(にじさんじSEEDsの鈴木勝、卯月コウ、出雲霞の三人のおなえどし組をテーマにした厨二的二次創作です)
「おい勝、なんなんだあの連中は……!」
あちこちにガタがきているカビ臭い部屋に似つかわない金髪碧眼の少年が未だ興奮冷めやらぬ様相で、別の少年へと問いかける。
「†漆黒の捕食者†と呼べと言っているだろう。くくっ…それに奴等のこと、あの卯月家の御曹司ともあろうものが推測も出来ないのか?」
銀と黒の混じる髪に、黄金の瞳を持つ黒コートの少年が軽く煽る。そこには友人故の気安さが見て取れた。
「こら、もぐもぐ君。卯月にあんまり意地悪しないの、私だって知りたいんだから」
水面のような瞳を持つ少女が改めて問い直す。この廃墟めいた部屋に居るのはこの三人のみだ。
「ああ、すまない霞。まさか奴等が二人と居る時に来るとは思いもしなくてな……以前にも何度か話したが、奴等は『機関』のエージェントだ。
おそらくは貴様らの中にも眠る種子を求めての行動だろう」
もぐもぐ君と称された少年は、その呼び方についてはどこか諦めた様子で先ほどの出来事を語る。
今宵の三人での集いの下準備として集まったところを、突如黒服の人間に襲撃されてしまったことについて。
「さっきのダークネスイーターのチカラもそうだけどよ、機関なんてモンがホントにあったのかよっ! 帝王学で護身術習得してたから無傷で済んだがな!」
「喚くなコウ…今回の件、おそらくは『機関』の中でも過激な連中の起こしたことだろう。何せ、まだチカラに目覚めていない者をも狙っているのだからな」
あくまで平静を保って語りかける黒コートの少年。彼にとっては『機関』のエージェントとの交戦は日常茶飯事なのである。
「ねえ、もぐもぐ君。その種子っていうのが狙われているとして、それってもしかしてSEEDsに関係していたりする?」
金髪の少年はどうにか自尊心でもって状況を受け入れようと足掻いているのに対し、茫洋とした雰囲気の少女は静かに現状認識を図っていた。
「察しが良いな、霞。俺様は『楽園』すなわち始祖ノ楽園のエージェントなのだ、貴様らには『いちから』システムを構築した組織と言った方が伝わるか。
兎も角、『楽園』は『機関』との対立において、未だチカラに目覚めていない者への暴力的な干渉を避ける協約をギリギリ結べており、SEEDsという括りでチカラの才を示す種子を持つ者たちを監視下においているというワケだ」
彼の語る内容はバーチャル世界における裏側の話であり、絶大な力を持つ『機関』に抗うゲリラ組織『楽園』の実態であった。
「なら今回私たちを襲って来た人たちはルール違反の過激派ってことかな」
「そういうことだ。まあ俺様も共に居たこともあって、ルール的にはグレーな部分を突いていると言えるがな」
黒コートの少年はそこで一つ呼吸をおいて再度口を開く。
「おいコウ、貴様今の話理解出来ているのか?」
「ああ、分かってる。ようするに過激な連中をブッ叩けば解決するんだろ。そのくらい卯月家の力を持ってすればーー」
「卯月家は既に『楽園』とは貴様が種子を持つことが発覚した時点で協力関係にある。が、残念ながら『機関』との抗争においては金銭の援助やコネクション以上のモノは期待出来んな。
あくまで彼らは表の権力者ゆえ」
何かあったら取り敢えずお家を頼るコウの提案はあっさりと却下された。この裏の世界では卯月家の力は届かないのである。
「卯月家が役に立たないのは良いとしても卯月の言う通りその危ない人たちを潰さないとまずいんだよね。これからどうするつもりなの?」
少女の問いを受けた黒コートの少年は答うようと開いた口を一度閉じる。
それから再び開くと、
「くっ、この拠点も割れてしまったようだ。そこそこ気に入っていたんだがな……」
「帝王学のお陰で何やら足音が聞こえたが、そういうことかよ! どうすんだまさーーダークネスイーター!」
「こいつを受け取れ、コウ、霞」
漆黒の捕食者はコートの内からハンドガンに見える物体を二人に投げる。
「そいつは心弾《Mind Bullet》対応の小銃だっ、実弾ではないから反動も少ない、使ってくれ」
「もぐもぐ君はどうするの?」
迫りつつある物音を耳にしても穏やかな態度を崩さない少女。しかしその表情には真剣さが窺えた。
「俺様は『楽園』から送られた連中のアジトの座標へと転送陣を作る! 完成次第叩きに行くぞっ」
「もぐもぐ君が今追って来ている人たちを倒すってルートは?」
卯月コウよりも鮮やかに小銃をキャッチして見せた少女は、より安全なルートは無いか尋ねる。
