プロローグ
物理準備室を後にした令真は、まず左手を突き出し口を開く。
「〈
封印の天使〈
その中を通ると、屋上に出た。
それから『孔』を消して周囲を見回し、令真は再び口を開く。
「――〈
全知の天使〈
それは、
崇宮澪が恨みを買ってしまった精霊の情報を得る。
「……時崎狂三。時と影を操る天使〈
時崎狂三の壮絶な過去を識った令真は、顔面蒼白。
力を与えられ、正しい事だと従っていたのに。
騙されていた、彼女の純粋な気持ちを弄ばれた。
そして、その手で親友を手にかけてしまった。
如何に
母様……そこまでして父様を、崇宮真士を取り戻さないと気が済まないの?
そんな事をしたって、母様の愛しい人は……崇宮真士は取り戻せないんだよ?
それにね、母様。
父様に……五河士道に✕✕✕✕なんてこと、レマが絶対にさせないし、父様はそんな事を絶対にするはずないよ。
だからね、母様。
大丈夫、なんだよ。
レマが絶対に、絶対に成し遂げてみせるからね。
もう、これ以上、
ここから先は、レマ一人の戦い。
レマが目指す
――
令真は……崇宮澪真はそう決意する。
たとえその幸福の中に、澪真が含まれていなかったとしても。
澪真は、歩みを止めることはないだろう。
澪真は、その為に生まれたのだから。
さあ、運命とやらに抗おう。
過去を変える行為は、決して許される事ではない。
だが許す許さないなどは、どうでもいい。
不幸を許容する世界など、間違っている。
ならばそんな世界は、作り変えてしまえばいい。
神を模倣せし似て非なるモノ――
澪真は、ふと気になった。
時崎狂三の親友、山打紗和の存在に。
澪真は、山打紗和の情報を〈
「……山打紗和。時崎狂三の親友。おっとり穏やか、誰にでも優しく、周囲を和ませる天性の才を持つ。猫を飼っている。ある日、崇宮澪に唆されて赤い
そこまで情報を得て、澪真は〈
山打紗和は、別の存在に生まれ変わって隣界に存在している。
それはつまり、隣界に向かえば彼女に逢えるということ。
ならば、すぐに行動に移そう。
隣界へと行く方法なら、この手があるのだから。
「――〈
澪真は、あらゆる条理を捻じ曲げる法の天使〈
隣界への入り口も行き方も澪真には分からないが、分からないのならば――入り口を作ってしまえばいい。
「隣界の入り口は、
澪真がそう言うだけで、突如虚空に『扉』が出現した。
澪真はその『扉』に手を押し当てて、ゆっくりと隣界への入り口を開く。
中に入る前に、令音や士道、琴里に向けて澪真は呟いた。
「レマは少しの間、留守するんだよ。行ってきます母様、父様、姉様」
士道が訓練なるものを終える頃には、澪真が
「……!」
「……令音?どうかしたのかしら?」
「……いや、なんでもない」
「……?まあ、いいわ。士道はそのまま続けなさい」
「お、おう」
澪真が隣界に入ったのと同刻。
物理準備室にいた令音が何かを感じ取る。
琴里と士道にバレないように振る舞いつつ、何者かが
「(……ふむ、隣界に侵入した何者かは……私と酷似した霊波を放つ精霊……なら侵入者の正体はレマ、か。君は一体これから隣界で何を成そうとしているんだ……?)」
令音……もとい澪は、澪真の未来の母親といえど、澪真の事をよく知らない。
彼女の目的は推測程度でしか理解出来ていない上に、澪真の正体も全てを把握しているとは言い難い。
ましてや、隣界に用事があるとは予想外だった。
まあ、私の計画の邪魔さえしなければ、レマが何をしようと止めたりはしないがね。
次回
隣界編 第十領域
何もかもが破壊されていた
瀕死の真っ白い少女
空に佇む黒い少女
「――〈暴虐公〉」
「【模倣】――〈暴虐公〉」