デート・ア・ライブ 未来からの来訪者   作:問題児愛

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オリジナルになると文字数が増えていく_(┐「ε:)_

文字数の関係上、蓮の話は次回となりますm(_ _)m


第三領域 後編

激突、鬩ぎ合って数瞬、互いに距離を取る。

狂三(澪真)は歩兵銃の銃口をこめかみに押し当て撃つ。

 

「〈刻々帝(ザフキエル)〉――【一の弾(アレフ)】」

 

紗和は軍刀(サーベル)を構えて突貫する。

 

「〈狂々帝(ルキフグス)〉――【牡牛の剣(ショール)】」

 

互いに加速する。

時間を操る天使と空間を操る魔王。

似て非なる方法で互いに加速し、肉薄する。

互いの肉を穿ち、突き刺す。

撃って撃って撃って撃って撃って。

刺して刺して刺して刺して刺して。

互いの霊装は、ボロボロになり、流血する。

二人は再び距離を取り、各々力を行使する。

 

「【四の弾(ダレット)】」

 

時間の巻き戻しで、最初から傷を負ってなかったかのように復元する。

 

「【水瓶の弾(ドゥリ)】」

 

床に撃ち、自身を中心とした自動再生領域を展開する。

復元と再生。

似て非なる方法で互いに傷を癒す。

狂三(澪真)が次の手を打つ。

 

「【八の弾(ヘット)】」

 

過去の再現。

影から十二体の狂三(澪真)の分身体が這い出てくる。

 

「「「「「「きひひひひひひひひ!」」」」」」

 

狂喜な笑みを浮かべる狂三(澪真)の分身体×十二。

紗和をまるで時計の数字に見立てるかのように取り囲み、銃口を向けていく。

これから集中砲火を受けるというのに、紗和の顔に焦りはない。

そして、狂三(澪真)の分身体達が一斉射撃を行い――

 

「【天秤の弾(モズニーム)】」

 

その中の一体を撃って、紗和の位置と入れ替える事で攻撃を逃れた。

一斉射撃を代わりに受けた狂三(澪真)の分身体の一体は、断末魔を上げる間も無く散る。

だが、それを見抜いていたように嗤って、澪真は紗和の脚を撃ち抜く。

 

「…………!?」

 

「この状況なら、【天秤の弾(ソレ)】を使うと思ってたんだよ。まんまとレマの手に乗せられたね、サワ」

 

「…………狂三さんごっこは、もうしないのかな?」

 

「レマは貴女を引き摺り出す為に、クルミの真似をしただけだからね。出て来てくれたんだから、もう真似する必要もないんだよ」

 

「……そう。でも狂三さんを騙った罪は重いよ。ここで死んでくれないかな?」

 

「物騒な事を言うね、サワ。でも、チャンスならあげるよ。元々、一回は殺されるつもりで貴女の前に現れたんだからね」

 

なに?と紗和は眉を顰める。

私に殺されに来た?

あの女の言ってる意味が分からない。

不可解だ、という紗和に、澪真は応える。

 

「サワを精霊もどきに変えて、クルミに討たせたのは他でもない――レマの母様だからね。レマはそんな母様の尻拭いをしに来たの」

 

「…………え?」

 

今、なんて言った?

私を精霊もどきに変えて、狂三さんに討たせた?

それをやらせたのが、あの女の母親!?

そ、それじゃあ狂三さんは……使命を遂行しただけという事?

だ、だとしても私は――

 

「狂三さんを許す事は出来ないかな……貴女の母親に騙されていたとしても、狂三さんが私を殺した事実は変わらないから」

 

「そうだよね、そこは変えようの無い事実だもんね。だけど、サワの本心はどう思ってるのかな?クルミに会いたくはないの?」

 

「……どうかな。会いたい気持ちはあるけど、殺したい程憎んでもいる。狂三さんに会ってみないと分からないかもしれないね、私が狂三さんをどうしたいのかなんて」

 

「……会いたくないわけじゃないんだね、それを聞けて安心したんだよ」

 

安堵する澪真に、紗和は不可解そうに彼女を睨んだ。

 

「それはどういう意味?」

 

「それはね、サワを連れて隣界(ここ)を出て、クルミに会わせられるなって意味なんだよ」

 

「!?」

 

絶句。

この女に付いていけば、隣界を出られるというのか。

だが、そんな上手い話があるわけがない。

これは――

 

「サワを嵌める罠だと思ってるのかな?」

 

「――ッ!?」

 

「そんな事はしないんだよ。レマはね、貴女にも幸せになって欲しいだけなの。皆が幸せになれる未来を創る事こそが、レマの望みだからね」

 

「………………」

 

あの女の言ってる意味が分からない。

私に幸せになって欲しい?

