「悪魔を殺して平気なの?」「天使と堕天使も殺したい」   作:サイキライカ

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前回のあらすじ。

主人公「タマ盗ったどー!!」
ゼウス「殺す!!」


俺はやっぱりそういう奴なんだよ。

「儂の胤を返せぇぇぇええ!!」

 

 雷光を纏い拳を振りかぶるゼウスに対し、俺は丹田を始点に7つのチャクラを全開に回し、身体能力を自壊する限界ギリギリまで跳ね上げさせて背後へと回避。

 回避と同時に背からショットガンを抜いて一射。

 至近距離で放たれた散弾はほぼ一塊の状態でゼウスに叩きつけられるも、しかしゼウスが纏う雷光に阻まれその熱量で蒸発してしまう。

 

「人間如きの浅知恵が儂に通じるものか!!」

 

 そう叫び腕を振るうと腕を這う雷光が身体から離れ片翼だけで2メートルはある鷲と全長3メートルを超える巨牛を象る。

 

 ブモォォオオオ!!

 

 意思が有るかのように獰猛に嘶いた牛が、地面を蹴って猛然と突進してくる。

 確認がてら散弾をバラ撒いてみるも、牛は臆した様子もなく散弾を蒸発させながらまっすぐ突っ込んでくる。

 やっぱり鉛玉は無意味か。

 ならこっちも別の手を講じるまで。

 

「にしてもだ、」

 

 態々牛を象る辺り、ゼウスの権力への固執具合が良く分かる。

 牛とは古代に於いて権力の象徴だった。

 牛を持つとはその体躯を賄うだけの飼料を確保出来る、則ち大喰らいの牛を飼えるだけの財を有するという証であり、牛の数は国の規模を計る役割も担っていた。

 故に牛は王の象徴でもあり、古い時代には神の依代や最上級の供物にも使われた。

 例えばそう、初期ユダヤの偶像崇拝を禁ずる前の聖四文字なんかが有名だろう。

 突進を躱し、懐から安物のアルミ製のボールペンを抜くと躱したタイミングで鷲が甲高い鳴き声を発しながら俺目掛け急降下を掛けた。

 細部まで精緻に再現された鷲の鉤爪を前に、俺はボールペンのペン先を口元に寄せる。

 

「雷、即ち木気。

 鋼、即ち金気。

 金持ちて木を克する。

 之、即ち金克木也」

 

 呪を込めボールペンを鷲へと投擲する。

 ボールペンはまっすぐ鷲の胴体に突き刺さり、すると鷲は俺に爪を突き立てる前にビクンと震えた。

 

 ピィィィィイイイイ!!

 

 甲高い悲鳴を上げ、鷲が掻き消え、焦げて金属パーツ以外が溶けたボールペンが地面に転がる。

 

「貴様、一体何をした!!??」

 

 分霊とも言える雷光があっさり掻き消され、困惑と怒りで真っ赤になったゼウスが怒号を放つ。

 そんな間抜け面へ、意趣返して挑発しつつショットガンを振ってみせる。

 

「大したことはしてねえよ。

 ただの、()()()()()()だ」

 

 大陸の五行思想を魔改造し尽くした日本の陰陽道。

 ゼウス本体には効果はあまり期待できないが、知識と手順が完璧なら眷属程度は処理出来る。

 

儂ら()が庇護せねばとうに滅びていた猿の分際でぇ!!」

「喚くな阿呆」

 

 喚くゼウスに吐き捨ててやる。

 

「その猿に散々盛って、挙げ句テメエが散々気に入らねえで捨てて(殺して)きたんだろ?

 だから今度はテメエが捨てられる(殺される)側になったんだっていい加減理解しろよ。

 テメエ、本当に全知全能なのか?」

「キサッ、キサマぁっ!?」

 

 赤を通り越して青くなった顔色でゼウスが『雷霆(ケラウノス)』を手にする。

 おいおい、いくらなんでも煽り耐性低過ぎだろ?

 

「貴様の魂ごと焼き尽くしてくれる!!」

「そういやいい加減気持ち悪いから返すわ」

 

 マジでぶん投げる体勢に入ったゼウスに、俺は握っていた睾丸を無造作に投げつける。

 

「っ、儂の王権!!??」

 

 目の前に放り投げられた睾丸()にゼウスが雷霆を手放し必死に手を伸ばす。

 その正面でショットガンの銃口を向けられているにも関わらずだ。

 

「だからテメエは下半神なんだよ」

 

 バンッ!!

