東方遊戯王VRAINS -EYES DRAGONS' ROAR-   作:坂本コウヤ

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どうも、第2話が書きあがったので、投稿します。

いや~、最近暑いですね。皆さん、体調管理や水分補給は大丈夫ですか? 自分は少しバテ気味だったりします。

それにしても、久々に書いたけど衣玖さんの口調が意外とムズい。初めて書いた永琳先生やにとりより。何でだろう・・・。
それと、今回は前回の続きなので、デュエルは無しです。期待してた方、ごめんなさい。


あと、活動報告にて一つ伝えたい(?)事を書かせていただきました。興味があれば、ぜひそちらも見に来てください。

それでは、どうぞ!!



第2話:河童の頼みと師匠の無茶振り

Side 天子

 

「ハァ~、疲れた~・・・。」

 

 

頭につけてたヘッドギアを外し、溜まっていた息を吐き出す。ヘッドギアは外れると自動で折り畳まれ、デュエルディスクの所定の位置に取り付けて一纏めにしておいた。ちなみにディスクはまだ左腕につけっぱなし。

ヘッドギアを外すと、私達のいた空間が暗転していき、再度明かりが灯ると、無機質な白い、機械的な空間が広がっていた。いや、この場合『戻ってきた』と表現したほうがいいんだっけ?

 

鈴仙の方も、最後の攻撃で吹っ飛ばされた状態から回復しており、ヘッドギアを外してデュエルディスクと一纏めにしていた。デッキや使用したカードはディスクから既に外してケースにしまったようで、ディスクも腕から外していた。

 

私達がデュエルを終えて一息ついていると、無機質な部屋の一角が開き、そこから小さい青髪ツインテールの帽子を被った河童の『河城にとり』と、赤と青のツートンカラーのあべこべな感じの服を着た三つ編み銀髪の医者で鈴仙の師匠の『八意永琳』、それと緋と白の羽衣と黒いロングスカートをはいた(鈴仙の表現を借りるなら『ぱっつんぱっつんの衣装』)、これまた黒い帽子に赤い触角のような飾りがついたのを被った私の従者、『永江衣玖』が入ってきた。

 

 

「いや~、お疲れさん二人とも! なかなかいいデータ取らせてもらったよ~!」

 

 

入ってきて開口一番、にとりがそう言った。コイツがここにいるから察したかもしれないけど、ここは河童の開発した実験室の一つで、主に新型デュエルディスクの研究などで使う場所らしい。今回、私と鈴仙は、その新型デュエルディスクの運用テストをするのに協力していたの。何故か初めから、私が使う事を前提にして設計されたようなものが存在していたのは、少々疑問だけど。

因みに、このデュエルディスクは私達が以後使用しても問題はないらしいから、遠慮なく貰うことになってる。まぁ、その代わりこうやって、何かデータ取りとかで協力しないといけないらしいけど、まぁ些細なことでしょ。

 

 

「見事でしたよ、総領娘様。鈴仙さんも。」

 

「えぇ。久しぶりに、なかなか見応えがあるデュエルを見れたわ。流石、幻想郷を代表するドラゴン使い、って所かしら。」

 

 

衣玖と八意永琳も、私達に労いの言葉をかけてきた。そんな師匠でもある八意永琳の言葉に、鈴仙は首を横にふって言葉を返した。

 

 

「いえ、姫様や衣玖達と比べたら、まだまだですよ。今回のデュエルを通して、私ももっと強くならないとって、思ったので。」

 

「う~ん、私は充分、鈴仙は強いと思うけど。さっきのデュエルだって、正直どっちが勝ってもおかしくなかったし。」

 

 

これは私の本音だ。実際、鈴仙のレッドアイズ達によるバーンコンボは、1回のダメージ量が並みのバーンデッキの比じゃない。あんなもの何回も防いでいられないし、そのバーン効果は基本的にモンスターの効果とはいえ、そのタイミングも様々。しかも今回みたいに罠でのバーンや、1回じゃすまない継続的なバーン効果が、何より強力だと思う。ただ、鈴仙的にはまだ、満足できるレベルじゃないらしい。

