文字数の関係上、蓮の話は次回となりますm(_ _)m
激突、鬩ぎ合って数瞬、互いに距離を取る。
「〈
紗和は
「〈
互いに加速する。
時間を操る天使と空間を操る魔王。
似て非なる方法で互いに加速し、肉薄する。
互いの肉を穿ち、突き刺す。
撃って撃って撃って撃って撃って。
刺して刺して刺して刺して刺して。
互いの霊装は、ボロボロになり、流血する。
二人は再び距離を取り、各々力を行使する。
「【
時間の巻き戻しで、最初から傷を負ってなかったかのように復元する。
「【
床に撃ち、自身を中心とした自動再生領域を展開する。
復元と再生。
似て非なる方法で互いに傷を癒す。
「【
過去の再現。
影から十二体の
「「「「「「きひひひひひひひひ!」」」」」」
狂喜な笑みを浮かべる
紗和をまるで時計の数字に見立てるかのように取り囲み、銃口を向けていく。
これから集中砲火を受けるというのに、紗和の顔に焦りはない。
そして、
「【
その中の一体を撃って、紗和の位置と入れ替える事で攻撃を逃れた。
一斉射撃を代わりに受けた
だが、それを見抜いていたように嗤って、澪真は紗和の脚を撃ち抜く。
「…………!?」
「この状況なら、【
「…………狂三さんごっこは、もうしないのかな?」
「レマは貴女を引き摺り出す為に、クルミの真似をしただけだからね。出て来てくれたんだから、もう真似する必要もないんだよ」
「……そう。でも狂三さんを騙った罪は重いよ。ここで死んでくれないかな?」
「物騒な事を言うね、サワ。でも、チャンスならあげるよ。元々、一回は殺されるつもりで貴女の前に現れたんだからね」
なに?と紗和は眉を顰める。
私に殺されに来た?
あの女の言ってる意味が分からない。
不可解だ、という紗和に、澪真は応える。
「サワを精霊もどきに変えて、クルミに討たせたのは他でもない――レマの母様だからね。レマはそんな母様の尻拭いをしに来たの」
「…………え?」
今、なんて言った?
私を精霊もどきに変えて、狂三さんに討たせた?
それをやらせたのが、あの女の母親!?
そ、それじゃあ狂三さんは……使命を遂行しただけという事?
だ、だとしても私は――
「狂三さんを許す事は出来ないかな……貴女の母親に騙されていたとしても、狂三さんが私を殺した事実は変わらないから」
「そうだよね、そこは変えようの無い事実だもんね。だけど、サワの本心はどう思ってるのかな?クルミに会いたくはないの?」
「……どうかな。会いたい気持ちはあるけど、殺したい程憎んでもいる。狂三さんに会ってみないと分からないかもしれないね、私が狂三さんをどうしたいのかなんて」
「……会いたくないわけじゃないんだね、それを聞けて安心したんだよ」
安堵する澪真に、紗和は不可解そうに彼女を睨んだ。
「それはどういう意味?」
「それはね、サワを連れて
「!?」
絶句。
この女に付いていけば、隣界を出られるというのか。
だが、そんな上手い話があるわけがない。
これは――
「サワを嵌める罠だと思ってるのかな?」
「――ッ!?」
「そんな事はしないんだよ。レマはね、貴女にも幸せになって欲しいだけなの。皆が幸せになれる未来を創る事こそが、レマの望みだからね」
「………………」
あの女の言ってる意味が分からない。
私に幸せになって欲しい?