何故見ず知らずの人の幸せを、あの女が望むのか。

澪真は続ける。

 

「サワはクルミに会いたいよね?ならレマがその願いを叶えてあげるんだよ。だからね、レマの手を取ってくれないかな?」

 

「狂三さんに会いたいとは言った覚えないんだけど」

 

「でも、会いたくないわけではないんだよね?」

 

「………………」

 

再び沈黙。

会いたくないわけではないのは本当のこと。

だけど、いざ会ったとして万が一、私が狂三さんを殺そうとしたら――

 

「――構いませんわ」

 

「…………え?」

 

紗和は、狂三の声を聞いて思考が停止した。

また狂三さんを騙ったあの女かと思いかけて、否定する。

姿はあの女のままなのに、声だけが狂三さんなのは明らかにおかしい。

それに、私が本物の狂三さんの声を、聞き間違えるなどありえないのだから。

 

「……狂三さん、なの?」

 

「ええ、わたくしですわ。正確には、()()()()()()()()()()()()ですけれど」

 

「……?未来の狂三さんの、残留思念?」

 

「ええ。未来のわたくし、いえ――わたくし達は、始原の精霊に敗北して皆死んでしまいましたが……わたくし達の想いは奇跡的に士道さんの中に残り、そして今はこの子の中にいますわ」

 

「…………えっと、その女の中に狂三さん達がいるってことでいいのかな?」

 

「簡潔に述べれば、その解釈で間違いありませんわね」

 

つまり、私の間違いではなく。

今はあの女ではなく、狂三さんと話しているという事だ。

少し頬が緩む感覚があった。

偽者ではなく、本物の狂三さんということが、憎しみよりも嬉しい感情が上回ったらしい。

いやそうではなくて。

 

「構わないって、どういうこと?」

 

「殺されてもいい、という事ですわ」

 

「…………本気?」

 

「本気ですわ。わたくしには紗和さんを殺した罪があります。その逆をされても、わたくしが紗和さんを恨む理由なんてありませんもの」

 

「………………」

 

「わたくしは、ずっと後悔しておりました。あの時どうしてわたくしは、紗和さんが助けを求めていたのに、それに気づけなかったのかと。わたくしに必死に手を伸ばしてきたその手を取らずに、容赦無く撃ってしまったのかと。親友を手にかけてしまったのかと」

 

悲しげに目を伏せ、プルプルと体を震わせる澪真(狂三)

それに紗和が言う。

 

「……狂三さんは、反転しかけたんだよね?」

 

「ええ。他ならぬわたくしの手で、大切な親友を殺した事実に絶望して、反転しかけましたわ。その……あまりにもショックが大きすぎて頭の中が真っ白になって」

 

「……うん。その狂三さんの反転体に逢って、契約を結んでこの体を使わせてもらってる。お互いに、狂三さんへの憎悪を燃やしながら」

 

「そうでしたのね。では紗和さんはわたくしを――」

 

「だけど、やめました。狂三さんを殺すのは」

 

「…………え?」

 

驚く澪真(狂三)に、紗和は続ける。

 

「狂三さんに殺された事は今でも恨んでます。ですが、狂三さんの想いを知って……やっぱり狂三さんは狂三さんだなって、安心しちゃった」

 

「え?それってどういう意味ですの!?」

 

「ふふふ。私を殺した時の狂三さんは、凄く怖かった。冷酷で容赦が無くて、殺意を向けられて怖かった。でも、狂三さんの本心が聞けて、殺されてもいいなんて言われたら、私は狂三さんを殺せるわけないよ」

 

「紗和さん……」

 

「殺された事の恨みは、憎悪はあるけど。今の私の胸中に強くあるのは――狂三さんを殺したくないって思いかな。それとね、もう一つあるんだ」

 

「もう一つ?それはなんですの?」

 

澪真(狂三)が訊くと、紗和は笑顔で一言。

 

 

「もう一度私の――()()になってくれませんか?」

 

 

「…………!?」

 

 

思いもしなかった紗和の発言に、言葉を失う澪真(狂三)

だってそうだ、狂三は紗和を撃ち殺した精霊。

そう、殺したのだ、かつての親友を。

なのに、紗和さんは、そんなわたくしを、もう一度親友にしたいと言う。

どうしてこんなわたくしなんかと、もう一度親友になりたいと言いますの?

