デート・ア・ライブ 未来からの来訪者   作:問題児愛

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後半にして纏めて詰め込んだら5000文字近くなってしまった_(┐「ε:)_


第一〇領域 後編

黒い少女は、困惑していた。

澪真と言ったか、あの女は私の話を無視する。

貴様を止めるつもりなど毛頭ない。

不愉快だ、嗚呼誠に不愉快だ。

だが――あの女の言い草ならば、我が〈暴虐公(ナヘマー)〉は通用すると。

我らが母のような絶対の存在ではなく、綻びがあるのだと。

貴様を屠れるのであれば……いいだろう、その興に乗ってやる。

私をその気にさせた事、後悔させてやろう。

黒い少女が空を蹴る。

一瞬で澪真に肉薄し、〈暴虐公(ナヘマー)〉を容赦無く振り下ろす。

澪真は、苦もなくその一撃を模倣した〈暴虐公(ナヘマー)〉で受け止める。

それだけで周囲に凄まじい衝撃波を生み出し、

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

 

澪真の隣にいた響は悲鳴を上げながら彼方へと吹き飛ばされていった。

それを見やった澪真は、響の事が気になるも黒い少女が彼女を狙わないとも限らないので油断は出来ないでいた。

しかしそれは杞憂に終わる。

何故なら今の黒い少女の瞳に映る者は、澪真だけだったのだから。

 

「――ふん」

 

「わっ!」

 

黒い少女の一撃で、澪真を模倣した〈暴虐公(ナヘマー)〉ごと上空へと撥ね上げる。

上空で一回転して体勢を立て直そうとする澪真に、黒い少女が追撃してくる。

上下左右高速の太刀筋を魅せ、澪真を斬り殺しに掛かる黒い少女。

神速と見紛うその連撃を、澪真は容易く合わせていく。

暴虐公(ナヘマー)〉同士の一撃一撃の衝突だけで幾つも衝撃波を生み出し、周囲に多大な被害を齎す。

元々、この第一〇領域(マルクト)は黒い少女が暴れ回って破壊し尽くされている為、既に被害は悲惨な事になっているが。

瓦礫の陰からヒッソリと、響は二人の戦いを眺めていた。

 

「眺めていても速すぎて何が何だかサッパリですけどね!」

 

文字通り、目にも留まらぬ速さで斬り結ぶ澪真と黒い少女。

幾千幾万の剣戟を交わした後、澪真の一撃で後方へと撥ね飛ばされる黒い少女。

 

「……ぐ」

 

「あはははは!もっとレマと遊ぼう?黒いお姉さん!」

 

嗤う澪真だが、彼女の瞳から感情が消えかかっている。

澪真が完全に反霊結晶体(クリフォト)化するのに、時間は残されていない。

その危険性に知ってか知らないでか、黒い少女は最後の手を打って出る。

 

「これでは埒があかん。いいだろう、貴様は確実に滅ぼしてやる。我が【終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)】で……!!」

 

黒い少女は〈暴虐公(ナヘマー)〉を振り上げる。

すると虚空に彼女より倍はあろうかという巨大な玉座が出現。

その玉座はバラバラに分解し、〈暴虐公(ナヘマー)〉に纏わり付いていき更なる巨大で禍々しい物に変貌する。

澪真はそれを見やると、同じく模倣した〈暴虐公(ナヘマー)〉を振り上げる。

すると同じ巨大な玉座が虚空から出現、分解、〈暴虐公(ナヘマー)〉と融合する。

それを見た黒い少女は眉を顰める。

 

「貴様、我が【終焉の剣(ペイヴァーシュへレヴ)】をも模倣するか」

 

だが、貴様の言う通りなれば、貴様の偽物に我が【終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)】が敗れるはずはない。

そう確信し、この一撃を持って貴様を灰燼に帰してやろう。

 

「〈暴虐公(ナヘマー)〉――【終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)】」

 

「【模倣(ヒクウィ)】――【終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)】」

 

黒い少女と澪真は同時に必滅の一撃を撃ち放つ。

ぶつかるは二つの黒い霊力の奔流。

しばしの鬩ぎ合いの末、黒い少女の黒い霊力の奔流が押し返し、澪真を呑み込んだ。

 

「って、うぎゃぁぁぁぁ!?」

 

澪真を呑み込んだ黒い霊力の奔流が、響のすぐ真横を通過して悲鳴を上げる。

あと数センチズレていたら彼女も巻き添えを食らって命を落としていただろう。

黒い霊力の奔流が通った所には、虚無の道を作り出す。

黒い少女は、【終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)】が直撃したのを感じ取る。

だが――澪真は健在していた。

 

「流石は我らが母に酷似した女だな。我が【終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)】を以てしても滅ぼせんのか」

 

「…………」

 