何故見ず知らずの人の幸せを、あの女が望むのか。
澪真は続ける。
「サワはクルミに会いたいよね?ならレマがその願いを叶えてあげるんだよ。だからね、レマの手を取ってくれないかな?」
「狂三さんに会いたいとは言った覚えないんだけど」
「でも、会いたくないわけではないんだよね?」
「………………」
再び沈黙。
会いたくないわけではないのは本当のこと。
だけど、いざ会ったとして万が一、私が狂三さんを殺そうとしたら――
「――構いませんわ」
「…………え?」
紗和は、狂三の声を聞いて思考が停止した。
また狂三さんを騙ったあの女かと思いかけて、否定する。
姿はあの女のままなのに、声だけが狂三さんなのは明らかにおかしい。
それに、私が本物の狂三さんの声を、聞き間違えるなどありえないのだから。
「……狂三さん、なの?」
「ええ、わたくしですわ。正確には、
「……?未来の狂三さんの、残留思念?」
「ええ。未来のわたくし、いえ――わたくし達は、始原の精霊に敗北して皆死んでしまいましたが……わたくし達の想いは奇跡的に士道さんの中に残り、そして今はこの子の中にいますわ」
「…………えっと、その女の中に狂三さん達がいるってことでいいのかな?」
「簡潔に述べれば、その解釈で間違いありませんわね」
つまり、私の間違いではなく。
今はあの女ではなく、狂三さんと話しているという事だ。
少し頬が緩む感覚があった。
偽者ではなく、本物の狂三さんということが、憎しみよりも嬉しい感情が上回ったらしい。
いやそうではなくて。
「構わないって、どういうこと?」
「殺されてもいい、という事ですわ」
「…………本気?」
「本気ですわ。わたくしには紗和さんを殺した罪があります。その逆をされても、わたくしが紗和さんを恨む理由なんてありませんもの」
「………………」
「わたくしは、ずっと後悔しておりました。あの時どうしてわたくしは、紗和さんが助けを求めていたのに、それに気づけなかったのかと。わたくしに必死に手を伸ばしてきたその手を取らずに、容赦無く撃ってしまったのかと。親友を手にかけてしまったのかと」
悲しげに目を伏せ、プルプルと体を震わせる
それに紗和が言う。
「……狂三さんは、反転しかけたんだよね?」
「ええ。他ならぬわたくしの手で、大切な親友を殺した事実に絶望して、反転しかけましたわ。その……あまりにもショックが大きすぎて頭の中が真っ白になって」
「……うん。その狂三さんの反転体に逢って、契約を結んでこの体を使わせてもらってる。お互いに、狂三さんへの憎悪を燃やしながら」
「そうでしたのね。では紗和さんはわたくしを――」
「だけど、やめました。狂三さんを殺すのは」
「…………え?」
驚く
「狂三さんに殺された事は今でも恨んでます。ですが、狂三さんの想いを知って……やっぱり狂三さんは狂三さんだなって、安心しちゃった」
「え?それってどういう意味ですの!?」
「ふふふ。私を殺した時の狂三さんは、凄く怖かった。冷酷で容赦が無くて、殺意を向けられて怖かった。でも、狂三さんの本心が聞けて、殺されてもいいなんて言われたら、私は狂三さんを殺せるわけないよ」
「紗和さん……」
「殺された事の恨みは、憎悪はあるけど。今の私の胸中に強くあるのは――狂三さんを殺したくないって思いかな。それとね、もう一つあるんだ」
「もう一つ?それはなんですの?」
「もう一度私の――
「…………!?」
思いもしなかった紗和の発言に、言葉を失う
だってそうだ、狂三は紗和を撃ち殺した精霊。
そう、殺したのだ、かつての親友を。
なのに、紗和さんは、そんなわたくしを、もう一度親友にしたいと言う。
どうしてこんなわたくしなんかと、もう一度親友になりたいと言いますの?
そんな事言われたらわたくしは……わたくし、は……!
堰き止めていた感情が、一気に溢れてそれは涙となって目からポロポロと零れ落ちる。
それを見た紗和が驚いて、
「く、狂三さん!?どうしたんですか!どこか痛むんですか!?」
「違い、ますわ。紗和さんが……わたくし、に向けるべきではない、言葉、を仰るから、ですわ……!」
止まらない涙の粒を零しながら言う
どうしてわたくしに、そのような優しい言葉をかけるんですの?
わたくしは貴女を殺した殺人鬼、人殺しですのよ?
わたくしは貴女が差し伸ばしてきた手を、取らなかったというのに……!
「あぁ……あああぁぁぁ――――――!!!」
慟哭。
溢れ出した感情が臨界点に達し、泣き叫んでしまう
そんな彼女に寄り添い、優しく抱き締める紗和。
そして理解する。
狂三さんはずっと、私の死を背負って生きてきたんだ。
狂三さんはずっと、私を殺した事を後悔し、自分を恨み責め続けていたんだね。
だけど、もう大丈夫だよ。
私はここに、貴女の傍にいるのだから。
言葉にはせず、ただただ
それから暫くして。
泣き止んだ
「みっともないものをお見せしてごめんなさい、紗和さん」
「ううん、そんなことないよ。私はね、狂三さんが私の事で泣いてくれた事が嬉しかったんだから」
「……っ!」
紗和の言葉に、顔だけでなく耳まで赤く染める
そんな愛らしい少女を見て、紗和は笑みを零し。
「……痛っ」
不意に襲った頭痛に顔を顰める。
頭を押さえる紗和を見て、
「紗和さん?どうしましたの?」
「……頭が、痛いかな。なんでかは、まあ、大体予想つくけど」
「予想がつく?……!?紗和さん!髪の色が少し変わってきてますわよ!」
紗和も、己の髪の毛の先が白ではなく、
「……そっか。私の中にある狂三さんへの
「どういう意味ですの?」
「……私の魂と、狂三さんの反転体の体が結びついていたのは……同じ狂三さんへの
「分離?そ、それでは紗和さんはどうなりますの……?」
「分からない、けど。もしかしたら消えちゃう、のかも?」
「そんな……!」
消えてしまわぬように、強く、強く抱き締める。
紗和は、苦笑いを浮かべて言う。
「そんなに、強く抱き締められたら、痛いよ。私なら、もう平気。こうして狂三さんと再会できて……狂三さんと言葉を交わせたから。この世に未練なんて」
「嫌ですわ!せっかく再会できたのに!言葉を交わせられたのに!このまま消えるなんて、絶対に嫌ですわ!」
満足したような言葉を紡ぐ紗和に、
「わたくしはまだ!紗和さんを救えてないんですのよ!?それに、
「……あ」
あの女が言った、私に幸せになって欲しいという願い。
何故見ず知らずの人の幸せを願うのか、意味が分からなかったが。
だけどこの願いは、狂三さんのものだったんだ!