「一人一人は大したことないが、いかんせん増援の数が分からん。物量で攻められてはいくら俺様と雖もスタミナ切れを起こす」
「じゃあ戦うのは良いとしてよ、こんなオモチャみたいに軽い鉄砲でどうにかなんのかよ!」
「安心しろ、Dクラス程度のエージェントなら1発当てればダウンだ。心弾は肉体ではなく精神を貫く弾丸なのーーっと、来たぞ、俺様は手を離せん、背中は任せた」
漆黒の捕食者は魔法陣に対して手を添えて念じつつも司令を飛ばす。
「やるしかないみたいだね」
「おうよ出雲! 帝王学で身につけた射撃術を見せてやっぞ!」
パンッ。
ボロボロの扉が蹴破られ、黒服の男が見えた瞬間に高音の発射音が鳴り、男はすぐに部屋の外へと吹き飛ばされた。
あくまで精神への攻撃であるため、見かけ上は血の噴き出しは見られない。
「ほんとに当てるだけで良いんだね、これなら弾切れまで戦えそう」
「ちょ、出雲早ぇよ! 俺の、帝王学で養った俺の射撃テクニックの出番がーー」
「よっ、ほっ、はっ。……ん? なんか私に話しかけてた?」
出会い頭に躊躇なく弾丸を放った少女に対して金髪の少年はどこかズレた指摘をしたものの、残念ながらそれは次々突入してくる黒服への発砲音で掻き消されてしまった。
「あー、いやなんでもねーよ。ただ仮にもヤバい組織のエージェントなのに、動きが単調だなーって」
「貴様にしては良い洞察ではないか。奴等はEクラスエージェント……異能者の安価なクローンであり通常兵器が通じにくい点を除けばただの雑魚なのだ。
ただ『機関』は大量生産したそれらで人海戦術を行うから油断は禁物だがな」
言い訳めいた様子で口走られたコウの考察は意外にも的を得ていたらしく、徐々に光を灯し始めた魔法陣に手をかざしたまま漆黒の捕食者は僅かばかりの笑みを携えて語った。
それはコウヘ向けた煽りなのか、それともクローンへの憐れみなのか、答えは彼のみぞ知る。
「ぱんぱんぱぱーん♪ あぁ〜発砲の音ォ〜! んふふふふっ」
「あの、出雲さん…? 私めの出番がないのは良いのですが、人を撃つ快楽には目覚めないでいただけるでしょうか。正直怖いのですが」
「んー、でもどうせやるなら楽しい方が良いでしょ。あ、また来た」
機械的な動きのEクラスエージェントに対して少女もまた機械的に弾丸を放つ。金髪の少年はその適応力に少々恐れをなしているようだ。
「よしっ、二人とも、繋がったからこっちに来てくれ!」
そんな一幕もありつつ漆黒の捕食者は銀の光を纏う魔法陣へとコウと霞を誘う。その間も少女は入り口に湧くエージェントを撃っていた。
「転送先の座標確認! …システム起動! 転送開始っ」
三人が魔法陣の中に収まったところで彼がそう叫ぶと、一瞬にして魔法陣は掻き消えて同時に三人の姿も失われる。後には目標を失ったエージェントの群れが立ち尽くすのみであった。
「ふぅ……これで一息つけんな」
周囲が人気のない裏路地だと分かると安心したように金髪の少年が呟く。
「確かにまだ奴等には捕捉されていないが、ここはアジトの目の前だぞ、緊張感を忘れるなよコウ」
肩の力を抜きかけた金髪の少年に喝を入れる漆黒の捕食者。『楽園』の調査能力のお陰で出し抜くことに成功したとはいえ、まだ安全を獲得したワケではないのだ。
「うーん、でももぐもぐ君、少しだけ質問に答える時間はあるよね?」
「ああ、突入前に聞きたいことがあるなら答えるぞ。集中力を欠いてしまうのは良くないしな」
「それじゃ、この銃について。幾ら敵がよわよわエージェントだからと言って、こんなつよつよの武器を一切持ってないってのはおかしくない?」
少女が見る限り、彼らは単純な動きに支配されているだけでなく、ほとんど武器を持っていなかったのである。
「まず第一に俺様のように異能を持つ者はチカラを纏うだけで通常兵器は効果をなさない。故にクローンエージェントは単純に身体能力が高められており、直接的な戦闘が想定されているのだ。無論あの程度のエージェントであれど実弾への耐性は備えているぞ、奴等は異能者のクローンだからな。
そしてこの心弾は『楽園』のいちからシステムに基づく発明品なのだ」
「いちからシステムに……? 私たちも普段から放送で利用しているよね」
別名にじさんじアプリと呼ばれるソレはバーチャル世界の住人をⅩ端末に映し取り、リアル世界へと送り出すシステムである。
「ああ、心弾はシステムを媒介に回収した感情を凝縮した代物でな。放送は『楽園』の戦略の一つなのだ」
