デート・ア・ライブ 未来からの来訪者   作:問題児愛

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更新遅くてすみません。

説明部分は要点纏めて省略したのに、結局後半で文字多くなってしまった…


十話

その後、琴里から説明を受けた。

 

精霊。

本来この世界には存在しないモノ。

そして、この世界に出現するだけで、空間震と呼ばれる空間の地震を、己の意思関係なく引き起こしてしまう。

空間震の規模は一定ではなく、精霊によって大小様々。

これは、天使<鏖殺公(サンダルフォン)>を扱っていた黒髪ロングの少女と、澪真が精霊に当たるそうだ。

 

次に、AST。

対精霊部隊(アンチ・スピリット・チーム)の略称で、その名の通り、精霊専門の部隊。

ASTの仕事は、出現した精霊の処理―――つまり、殺すこと。

あの場にいた士道のクラスメート、白髪ショートの少女、鳶一折紙がASTの一人なのかもしれない。

 

精霊は、空間震で世界を壊す存在。

そんな精霊を駆除する役目を持つAST。

黒髪ロングの少女と澪真がASTに襲われるわけは、そういう事情があったからだった。

 

士道は、精霊を殺すASTのやり方に反対。

黒髪ロングの少女は、自分と同じだったから。

澪真は、自分を殺そうとするASTとすら仲良くなりたいと思っているから。

なら、他に方法は?

精霊を救う手立ては?

士道には、何も思いつかない。

だが、そんな士道に、琴里が協力すると言った。

 

琴里は言う。

精霊の対処方法は二つあると。

一つは、戦力をぶつけて精霊を殲滅するASTのやり方。

もう一つは、精霊と対話をする方法。

そして、対話によって精霊を殺さずに空間震を解決するために結成された組織こそが、<ラタトスク>。

驚くことに、この<ラタトスク>は、士道のために作られた組織だった。

琴里曰く、士道は特別らしい。

全く説明になっていないのだが。

その対話をする方法もまた、驚くべき内容だった。

精霊に―――恋をさせるというもの。

精霊に、この世界を好きになってもらうという目的。

が、何故か恋をさせるというずれた解釈に至った。

そんな内容に納得出来ない士道だったが、他に方法が見つからない末、渋々承諾し早速明日から―――訓練をする流れになるのだった。

 

ちなみに、この<フラクシナス>は空中艦。

現在、天宮市上空15000メートルにいるそうだ。

 

 

 

 

 

それから、話題を変えて、琴里は澪真に話しかけた。

 

「さて、あなたは………澪真、だったかしら?」

 

「なに?」

 

「あなたはとても異質な精霊よ。この世界に出現する際に、空間震が起きていない。それに、自分を殺そうとするASTと命懸けの鬼ごっこなんかしちゃうし、私達とも普通に対話するし………ホント、不思議ね」

 

そう。

黒髪ロングの少女と違って、澪真は空間震を引き起こしていない。

敵意殺意剥き出しのASTとも遊び(?)。

琴里達とも、一切警戒せずに話してくる。

それが琴里には不思議で堪らなかった。

その疑問に、澪真は笑顔で答えた。

 

「だってレマは―――友達を作りに、10年後の未来から来たんだからね」

 

『……………は?』

 

琴里達は、素っ頓狂な声を洩らした。

事情を把握している令音以外が。

暫くの間、間抜け面を晒していた琴里が、ハッとして我に返り、驚愕の声を上げた。

 

「ちょっと待って!話がぶっ飛びすぎてとてもじゃないけど信じられないんだけれど!?10年後の未来から来たって………それも、友達を作りにぃ!?」

 

「うん!」

 

「うんって、あなたねえ………」

 

頭を抱える琴里。

まあ、突然そんなことを言われて信じられないのは無理もない。

それに、澪真が仮に未来の精霊と仮定して、わざわざ過去に来て友達を作るという理由が意味不明だった。

フレンドリーな澪真が、未来で友達を作れないとは思えない。

ならば、どうしてか。

訊くまでもない、最悪な未来が想像ついてしまった。

過去にわざわざ来てまで友達を作るわけは。

―――未来が、友達を一人も作る事が出来ない世界だから。

―――両親と自分以外、誰一人として存在していないから。

 

「……………っ!」

 