そんな事言われたらわたくしは……わたくし、は……!

堰き止めていた感情が、一気に溢れてそれは涙となって目からポロポロと零れ落ちる。

それを見た紗和が驚いて、澪真(狂三)に駆け寄った。

 

「く、狂三さん!?どうしたんですか!どこか痛むんですか!?」

 

「違い、ますわ。紗和さんが……わたくし、に向けるべきではない、言葉、を仰るから、ですわ……!」

 

止まらない涙の粒を零しながら言う澪真(狂三)

どうしてわたくしに、そのような優しい言葉をかけるんですの?

わたくしは貴女を殺した殺人鬼、人殺しですのよ?

わたくしは貴女が差し伸ばしてきた手を、取らなかったというのに……!

 

「あぁ……あああぁぁぁ――――――!!!」

 

慟哭。

溢れ出した感情が臨界点に達し、泣き叫んでしまう澪真(狂三)

そんな彼女に寄り添い、優しく抱き締める紗和。

そして理解する。

狂三さんはずっと、私の死を背負って生きてきたんだ。

狂三さんはずっと、私を殺した事を後悔し、自分を恨み責め続けていたんだね。

だけど、もう大丈夫だよ。

私はここに、貴女の傍にいるのだから。

言葉にはせず、ただただ澪真(狂三)の震える体を抱き締め続けた。

それから暫くして。

泣き止んだ澪真(狂三)は、顔を赤くして俯いた。

 

「みっともないものをお見せしてごめんなさい、紗和さん」

 

「ううん、そんなことないよ。私はね、狂三さんが私の事で泣いてくれた事が嬉しかったんだから」

 

「……っ!」

 

紗和の言葉に、顔だけでなく耳まで赤く染める澪真(狂三)

そんな愛らしい少女を見て、紗和は笑みを零し。

 

「……痛っ」

 

不意に襲った頭痛に顔を顰める。

頭を押さえる紗和を見て、澪真(狂三)が心配そうに言う。

 

「紗和さん?どうしましたの?」

 

「……頭が、痛いかな。なんでかは、まあ、大体予想つくけど」

 

「予想がつく?……!?紗和さん!髪の色が少し変わってきてますわよ!」

 

澪真(狂三)が、紗和の頭髪を見ながら叫ぶ。

紗和も、己の髪の毛の先が白ではなく、()()に変わっているのを見て、苦笑を零す。

 

「……そっか。私の中にある狂三さんへの憎悪(想い)が、薄まっちゃったのが原因かな………」

 

「どういう意味ですの?」

 

「……私の魂と、狂三さんの反転体の体が結びついていたのは……同じ狂三さんへの憎悪(想い)がそうさせてくれてたからなんだ。だけど、私の狂三さんへの憎悪(想い)が薄れたことで、私達の憎悪(想い)がズレて分離し始めてる」

 

「分離?そ、それでは紗和さんはどうなりますの……?」

 

「分からない、けど。もしかしたら消えちゃう、のかも?」

 

「そんな……!」

 

澪真(狂三)は悲痛の声を上げ、紗和を抱き締める。

消えてしまわぬように、強く、強く抱き締める。

紗和は、苦笑いを浮かべて言う。

 

「そんなに、強く抱き締められたら、痛いよ。私なら、もう平気。こうして狂三さんと再会できて……狂三さんと言葉を交わせたから。この世に未練なんて」

 

「嫌ですわ!せっかく再会できたのに!言葉を交わせられたのに!このまま消えるなんて、絶対に嫌ですわ!」

 

満足したような言葉を紡ぐ紗和に、澪真(狂三)は小首を横に振って拒否する。

 

「わたくしはまだ!紗和さんを救えてないんですのよ!?それに、彼方の世界(現実)にいる現在(いま)のわたくしには、会ってくれませんの!?」

 

「……あ」

 

澪真(狂三)の魂の叫びを聞いて、紗和は瞬時に理解した。

あの女が言った、私に幸せになって欲しいという願い。

何故見ず知らずの人の幸せを願うのか、意味が分からなかったが。

だけどこの願いは、狂三さんのものだったんだ!