「何!? いちからはエンタメ経済圏を加速させるのが目的ではなかったのか!」
「コウ……貴様そこに反応するのか。いやだが安心しろ、感情の回収はあくまで副次的なモノだ。『楽園』の目標は平和的なバーチャル世界の維持並びにリアル世界との協調にある、何も嘘は述べていない」
にじさんじであることに誇りを持ち、というか散々利用してきた身としてコウには信じがたい内容だったらしい。
「もぐもぐ君、もしかして楽園が機関と対立しているのって、その目標と関係ある?」
「無論だ。『機関』が目指すのは異能者の暴力によるバーチャル世界の制圧、並びにリアル世界への侵攻にある。
それを防ぐために幾つものゲリラ組織が戦っているというワケさ」
くくく…とどこか誇らしげに笑う漆黒の捕食者に対し、コウは精神的に負けっぱなしなのを悔しがりつつ眺めていた。
「うん、根本は理解出来た。それでもぐもぐ君、今回君が私たちを巻き込んで潰そうとしている組織の規模とかは分かってるの?」
「それについてはどの道突入前に話すつもりではあった。ターゲットは『機関』の製作所に属する『魔骸者製作』だ、規模としては最近新設されたらしく所属エージェントも精々Cが限度であるし、研究施設の中枢を破壊すれば我々の勝利となる。
……後、巻き込むとは言うが今回の件は例外的であり俺様の側に置くのが一番安全だ。何しろ『楽園』の本拠地も同時に襲撃を受けているのでな…まあ機能不全には陥っていないが一般人を守る余裕はないのだ」
少女の真っ当な質問に漆黒の捕食者も丁重に回答する。だが彼の言葉は余裕そうな態度に反してそれなりにハードな内容であった。
「紛い物…?」
「フ、魔力のマにムクロ、人を表すモノと書いて魔骸者だ。異能者の遺伝情報を最大限に強化複製した存在であり、コストが非常に重たい反面、元の異能者よりも場合によっては強力な場合すらある代物でな……この度の襲撃はコウと霞から遺伝情報を抜き取るためのモノだろう」
『機関』の底無しの欲望に基づく開発を冷淡に語る漆黒の捕食者。だがその瞳には紛れもない怒りが灯っていた。
「マガイモノなら俺たちみたいなチカラとやらに目覚めてないヤツの能力すらも使えちまうってことか。…おい、それ既にSEEDsのみんなに手ぇかかってねーだろうな?」
「少なくとも『楽園』は認知していない……が、今回のように直接的でなければ回収された恐れもある。しかしそれは考えても仕方がない、精々SEEDsの魔骸者が作られていないことを願うばかりだな…俺様とて仲間の似姿と戦うのは抵抗がある」
漆黒の捕食者は冷徹に敵対者を屠るが、それも全ては『機関』の暴走から世界を守るという酷く感情的な理由によるモノなのだ。
孤独に戦う彼は、その生き方に反して情に厚い男なのである。
「でももし存在していて、敵意を向けてくるのなら倒さなきゃ駄目だよね?」
「……ああ、仲間のチカラを悪用されるのは戦うことより堪え難いことだ。俺様とてその覚悟はある、安心してついて来てくれ」
少女の彼を想う真剣な問いかけに、漆黒の捕食者は悲壮な決意を述べる。未だ発足されたばかりのSEEDsの魔骸者との戦闘経験は彼にも無いのである。
「はっ、何一人で悦に入ってんだよバカ。誰がお前なんかに安心するかよ、俺は帝王学修めた御曹司だぞ? 寧ろお前が泣いて俺を頼れば良い、マブだからなマブ」
「マブって単語は置いといて、私たち同いーーおなえどし組でしょ? 今まで君のダークネスイーター話をあんまり信用してなかったけど、これからは一緒に背負わせてよ」
そう言って漆黒の捕食者のまだ年齢相応にか細い手を取る二人。短い期間ながらも彼らの絆は確かなモノなのである。
「二人とも……ごめん、いやありがとう! 感謝するっ、OD組初ミッションと行こう!」
「「おなえどし?」」
「ん? お、同い年、だぞ? 別のチーム名でも良かったんだが、任務開始前に『楽園』に提出しなきゃならんし、その、急には思いつかなかったんだから仕方ないだろっ」
「「………」」
無言で顔を見合わせて顔を綻ばせるコウと霞。それはやっといつもの調子が出てきたとでも言いたそうな表情であった。
「い、いーからっ。ほら、突入するぞ! ちゃんと心弾の準備をしろよなっ」
漆黒の捕食者も表世界での日常を感じ取り、少しばかり余裕が無くなるも、どこか嬉しそうに二人の準備を促すのだった。
「あー、あー…こちらD.E.ただ今よりチームコードOD組による『魔骸者製作』の破壊任務を開始する。っと、報告完了。行くぞ、コウ、霞」