「ぬ?――ッ!?」

 

黒い少女は、嫌な予感がして元の〈暴虐公(ナヘマー)〉に戻して突貫する。

澪真は無意識に新たな魔王を顕現しようとして、

 

「――〈神蝕(ベルゼ)

 

「去ね、女!」

 

ぞぷり、と胸を、黒い少女の〈暴虐公(ナヘマー)〉が貫いた。

かふっ、と喀血する澪真。

闇色の片刃剣は、瞬く間に澪真の血で真っ赤に濡らす。

遂に、黒い少女の力が澪真に通用した。

原理は不明だが、これでようやく、この女を殺せる。

勢いよく〈暴虐公(ナヘマー)〉を抜き取る黒い少女。

胸から夥しい量の血が溢れ流れ出す澪真は、落ちて地面に激突する。

髪の色はいつの間にか濃い銀髪に戻っており、消えかけていた感情の色が瞳に戻っていた。

血の海に横たわる澪真は、元に戻れた事を嬉しいと思った。

死にかけているというのに、笑みを浮かべる澪真を、黒い少女は不気味に思った。

澪真の下へ降り立った黒い少女は、〈暴虐公(ナヘマー)〉を振り上げる。

 

「言い残すことはあるか、女?」

 

「……あり、が……とう、なん……だよ」

 

「…………ふん」

 

黒い少女は、死に際にお礼を言う澪真を不可解に思い眉を顰める。

そして、澪真の首を〈暴虐公(ナヘマー)〉で刎ね飛ばした。

転がる澪真の首が、響の足元に転がってきた。

震える手で澪真の首に触れようとしたけれど、光となって消えてそれすら敵わない。

地に膝を突き、泣き叫ぶ響。

そんな彼女の首も刎ねようと、黒い少女が〈暴虐公(ナヘマー)〉を振り下ろそうとして。

 

 

「――〈暴虐公(ナヘマー)〉の使用を、()()()()()()()

 

 

黒い少女の手から〈暴虐公(ナヘマー)〉が消失した。

 

「ぬ?」

 

「へ?」

 

その光景に固まる黒い少女と響。

いやそれよりも、もう聞けるはずのない声がしなかったか?

振り返るとそこには――死んだはずの澪真が腰に手を当てて立っていた。

響を殺そうとしていた黒い少女に怒っているようにも見える。

あったはずの血の海は、嘘のように跡形もなく消え失せていた。

その響は愕然としながらも澪真に駆け寄って抱き締めていた。

 

「うわぁぁぁぁん!死んじゃったかと思いましたよぉぉぉぉ!じゃなくて、どっからどう見ても一回死にましたよね!?なんで生きてるんですか生き返ったんですか!?」

 

「レマの心配してくれてたんだね、嬉しいんだよ、ありがとうヒビキ。だけどね、心配は無用なんだよ。レマを確実に殺せるのは――母様と父様()()だからね」

 

「なるほどなるほど!子を殺せるのは親の特権ってヤツですね!――ってそれで納得出来るわけありませんよ!それってどういう原理なんですかていうかそんなのありなんですかズルくないですか!?」

 

「ズルくはないんだよ。レマは母様と父様の願いを叶えるまでは消えるわけにはいかないからね」

 

「――おい、貴様」

 

澪真と響の会話に割って入る黒い少女。

響がギャーギャー言ってるがそれをスルーして、澪真は黒い少女に向き直る。

 

「なに?」

 

「何?ではないぞ貴様。私から〈暴虐公(ナヘマー)〉を取り上げてどうするつもりだ?」

 

「どうもする気はないよ」

 

「何だと?」

 

「黒いお姉さんに、レマからお願いがあるんだよ」

 

「願い、だと?」

 

黒い少女が眉を顰めると、澪真が頷いて言った。

 

「レマは、不完全な存在なの。その理由はね、黒いお姉さんの魔王〈暴虐公(ナヘマー)〉と、優しいお姉さんの天使〈鏖殺公(サンダルフォン)〉がレマの中に無いからなんだよ。簡単に言うとね――()()()()()()()()レマの中に」

 

「……………………は?」

 

「だからね、黒いお姉さんの力が母様特製の霊力で編まれた霊力膜を消滅させて、レマの体に傷を付けられる道理が成り立つんだよ。その力で、またレマが暴走しそうになったら、もしくは暴走してしまったらレマを――()()()()()()()()()

 

「…………………………」

 

この女は、やはりというか、意味が分からない。

何故、私なんかに頼むというのか。

私は邪魔な存在を皆殺しにしようとした、悍ましい存在だというのに。

この女は、そんな私を恐れるどころか歩み寄ろうとしてくる。

そもそも、殺せという願望が意味不明過ぎた。

というより貴様を殺せるのは我らが母と父様とやらの特権では無かったのか。

 