身の毛もよだつ、最悪な未来を想像して青褪める琴里。

琴里のその表情を見て、士道や他の者達も察して青褪める。

令音だけは、どこか申し訳なさそうな顔をしているように見えたが。

そんな琴里達の顔を見て、不思議そうに小首を傾げる澪真。

琴里は思う。

どうして最悪な未来になってしまったのかは不明だが。

どこかで選択を誤ったのは確かだ。

ならば、そんな未来にならないように。

今からやれることを精一杯やっていけばいい。

さすればきっと。

最悪な未来は回避され、新たな未来を築くことが出来るかもしれない。

まあ、澪真が本当に未来の精霊ならばの話だが。

それはさておき、澪真が友達を欲しいというのなら。

その一役を買ってやろうじゃない。

精霊と対話をするのなら、まずは仲良くなること。

友達になる、それが第一歩。

澪真は、精霊という面を除けば、とても素直でいい子。

友達にしないのは、損である。

琴里は、直ぐ様行動に移した。

 

「ねえ、澪真」

 

「なに?」

 

「友達、欲しいのよね?」

 

「うん!」

 

「なら私が、あなたの最初の友達になってあげてもいいわよ?」

 

「え?」

 

琴里の発言に、一瞬固まる澪真。

だが、すぐに瞳をキラキラと輝かせて嬉しそうに声を上げた。

 

「本当に!?」

 

「ええ」

 

「本当の本当に?」

 

「本当の本当によ」

 

「本当の本当の本当に?」

 

「本当の本当の本当によ」

 

「本当の本当の本当の本当に?」

 

「本当の………ってしつこいわよ!?あまりにしつこいと友達の件、取り消そうかしら!?」

 

「え………?」

 

嬉しそうな顔が一転、泣きそうになる澪真。

 

「うぐ………っ」

 

そんな顔をするのは反則である。

琴里は、慌てて両手を振って言った。

 

「じょ、冗談よ、冗談!これからよろしく、澪真」

 

手を差し出す琴里。

それに、泣きそうな顔が一転、パアッと明るい顔になると、その手を嬉しそうに取る澪真。

 

「わーい!ありがとう姉様!とても嬉しい!こちらこそ、よろしくなんだよ!」

 

「………!!」

 

本当に嬉しそうに笑う澪真を見て。

琴里は、彼女が精霊ということを忘れて。

引き寄せ、抱きしめていた。

琴里の唐突な行為に驚く澪真だったが、嫌じゃなかったので抱きしめ返した。

だが一つ、琴里に残念なお知らせがある。

 

「でもね、姉様」

 

「ん?」

 

「レマの最初の友達は、姉様じゃないの」

 

「………へ?」

 

固まる琴里。

澪真は更に続けた。

 

「レマの最初の友達はね、父様なんだよ」

 

「え!?」

 

「は?お、俺!?」

 

驚く士道に、頷く澪真。

士道は、いつの間にか友達にされてることに疑問を持ち、問うた。

 

「なんで俺が澪真の最初の友達なんだ?お前と最初に会ったのが俺だからとかか?」

 

「それもあるけど、父様と母様は、強制的にレマの友達なんだよ」

 

「強制なのかよ!?」

 

「うん!」

 

「うんって、お前なあ………」

 

頭を抱える士道。

まあ、別に悪くはないからいいけど。

強制は、なんか理不尽である。

令音が、ちょっと残念そうな顔をして言う。

 

「………ふむ。ということは、私が二人目か。シンに先を越されていたとはね」

 

「………へ?シンって、俺のことですか令音さん!?」

 

「………ん?ああ、そうだが?」

 

「そうだがって、なんか変な愛称つけられたし………ッ!?」

 

士道は、鋭い視線に気付いて振り向くと。

何故か凄く不機嫌な琴里に睨まれていた。

 

「こ、琴里?」

 

「ねえ、士道」

 

「なんだ?」

 

「今すぐ死んでちょうだい」

 

「は?」

 

「ええ。とてもむかつくから、死んでちょうだい!」

 

「だから、何でだよ!?」

 

「死んでほしいからに決まってるでしょ!」

 

「理由になってねえええええ!!」

 

琴里の唐突な死刑宣告に、絶叫する士道。

だが理由はなんとなく分かった。

琴里が、澪真の最初の友達になれなかったことなのだろう。

最初の友達の資格を獲得した士道に嫉妬した。

そんなところだろう。

強制的に最初の友達の資格を手に入れただけだというのに。

なんというか、理不尽である。

士道は、己の不運を嘆くように、天を見上げるのだった。

 


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