デート・ア・ライブ 未来からの来訪者   作:問題児愛

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幕間なのに5000文字超えた_(┐「ε:)_


幕間

ゆっくりとこちらに歩いてくるその不思議な精霊(少女)を見つめて、澪真が一言。

 

「……包帯のお姉さん、それはコスプレなの?」

 

「…………は?」

 

困惑する包帯のお姉さん。

響がハッと何かを思い出したように口を開く。

 

「包帯に拘束具……!?これは一体どんなプレイなんですか!?まさか厨二病を患ってる痛い子みたいな感じのアレですか!?」

 

「痛い子とはご挨拶だね。自分は――」

 

「貴様、何者だ?名を名乗れ」

 

「……今まさに名乗ろうとしていたのだけれどね。まあ、いいさ。では、名乗らせてもらうとしよう」

 

包帯のお姉さんは恭しく一礼して自己紹介する。

 

「自分は蓮。虚ろな世界の住人にして、夢の請負人。希望の導き手にして、哀れな道化」

 

「隣界の精霊さんってことでいいのかな?」

 

「え?ああいや、自分は先刻まで彼方の世界(現実)と隣界の狭間に封印されていた身でね。隣界(ここ)の精霊というわけではないよ」

 

「ふん、では貴様も敵という事だな」

 

「は?」

 

殺気を振り撒く黒い少女に、やれやれと困った様に首を左右に振る包帯のお姉さん改め蓮。

そんな二人に澪真が割って止めに入る。

 

「駄目だよ、黒いお姉さん。レンが困ってるんだよ」

 

「おやおや、初対面でいきなり呼び捨てかい?まあ、別に構わないけれど」

 

「レマの事も気軽にレマって呼んでいいよ」

 

「ふむ?では貴女のお言葉に甘えさせてもらおうかな」

 

「はいはーい!精霊様、私は響といいます!よろしくお願いします蓮さん!」

 

「ああ、よろしく頼むよ」

 

新たに現れた精霊・蓮と仲良くなる澪真と響。

黒い少女はやはり、下らんと興味無さげにそっぽを向いた。

そんな彼女に、蓮が訊ねる。

 

「あなたはなんて名前かな?」

 

「私の名か?……そんなものは無い」

 

「おや、名無しの権兵衛か。良ければ自分が名を考えてあげても」

 

「そんなものは必要ない。所詮貴様らは私の敵に過ぎんからな」

 

ギロリと睨み返してくる黒い少女。

蓮はやれやれと困った様に首を左右に振った。

 

「嫌われたものだね。自分はただ、呼び合う際に名前が無いと不便と思って提案したまでなのだがね」

 

「黒いお姉さんは気難しい子だからね、しょうがないんだよ」

 

「……ふん。どうとでも思え。私は貴様らと馴れ合うつもりはない」

 

「……やっぱりこの人怖いです!澪真さんの後ろに隠れさせてくださいお願いします!」

 

「え?別にいいよ、おいでヒビキ」

 

澪真は響を背に匿う。

黒い少女がギロリと澪真達を睨み付け、ひぃぃぃぃ!と震え上がる響。

黒い少女の機嫌が悪いのは、主に自分の〈暴虐公(獲物)〉を取り上げているからなので即ち澪真が悪い。

その様子を蓮が苦笑いで眺める。

澪真は、蓮をジーッと見つめて問うた。

 

「レンの天使は何が出来るのかな?」

 

「自分のかい?自分の天使は〈瘴毒浄土(サマエル)〉。ありとあらゆる願いを叶える事が出来る毒の天使さ」

 

「願いを叶える!?」

 

「ああ。ただし叶えられるのは一人三つまでだ」

 

「み、三つも願いを叶えられるんですか!?」

 

ギョッと目を剥く響。

なにそのチート性能!ヤバくないですかヤバくないですか!?状態。

澪真は蓮の毒の天使〈瘴毒浄土(サマエル)〉について、全知の天使〈囁告篇帙(ラジエル)〉を使用して調べる。

 

「なるほどなんだよ。毒の天使〈瘴毒浄土(サマエル)〉はありとあらゆる願いを三つ叶える代わりに、対象の全てを喰らう天使なんだね」

 

「まさかのハイリスクハイリターン!?」

 

「……まさか〈瘴毒浄土(サマエル)〉の権能を暴かれるとはね。貴女には敵わないね、澪真」

 

「全知の天使〈囁告篇帙(ラジエル)〉の力を以てすれば、暴けないものはないんだよ。――レンが忘れてしまってる、〈瘴毒浄土(サマエル)〉に願った最初の願いの内容とかも、ね」

 

「……なんだって?」

 

今この少女はなんと言った?

