「………急にいなくなるなんて、心配したよ」
「ごめんなさい、母様」
<フラクシナス>に帰還した澪真は、迷惑をかけたことを謝罪する。
しょんぼりする澪真の頭を優しく撫でる令音。
ちなみに、あの後に五河家に訪れたのは警察ではなく、令音だった。
琴里が連絡を取ったのは警察ではなかったらしい。
士道は安堵し、そして騙されたことを恨みがましく思い、
琴里も、何故か
朝っぱらから澪真とイチャイチャしてる士道が気に食わなかったのか。
そんな険悪ムードは澪真の、喧嘩しちゃダメなんだよ、父様、姉様!の一言で丸く収まったが。
それから、士道と琴里は学校へ行き。
澪真は令音と手を繋いで<フラクシナス>へと帰還し、今に至る。
令音は、澪真の頭を優しく撫でながら言った。
「………レマ。君に一つ、頼みがあるんだ」
「なに?」
「………名前のことなのだけれど、訳あって、改名してほしいんだ」
「………改名?」
澪真が聞き返すと、ああ、と頷く令音。
「………崇宮という名字と、レマの名前の中にある澪という文字。この二つは、とある精霊に知られるとまずいんだ」
「………?どうして?」
「………ふむ、そうだな。簡単に言うと、その精霊の恨みを買ってしまった………からかな」
申し訳なさそうな顔を見せる令音。
その精霊の大切な友人を■してしまったから。
いや、正確には
その精霊の大切な友人を■なせたことには変わりない。
そして何より、こんな私が純真無垢な澪真の未来の母親であるという事が申し訳ないと思ったのだ。
澪真の口にしたあの未来が本当ならば、私の計画はこのままいけば同じ結末を辿るという事になる。
だが、大好きなシンを■■■■為には私の計画を諦めるなんて事は出来るはずがない。
私は、どうすればいい?
葛藤する令音を、澪真は不思議そうに眺めていたが、追及はせずに笑顔で言った。
「分かったんだよ。母様がレマの改名を望むのなら、従う!」
「………本当にいいのか?」
「うん!どんな名前なのか凄く気になるって理由もあるからね!」
キラキラした瞳で令音を見つめる澪真。
令音は苦笑すると、どこからともなく取り出したペンと紙切れを取り出し、文字をスラスラと書いていく。
澪真はそれを覗き込み、小首を傾げながら呟く。
「………村雨………令真?」
「………ああ、村雨令真。名字は私が名乗ってる〝 村雨〟。レマの名前の中にある澪を私と同じ〝 令〟にしてみたのだけれど………どうかな?」
「父様の名前の中にある〝 真〟は名乗ってもいいの?」
「………ああ。シンの方は私以外知らないから名乗っても問題はないよ」
「はーい!」
「………レマは私の遠い親戚という形にするからね。………それとも嫌だったかな?」
「ううん、すっごく嬉しい!母様と3文字も一緒なのが最高なんだよ!」
ビシッと親指を立てる喜びを表現する澪真改め令真。
喜んでもらえてなによりだ、と令音は微笑して令真の頭を撫でた。
それから令音は立ち上がり、
「………さて。そろそろ行くとするかな」
「………?どこへ行くの母様?」
「………シンの通う学校にだよ」
「え!?父様の学校!?」
「………それではシンのものみたいじゃないか。………ああ、それと………レマも一緒に来るんだよ」
「いいの!?」
「………勿論だ。もう一人の私がレマを託してきたんだからね。置いていくわけがないだろう?」
「やったー!」
今日一番の大きな声で歓喜する令真。
オーバーリアクションの令真に苦笑する令音。
シンの通う学校には、精霊と敵対しているASTに所属している者もいる。
偽名で誤魔化せるかは怪しいが、他の人間を巻き込む真似は流石にないだろうからレマにとっても安全な場所になるに違いない。
レマの目的である友達作りもきっと捗るはずだ。
レマ自身もかなり喜んでくれてるから、私としても嬉しい。
………学校でシンの事をレマが〝 父様〟と呼ぶ事は敢えて止めないでおこう。
私とシンの間に誤解が生じるが、むしろそれでいい。
シンは私だけのもの、誰にも渡しはしないのだから。
一方、令真はノリノリで体を踊らせていた。
かーさまといっしょに~
とーさまのがっこ!がっこ!
などとウキウキルンルン気分で口ずさんでいたのだった。
無論、この後シンこと士道が学校内でもあらぬ誤解が生まれ広がり苦悩するのは言うまでもない。