 

 

「ううん、天子がデュエル中に言ってた『相討ち覚悟の自爆』って言葉。私としても、アレはどうにかしたいと思っててね。『レッドアイズ・バーン』もファイナル・フュージョンも、発生するダメージ量はとんでもないけど、そのダメージは自分にも及ぶもの。おまけに、ファイナル・フュージョンは私達みたいに、融合体をエースに据えている相手でないと腐ってしまうし、何より今回みたいにバーンダメージ以下のライフだと引き分けにしかならないからね。」

 

「なるほどね。」

 

 

まぁ、確かに鈴仙の言いたい事も分かる。いくら一撃で仕留められるバーンダメージが発生しようと、それが自分を巻き込むものでは、バーンデッキとしてはあまりにも本末転倒だ。ただ、レッドアイズは元々ビートダウンを主体としたバーンコンボのデッキだし、攻め方が多彩なんだから、何もバーンだけに頼る必要もないとは思うけど。

と、私がそう伝えると、鈴仙は微妙な表情をしてこう言った。

 

 

「・・・確かにそうなんだけどね。でも、正直あなたや姫様みたいに真正面から殴りかかるってやり方が、どうもあってない、っていうか。」

 

「まぁ、言いたい事は何となく分かるけど。ようは、私やアンタの所のお姫様、え~っと輝夜だっけ? アイツみたいに正面からデカいパンチを顔面に叩き込むんじゃなくて、相手を翻弄しながらあちこちにブチ込んでいくっていうのをしたいって事でしょ?」

 

「ちょっと突っ込みたい所はあるけど、まぁ概ねそんな感じかな。」

 

「全く、あなた達ってホント、いつ見ても真逆なようで仲がいいわよね。」

 

「そうですね。お互いの励みになってるようで、まさに『永遠のライバル』という言葉がお似合いです。」

 

「なっ!?」

 

「あら、たまには良いこと言うじゃない、衣玖♪」

 

 

いつもは私に辛辣な言葉を投げてくる従者が言った言葉に、私は上機嫌で言葉を返した。鈴仙はそれが恥ずかしかったのか、顔を赤くして驚いていたけど。フフッ、こういう所は、ホントかわいいと思うんだけど、毎度「楽しくない!!」とか、心にもない事をいうのは何でなのかしらね? あのデュエル中の感じからして、楽しくないっていうのは嘘でしょ。相変わらず、そこだけは疑問な私だった。

 

 

 

 

Side 天子 out

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Side 鈴仙

 

あ~もう! 衣玖ってば何で、あのバカと私を『永遠のライバル』とか言うのよ?! 私と天子はそんなんじゃないから! ただ、あっちがしつこく絡んできてる仕方なく相手したりとか、勝手にライバル視してるだけだから!! ほら、あのバカ天子があなたの言葉で余計に増長しちゃってるじゃないの!!

そんな思いを込めて、衣玖を睨み付けると、何故か生暖かい目で見られた。何? 私が照れて恥ずかしがってるとでも? そんなんじゃないから!

 

 

「衣玖、あなたそれぐらいにしてあげなさい。ウドンゲをそれ以上からかわないで。」

 

「すみません。彼女、鈴仙はからかい甲斐があるので、つい。」

 

 

私の師匠の八意永琳先生が止めてくれたお陰で、何とかその場は収まったのだった。助かった、これ以上何か言われたら、流石の私も我慢の限界だったのだ。師匠にはあとで、お礼を言っておかなくっちゃ。

そう考えていると、にとりがまた口を開いた。

 

 

「そうだい、二人とも。新しいデュエルディスクの使い心地はどうだった?」

 

 

にとりが聞いてきたのは、今回使った新型デュエルディスクの使い心地だった。まぁ、作った側として、こういうのを聞くのは当然よね。薬しかり、料理しかり、デュエルディスクなどの機械しかり。作ったものの感想や意見を求めるのは、ある意味作った側としては当たり前だ。

 

 

「そうね、私としては、悪くはなかったかな。ちょっと本体が前より大きくはなってるけど、モンスターがまるで本物に近くにいるみたいで、すごく臨場感があったし。」

 