先ほどの暗い裏路地から一つ区画を移動し、マンホールを降りたところにその施設は当然のように鎮座していた。
ここが下水道でなければごく普通に見えなくもない、小綺麗な白い建造物は外に警備の一人もいない無遠慮な面持ちであった。
「おう、まさか正面突破だとは思わなかったが、今度こそ俺の帝王学で身につけた射撃術がーー」
「了解、早く片付けて御曹司に奢って貰わなきゃね」
下水道の中に強引に建てられたその施設は、立地ゆえに入り口が正面以外には存在しておらず、彼らは中枢を叩くべく正面から挑む他なかった。
「待っていたぞ、漆黒の捕食者よ! お荷物を抱えて我々に勝てると思わぬことだ!」
OD組が中に入るや否や、扉は自動で閉じられてエントラスと思わしき場所には大量のエージェントが並び立っていた。
「くくっ、わざわざ俺様相手に集まるとは愚かだな! 喰らえ、《Darkness Eater》!」
漆黒の捕食者の影が蠢き、拡がり隊列を組んだエージェントたちを丸ごと飲み込み、光に溶けた。そこには何も残らない……彼のチカラは多対1に非常に有効なのである。
「え、これ私たち要る?」
「だから安心しろと言ったろう。ただ俺様の捕食が妨害されないよう、サポートを頼みたい」
思わず素が出てしまったような少女の発言に漆黒の捕食者は支援を要求する。如何に強力な異能者と言っても思わぬ隙を突かれる可能性は捨てきれないのだ。
「けっ、かっこつけやがって。今回ばかりはリーダーを譲ってやるが、俺の異能が目覚めた時にゃあ覚えてろよっ」
文句こそ言うものの、漆黒の捕食者の方針に異を唱えるつもりはないらしい。その辺りが帝王学で身につけた臨機応変さなのであろう。
「ふざけるな! お前のようなガキにーー」
「Darkness Eater!」
「き、『機関』に栄光あれ!」
「Darkness Eater!」
「くははははっ! 私が倒れてもお前たちはここでお終いだッ」
「Darkness Eater!」
『楽園』の情報通り、強力なエージェントは揃えられていないらしく、一行は破竹の勢いで奥へ奥へと、深く地下へと進んでいった。
そして階段をまた一つ降りると、そこは今までとは異なり明かり一つついていない広々とした空間であった。
「ここが最後か?」
途中何度かエージェントの異能を浴びせかけられつつも心弾によって応戦した金髪の少年が、少し疲れた様子で仲間に尋ねる。
「だと良いのだが……まだ俺様たちは連中の装置を見つけられていないぞ」
「どんな装置なのか知らないけど、見逃しているとかじゃないよね?」
「ああ、それは無いとーー」
『よく来たな、漆黒の捕食者。そして未だ目覚めぬ種子ども』
突如広い部屋が証明によって照らされて、その全貌が明らかとなる。
あちこちに焼け焦げた跡や、砕かれた壁や床、それからおそらくはヒトだったはずの黒焦げの物体が転がるその場所は、一種のスタジアムのような様相を呈していた。
マイクを使って声を発する者は白衣姿で、奥まった場所に設置された客席らしきボックスの中に居た。
『お前たちの求めるモノは此処にある……だが、今までの職員どもは組織として成り立たせるための数合わせに過ぎん。これからが本番だ。
絶望を味合わせてやれ、AZ-009』
彼がそう述べると同時に一部の床が開いて立方体の檻が姿を現わす。その中には黒い炎に包まれたヒト型の存在が君臨しており、放たれた。
「ガァァァァアアア!!」
「まずい! 貴様らは下がっているッ、《Darkness Eater》!」
その身体から雄叫びと共に発せられた黒い炎の奔流を喰らうかのように、漆黒の捕食者の影が塞ぐ。
「なっ、クソっ出雲! ここにいちゃアイツの邪魔になるッ、階段まで戻っぞ!」
「う、うんっ」
漆黒の捕食者の中に黒い炎が駆け巡り、捕食したその熱さは痛みを伴って鎮火されていく。
『逃しはせん! 漆黒の捕食者よりも材料としてはお前たちの方が希少性があるんでなっ』
OD組の降りてきた階段は一瞬にして崩れ落ち、そこには地下深くまで広がる穴だけが残った。
この荒っぽい使い方からして、白衣の男は始めからこの施設自体を守る気は無かったのだろう。
「グウゥゥゥゥゥゥ…!」
黒い炎では焼き尽くせないと悟った魔骸者は、同じく黒い炎に包まれた拳を漆黒の捕食者へと向ける。
「速いっ、だが避けきれないほどではないなっ……! 奴のチカラを掠め取れ、《Darkness Eater》!」
蠢く影は触手のように滑らかに魔骸者の拳に巻きつく。全てを飲み込むよりは攻撃性には劣るモノの、その対応速度は当然細めた方が速いのである。