自分の忘れてしまってる最初の願いだって?

確かに願った記憶はあるが、その内容を思い出せない。

蓮が頭を悩ましていると、ふと黒い少女の視線に気付いて振り向く。

 

「ん?自分の顔に何か付いてるのかな?」

 

「……いや、貴様を見てふと思い出したからな」

 

「……何かな?」

 

「貴様も似ているな。我らが母に」

 

「我らが母に……?ああ、あの人の事か。まあ、自分はあの人の分身だからね。そう思うのは仕方のない事だろう」

 

「分身?じゃあレンも母様の娘みたいなものなの!?」

 

興奮気味に澪真が聞いてくる。

蓮が目を丸くするが、頷いて答える。

 

「ああ、そうだね。全知の天使を有する貴女に嘘は意味を成さないから正直に話そう。自分はあの人――我が母の絶望と憎悪から生まれた精霊にして分身。悪性の精霊ゆえに三十年もの間、我が母の手によって彼方の世界(現実)と隣界の狭間に封印されていたのだよ。澪真が彼方の世界(現実)だけでなく、隣界にも訪れた事によって空間に亀裂が生じてね、自分は出て来れたのさ」

 

「レマがレンの封印を解いちゃったんだね。レマとしては貴女に逢えたから良かったと思ってるけどね」

 

「……悪性の精霊である自分と逢えて嬉しいのかい?貴女は変わった精霊だね。我が母はそんな自分を恐れて封印したというのに、澪真は自分が怖くないのかな?」

 

「どうして?悪性の精霊という割には、レマ達とこうして普通にお話してるし、仲良くなったんだからそんなレンを怖がる必要なんてないんだよ?」

 

「………………………………ほう?」

 

蓮は、自分を怖がろうとしない澪真に感心する。

確かに自分は、彼女達を殺そうという気は全くといっていいほど起きない。

全知の天使を有するからかとも思ったが、そういうわけでもなさそうだ。

不思議な精霊(少女)だ、憎悪で彼女を殺せる未来が見えて来ない。

澪真は、蓮に手を差し出して微笑む。

 

「えっとね、レン叔母様。母様の娘同士、仲良くして欲しいんだよ」

 

「れんおばさま」

 

蓮はムッと眉を顰める。

澪真は、あれ?と不思議そうに小首を傾げた。

 

「レン叔母様?レマと仲良くしてくれないの?」

 

「いや、そうではないよ」

 

「じゃあ何が不満なの?」

 

「同じ母上の娘だというのに、れんおばさまとは些か失礼ではないかい?」

 

「………………あ、ごめんなさい。レン叔母――レン義姉様が生まれたのが三十年前って話だから、十年後のレマとは歳の差がかなり離れてるしと思ってね」

 

「…………十年後、だって?」

 

今度こそ蓮は目を丸くした。

澪真は十年後の精霊?

流石に驚かざるを得ない。

澪真は、頷いて自分の事を語り始める。

 

「レン叔母――レン義姉様が貴女について教えてくれたから、レマもレマの……崇宮澪真が何者かを語るんだよ」

 

「ほう?それは興味深い。是非とも教えてくれるかな?」

 

「うん。まずは少し未来の話をするんだよ」

 

 

 

崇宮澪は、自分の悲願を叶えて、崇宮真士を取り戻した。

これで澪は幸せを手に入れられる、そう思っていた。

だけれど、澪の自分の悲願を叶える為にした行いを、許さぬ者がいた。

其の者は――神。

何処にいるのか、何処で傍観しているのか、何をするものか、誰も知る事が出来ない、絶対の存在。

澪は、自分の悲願を叶える為に幾百幾千幾万の無関係な人間の命を利用し、踏み躙ってきた。

パートナーと呼ぶべき存在を、親友さえ手にかけてきた。

そして、やっとの思いで掴んだその幸せは、血塗れで穢れきった先に出来たものだと、悪魔の所業だと、神は認定した。

ゆえに、澪が幸せになる事を、神は許しはしなかった。

 