「私も同じね。あっ、ただ私の場合、前までみたいに手札として持ってた実物のカードがなくて、ちょっと手持ち無沙汰な感じはしたかな。でも、サーチカードとかを一々デッキから探したり、ディスクを触って検索したりする手間が省けたのは楽かも。」

 

「あ~、確かに。あと、一つだけ気になったのは、一々効果を相手から聞かないと分からない点かな。出来れば、相手の場とか、墓地のカード効果を任意で可視化出来るようにしてほしいかな。」

 

「なるほどね。まぁ、効果確認に関しては、多少システムの方を弄れば、自動的にディスクの方でアップデート出来るから、そっちは後ですぐ済ませるよ。」

 

「ありがとう。・・・それにしても、凄いわね。パワー・ビジョン・システム。」

 

「今までのよりも、より現実にモンスターがいるよう感じられる仕様にしたしね。まぁ、外から八雲紫が持ち帰ってきた技術があったからこそ出来たことではあるのが、ちょっと悔しいけどさ。」

 

 

そう言うにとりの表情は、作れた事に関する喜びと、ちょっとばかりの悔さが混じっていて、複雑な心境をよく表していた。やはりそこは技術者。彼女としても、作るからにはやはり、自分で一から到達したい目標があるのだろう。こういうひたむきな性格が、やはりにとりの良いところだと、私は思う。

 

 

「なら、いつかにとりの力で、新しいデュエルの姿を見せて。その為なら、私もこのバカも、協力は惜しまないから。」

 

「鈴仙・・・。」

 

「・・・バカは一言余計よ。でもまぁ、こんな楽しいデュエルが出来るなら、私も手伝ってやらなくはないわ。一番のライバルは鈴仙だけど、他の奴らともこういうデュエルをやりたいしね!」

 

「天子・・・。っ、わかった! なら、これからもよろしく頼むよ! 報酬は弾むからさ!」

 

 

にとりはそう言って、ニカッと笑った。うん、やっぱりにとりはこう笑ってる方が見てて安心するな。まぁ、たまにちょっと悪そうな笑みを浮かべる時があるけど、そこは正直、打算とか考えてる人特有の表情って気はするし。

 

 

「あっ、そうだ。一つ気になってたんだけどさ。」

 

「ん、どうしたんだい天子?」

 

「私側のデュエルディスク、何か初めから、私が使う事前提で作られてる感じがしたのよ。デッキもデータを見たら、私が使ってるのとほぼ同じ感じだったし。」

 

 

そういえば、天子のデュエルディスクは、手札はおろか、使うデッキとかも全てデータとして保存・登録されていて、登録したデッキデータをデュエル前にディスクにロードする感じなんだっけ。確かに、そういう仕様なら、使うのは天子でなくてもいいはずだけど、アレにはどうも初めから、天子のデッキデータが保存・登録されてたらしい。それは何でなんだろう。

 

 

「あ~、それは元々、技術を八雲紫から受け取った時に、『ブルーアイズ』デッキとおぼしきデータも一緒にくっついてきててさ。」

 

「そうなの?」

 

「はい。ちょうどその時、私もにとり様のお手伝いをしていましたし、送料娘様のデッキ内容自体は、私がある程度把握していたので。」

 

「あ~、そういえば一時期人手がどうとかで、河童の所に手伝いに行くとか言ってたわね。そっか、それで『私が使う事前提で作られてる』ように感じたのか。」

 

「はい。あっ、ちなみにその時点で、実際のカードを使う側のディスクの第一号を使うのは、鈴仙に決まりましたよ。」

 

「・・・うん、何かそんな気はした。」

 

 

データのデッキを使う方がブルーアイズ、つまり天子となれば、当然その相手は私となるのだろう。認めたくないが、幻想郷ではわりと私と天子は、対の存在としてよくあげられる。ブルーアイズの高火力による、数と質の暴力という圧倒的な力で相手を真正面から叩きのめす天子と、火力はそこそこながらも、レッドアイズ達の息もつかせぬ高威力のバーンダメージの連打で敵を葬る私。何よりも青眼の白龍(ブルーアイズ・ホワイトドラゴン)真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)という、対となるようなドラゴンを使っているのが、その印象を大きくしてるんだと思う。