「ガルゥウウウ!!」
魔骸者は獣のような唸りをあげて闇を食いちぎる。その後には黒の取れた橙色の炎だけが残った。
『AZ-009、漆黒の捕食者ではなく出雲霞と卯月コウを狙え』
指示が届いた瞬間に魔骸者はそれまで睨んでいた漆黒の捕食者が見えなくなったかのように入り口の二人へと駆け出す。
「待てッ! 止まりやがれ!!」
急速な方向転換に出遅れたモノの、漆黒の捕食者は魔骸者の脚を縛り付けることに成功する。が、敢えなくその拘束は破砕される。
元よりDarkness Eaterのチカラは喰らうチカラであって、何かを縛り付けるような効能は有していないのだ。
魔骸者の一切の犠牲を厭わない全力の突撃はコウの銃撃を受けても止まることはなく間も無く二人の喉元へと届く……はずだった。
「おいマサル、お前の側が一番安全じゃあなかったのか? あぁ?」
少女の髪は黄色が混じり、瞳は赤く輝いていた。そして何より彼女の拳からは目を覆うほどの鮮烈な電光が迸っていた。
一方の魔骸者はと言うと殴り飛ばされて痺れ上がっていた。
「姉御ォ!? ちょ、勝これどうなって…」
「…すまない。†憤怒ノ靇†《Thunder Bolt》(フンヌのロウ)よ、俺様の力不足だ」
動揺するコウと変貌した少女の元へと駆け寄る漆黒の捕食者。
『なっ、巫山戯るな! 出雲霞が既に目覚めているとは、馬鹿な今すぐ連絡をーー』
「チッ、余計な真似はさせねえよ」
少女の手元から放たれた雷の矢は、白衣の男のボックスに刺さり、内部の機械を有り余る電気によって故障させてしまう。
「姉御かっけー……」
霞が異能を行使したことや、それを漆黒の捕食者が知っていることなど疑問をいだきつつも、圧倒的なチカラを見せた雷を操る彼女に魅入ってしまったらしいコウは言葉を失っていた。
「おらマサル、さっさと片付けろ。処理にはお前のチカラが適任だろ?」
「ああ、そうだな。憤怒ノ靇、謝罪は任務が終わってからさせて貰おう、《Darkness Eater》!」
転がっている黒い炎に覆われたヒト型を闇が包み込む。そのまま魔骸者の存在を喰らうつもりなのだ。
「お、おい捕食者ァ! やめろ、AZ-009をお前のチカラで喰らえば……、げほっ、げほっ」
白衣の男は先ほど浴びせられた電撃に苦しみつつも肉声で叫んで咳き込んで伏せってしまう。
「奴は何を言ってーーくっ、これは……『機関』の暗黒物質っ? まさかこいつの黒は制御するためのっ、ぐううぅっ」
「え、おい勝っ。どうしたんだよ」
漆黒の捕食者は、突然目を見開いて膝をつく。彼にとっては懐かしくも辛い過去の痛みが蘇っているのだ。
「暗黒物質は『機関』が異能者を強制的に利用するために使われる、バーチャル世界の歪みだ…調整もせずに迂闊に触れれば、狂気に取り込まれる、らしい」
「あ、はぁ姉御はご存知なんですね。って、それ大丈夫なんですか?」
思わず丁寧語が溢れ出てしまう金髪の少年。普段の少女とは違い、妙な迫力があるのだ。
「さあな。ただマサルは暗黒物質の経験者だ、死にはしないだろ」
「へ? それって勝の奴ーーっておい、大丈夫か勝っ」
「くくっ、随分と買ってくれるじゃないか、憤怒ノ靇……」
フラフラと漆黒の捕食者は立ち上がり、それを急いでコウが肩を貸す。
「無事で何よりだ、お前が死ねば霞が悲しむからな。それとアタシを呼ぶ時は靇だけで良い、いちいちコードネームをフルで呼ぶんじゃねぇ」
「フ、少々キツいトラップも待っていたが何にせよこれにて敵戦力は殲滅完了だ。後はここを爆破して帰還するだけだな、憤怒ノ靇」
「おい」
「…あ、はい靇さん」
「いやそうじゃねえ、アレ、まだ終わってねぇんじゃねーか?」
強い口調から漆黒の捕食者も勘違いしているが、憤怒ノ靇もまた霞の一部であり、彼女と同様に寛大なのである。
自分で注意した呼び方を守らなくてもキレるようなことはなく、彼女が気にしたのは既にDarkness Eaterのチカラは収まっているのにも関わらず、まだ消えていない炎であった。
「あははははは! バレてたか!! 驚かそうと思ってたんだけどな!! あ! あたしを暗黒から解放してくれてありがとな!!! 後はあたしがマガイモノから本物になるために戦って貰うね!! どっちからでも良いからかかって来なよ! じゃないとその能無しから潰すよ!!!!」
橙の炎は拳と足に集約し、ヒト型の部分が明らかになる。
燻んだオレンジの髪に紺色の瞳、焦げたようなやや褐色の肌をした小柄な肉体。それは本物を半端に模したまさしくマガイモノと呼ぶに相応しい様相であった。