「――聞いてるのかな?黒いお姉さん?」

 

「……!?」

 

「レマのお願い、聞いてくれないの?」

 

「……ふん、当たり前だ。何故貴様の願いを、この私が聞いてやらねばならんのだ」

 

「レマを殺せた時は、スッキリした様な顔をしてたのに?」

 

「煩わしい貴様を殺せた時は、な。だが復活するなら話は別だ、誰が貴様に付き合ってやるか」

 

腕を組んでそっぽを向く黒い少女。

澪真は拗ねたように唇を尖らせた。

しかし悪巧みを思い付いたのか、ニヤリと笑って言う。

 

「黒いお姉さんがレマのお願い聞いてくれないなら――貴女は今後一切〈暴虐公(この子)〉の使用を禁止にしちゃおうかな?」

 

「……!?貴様ッ!」

 

黒い少女がレマの小首を乱暴に掴み、首を絞めようと力を籠める。

だが〈暴虐公(ナヘマー)〉ゆえに通じたのか、黒い少女の力は澪真に通用しなかった。

黒い少女に首を絞められているのに、澪真の表情に苦の文字がまるでない。

 

「どうするのかな?レマのお願いを聞いてくれるのか否か。否の場合は――」

 

「……いいだろう」

 

「え?」

 

「〈暴虐公(ナヘマー)〉を人質に取られて非常に癪だが、貴様の願い……この私が聞いてやる」

 

「本当に!?やったー!」

 

喜ぶ澪真だが、相手の魔王を人質にしてこのやり方は卑怯である。

黒い少女は苛立たしげに言う。

 

「おい貴様!願いは聞いてやったぞ。早く我が〈暴虐公(ナヘマー)〉を解放しろ!」

 

「駄目なんだよ。だって黒いお姉さん、〈暴虐公(この子)〉解放したらレマ達を殺すつもりなんだよね?」

 

「無論だ。このイライラを貴様らで解消せねば気が済まん」

 

「じゃあ、まだ〈暴虐公(この子)〉は解放出来ないんだよ」

 

「……チッ」

 

「それに大丈夫なんだよ。黒いお姉さんが〈暴虐公(この子)〉を使えない代わりに、レマが守ってあげるからね」

 

「何だと?」

 

この私を守る、だと?

貴様を一度殺した最悪の精霊である、この私を?

意味が、分からない。

困惑する黒い少女に、澪真は微笑む。

 

「だって黒いお姉さんは、レマと殺し合う程の仲なんだから――それはもう、友達なんだよ」

 

「…………………………は?」

 

「友達を守るのは、当然なんだよ。勿論、ヒビキもね」

 

「え!?私も澪真さんのお友達候補入ってたんですか!嬉しいです凄く嬉しいです精霊様とお友達に成れるなんて夢にも思いませんでしたからね!」

 

「大袈裟だね、ヒビキは。貴女も精霊じゃないの?」

 

澪真の問いかけに、響は小首を横に勢いよく振った。

 

「いえいえそんなまさか!私は精霊様ではありませんよ!()精霊と呼ばれる者です!心臓の代わりに霊結晶(セフィラ)の欠片があって、それを砕かれると死んじゃいます。先程は本当に危なかったですからね数センチ傷が深かったら霊結晶(セフィラ)が砕かれて死んでましたから」

 

「そ、そうなんだね。てっきり大量出血で死んじゃうのかと思ったんだよ」

 

「大量出血で体が動かなくなってたのは本当なんですけどね!死ぬ程痛かったし死ぬ程辛かったし死んでも死にきれませんでしたし!」

 

「そうなんだね、死ぬ程辛かったんだね。レマの胸で泣くといいんだよ」

 

「澪真さんの優しさに感謝感激雨あられ!一生付いていきます嫌だと言われても付いていきます何処まで付いていきますよ!」

 

澪真に抱きつく響。

そんな彼女の頭を優しく撫でてやる澪真。

黒い少女がそんな光景を、下らんと思いながら眺めていると。

 

「――やあ。貴女かな?自分の封印が解けた切っ掛けを生み出した精霊というのは」

 

え?と澪真が振り返るとそこにいたのは。

赤紫色の髪を靡かせ。

両手足に拘束具の様なものを嵌め。

目を包帯で覆っている不思議な精霊(少女)だった。




次回
隣界編 幕間

「自分は蓮。虚ろな世界の住人にして、夢の請負人。希望の導き手にして、哀れな道化」

「み、三つも願いを叶えてくれるんですか!?」

「貴様も似ているな。我らが母に」

「えっとね、レン叔母様。母様の娘同士、仲良くして欲しいんだよ」

「同じ母上の娘だというのに、自分のことを蓮叔母様と言うのは些か失礼ではないかい」
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