因みに余談になるけど、原作でいう『ブルーアイズのライバルはブラック・マジシャン』という図式はこの幻想郷だと成り立たない。理由として『ブラック・マジシャン』の使い手はいるにはいるけど、そもそも天子の眼中に存在してないのが一番の原因だと思う。ドラゴン以外を余り見ておらず、デュエルを挑みたい相手の前提が、『切り札がドラゴンの相手』っていう時点で最早色々お察しである。

 

 

「にしても、外の世界のブルーアイズ使い、ね。是非ともデュエルしてみたいわね。」

 

 

そんな天子は今、獰猛な笑みを浮かべて、遠くの方を見ていた。あの子はまだ見ぬ敵であろうと、ドラゴン使いの決闘者(デュエリスト)がいると分かると、すぐあぁいうスイッチが入るのよね。まぁ、私もあの笑みの標的にされた一人だ。そんな機会が訪れるかどうか知らないけど、案外あのバカなら無理矢理にでもそんな機会を手にしてしまいそうだなと思い、私はその外の世界のブルーアイズ使いさんに軽く同情した。

 

 

「そうだ、早速頼みがあるんだけどいいかい?」

 

「ん?」

 

「何、どうしたのにとり?」

 

 

にとりの言葉に、私と天子は同時に顔をそちらに向ける。まぁ、私はさっき協力は惜しまないと言った手前、余程無茶な提案でもない限り、頼みを聞くつもりだ。天子は・・・、まぁデュエル出来るなら何でもいいのかな。主にやるのは私とだけど。

 

 

「実はさ、二人にはこの新型デュエルディスクを使って、データ取りをしてきて欲しいんだ。」

 

「データ取り?」

 

「うん。実はそのデュエルディスク、元々八雲紫がいうには、どんな場所でも、どれだけ離れていてもデュエルが出来るようなシステムがあるらしいんだけどさ、その辺を構成するシステムに関するノウハウが圧倒的に足りてなくてね。だから、そのデュエルディスクを使って、そのデータ取りをして欲しいんだ。」

 

 

にとりの頼みを聞いて、少し考える。なるほど、確かにこういう機械のシステムを作るにしても、培った技術がそもそも存在しないとなると、作るのはかなりの時間を要してしまうだろう。だから、私と天子に、そのノウハウを得るためのデータ取りをしてほしい、という事なんだと思うんだけど。

ただ、それをこの幻想郷でするのが不可能なのは、にとりにも分かるはず。じゃあ、どこでデータを、と、そこまで至った所で、嫌な予感がした。すると、同時に真上から声がかけられた。

 

 

「ハロー♪ 呼んだかしら?」

 

「呼んでない!」

「まだ呼んでないわよ。」

「まだ呼んでませんよ。」

「お呼びじゃないわよ、このくそアm「あっと、手が滑っちゃったわ~。」、ギャン!?」

 

 

悲鳴とズシンという音と共に墓石に踏み潰される天子(バカ)。そして、その上に優雅に降り立ち座るのは、この幻想郷において知らない人はいない、幻想郷の大賢者『八雲紫』。普段は霊夢を愛でたり、幻想郷のあちこちを気の向くままに観測して、何考えるかわからないこの人がわざわざここに来たという事、そしてこの後のにとりの行動に、私は自分の予想が的中してしまった事を実感した。

 

 

「おぉ、八雲紫。早かったね、もう行き先を決めたのかい?」

 

「えぇ。新型ディスクのあった所とは違う所ではあるけれど、技術的にはより進んだもののデータか取れるはずよ。」

 

 

やっぱりか。今の会話で概ね理解したけど、つまりにとりの頼みの詳細は、私と天子で外の世界にて技術のデータ取りをしてきてくれないかって事なのね。・・・どうしよう、前言撤回したくなってきたんだけど。

 

 

「そうかい。ありがとう、助かるよ。」

 