 

澪が神から受けた呪い、それは――()()()()()()()()()()だった。

それは澪と真士を絶望させるのに、十分過ぎる仕打ちだった。

何度も、何度も、何度も、何度も、何度も子作りに励んでも、澪のお腹に子が宿る事は無かった。

あらゆる条理を捻じ曲げる法の天使〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉を使っても、結果は変わらなかった。

澪は泣いた。

せっかく手に入れた幸せが、その先の幸せを作る権利が、私達にはないの?

真士は、そんな弱々しい彼女の体を強く抱き締めた。

子供が居なくても、子供が出来なくても、俺は澪さえいてくれればいいんだ!

だけれど、澪も、真士も、心の底では二人の愛おしい子供が欲しいのだと、求めてしまう。

澪は、愛する真士の腕の中で泣き叫び、泣き止むと、真士に言った。

 

 

「私達の子供が産めないのなら、私とシンで()()()()()()

 

 

それは、あまりにも歪な願いだった。

産めないのなら、生み出す、とはよく言ったものだ。

そんな事をしたら、三十年前の二の舞を演じるかもしれない。

しかし澪は止まらなかった。

真士もまた、彼女の願いを叶えたかった。

両者合意の、歪な願いを叶える為に二人は行動に移す。

 

 

澪は取り戻した九つの霊結晶(セフィラ)を取り出し、一つに束ねる。

それは大きな霊結晶体(セフィロト)となり、澪と真士はそこにありったけの愛を、霊力()を、願い()を込めた。

そして、世界は眩い光に包まれ――濃い銀髪の愛らしい精霊(少女)が生まれた。

その精霊(少女)は目を覚まし、澪と真士を見つめてこう言った。

 

 

「――おはようなんだよ。母様、父様」

 

 

たったそれだけの言葉で、澪と真士は泣き崩れてしまう。

願いは、叶った。

二人は、神の呪いに打ち勝ったのだ。

子供を産む事は出来なかったけど、私達には愛するべき娘が出来たのだ。

これ以上にない喜びを、嬉しさを、愛を手に入れたのは確かなのだから。

こうして澪と真士は、愛すべき娘を手に入れ、彼女に名を与えた。

崇宮澪の〝澪〟と。

崇宮真士の〝真〟を取って。

〝崇宮澪真〟と、二人は濃い銀髪の精霊(少女)に名付けた。

 

 

 

「斯くして、産まれるはずのない娘は、二人の愛によって生み出され、崇宮澪真が生まれたんだよ」

 

「「「…………………………、」」」

 

涙腺崩壊寸前の響や、感慨深く目を閉じる蓮、無関心そうでしっかり聞いてくれた黒い少女が沈黙する。

澪真という精霊(少女)が生まれる過程で、あの様な出来事があったのかと、驚きを隠せない。

神の妨害、それでも幸せを求めた澪と真士、諦めなかった二人の願いが、奇跡を起こしたのだ。

響は、堪えきれずに号泣しながら澪真に抱き着いた。

 

「うわぁぁぁぁん!なんなんですかその神って奴は!人の幸せにケチつけるなんて最低です最悪ですクズ野郎です!!」

 

「……ふむ。まさかあの人が未来で苦労する事になろうとは思いもしなかったよ。しかしなんだ……良かったね、と称賛するべきなのかな?」

 

「九つの霊結晶(セフィラ)を内包しているのではなく、そのものだったのか。道理で我が【終焉の剣(ペイヴァーシュヘレヴ)】でも灰燼に帰せなかったわけだ」

 

「黒いお姉さんだけ感想ズレてるけど、ありがとうなんだよ」

 

響、蓮、黒い少女の感想を受け止めて、澪真は照れ臭そうに笑う。

澪真は、手を叩いて皆に言う。

 