「はははははっ、馬鹿な真似をしてくれたな! そいつは暗黒物質を使って弱めることで初めて制御出来た化け物だっ! 他のAZシリーズを全て壊しやがった最低の最高傑作なんだよ! 実験の際に対処したSランクエージェントもいない今、その魔骸者を解き放つのは自殺行為だっ! もう終わりだ私もお前たちも! 終わりなーー」
「長い!!! ネタバラシはもっと短く分かりやすくしてよね!! あははは!」
AZ-009がツッコむと、白衣の男が口を挟む暇もなく燃え上がってしまう。男が述べた通り先ほどまでの黒い炎を扱っていた状態よりも自由度が高いようだ。
「靇、重ねてすまないが……」
「お前が不調なのは目に見えているからな、あまり霞の身体を傷つけたくはねーが、やってやるよ」
「いや、時間を稼いでくれ。秘められし指輪のチカラを解放する」
そう言って漆黒の捕食者はキラリと光を反射するオニキスを憤怒ノ靇に見せる。
「フン、やる気になっているところ悪いが、別にアタシが倒してしまっても良いんだろ?」
「それは勿論構わないが、無理だけはしないでくれ」
「ねーねー!! まだ!!?? そろそろあたし我慢出来ないよ! どれだけ話し合っても全員あたしがぶっ殺してあたしが本物になるから関係ないし!!!」
彼女の苛立ちを表すかのように部屋の各所から炎の柱が湧き上がる。テンションのせいで分かりにくいが、AZ-009の願望は真剣そのものなのだ。
ーー 少女の視点 ーー
「うるせーよ、偽物、アタシが相手してやるよ。ったく、こんな見苦しいモン霞に見せずに済んで結果的にゃあ良かったぜ」
拳を掌にぶち当てて雷光を迸らせる憤怒ノ靇。霞を傷つけたくないと言っていた彼女はそれでも、どこか自分のチカラを発揮出来ることに喜びを感じているようでもあった。
「は!! 煽るねえ!!! 良いよねぇ生まれながらにして特別な本物は!! ははは! …ぶっ殺してやるよイカスミ女ァ!」
血走った瞳で叫びながら無茶苦茶なフォームで疾走するAZ-009。しかし怒りの感情に呑まれた彼女は直情的な動きが多く、靇は容易く回避して雷を落とす。
「パワーだけ高くても大したこと無いな。目覚めてすら居ない本物の方が動きが良いんじゃないか?」
「あは! あははは!! 殺す! 殺す殺す殺す!! 何も知らない本物が!!! 調子に乗るなよ!! お前が力尽きるまで追い回してやる!」
AZ-009の感情が安定していないことを察した靇はわざと煽りを続けて、隙を狙っているのだ。
彼女は霞と同様に寛大ではあるが、霞を傷つけ得る者への容赦は一切ないのである。
ーー 少年の視点 ーー
崩れた壁の裏に身を潜める二人のうち、金髪の少年が口を開いた。
「なあ、勝。お前は出雲がああなるってこと知ってたんだな?」
「……ああ、だがあれは霞本人には自覚がない異能だ。それに霞の中の彼女たちは皆、霞の平穏を望んでいた。
故に俺様も『楽園』も彼女は目覚めていないことにしている。今回のことは本当にイレギュラーで、俺様のチカラが足りなかったせいで起きてしまった出来事だ…だからせめて苦労をかけないように指輪で一気にあの魔骸者を闇に葬ってやるつもりだ」
漆黒の捕食者は先ほど自身を蝕んだ暗黒物質をも指輪に注いでチカラを溜める。捕食したチカラを利用出来るのも彼の強みなのだ。
「そっか、じゃあ俺がハブられていたワケではないんだな…」
「この状況でそれを気にするのか貴様は。やはり陽キャはただの自称ではないのか?」
「は、は? 俺はあの卯月家の御曹司だぞ、超ウルトラハイパーロイヤル陽キャに決まってんだろっ」
漆黒の捕食者はもう少し霞の異能に関する質問や指輪のチカラについての情報を求められるかと推測していたため、気が抜けたようにいつものように煽ってしまう。
「くくっ、そうだったな…コウ、貴様のチカラも貸してくれ。その方が早く奴を呼び醒ませる」
「お、おう? 能無し呼ばわりの俺で良ければ幾らでもやっぞ」
「フン、貴様はまだ目覚めていないだけだ。種子のチカラを引き出させて貰うぞ」
当たり前のように快諾したコウに、漆黒の捕食者は嬉しそうに笑みを浮かべて指輪をコウの額に当てる。
「うっ……ぐぽぐぽ、じゅっぽじゅっぽされてるぅ」
「おい、何故か下品に感じる効果音はやめろ、普通に気持ち悪い。あと雰囲気的にはシュイーンって感じだぞ、この吸収音」
「見解の相違というヤツだな、まだガキのお前には理解出来ないことを言ってしまって悪かった」