「いえいえ。私もぜひ、あなたが作る『新たなデュエルの形』を見てみたいもの。流石に彼女達ほど手伝う事はできないけど、このぐらいは「・・・ちょっと、長々と話してないでこの墓石どけなさいよこのクソババァ・・・!」、ん、今何か虫でも鳴いたかしら?」

「アンタ、分かってて無視してるでしょ!!」

 

 

私が色々考えていると、何やら八雲紫の足元から天子がギャーギャー騒いでいた。あっ、そういえばあの子墓石に踏まれてたわね。全く、霊夢から聞いてはいたものの、相変わらず水と油よねあの二人。確かに、東方緋想天(あの時)の異変で霊夢の住む『博麗神社』が天子の起こした地震でぶっ壊れて、あげく天子が神社復興するついでに自分達にとって都合のいい感じに回収したのはアレだけど、だからって未だに引っ張らなくてもいいとは思うのだ。まぁ、今回のは完全に天子の失言だから、もう何とも言えないんだけどね。あの子もあの子で、いい加減学習すればいいのに。

 

 

「すみません、八雲紫。今日はその辺りでお止めいただけませんか? 流石にそろそろ総領娘様が不憫な気がしますので。」

 

「衣玖・・・。ん~、まぁあなたには、日頃藍の愚痴とか聞いてもらってるみたいだし、従者にとっても、主がずっとこれなのも可哀想だしね。分かったわ、あなたに免じて今日はこれぐらいにしてあげる。感謝する事ね、不良天人。」

 

 

八雲紫はそう言うと、墓石から優雅に降りてスキマを開いて、天子の上に落とした墓石をしまった。天子は若干涙目になりながらも、腰を抑えて立ち上がり、八雲紫を睨み付けていた。まぁ、睨まれてる本人はどこ吹く風といった感じで受け流してる時点で、殆どパワーバランスも決まってる気がするけど。

因みに余談だけど、藍の愚痴はだいたいこの人の事が大半だったりする。『従者の集い』なるものを始めた最初は、・・・まぁ、本人の名誉を考えて、それは酷かったとだけ言っておくわ。

そんな二人の様子を見ながら、衣玖がため息をついて天子に苦言を呈していた。

 

 

「ハァ~、全く総領娘様も懲りませんね。いつまでもそうやって、八雲紫に突っかかっててもしょうがないですよ。」

 

「衣玖、アンタどっちの味方よ!!」

 

「私はいつでも総領娘様の味方ですよ。ただ、いい加減もう少し学習した方がよいと思っているので、あえて苦言を呈したまでです。納得出来ませんか?」

 

「・・・分かってるわよ。でも、何かアイツを見るとね。」

 

「・・・ハァ。これでは、しばらくの向こうでの生活が不安ですね。私抜きで大丈夫ですか?」

 

 

そういう衣玖の顔は、本当に心配しているという表情をしていた。って、ちょっと待って、今何か気になる台詞が混じってたんだけど。

 

 

「ハァ? んなもん、大丈夫決まっ、て・・・。」

 

 

天子も返事しながら、衣玖の言葉に違和感を感じたのか、怪訝な表情で衣玖を見ていた。何か、本人は首かしげてるけど。

 

 

「ん、どうしましたか二人とも?」

 

「いや、衣玖。今アンタ、自分抜きとか何とか言わなかった?」

 

「? えぇ、言いましたが。」

 

「えっ、ちょっと待って。じゃあ天子の面倒はいったい誰がーー」

 

 

見るのよ、といいかけた所で、今まで無言だった師匠が特大級の爆弾を投げ込んできた。

 

 

「あぁ、ウドンゲ。天子の事だけど、しばらくはあなたにやってもらうわ。その代わり、衣玖にあなたの仕事の分を手伝ってもらうから。」

 

 

・・・えっ、ちょっと待って? 私とうとう幻聴が聞こえたのかな。聞き間違いじゃなきゃ、天子の面倒を私が見るとか、私と衣玖を交換するみたいな感じに聞こえた気がするんだけど。

間違いであってほしい、そう思って視線を師匠に向けると、師匠の顔は至って真面目で、私に普段お使いとかを行かせるのとほぼ同じ感じで、私にそう言って来てると理解できた。・・・理解できてしまった。