「さて、レマの話はお終い。この後、レマはまだ行く所があるけど――付いてきてくれる人挙手なんだよ」

 

「はいはーい!」

 

響が元気良く手を上げる。

蓮は、しばし考え込み口を開く。

 

「自分も付いてっていいのかい?」

 

「いいんだよ。それとも、母様の掛けた貴女の封印……全部解いたら付いてきてくれる?」

 

「…………なんだって?」

 

「動きづらいよね、分かったんだよ。レン義姉様の封印を解くから、ちょっと待っててね」

 

「…………………………あ、ああ」

 

頼んだ覚えは無いのだがね。

しかし連を余所に、澪真は母様から授かった天使の力を使う。

 

「レン義姉様の封印は解けている、()()()()()()()()()()()

 

「…………!?」

 

変化は突如として起きる。

蓮の目を覆っていた包帯は消え、両の目に斜めに入った疵が特徴的な顔が露になる。

拘束具も綺麗さっぱり無くなり、蓮はとても気が楽そうな表情を浮かべていた。

そして、驚きの表情に染まる。

 

「これは!?澪真、貴女は自分に何をしたのかね?」

 

「レマはね、母様の法の天使〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉の権能を使って条理を捻じ曲げたんだよ。レン義姉様の封印が、既に解けている事にしたからね」

 

「…………ははは、なるほどね。貴女はそういう存在だったね。まさか毒の天使〈瘴毒浄土(サマエル)〉の力を使わずして、封印から完全に解き放たれるなんて思いもしなかったよ」

 

「ふふふ、レマの優しさに全米が泣いてくれてもいいんだよ」

 

「ああ、嬉し泣きしそうだよ。本来ならここで貴女達を裏切って殺す手筈なのだけれど……母上級の貴女が傍に居ては悪役すら演じる事も出来ないのが、悪性の精霊としての自分に成りきれないところだね」

 

「そんなものに成る必要はないんだよ。一緒に行こ?レン義姉様」

 

「……全く、本当に敵わないね、貴女には」

 

観念した様に蓮は澪真の手を取る。

最後は、黒い少女だけだが。

澪真は、黒い少女に向けて手を翳す。

その行為に、蓮は知っていた。

アレは――対象の自由を奪うものだと。

澪真は、先に謝った。

 

「ごめんなさい、黒いお姉さん。貴女だけは、この領域から連れ出してあげられないの」

 

「……ふん。元よりここから出るつもりもないし、貴様に付いていくつもりもない」

 

「うん。だから〈暴虐公(この子)〉を返すね。それから、()()()()、黒いお姉さん」

 

「ぬ?――ッ!?き、さま……私に、なに、をし………」

 

た、という前に黒い少女は、澪真の手によって強制的に眠りにつかされる。

暴虐公(ナヘマー)〉を取り戻し、眠りについた黒い少女の頭を優しく撫でて言う。

 

 

「大丈夫なんだよ。貴女を――いや、もう一人の貴女を、救ってくれる勇者(ヒーロー)が、もうすぐ現れるからね。それまで、おやすみなさい。貴女達に永遠の幸福が訪れる日を願ってます」

 

 

それだけ言い残して、眠る黒い少女に背を向ける。

澪真は、明後日の方向を指差しで告げる。

 

「じゃあ行くよ、ヒビキ、レン義姉様。目指すは第三領域(ビナー)!しっかり付いてきてね」

 

「はーい!」

 

「はてさて、この旅路が上手く行くといいのだけれどね」

 

澪真は第一〇領域(マルクト)で出逢った響と蓮を引き連れて、第三領域(ビナー)を目指すのだった。




次回
隣界編 第三領域 前編

〈輪廻楽園〉で領域をすっ飛ばして第三領域へ到着する澪真達。
彼女達を出迎えたのは――数多のエンプティ達だった。

「……おや?エンプティ達では足止めすら出来なかったようだね」

「――〈贋造魔女〉」

「きひ、きひひひひひひひひ!さぁさぁ、わたくしと躍りましょう?紗和さん」

「狂三さんの姿で、狂三さんの声で、狂三さんの力を使って、狂三さんを騙るな偽者ッ!!」
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