 

 ショットガンに仕込んだ最後の禁呪弾をぶっ放す。

 放つた禁呪弾はゼウスの手が掴む前に睾丸を砕き、『滅びの魔力』を撒き散らして汚らしいゼウスの睾丸を消滅させた。

 

「お…ぉぉおああああああああああ!!??」

 

 その事実を受け入れられずゼウスが、かつて神々の手で与えられた絶望を前にした多くの人間がそうした様に喉を引き裂くような慟哭を放つ。

 

「何故だ!? 儂は全知全能で、ティターン族を天ごと焼き尽くし、運命を支配し、ギガースを廃してガイアを制し、テュホンさえ退けた儂がどうしぶべっ!?」

「喧しい」

 

 ショットガンを投げ捨て、過去の栄光に縋るゼウスの横面を三節棍で殴りつける。

 そのまま二節から五節、五節から七節へと棍を組み替えながら最大速度で殴り続ける。

 

「テメエがどんだけ偉かろうと、今のテメエはただの老害なんだよ!!」

 

 説を切り替え、全身をフルに駆使し息衝く暇を与えず全身を打ちのめす。

 

「き゛ぃ゛さ゛ま゛ぁ゛あ゛あ゛!!」 

 

 撲られ顔を腫らしたゼウスが滅茶苦茶にアダマスの鎌を振るい俺を跳ね除ける。

 技巧の無い児戯のような大振りの返す刃が振るわれるそのタイミングを正確に穿ち、棍を手放し合気の理を以て刃取りを行い鎌を奪う。

 

「ひぃっ!?」

 

 喉から漏れた音が悲鳴に聞こえたが、まあ全知全能の神が()()()人間如きに悲鳴なんか漏らさねえよな?

 

「鎌ってのは、こう使うんだよ」

 

 両手に持ち鎌の軸を回転させながら脇を通過させる。

 そこから再び軸を胴に合わせ前に踏み込みながら全身を一回転。

 回転運動に連動し鎌の刃がゼウスの背中から脇腹を撫で切りに走る。

 

「ぐぁっ!?」

 

 祖父神ウラノスを断じた刃はサクリとゼウスの切り裂き、自らの武器に浅からぬ傷を負ったゼウスが苦悶の悲鳴を漏らす。

 更に呼吸を挟む間もなく三撃鎌術で切り裂いてから一旦距離を置く。

 

「人間の()()()は如何ですか糞下半神?

 参考になれば幸いです」

 

 鎌を地に立て道化のように一礼して煽れば、ゼウスは歯を食いしばりながらふぅふぅと赫怒に震える。

 

「儂は、儂は大神ゼウスであるぞ!!

 それを、それをお前はっ!!??」

 

 ワンパターンも大概にしろよ。

 他に自慢できることないのか?

 あ、無いのか。

 じゃあしょうがない。

 

「そろそろ仕舞にしようか。

 安心しろよ。ハデス様から言われてるから殺しはしねえし出来ねえから。

 寄り道しないようバラ刻みにして、オリンポスまで着払いの宅配便で送ってやるよ」

 

 鎌を捨てドゥリンダナを抜き、槍形態で両手に握る。

 

「調子に乗るな猿がぁっ!?」

 

 感情任せに突っ込もうとしたゼウスが、刹那黒い霧に包まれた。

 

「ぎゃあああァァァアアアッ!?」

 

 雷鳴のようなゼウスの絶叫が轟き、黒い霧はすぐに晴れた先でその身は一変していた。

 

「…バルムンクだと?」

 

 霧が晴れたゼウスの身に、ジークフリートを名乗っていた野郎がぶん回していたバルムンクとそのレプリカ、それとダーインスレイヴとティルヴィングが胴を貫きリアル黒ひげ危機一発のようになっていた。

 

「がっ…あ゛っ゛…」

 

 四振りの魔剣は流石に効いたらしくよたつくゼウスの背後に再び黒い霧が発し、そこから現れた紅い髑髏の意匠の施された甲冑騎士が飛び出しその手に携えたグラムを振るってゼウスの首を断ち切った。

 

「……」

 

 コロコロと絶たれた首が明後日の方向に転がっていくが、そんな事はどうでもいい。

 甲冑騎士はグラムを振って血糊を払うと、徐ろに兜を脱ぎ捨てた。

 

「ぷっはー!!

 あ〜、もう。この甲冑かっちょいいですが重いわ蒸れるわで僕ちんもう限界でザンス!」

 

 普通に聞いたらイラッとしそうな口調でそうボヤきながらぶんぶん頭を振る『フリード・セルゼン』。

 そうしてから漸く俺に気付いた体で話しかけて来た。

 

「あららぁ? どこのだぁれかと思ったらアサシンタソじやぁあ〜りませんか?

 もしかしておたく、ゾンビかなんかですかぁ?」

「かもなぁ?