「知っている方がどうかと思うぞ……」
漆黒の捕食者はこの男が計算して馬鹿な話をしているのか、それともただの素なのか分からずにいた。
すぐ近くでは怒声と炎と雷の音が響き渡っているというのに。
「あ、そういや一つ思ったんだけどよ、あのマガイモノって……」
「アズマさんが元となっているのは間違いなかろう」
パーツ一つ一つはズレているモノの、総合して見れば名伽尾アズマを模していることは明快である。
「たしか楽園は認知していなかったんだよな、その遺伝子の採取」
「ああ、だがアズマさんには思い当たるエピソードがあるな…覚えているか、先日彼女がカラスに襲われていたことを」
「はー、なるほどな。カラスに襲われることに違和感が無いし、厄介なこった」
襲い来るカラスの中に機械で象られた存在が居たとしても、なかなか気付けないことだろう。
「何、今回は暗黒物質によって苦戦を強いられたが、今後他のSEEDs産魔骸者が出て来ようとも俺様がきちんと処理してやるさ」
「……なぁ、それってどうしても消さなきゃいけないのか? あのAZ-009が厄介だってのは確かだけどよぉ」
「敵に情けをかければ死ぬのは自分だ。そして俺様が死ねば『楽園』の戦力を落とすことになる、それは避けねばなるまい。
ただ貴様が嫌がるのも理解出来なくはない、そして異能に目覚めたとてエージェントとなる必要性は絶対ではないから気にするな……まあ自分の身は守らなければならんだろうが」
漆黒の捕食者は手段に固執しない。彼は強大な『機関』と相対するために温い感情を捨てているのである。
とはいえ、表世界での生活においてはその限りではないが。
「そっか……あー分かんねぇな、やっぱり。チカラを得てもっと機関のことも楽園のことも知らなきゃダメだわ。テキトー言って悪かった、今度卯月家のデータベース漁ってみる」
「フン、貴様のそういう向上心、嫌いではないぞ」
「よせよ、男同士でそんなこと言うとキモいだろうが」
「「………」」
微妙に照れた二人はお互いに顔を逸らすも、漆黒の捕食者の指輪をコウの額に当てているので、距離は空けられなかったのだった。
「はぁ、はぁっ…ったく、霞は体力がねえなぁ」
「あははは!! 幾ら異能が強くても! スタミナが無ければただの雑魚!!! ようやく一人目のオリジナルを殺せる!! 殺せる殺せる殺せる!!!!」
憤怒ノ靇は力強い性格をしているが、その身体を一番使う出雲霞は決して運動に向いている人物ではないため、異能抜きにした腕力や筋力は一般的な女子中学生の域を超えていないのである。
「フン、それはどうかな」
漆黒の捕食者はAZ-009から靇を守るようにして割り込んでくる。彼の身体を苦しめた暗黒物質は全て指輪のチカラに変換されたため、すっかり好調なのである。
「ああ!!?? 邪魔するならてめぇからぶっ殺す!! 精々女を庇って死ぬんだなぁ!!!」
漆黒の捕食者のあたかもヒーローなような行動に苛立ちを覚えたのか、AZ-009は勢い良く異様なまでに熱い炎の拳を放つ。
「我が指輪を通じ、漆黒に求める!」
漆黒の捕食者が腕を掲げて叫ぶと時が止まったかのように、時間の流れが遅くなる。その中で彼だけが正常に動けるのだが、それは口と喉だけに限られていた。
「求むるは至高の力! 竜の血脈の祖にして覇、闇を司りし者よ! 契約の下に捧げるべき供物は用意した……我が呼びかけに応じ、今此処に顕現せよ! ダークネスドレイク!」
決められた文言を述べ切ると、小さな指輪からは考えられないほど巨大な質量を持つ存在が湧き出てくる。
それは三本のツノを持つ、真っ黒な鱗の竜であり、間も無くその虚構から這い出て来たような輪郭は露わとなる。そこで時は正常な流れを取り戻し、炎の拳は凶悪な形相の竜に当たってしまう。
「なっ!! これはお前のチカラじゃないだろ!!! 何を呼んだ! 何を呼んだんだお前はぁ!!」
「やってくれ、ダークネスドレイク!」
漆黒の捕食者にはAZー009の嘆きに構っていられるほどの余裕はなかった。あまりにも強いチカラを持つダークネスドレイクは彼自身操るのが困難な上、その存在の維持にかかる負荷は並大抵のモノではないのだ。
そう、オニキスの持つ魔除けのチカラとはより強力な魔で他を退けるモノなのである。
「フー…ゴォォォオオオオ……」
それをこの竜も理解しているのか、やれやれといった様子で息を…黒き覇竜のブレスを吐く。かの存在からすれば、少し力んで深呼吸を行うようなモノだが、人間からすればそうらいかない。
