ここはヤクザ本拠地の地下。奥の奥。オーバーホールとクロノに挟まれた状態でわたしは歩かされている。オーバーホールはわたしについてこい、と伝えそれ以上は何も説明しなかった。
説明しない時点でなにか重要な存在であることは予想できる。もちろん考えすぎかもしれないが。
しかし、奥に案内されているのも事実。カマをかける。
「なにも説明しないんですか?何か重要な存在なのは予想できますが」
「ほぉ。賢いな」
「それほどでも。」
「…エリだ。理(ことわり)を壊(こわ)すと書いて、壊理(えり)だ。」
「…なるほど」
『あれは何だ?あれで何するつもりだ?教えろ。』
『…理を壊すんだ。』
以前、死柄木弔と共にオーバーホールと対談した時のセリフをそのまま言ってきたってことは少なくともいまから紹介される娘は無関係ってワケじゃあないみたいだ。
「この前逃げ出されてな。いないと困る。」
「それは計画に不可欠…って捉えていいんですか?」
───ガチャリ
後頭部に銃口を突きつけられる。クロノだ。
「…質問もいけませんか?」
「オーバーホール、いかがいたしやす?」
「…キラークイーンは大切な駒だ。構わん。」
オーバーホールの言葉を聞き、少し躊躇ってからわたしから銃口を離す。こいつ本当にきらい。
「で?今の反応は答えみたいなものですよね?」
「ああそうだ。キラークイーン教えてやる。お前は分かるハズだ。」
「分かる?…何がです?」
「この計画の崇高さ。がだ。キラークイーンお前は…
お前は大局を常にみているからな。」
──────────
「あー、えと。こわくないよー」
「ひっ」
「だめだこりゃ」
結局、あれ以上のことはまた話す。となった。理由はすぐ目的の部屋について話があやふやになったから。
目元を髪で隠したヤクザにいろいろ説明された。なんか全然心開かねーだとか。失敗した前任者はみんな殺されてるとか。
とにかく、この目の前にいるであろう壊理、という娘をここから逃げ出したく無くなるようにしろ、とのことだ。
わたしとて殺されたくない。が、めっちゃ怯えてるよこの子。
「…」
いまも警戒レベルMAXでこっちを凝視してるし…。
ふと、腕や足に巻かれた包帯を見やる。
「…それ」
「ひっ!」
「いや、発言はさせてよ。それだよ。包帯。痛くないの?」
ふるふると一応首を横に振ってくれる。オーバーホールの個性だろうか?分解と修復だったか。
ふむ。
理を壊す弾丸。
分解と修復。
壊理。
手足に包帯。
…最高にクレイジーな予想が出来上がった。
「…君は……銃弾にされているの?」
もし、もしあの銃弾が人由来、つまり個性によるものなのだとしたら、人の個性因子が含まれていなければならない。もちろんわたしのものに直接付与する個性は除く。
個性因子は体の一部。つまりオーバーホールは分解できる。修復もできる。別の形にだって『修復』できる。
つまり、あの銃弾は壊理ちゃんのからだそのものなのではないか?という予想だ。
反応を見る。
「……っ」
ぎゅっと、できる限りの力で、その小さな拳を握りしめて、顔を伏せていた。体は震えていたが、わたしに対する恐怖から体を揺らしているようではなかった。
あれは思い出しているのだろう。自分が何をされていたのか。
──ギュッ
「…へ?」
間抜けな声。わたしではなく壊理ちゃんのだ。
まぁ、敵に抱擁されているのだ。当たり前だろう。
「ごめんね。思い出させちゃって。お姉ちゃんもね。嫌な思い出あるから。」
ぽんぽんとあたまに手を乗せてやる。
顔を盗み見るが、困惑の表情で染まっていて少し笑えた。
徐々にだが壊理ちゃんが状況とわたしの言葉を飲み込み始めたようで…
「おねぇさんも…痛かった?」
『も』である。やはり多少なりとも痛いようだ。さっきは関わりたくなかったから嘘をついていたのだろう。
「すっごい痛かったよ。なんかこう…内側から痛いーって感じ。」
「わ…わたしも。そんな…かんじ」
「そっか。我慢できてえらいねー。あのひとたちのマスク怖いのに」
「う、うん。こわい」
再び頭を撫でる。少しづつだが、会話ができている。
正直、わたしでさえなぜこの子に歩み寄ろうとしているのか。分からない。でもなにか理由を付けるのであれば…
「…あの、なんで…敵…だよね…?」
「昔のわたしに似てるからかな」
────────
「あっ…おねぇさん」
わたしが部屋に入るなり出迎えてくれた壊理ちゃん。
仲は…良好とは言い難いが、会話はしっかりできるようにはなった。
まだ警戒は解けていないようだが…。
「ん。仕事空いたから来たよ」
「…」
「オーバーホール…掃除任せやがって…はぁ…」
「…」
こんな感じで独り言には答えない。自分から会話を始めることも無い。こっちがなんらかのアクションを起こさない限りはお互いだんまりでひとつの空間にいるだけだ。
「…もしかしてわたしいると落ち着かない?でようか?」
「…だい、だいじょぶ」
「そ。」
そう言ってベッドの上で寝返りを打ってわたしに背を向ける壊理ちゃん。
わたしはわたしで壁に背中を預けて目を閉じる。
いや、閉じようとして気づく。
「あっ、プリユアなつかしい」
新しく増えていたおもちゃの箱に目がいった。そして思わず口に出てしまっていた。まぁ、これが会話になるはずもな
「しってるの?」
「えっ、あ、うん。よく見てたよ。かわいいよね」
会話になるんかい。
「これこのまえはなかったよね?」
「うん。さっき怖い人が置いていった。」
このプリユアのおもちゃが、この後起きる戦いの火種になっているとは予想もつかなかった。
いま原作は手元にないんですけど、アニメと記憶で保管してる感じです。
電子版買うか…?