 にしてもよぅ、お前さん結局元鞘に収まっちまったのか?」

 

 なんというか、なんとなくで今迄のノリで乗ってやるとフリードはケラケラ笑った。

 

「それそれ。そーなんどすぅ。

 我様ってば愛しの主様から直々にスカウトされちゃってさあ、ホントはチョー御免だったんですけどぉ、マイファザーってば自分の魂の一部を埋め込んできやがったんですよぅ。

 お陰で毎日毎日毎日毎日、マイファザーの愛の言葉が五月蝿くて叶いやしませんから仕方なぁくお手伝いしてたんデスゥ。

 アヒャヒャヒャヒャッ!!」

 

 道化染みた笑いを撒き散らして戯けるフリードに、俺もまたシニカルに笑い嘯いた。

 

「そいつは難儀だったなぁ。

 で、ついさっきそのダディは俺がぶっ殺した訳だが、恨んでるか?」

「ブハッ!!??

 オヒョヒョヒョヒョヒョ、いやマジ?

 マイファザーってばアサシンタソにぶっ殺されちゃったの?

 どおりでさっきからパーパの声がしなくなったわけだ。

 いや最っ高!! 今夜はステーキで乾杯でふぅ!!」

 

 耳障りなぐらいゲタゲタ笑い転げるフリード。

 と、それがピタリと止み、浅く笑みを浮かべたまま口を開いた。

 

「話は変わるんですがねぇアサシンタソ。

 僕ちゃんさぁ、ずっと欲しいもんがあったんですぅ。

 何か解りますか?」

「さあな。

 カジノが倒産するぐらいのコインか?」

「それはそれで魅力的ですけどぉ、違うんだなぁこれが。

 俺さあ、神様嫌いなんだよ」

「…奇遇だな。

 俺も大っ嫌いだよ」

「だからさ、俺、ずっと欲しかったんだよね。

『神様がいない世界』ってやつが」

 

 そう口にしたフリードの目は溝泥を煮込んだ様に濁り歪んでいた。

 

「だけどずっと無理だって諦めてたんだけどさ、つい最近、その方法を見つけたんだよね」

「…へぇ」

 

 確かにそいつは魅力的だ。

 一部の例外はともかく、俺も神様なんか居なければ良いと願ったことはある。

 

「で、どんな方法なんだ?」

「簡単さ。

 人間が一人残らず死んじまえばいいんだよ。

 崇める者、観測する者、恐れる者、その一切が存在しなければ神様は神様でいられなくなる。

 そうすれば神様は意志も持たない概念へと墜ちるんだ」

「……そいつは知らなかったな」

 

 荒唐無稽にも聞こえるが、フリードの様子からして聖四文字の全知全能から得た答えなんだろう。

 

「という訳で、僕ちん決めました。

 手元に在る聖四文字の権能を使って全人類滅ぼします!!

 勿論その他の異形も諸共滅ぼします!!

 そうして神様を皆滅ぼします!!」

 

 いつもの調子でそうほざきやがった。

 

「ですんでぇ、アサシンタソも死んでくれないかな?」

「そいつはまあ…悪くないかもな」

 

 フリードの提案に俺は前向きとも取れる答えを口にした。

 人類が本当に滅ぶってなら、それは俺の『呪い』も終わるという事だ。

 地獄のような生が終わる。

 それは()()()だ。

 だが、()()だ。

 

「その前にやっときたい事があるんだよ」

「…なんざんしょ?」

 

 盾を抜き、ドゥリンダナを握り直す。

 

「テメエとの決着が着いてねえだろうが。

 白黒着けなきゃ、笑って死ねねえよ」

 

 どうせ死ぬなら、やりたいことはやり尽くす。

 そう言ってやると、フリードは獰猛に笑った。

 

「ああ、ああ、そうでござんした!!

 俺達は()()()()()()()()ハッキリしてなかったんだよなぁ!!」

 

 愉しそうに笑いながらフリードはグラムを握り肩に乗せる。

 

「じゃあ、やりましょうかねぇ。

 僕ちゃんとしてもアサシンタソとはちゃんと勝ちたいからなぁ!!」

 

 言うなり不意打ち気味に斬りかかるフリード。

 それを俺は笑いながら当たり前にドゥリンダナで受け止めた。

 

「ほざけ、最後に勝つのは俺だ!!」

 

 




世界滅亡に肯定的な主人公。
まあ、先に人類滅んでもいいからって神様殺そうとしたしね。

やっぱりさ、人間の敵は人間だよね。

後、ゼウスはまだ死んでません。
というか、殺す方法は存在しないという。
…無かったよね?

最新話の位置について

  • このままアナザールートの後でいい
  • 以前の状態に戻したほうがいい
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