おそらく、狂三さんの想いが、あの女に影響を与えてあんな事を口走っていたんだね。
嗚呼、それが知れただけで、私は幸せだよ狂三さん。
本当にこのまま、消えて無くなってもいいとさえ思えた。
この胸の奥にある憎悪が、狂三さんを傷つけてしまう前に。
心残りがあるとすれば、そうですね。
紗和の髪の色がもう、半分まで栗色に変わってしまっていた。
一刻の猶予も無い事態だと理解した
わたくしはどうなっていい。
ですからどうか、どうか紗和さんを。
助けてくださいまし……!
『――大丈夫、なんだよ』
え?
狂三の願いに答えたのは、澪真だった。
『その願い、レマが叶えてあげるんだよ』
ほ、本当ですの!?
狂三が驚きながら言うと、澪真は肯定する。
『うん。だからね、強く願って』
強く、願う?
狂三が小首を捻ると、澪真は続けた。
『そう、強く願うの。そうすれば天使が、貴女に力を貸してくれるからね』
天使が、わたくしに?
〈
【
ですがそんな事をしても意味などありませんわ。
結局は、同じ結末を辿るに違いありませんもの。
過去を変えて、未来を変えない限りは――ッ!?
………………
わたくしの天使〈
時間に干渉できる天使。
未来跳躍を可能とする【
過去跳躍を可能とする【
この力は、過去に干渉せずに、未来を変えるなど出来ますの?
――――――きひ。
きひひひひひひひひ!
上等ですわ!やってやろうじゃありませんの!
でェ……もォ……。
澪真さん、貴女にも協力してもらいますわよ!
『勿論だよ。だからレマと変えよう?未来を』
ええ、ええ。
変えましょう、未来を。
そして、
そして、
「〈
そして、その時計盤の
するとそこから影の弾丸が現れ、装填された。
その長銃の銃口を紗和に向けて告げる。
「紗和さん。今すぐ貴女を救ってみせますわ。わたくしの――
「狂三、さん?」
紗和が頭を押さえながら、覚悟の瞳でこちらを見つめている
「〈
澪真の霊力と、狂三の全てを賭けて
刹那、紗和の全身を眩い光が包み込んだ。
そして――
「………………成功、ですわね」
生まれ変わった、紗和の姿を見て。
「………………これは……私?」
栗色の長い髪の毛をおさげに束ねた、狂三の知っているあの頃の紗和がいた。
違いがあるとすれば――
右眼は赤く、左眼は
纏う霊装は、白い軍服ではなく――
そんなところか。
紗和が手にしていた空間の魔王〈
新たに手にした力は、影と時間の天使〈
自身の姿に戸惑う紗和。
それを眺めて、笑みを浮かべていた
「……!?く、狂三さん!?」
駆け寄り、
「うふふ、わたくしの霊装も、お似合いで、可愛いですわよ、紗和さん」
「く、狂三さん!?なんで今そういうこと言うんですか!」
「きひひ、さっきの、仕返しですわ」
「仕返し!?も、もう!狂三さんったら」
紗和が拗ねたように頬を膨らませる。
「紗和さん。わたくしは、迷いましたわ。貴女に、〈
「……!そ、そうだ!狂三さん、私に何をしたの?どうして〈
「……わたくしが、そう願って、撃ち込んだから、ですわ。
「……【
「ええ。【
「未来を、創る弾丸!?」
驚愕の声を上げる紗和。
未来を創る弾丸――【
澪真の膨大な霊力と、未来の狂三の『全て』を引き替えに生み出した、最初で最後の弾丸。
撃った対象の未来を創り変える能力を持つ。
使用者の望んだ対象の未来を創る弾丸にして。
――使用者の
使用者の『全て』を喰らって撃ち放つ、
別名――
自身の犠牲を引き替えに、対象の未来を創る弾丸。
過去改変で起こる修正が無い、未来を確定させる絶対の能力。
狂三の願いは、紗和が消える運命を変え、狂三の力を託す事。
魔王の力は、〈
けれど、人間に戻しても、彼女の家族は死んだはずの紗和を受け入れてはくれないだろう。
ならばと、精霊として、幸せになって欲しい。
あわよくば、
「……ッ!?じ、じゃあ狂三さんはもう」
「ええ。わたくしは、助かりませんわ。わたくしの全てを、紗和さんに、託しましたから」
「ど、どうしてそんな……!」
「わたくしは、既に死んだ、存在ですの。どのみち、わたくしには、未来はありません。そんなわたくしが、
「そういう事じゃない!なんで狂三さんが、自分を犠牲にしてまで、私を救ってくれたの!?」
そんなの、分からないよ!