おそらく、狂三さんの想いが、あの女に影響を与えてあんな事を口走っていたんだね。

嗚呼、それが知れただけで、私は幸せだよ狂三さん。

本当にこのまま、消えて無くなってもいいとさえ思えた。

この胸の奥にある憎悪が、狂三さんを傷つけてしまう前に。

心残りがあるとすれば、そうですね。

彼方の世界(現実)に帰還して、狂三さんを抱き締めてあげられない事でしょうか。

紗和の髪の色がもう、半分まで栗色に変わってしまっていた。

一刻の猶予も無い事態だと理解した澪真(狂三)は、紗和を強く抱き締めながら強く願った。

 

 

わたくしはどうなっていい。

ですからどうか、どうか紗和さんを。

助けてくださいまし……!

 

 

『――大丈夫、なんだよ』

 

 

え?

狂三の願いに答えたのは、澪真だった。

 

 

『その願い、レマが叶えてあげるんだよ』

 

 

ほ、本当ですの!?

狂三が驚きながら言うと、澪真は肯定する。

 

 

『うん。だからね、強く願って』

 

 

強く、願う?

狂三が小首を捻ると、澪真は続けた。

 

 

『そう、強く願うの。そうすれば天使が、貴女に力を貸してくれるからね』

 

 

天使が、わたくしに?

刻々帝(ザフキエル)〉に、そんな力があるというんですの?

四の弾(ダレット)】で時間を巻き戻す?

ですがそんな事をしても意味などありませんわ。

結局は、同じ結末を辿るに違いありませんもの。

過去を変えて、未来を変えない限りは――ッ!?

………………()()()()()()

わたくしの天使〈刻々帝(ザフキエル)〉は、影と時間を操る。

時間に干渉できる天使。

未来跳躍を可能とする【一一の弾(ユッド・アレフ)】。

過去跳躍を可能とする【一二の弾(ユッド・ベート)】。

この力は、過去に干渉せずに、未来を変えるなど出来ますの?

――――――きひ。

きひひひひひひひひ!

上等ですわ!やってやろうじゃありませんの!

でェ……もォ……。

澪真さん、貴女にも協力してもらいますわよ!

 

 

『勿論だよ。だからレマと変えよう?未来を』

 

 

ええ、ええ。

変えましょう、未来を。

そして、()()()()()()――わたくし達の未来を!

 

 

そして、澪真(狂三)は紗和から離れて、己が天使の名を呼んだ。

 

「〈刻々帝(ザアアアフキエエエエエエル)〉!!」

 

澪真(狂三)の影から巨大な時計盤が出現する。

そして、その時計盤の()()に長銃を向ける。

するとそこから影の弾丸が現れ、装填された。

その長銃の銃口を紗和に向けて告げる。

 

「紗和さん。今すぐ貴女を救ってみせますわ。わたくしの――()()()()()()!!」

 

「狂三、さん?」

 

紗和が頭を押さえながら、覚悟の瞳でこちらを見つめている澪真(狂三)を見つめ返す。

澪真(狂三)は、引き金を引きながら、その弾丸の名を告げた。

 

 

「〈刻々帝(ザフキエル)〉――【一三の弾(ユッド・ギメル)】」

 

 

澪真の霊力と、狂三の全てを賭けて()()()()()弾丸が、【一三の弾(ユッド・ギメル)】が、紗和の胸に突き刺さる。

刹那、紗和の全身を眩い光が包み込んだ。

そして――

 

「………………成功、ですわね」

 

澪真(狂三)は満足気に、笑みを零した。

生まれ変わった、紗和の姿を見て。

 

「………………これは……私?」

 

栗色の長い髪の毛をおさげに束ねた、狂三の知っているあの頃の紗和がいた。

違いがあるとすれば――

右眼は赤く、左眼は()()()()()()

纏う霊装は、白い軍服ではなく――()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そんなところか。

紗和が手にしていた空間の魔王〈狂々帝(ルキフグス)〉は、狂三の反転体の姿はもう無い。

新たに手にした力は、影と時間の天使〈刻々帝(ザフキエル)〉と霊装〈神威霊装・三番(エロヒム)〉――狂三のものだった。

自身の姿に戸惑う紗和。

それを眺めて、笑みを浮かべていた澪真(狂三)は、その場に崩れ落ちる。

 

「……!?く、狂三さん!?」

 