 

 

 

「・・・・・・ハァ!? ちょっと師匠、それどういう事ですか?! というか、衣玖が私の分の仕事をするって、えぇ!?」

 

「いえ、ちょうど主従が入れ替わる感じでちょうどいいかなと思ったのと、たまにはこういうのもいいかなって。あなたにとっても、いい気分転換になるでしょう?」

 

「気分転換の意味を分かってて言ってますか、師匠!? というか、そんな思い付きみたいな感じで言われても。い、衣玖も何か言ってよ!!」

 

「鈴仙、しばらく総領娘様を頼みます。色々迷惑はかけるかもしれませんが、よろしくお願いしますね。」

 

「衣玖ーーーー!!!」( ̄□ ̄;)

 

 

えっ、ちょっと待って!! ここに味方はいないの!? 天子、は当事者だから論外として、にとり、はいつの間にかいないし。・・・そういえばさっき、アップデートがどうかとか言ってたから、もしかしてそれ? で、八雲紫、はそもそも何考えてるか分かんないし。・・・ヤバい、本格的に味方がいない。

 

 

「ハイハイ、それじゃそろそろ行きましょう? 方針もどうやら定まったみたいだし。」

 

 

味方がいない事に本格的に焦っていると、八雲紫がそう言ってきた。ってちょっと待って!? 何か勝手に外の世界に行く流れになってるんだけど?!

 

 

「えっ? ちょ、ちょっと待って!! 私達行くなんて一言もーー」

 

「えっ、いかないの?」

 

天子(バカ)はちょっと黙ってて!!」

 

「(´・ω・`)」

 

 

冗談じゃない。いくらにとりからの頼みとはいえ、これは流石に許容範囲外の頼み事よ。それに、元々私は人混みとかが苦手なのに、外の世界なんて行ったらーー

 

 

「ハ~イ、地の文で長々と言い訳しないの。そもそもここまでで字数8000以上も使っちゃってるんだから。ほら、さっさと行った行った♪」

 

----(スキマが開く音)----

 

「ちょ、人の心読んだあげく、ドメタい発言しないでって・・・。」

 

 

ん、何か足場が無いような・・・。

 

そう思い、下を見るとすでに足場はなく。

 

そして、横を見ると清々しい笑みを浮かべた、私と同じく足場が消えた天子と、その後ろで何か、『いってらっしゃい』と言わんばかりに小さく手を振る衣玖と師匠が見えた。

そんな二人を背景に、天子が口を開く。

 

 

 

 

「・・・鈴仙。」

 

「・・・何?」

 

 

引きつった笑みを浮かべながら、一応聞いてみる。当然、碌な回答が返ってくるとは思ってないけど。

 

 

 

 

 

 

 

「一緒に、落ちる所まで落ちましょ♡」

 

 

 

「いやだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・・!!!」

 

 

 

 

そんな私の叫び声もむなしく、私達は八雲紫の開いたスキマの中へと落ちていった。

 

 

 

Side 鈴仙 out

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

Side 衣玖

 

 

 

「・・・行ってしまいましたね。」

 

「えぇ、行ったわね。」

 

「全く、駄々をごねるから強行手段に出てしまったわ。」

 

 

隣の永琳先生と言葉を交わしていると、八雲紫がそう言った。まぁ、確かに今のは少々強引な気はしましたが、彼女あぁでもしないと動かないでしょうから、結果的に良かったと思います。それと、鈴仙が総領娘様の言葉に対して何やら叫んでいましたが、そちらは特に気にする事はないでしょう。いつもの照れ隠しでしょうし。

 

 

「さて、じゃあ私は帰るわね。後の事は藍やあなた達に任せますわ。」

 

「まぁ、現時点でこちらから出来る事はないけど・・・、あっ、そうだわ八雲紫。」

 

「あら、何かしら?」

 

「藍経由で、鈴仙にこのカード達を渡しておいてもらえるかしら? 彼女なら、うまく使いこなせると思うわ。」

 

 