吐き出された息は、暗黒物質に囚われていたAZ-009の炎とは比べ物にならないほどドス黒く、瞬く間にあらゆるモノを灰燼に帰させてしまう。
「契約は履行されたッ、ダークネスドレイクよ異界へと帰還せよ!」
AZ-009の肉片は欠片も残らず灰となり、竜がこれ以上の破壊をしないように漆黒の捕食者はすぐさま召喚を終了させる。
「クアァアアァァァ……」
ブレスをやめた闇の竜は怠そうに欠伸をしながら、その身を粒子へと変貌させていき、やがては大気に溶けるかのように姿を消した。
しかし最後まで行われた欠伸でさえも、ただでは済まず、音だけで施設の天井や壁にヒビを入れてしまっていた。
「ほんっと、イカれたチカラだね、ソイツは」
「ああ、イカした指輪だろう? っと、軽口を叩いている暇はないな、靇、動けるか?」
ダークネスドレイク召喚の余波で、急造されたであろう研究施設は崩れ始めていたのだ。
「問題ねえよ、少し眠てぇだけだ。ただアタシが眠っちまう前に一つだけ言っとくぞ…霞をもっとちゃんと守れ。危険な目に遭わせるんじゃねぇ。良いな?」
ややフラつきながらも靇は漆黒の捕食者の胸倉を掴んで要求する。彼女にとってはそれが一番大事なのだ。
「無論だ、俺様に出来る最善を尽くす。コウも霞も俺様の大切な友人だからな」
「その心意気は信じてやるよ」
そう言ってあっさりと手を離す靇。元より彼のことを認めてはいたのである。
「おいおい、お二人さん。何をシリアスな空気出してんのさ、時間食っちまったが今夜は俺たちの初コラボなんだぜ? もっと楽しさオーバードースで行こうぜっ」
真面目な雰囲気を壊す気満々で漆黒の捕食者と靇の間に入り、二人と肩を組みつつ朗らかに話しかけるコウ。
色々と残念な面も多いが、なんだかんだでムードメイカーの素質も持っているのである。
「アタシは別に出番が無ぇから良いが、霞の奴は大丈夫か…?」
「あっ、まずいまだ準備終わってないっ。早く帰るぞ! 帰還専用システム起動っ、『楽園』へと戻れ!」
放送に向けた準備が途中であったことに気付いしまった漆黒の捕食者は急ぎX端末を操作して、肩を組んだ仲間たちと共に姿を消したのだった……。
「と、いうワケで母様特製の魔道具でダークネスドレイクを呼び出して勝利したのだ」
帰還したのち、目が覚めた霞は放送の流れを何度も確認して進行を覚え、勝は放送時の表示関連を練習し、コウはぼんやりと二人の作業を眺めて頷き、無事おなえどし組の放送を終えたのだった。
その後彼らはすぐにファミレスから撤収して、通話で途中から眠ってしまった…ということになった霞に事の顛末を話しているのだった。
「あー、もぐもぐ君のお母さん、すっごい良い人だよねー。というかそれってもぐもぐ君のダークネスイーターより強いんじゃないの?」
「おお! そりゃそうだぜ出雲、なんてたってあのドレイクは存在感が違ったからな、このちっこいイーター君と違ってなぁ」
「だ、黙れっ。ダークネスドレイクは強力な分コストも大きいし、何より《Darkness Eater》と違って伸び代がないんだよっ。
だからそう、どっちの方が優れてるとかそういうのは無いのっ」
一先ずOD組の任務は達成され、『魔骸者製作』は滅びた。それによって三人の平和な時間は取り戻せたが、今回のように『機関』の一部がまた暴走することは十分に考えられることでもあった。
「そこでダークネスイーターが最強って言わない辺り、もぐもぐ君はお母さん想いの良い子だよねー」
「ああっ、確かに可愛いマザコンだなっ」
「うるさいぞっ、全く……俺様は今日の報告書を作成するから通話も切るからなっ」
だが彼らの戦いは無意味ではなかった。
彼らが動かなければコラボをする暇など無かったし、オリジナルを敵視する炎の魔骸者がSEEDsのいずれかを狙っていたかもしれないのだ。
「あれー? 勝それだいたい楽園も把握しているから今週中に出せば良いって言われてなかったかー?」
「え、もぐもぐ君いじけてるの? ごめんなさい、もぐもぐ君が可愛くってついいじっちゃうの。許して欲しいなぁ」
「別にいじけてねーしっ、やらなきゃいけないことを早めにやりたいだけだしっ。でもまあ、貴様らがどうしても俺様と話し続けたいと言うなら話してやらんでもないぞ」
何にせよ、彼らがこの平穏な時間を共に過ごすことに変わりはない。
「はーい、どうしても話したいでーす」
「俺もマブと話したいに決まってんだろー?」
「くくっ、そ、そうかなら仕方ないなっ」
こうしてOD組の夜は更けていくのであった。
了