウルベルト様は優しく諭して下さった。お陰で、モモンガ様にも気付かれてはいないが……そろそろ、潮時だろうか)
ウルベルト様曰く、モモンガ様が勘違いされている聖王国両脚羊の正体、
一度、ウルベルト様にきちんと確認をした方が良いだろう。褒めて頂きたくて独断専行した上、かえってご迷惑になっては本末転倒だ。
(……あぁ、それに、今度はウルベルト様に椅子にして頂けるのだ。そんなに続けて褒美を頂いては勿体ない)
ウルベルト様に褒めて頂けたり、褒美を頂けるのはとても幸せな事だが……贅沢に慣れてしまっては、ウルベルト様の
そんな事を考えながら手を動かし、革のカットを終わらせる。それから、詰め物と土台になる部分を造るのだ。
土台は暗黒竜の骨を削り出し、猫脚に細工した物だ。通常の竜の骨は白いが、暗黒竜はその名の通り全てが漆黒の竜で、瞳も血も肉も骨も、その全てが漆黒だ。
暗黒竜はまだ
ウルベルト様はそれ程までに私を信頼して、このような貴重な素材を預けて下さったのだ。今ではもう入手が出来ない、ユグドラシル産の素材を。そう思うと、
ウルベルト様の優雅さを表現するように、カーブの部分は特に神経を使い優美な曲線を描くように仕上げる。通常の細工物の数倍の時間を掛け、じっくりと丁寧に仕上げられた土台は、まさに一世一代の大作だった。恐らく、これ以上に素晴らしい物は二度と造れないに違いない。私の全身全霊を掛けて造った、ソファの土台。素材も極上の品だし、強度にも問題は無い。この漆黒の骨に、詰め物をした座面と、背面をセットしてゆく。ウルベルト様のお身体のサイズを全て測らせて頂いたので、最適な角度と幅を実現出来た、ウルベルト様専用のカウチソファ。
ウルベルト様は魔法詠唱者なので大変細身でいらっしゃるけれど、お召し物は長いマントなど幅を取る物が多い為、マントを身に着けたままでも余裕を持って寝転んで頂けるよう、精密に計算した幅。
そして、ウルベルト様がを投げ出した際に最もリラックス出来る長さ。ウルベルト様が良く背もたれにお身体を預けていらっしゃるので、その際にゆったりと出来る高さと角度。その全てを割り出す為に、ウルベルト様のお身体に触れる許可を得て、全身のサイズを測らせていただいたのだ。その成果は、この完成したカウチソファにしっかりと出ている筈だ。
実際にウルベルト様にお使い頂ければ、今までウルベルト様が愛用されていたソファよりも何倍も心地良いと思って下さるに違いない。
そう思うと、自然と口元が緩む。ウルベルト様のお創りになったソファは、勿論素晴らしい物だと理解している。……だが、幾ら最高品質の物であったとしても、ウルベルト様のソファはお座りになる為の物だから、やはり長時間お休み頂いたりリラックスしていただくのであれば、専用のカウチソファが必要であると判断したのだ。
(あぁ……これでウルベルト様が自室で過ごされるお時間の大半を、このソファが受け止められるのだ……)
私がお側で仕えられない時も、この私の革を使ったソファが、常にウルベルト様のお側にある。それだけで、とても満たされた気持ちになって。言い知れぬ幸福感が、私を襲う。それは、酷く甘く……そして、危険な感覚だった。
「ウルベルト様……」
誰よりも尊く美しい、私の創造主。その御名前を口にする度、強い高揚感が生まれる。私が永遠の忠誠を誓う、唯一の御方。その御方が、私が丹精込めて造り上げたソファに座して下さる。そう思うと、胸の高鳴りが抑えられない。
私は一刻も早くこのソファをウルベルト様に捧げる為、インベントリにソファと加工済みの革を収納すると、ウルベルト様から賜った指輪でウルベルト様の居場所を確認してから其方へと向かった。
パンドラズ・アクターのようにクルクルと回り出しそうな気持ちを必死に抑えながら……。
END
一太郎の機能を利用してPixiv用のルビタグを振った物をハーメルン用のルビに手動で直して投稿しているので、もしルビ変更漏れがありましたら、誤字報告頂ければ幸いです。
一応ちゃんとチェックはしているのですが、同じ文字を何度も読んでいるとどうしても見落としが……。