そういって、永琳先生が出したのは4枚のカード。色からして、罠カードのようですが。共通の名前を持っているということは、何かカテゴリ専用の罠でしょうか? あんな名前を持ったカード群、鈴仙は所持していなかったはずですが。

でも、どうやら八雲紫はこのカード達を知っているようで、少し驚くと、またいつもの微笑に表情を戻して口を開いた。

 

 

「あら、そのカード達は。そう、そういう事。」

 

「えぇ。あちらがどういう世界かは分からないけれど、今のあの子にはきっと、これは役に立つわ。」

 

「分かりました。藍を通じて、必ず彼女の手に渡るようにしますわ。衣玖、あなたは何か、あの不良天人に渡しておきたい物とかあるかしら?」

 

 

八雲紫にそう尋ねられ、私は少し考えました。今の総領娘様のデッキは、非物質のデータで構成されたもの。実物のカードがなくても、データ内のデッキ構成を変更すれば、それが反映されるため、渡す意味はあまりない。ただ、向こうで非物質のカードが使われていない場合、実際のカードがないと困るだろう。まぁ、本人は自分のデッキを常に携帯しているから、デュエル自体は困らないかもしれませんがね。

まぁでも、そうですね。ちょうどデッキを変える所でしたし、総領娘様の力になるなら、このカード達を渡すのも悪くはないでしょう。そう考え、私は今日持ってきていたデッキの内、古い方をケースごと八雲紫へ差し出した。

 

 

「では、これをお願いできますか?」

 

「ん、それは?」

 

「これは、以前まで使っていた私のデッキです。」

 

「っ、それってまさかーー」

 

「あぁ、大丈夫ですよ。流石に『あのカード』やそれ関係のカード達は抜いてます。代わりに、総領娘様の力になりそうなカード達を、予備パーツと一緒に入れているので、きっと向こうで役に立つと思います。」

 

「・・・そう。なら、これもまた藍を通じて渡すようにしておきます。それでは、お先に失礼しますわ。」

 

 

八雲紫はそう言って、デッキケースを受け取ってスキマを開いていってしまいました。まぁ、彼女が懸念していたものは、おそらく私にしか扱えない『あのカード』の事でしょうが、あれは私の生涯のエース。そう簡単に譲る気はありません。

 

 

「さて、では我々も行きますか。これ以上の長居は無用でしょう。」

 

「そうね。」

 

 

八雲紫がいなくなり、にとりも作業に入ってしまったため、やる事がなくなった私達は、永遠亭へと戻る事にしました。さて、明日からは鈴仙のしていた仕事を私が引き継ぐ訳ですが、まぁ何とかなるでしょう。なにせ、空気を読む事だけには長けてるので。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・そういえば、ウドンゲが何か叫んでいたけど、何だったのかしら?」

 

「いえ、気にする必要はないかと。」

 

 

帰りにこんな短い、会話とも呼べぬ会話がありましたが、まぁ、これは余談ですね。

 




天子&鈴仙『今日の最強カードコーナー!!』

天子「って、今回デュエルしてないじゃない!! 何紹介しろっつーのよ!!」

鈴仙「それもそうね。どうする、もう終わる? 本編内じゃ、スキマ移動中だし。」

天子「本編であんなにガチ叫びしてる割りには冷静ね、鈴仙。」

鈴仙「ここはメタ空間だし、大丈夫でしょ。」

天子「メタいメタい。」

鈴仙「という訳だから、今回のこのコーナーはお休みよ。寸劇見せちゃっただけですみません。」

天子「次回から、またガンガン紹介していくから、期待してなさいよ!! それじゃ!!」

天子&鈴仙『次回もお楽しみに!!』

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
次回予告

いつもと変わらぬ日常。

その日常に降り立つ、『非日常』を日常とする存在達。

彼女達が、この世界でもたらすものとはーー


天子「ここが、『外の世界』・・・。」

鈴仙「勝手も幻想郷とはまるで違う。」

天子「でもまぁ、私達二人なら!!」


次回、東方遊戯王VRAINS -EYES DRAGONS ROAR-

『眼龍使い、日常(非日常)に降り立つ』


Into the VRAINS!!

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