どうして狂三さんは、私が消える事を否定したのに!
狂三さんが、消えるのはいいんですか!
嫌だよ……消えないで、狂三さん!
未来のとか、
私は、ただただ狂三さんに消えて欲しくないの!
貴女と別れるなんて、絶対に嫌!
『大丈夫、なんだよ』
え?
紗和は、
聞こえてきたのは、あの女――澪真の声だった。
『未来のクルミは消えないからね』
それは本当なの?
紗和がそう返すと、澪真は肯定する。
『うん。だって未来のクルミが、【
……!!
澪真の言葉に、紗和は瞬時に理解する。
【
使用した狂三は、
過去に来た者が、【
だから、未来の狂三が消える事はない。
では何故狂三さんが――今にも消えそうになっているの?
『それはね、未来のクルミが、【
……え?
『【
……!
じゃあ、これから私の中に、狂三さんが来るんだね。
『うん。未来のクルミを、よろしくなんだよ。レマからは、クルミの天使と霊装を託します。これでレマは、クルミの天使と魔王が使えなくなっちゃったけどね』
貴女に言われなくても。
狂三さんと同じ力を手にしてるのは、貴女の力だったんだね。
『クルミからじゃなくて、ガッカリした?』
うん、凄くガッカリした。
けど、ありがとう。
狂三さんの力をくれて、とても嬉しい。
『喜んでもらえてなによりなんだよ。それから、出血大サービスでクルミの反転体の力も使えるようにしといたから、大事にしてあげてね』
……!?
貴女は、なんでもありの存在なんですか?
『レマは母様の娘だからね』
へえ、そうなんだ。
全く何言ってるのか分からないけど。
けど、私が消滅しなくなった理由は分かった。
あの女、いえ――
本当に、なんでもありな存在。
そんな事を思いながら、
その表情に、
「あら、あら。この子が、余計な事を、仰いましたわね?紗和さんの、お顔を見れば……なんとなく、想像が、つきますもの」
「うん。酷いよ、狂三さん。嘘ついて、私を悲しませようとしたんだから。これからもずっと一緒に居られるのなら、そう言って欲しかったです」
「そ、そんな、こっ恥ずかしい事……わたくしが、素直に、言えると、思いまして?」
「そうでしたね。狂三さんは、からかい甲斐のある、可愛らしい性格のお方ですよね」
「~~~~っ!!そ、そういうところが!紗和さんの、悪い癖、ですのよ……っ!!」
顔を真っ赤にして怒る
そして、
「……紗和さん。わたくし達は、これからも、ずっと一緒……ですわ」
「うん。ずっと一緒ですよ、狂三さん」
「……では、参りましょう。
「うん。行きましょう。
そうして、未来の狂三は、紗和と一つになった。
共に往こう、何処までも。
斯くして、
決してそうはならなかった、一つの
時崎狂三と山打紗和が、
これから語られますは、未知の領域。
さあ、紡いでいこう、彼女達だけの物語を。
最後までどうか、御照覧あれ。
オリジナル能力紹介。
【
自身の『全て』を喰らわせて、撃った対象の未来を創り変え、確定させる弾丸。
欠点は、自身(分身体含む)には使えない、他者にしか効果を発揮出来ない事。
澪真の中にある膨大な霊力と、崇宮澪の法の天使〈
別名――
未来の
それは――
だが、それを識っていながらも、少女の歩みは止まらない。
自分以外の精霊を、幸せにする為に少女は死地へと踏み込んでいく。
その歩みを止められるのは、少女の中にいる未来の