駆け寄り、澪真(狂三)の体を抱き起こす紗和。

澪真(狂三)は、嬉しそうに紗和の頬に手を当てて言う。

 

「うふふ、わたくしの霊装も、お似合いで、可愛いですわよ、紗和さん」

 

「く、狂三さん!?なんで今そういうこと言うんですか!」

 

「きひひ、さっきの、仕返しですわ」

 

「仕返し!?も、もう!狂三さんったら」

 

紗和が拗ねたように頬を膨らませる。

澪真(狂三)は、笑って紗和の頬を撫でる。

 

「紗和さん。わたくしは、迷いましたわ。貴女に、〈狂々帝(ルキフグス)〉を、残すべきか、どうかを」

 

「……!そ、そうだ!狂三さん、私に何をしたの?どうして〈狂々帝(ルキフグス)〉が、狂三さんの反転体の体が消えてるの?」

 

「……わたくしが、そう願って、撃ち込んだから、ですわ。()()()()()()()()――【一三の弾(ユッド・ギメル)】を」

 

「……【一三の弾(ユッド・ギメル)】?」

 

「ええ。【一三の弾(ユッド・ギメル)】は、澪真さんの、膨大な霊力と、わたくしの、全てを賭けて、新たに、生み出した――()()()()()()()、ですわ」

 

「未来を、創る弾丸!?」

 

驚愕の声を上げる紗和。

未来を創る弾丸――【一三の弾(ユッド・ギメル)】。

澪真の膨大な霊力と、未来の狂三の『全て』を引き替えに生み出した、最初で最後の弾丸。

撃った対象の未来を創り変える能力を持つ。

使用者の望んだ対象の未来を創る弾丸にして。

――使用者の()()()()()弾丸である。

使用者の『全て』を喰らって撃ち放つ、最後の弾丸(ファイナル・バレット)

別名――自己犠牲の弾(セルフサクリファイス・バレット)

自身の犠牲を引き替えに、対象の未来を創る弾丸。

過去改変で起こる修正が無い、未来を確定させる絶対の能力。

狂三の願いは、紗和が消える運命を変え、狂三の力を託す事。

魔王の力は、〈狂々帝(ルキフグス)〉は危険だから、紗和に持たせるのは良くないと思った。

けれど、人間に戻しても、彼女の家族は死んだはずの紗和を受け入れてはくれないだろう。

ならばと、精霊として、幸せになって欲しい。

あわよくば、現在(いま)のわたくしを、もう一度親友として迎え入れてくださいまし。

 

「……ッ!?じ、じゃあ狂三さんはもう」

 

「ええ。わたくしは、助かりませんわ。わたくしの全てを、紗和さんに、託しましたから」

 

「ど、どうしてそんな……!」

 

「わたくしは、既に死んだ、存在ですの。どのみち、わたくしには、未来はありません。そんなわたくしが、現在(いま)の、わたくしに変わって、紗和さんを、救うのは、いけなくて?」

 

「そういう事じゃない!なんで狂三さんが、自分を犠牲にしてまで、私を救ってくれたの!?」

 

 

そんなの、分からないよ!

どうして狂三さんは、私が消える事を否定したのに!

狂三さんが、消えるのはいいんですか!

嫌だよ……消えないで、狂三さん!

未来のとか、現在(いま)のとか、そんなのは、どうでもいい!

私は、ただただ狂三さんに消えて欲しくないの!

貴女と別れるなんて、絶対に嫌!

 

 

『大丈夫、なんだよ』

 

 

え?

紗和は、澪真(狂三)を見た。

聞こえてきたのは、あの女――澪真の声だった。

 

 

『未来のクルミは消えないからね』

 

 

それは本当なの?

紗和がそう返すと、澪真は肯定する。

 

 

『うん。だって未来のクルミが、【一三の弾(ユッド・ギメル)】を使っても、()()()()からね』

 

 

……!!

澪真の言葉に、紗和は瞬時に理解する。

一三の弾(ユッド・ギメル)】――未来を創る弾丸。

使用した狂三は、現在(いま)の狂三ではなく、()()()()()()()()

過去に来た者が、【一三の弾(ユッド・ギメル)】を使っても、未来に干渉した扱いにはならない。

だから、未来の狂三が消える事はない。

では何故狂三さんが――今にも消えそうになっているの?

 

 

『それはね、未来のクルミが、【一三の弾(ユッド・ギメル)】に変わって、サワの中に撃ち込まれたからなんだよ』

 

 

……え?

