敦君が某有名人の代わりに出たらという妄想の入ったお話です。

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ふと思いついた息抜き作品です。


敦の部屋

 今、僕はテレビのカメラの前にいる。

 

 辺りには白い壁で三面を囲み、花瓶が台に置かれている。僕は高そうなソファに座っている。

 

 天井から出る光線のような光が眩しくて思わず目をつむってしまいそうだ。

 

 どうしてこうなったか?

 

 それは探偵社に舞い込んだ一通の依頼がもとだった。

 

 それは仕事を代理役としてやってほしいというもの。どうやら本人は並々ならぬ用事があったらしい。どうしても収録に行けないという。

 

 『誰が行くか』。あれこれ揉めるかと思ったが、太宰さんの「敦君、君がやり給え」という鶴の一声で僕がやることになった。

 

 監督とかには依頼者が交渉しといたのか、そこまでとやかく言われなかった。

 

(それにしても)

 

 ちらっとカメラを見る。

 

 初めてのテレビ出演。緊張してくる。気のせいか手が震えてくる。

 

 落ち着け落ち着け…武者震いだ中島敦。きっとこれは出たくて出たくてたまりないんだ。きっとそうだ。

 

「では、敦さん!本番いきま〜す!」

 

「ひ、ひゃい!」

 

 思わず噛んでしまった。カメラさん、笑うのを堪えている。恥ずかしい。

 

「五!」

 

 落ち着け、落ち着け。

 

「四!」

 

 心臓は大きくドクンドクンと鳴る。

 

「三!」

 

 練習通りに、練習通りに、意見ボックスの質問に答えるだけだ。

 

「ニ!」

 

 練習通り…

 

「一!」

 

 練習通り…

 

「アクション!」

 

 スタッフの声がスタジオ内に響き渡った。

 

 ララ〜ララ〜ララ〜ララ〜

 

「はい!どうも皆様こんにちは!今週は白樺銀子に変わりまして、中島敦が司会をやらせてもらいます」

 

 よし。台本どおりだ。とりあえず大丈夫だ。次は…

 

「さて、今日も視聴者の皆様のお悩みをこのお悩みボックスで解決していきましょう」

 

 僕はボックスの中の紙を一枚取る。と、同時に音楽は鳴り止む。僕は取り敢えず中を開け、読んでいく。

 

「え〜ペンネーム『リンタロウ』さんからのお悩みです。『自分の妻が可愛くてしょうがなくて、服を沢山買いに行ったりしますが、それを「また〜!」と言って嫌がられます。でもそんな妻が可愛くて可愛くてたまりません。どうしたらよいですか?』」

 

 なんかいきなり無理難題振っこれた。本当は「それを聞かれましても…」という言葉で返したいけど、テレビ番組だから、そういうのは…仕方ない。適当に言って乗り切ろう。

 

「え〜まぁ奥さんは多分他の物を求めているんじゃないでしょうか。だから偶には他の物も挟むといいかもしれません。そうしたら仲がより進展すると思います。では夫婦二人仲良くやってください」

 

 よし、これで大丈夫だ。カンペさんもいいって言っている。

 

 

 

 その頃…

 

「ボス。書類を…って何を見ているんですか?」

 

「あぁ、広津さん。ちょっとね」

 

 椅子に腰掛けている男、森鴎外は部下の広津という男の方を振り向いた。側には彼がやるべき書類が沢山ある。だが、森はそんな物に目もくれず

 

「夫婦二人…エリスちゃんと…」

 

 ぼそっと呟いた。

 

 

 

「さて次いきましょう!」

 

 僕は取り敢えずさっき通り箱から紙を取り出す。

 

「はい!次は『赤毛のカフェ』さんから。えーと『好きな人がいるのに素直になれなくて困っています。どうしたら良いですか?』」

 

(良かった。ちゃんとしたやつだ)

 

 さっきの人の事もあってか、この人の質問がとっても僕の心を安心させてくれる。普通こういうのが来るんだよね。こういう。

 

「『赤毛のカフェ』さん、想いは募っているだけじゃ駄目です。ちゃんと想いを伝えましょう。まぁそういう僕もヘタレだから中々あなたのような事になったら僕もできないかもしれません。でもこれだけは言わせてください。頑張って!」

 

 …よし。なんとか言い切った。スタッフさんは二重丸を描いて、オッケーを出してくれる。良かった、失敗しなかった。

 

 

 

 

 

「ちょっと!これどういう事よ!?」

 

 カフェの休憩室のテレビを見ている少女が叫んだ。赤毛の少女、モンゴメリの質問が彼女の想い人によって読まれたからだ。そのせいか彼女は興奮しきっていて、顔はとても赤い。

 

「べ、別にそういうつもりじゃないんだから…いやでもあんたは嫌じゃないわ、でもでもあんたは大嫌いなの!!」

 

 錯乱しきった彼女は部屋で一人ブツブツと独り言を言っていた、と彼女の上司は後から証言したとかしていないとか。

 

 

 

 

 

 

「CM入りま〜す!!」

 

 スタッフさんのその声で僕は一旦体にある緊張を解した。…疲れた。台本通りにやったとはいえ、ここまで一つ一つの何気ない言葉も気にしてはいけないなんて…テレビにでているアナウンサーや芸能人は凄いな。僕には出来そうにないや。

 

 そう思いながら一口スタッフさんに渡されたペットボトルの水を飲んだ。普通に売っている水なのにもの凄く美味しく感じてしまう。

 

「CM終わりま〜す!」

 

 スタッフさんがまたカウントダウンを始めた。…よし、次の人が終わればラストだ。頑張ろう!

 

「はい!続いての質問が終わったら今日の番組は終わりたいと思います」

 

 僕は慣れた手つきでボックスの中から紙を取る。そして、中に書いてある内容を読む。

 

「え〜。最後は『スーパー眼鏡マン』さんからの質問。『同僚の奴が日頃から「死にたい死にたい」喚いて、挙げ句の果てに俺の予定を狂わしてくるような自殺しようとしてくるんですが、どうしたらいいんだ敦。教えてくれ』…え?」

 

 あれ?気のせいかな?何かこれ書いている人が知り合いだと感じるのは僕だけだろうか?

 

 チラッとスタッフさんを見る。スタッフさんはカンペからの『早くしろ!』という催促を指差す。うーん。どうしたら…

 

 やがてカンペさんから終了五分前と宣告される。マズイマズイ。どうしたら、どうしたらいいんだ…何か方法は、方法は、方法…あっ!そうだ!

 

 僕は残り三分のところで口を開く。もうこれしかない。既に音響係の人がやったのか終わりを告げる音楽が聞こえてくる。

 

 僕はそんな状況を尻目にこう言った。

 

「頑張ってください!いつか報われます!!」

 

 

 

 

 ついでにあの後、質問箱を見てみると…

 

『敦君、物凄く美人な人が前を通っていったから今から心中を頼んでくるよ。ということで国木田君に宜しくって言っといて!心中してくれる人大募集より』、『敦君、ナオミが、ナオミが〜!!西のヘタレより』、『お菓子買っといて〜。僕が良ければすべてよしより』、『人虎、お前をいつか殺す。ポートマフィアの犬より』、『太宰がウゼェ!漆黒の重力男より』

 

 少なくてもこれだけ見つけて、僕は複雑な気持ちになった。というか皆さん、ちゃんとした質問を送ってください!!

 




敦君は個人的に好きです。

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