 

 

『【一三の弾(ユッド・ギメル)】は、未来のクルミ()()()()。貴女に撃ち込まれたから、レマの中から貴女の中に移動するだけなんだよ』

 

 

……!

じゃあ、これから私の中に、狂三さんが来るんだね。

 

 

『うん。未来のクルミを、よろしくなんだよ。レマからは、クルミの天使と霊装を託します。これでレマは、クルミの天使と魔王が使えなくなっちゃったけどね』

 

 

貴女に言われなくても。

狂三さんと同じ力を手にしてるのは、貴女の力だったんだね。

 

 

『クルミからじゃなくて、ガッカリした?』

 

 

うん、凄くガッカリした。

けど、ありがとう。

狂三さんの力をくれて、とても嬉しい。

 

 

『喜んでもらえてなによりなんだよ。それから、出血大サービスでクルミの反転体の力も使えるようにしといたから、大事にしてあげてね』

 

 

……!?

貴女は、なんでもありの存在なんですか?

 

 

『レマは母様の娘だからね』

 

 

へえ、そうなんだ。

全く何言ってるのか分からないけど。

けど、私が消滅しなくなった理由は分かった。

あの女、いえ――()()()()が、狂三さんの天使と魔王を私に譲渡し、上書きしたからなんだね。

本当に、なんでもありな存在。

そんな事を思いながら、澪真(狂三)に微笑む紗和。

その表情に、澪真(狂三)がムッとした顔で言う。

 

「あら、あら。この子が、余計な事を、仰いましたわね?紗和さんの、お顔を見れば……なんとなく、想像が、つきますもの」

 

「うん。酷いよ、狂三さん。嘘ついて、私を悲しませようとしたんだから。これからもずっと一緒に居られるのなら、そう言って欲しかったです」

 

「そ、そんな、こっ恥ずかしい事……わたくしが、素直に、言えると、思いまして?」

 

「そうでしたね。狂三さんは、からかい甲斐のある、可愛らしい性格のお方ですよね」

 

「~~~~っ!!そ、そういうところが!紗和さんの、悪い癖、ですのよ……っ!!」

 

顔を真っ赤にして怒る澪真(狂三)を、笑って見つめる紗和。

そして、澪真(狂三)が顔を赤らめたまま、言った。

 

「……紗和さん。わたくし達は、これからも、ずっと一緒……ですわ」

 

「うん。ずっと一緒ですよ、狂三さん」

 

「……では、参りましょう。現在(いま)の、わたくしを、救いに」

 

「うん。行きましょう。彼方の世界(現実)にいる、狂三さんを救いに」

 

そうして、未来の狂三は、紗和と一つになった。

共に往こう、何処までも。

 

 

 

 

 

斯くして、運命(未来)を変える欠片(ピース)を、一つ手に入れた。

決してそうはならなかった、一つの運命(未来)

時崎狂三と山打紗和が、彼方の世界(現在)で再会を果たす、存在しない分岐点(IFルート)

これから語られますは、未知の領域。

時崎狂三と山打紗和(少女達)の新たな物語。

運命(未来)がどう展開されていくかは、全ては彼女達の想い次第。

さあ、紡いでいこう、彼女達だけの物語を。

最後までどうか、御照覧あれ。




オリジナル能力紹介。

一三の弾(ユッド・ギメル)
自身の『全て』を喰らわせて、撃った対象の未来を創り変え、確定させる弾丸。
欠点は、自身(分身体含む)には使えない、他者にしか効果を発揮出来ない事。
澪真の中にある膨大な霊力と、崇宮澪の法の天使〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉の力と、時崎狂三の影と時間の天使〈刻々帝(ザフキエル)〉の力を以て生み出した最初で、最後の弾丸。
別名――自己犠牲の弾(セルフサクリファイス・バレット)
未来の精霊(少女)達ゆえに、この弾丸を生み出す事を可能とさせた、奇跡の一弾であり、使い方を誤れば破滅を齎す終焉の一弾である。


運命(未来)を変える行為は、一つの運命(未来)の破綻を意味する。
それは――()()()()()()()()()
だが、それを識っていながらも、少女の歩みは止まらない。
自分以外の精霊を、幸せにする為に少女は死地へと踏み込んでいく。
その歩みを止められるのは、少女の中にいる未来の精霊(少女)達と――五河士道(あの男)しか居ないだろう。
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