デート・ア・ライブ 未来からの来訪者   作:問題児愛

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デアラ四期アニメは二亜編が終わりましたね!

こちらはこの後編とエピローグで隣界編は終了!

まだ本編には戻れないけども(:3_ヽ)_コテッ!


響リスタート 後編

澪真は視線を紗和に向ける。

たったそれだけで、紗和は澪真の目の前に移動した。

 

「……え?」

 

「……なに?」

 

いつの間にか眼前に澪真がいることに驚く紗和。

胸を貫いていたはずの紗和が突如として消えたことに眉を顰める蓮。

続けて澪真は紗和を見つめながら口を動かす。

 

「――【四の弾(ダレット)】」

 

それは〈刻々帝(ザフキエル)〉の能力の一つ――時間の巻き戻し。

紗和の胸に開いた穴が、綺麗に塞がっていく。

剥き出しになっていた漆黒の霊結晶(セフィラ)――否、疑似霊結晶(セフィラ)も見えなくなっていった。

 

「!?」

 

驚愕する紗和。

刻々帝(ザフキエル)〉の能力にではなく、その力を使用したことに対して。

澪真は言っていた、〈刻々帝(ザフキエル)〉と〈狂々帝(ルキフグス)〉が使えなくなったと。

なのに使用した、それを意味するのはただ一つ。

 

………………澪真さんは、嘘をついた?

 

そうとしか考えられない。

何故澪真が嘘をついたのかは分からないが。

使えないと言ったはずの力を使ったのだからそう思うのが自然である。

どうして彼女は嘘を?

見ず知らずの人に自身の能力を隠すため?

それに胸の中にあるこの疑似霊結晶(セフィラ)は何?

これが彼女の力の一部を使用する権利を与えられている証拠だというの?

紗和は澪真という精霊に関する謎が深まり顔を顰めた。

そんな紗和の頭を澪真が優しく撫でた後、彼女を背に庇うように立ち蓮に視線を向ける。

蓮は小さく笑って澪真に訊いた。

 

「はは、このまま自分を殺すのかな?」

 

「殺さないよ。母様がそうしなかったように、レマも貴女を殺さない」

 

「なに?」

 

澪真の発言に眉を顰める蓮。

澪真は続ける。

 

「レン義姉様。どうして母様は、貴女を殺すのではなく、封印したと思う?」

 

「自分を殺すのではなく、封印した理由?」

 

「うん」

 

「……いや、自分には分からない。封印した理由ならば、自分が我が母の愛しい人を傷付けてしまうことを危惧したからなのだろうけどね」

 

「うん。でも不思議だと思わない?貴女を放っておいては危険な存在だと判断したのなら、封印なんて方法よりも殺してしまった方が確実なはずだよね?」

 

「……!!」

 

澪真の言葉に蓮がハッとして気が付く。

確かにその通りだ。

危険な存在を殺すのではなく、封印する方法を取るのは得策では無い。

封印が何かの拍子で解けてしまう可能性を考慮出来なかったというのだろうか?

彼女は始原の精霊であり、その力に干渉出来るものがこの世に存在しないと判断したから?

蓮は母親の行為に疑問を抱き始める。

澪真はその疑問にこう応えた。

 

「母様が貴女を殺さなかったのは、危険な存在だとしても、母様にとって貴女は――愛しい娘だったから」

 

「………………は?」

 

「母様が望んで生み出した存在ではなくても、貴女は母様の愛しい娘であり分身。憎悪と嘆きから生まれた貴女は、母様の抱いた想いの結晶そのもの。その貴女(想い)を殺すということは、崇宮真士(あの人)への想いを殺すことと同義だからね」

 

「………………」

 

「母様から憎悪の感情が生まれたのは、愛しい崇宮真士(あの人)の命を奪われたから。愛しい崇宮真士(あの人)を失って母様は絶望し、そして愛しい崇宮真士(あの人)を殺した者へと湧き上がる憎悪。この憎悪(想い)は、愛しい崇宮真士(あの人)を想う心があったから生まれたもの。その憎悪(想い)から生まれた貴女を、どうして母様が殺せるというのかな?」

 

「………………ふむ。それが貴女の、我が母が自分を殺さなかった理由とでも言いたいのかな?」

 

「うん。これはあくまでもレマの推測だからね。母様の本当の想いは、母様の娘であるレマにも分からないんだよ」

 

「まあ、そうだろうね。結局真相は闇の中。貴女が自分を殺さない理由は――母様がそうしなかったから、かな?」

 

「え!?なんで分かったの!?レン義姉様はエスパーか何かなの!?」

 

「いや、貴女の母様大好きオーラが全てを物語っているからね。それに貴女は嘘が下手とみた。あの時話した未来の話も、自分を騙す為の嘘なのだろう?」

 

「ぎくっ!?」

 

澪真が今まさに、嘘だということを自白するような狼狽っぷりを見せる。

そんな彼女を見て蓮は、やはりかと納得する。

崇宮澪が人間ではなく、精霊という人ならざる存在といっても、一個人に神とやらが干渉するのはそもそもおかしな話なのだからだ。

澪真は暫し逡巡するが、諦めたように溜め息を吐いて言った。

 

「レマが嘘吐きだとバレちゃったならしょうがないね。レン義姉様にはレマの秘密を一つだけ教えてあげるんだよ」

 

「ほう?それは太っ腹なことだね。ではそうだね……貴女の願いは、なんですか?」

 

蓮の質問が予想外だったのか、澪真はキョトンとして目を瞬かせた。

てっきり正体を聞くものだと思ったのだろう。

崇宮澪真は精霊と人間の半精霊。

霊力は始原の精霊(崇宮澪)並みだが、その肉体は五河士道(崇宮真士)と変わらない。

それが澪真にとって致命的な弱点であり、知られてはならない秘密なのだ。

殺されても死なないとはいえ、痛いのはごめんこうむりたいのだから。

蓮の質問に澪真は満面の笑みで答えた。

 

「そんなの決まってるんだよ。レマの願いは――母様の、崇宮澪の幸せ。過去も、()()()、不幸に蝕まれた母様を、幸せにしたいの」

 

「……ふむ。母親の幸せ、か。母様大好き娘の貴女らしい願いではあるが……三十年前だけでなく、未来さえ我が母は幸せになれなかったというのはどういうことかな?貴女という未来の精霊の存在の話も嘘だったというのかい?」

 

「これ以上は教えられないね。レン義姉様には約束通り、レマの秘密を一つ教えてあげたんだからそれに答えてあげる義理はないんだよ」

 

「それもそうだね。だが貴女が何者なのか興味に尽きない。叩き潰した後にゆっくり訊くとしよう」

 

「面白いこと言うね、レン義姉様。だけど無駄だよ。母様の天使〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉の『根』で貫かれた貴女に、何が出来るのかな?」

 

「………………ちっ!」

 

澪真に図星を突かれて舌打ちする蓮。

毒の天使〈瘴毒浄土(サマエル)〉の結界内ならば、蓮にも勝機があったかもしれない。

だがここは――隣界。

始原の精霊、澪の舞台であり。

その未来の娘、澪真が干渉可能な舞台でもある。

見るまでもなく、蓮がこの状況を覆す未来などありはしない。

だが澪真は蓮を殺すために〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉の『根』で貫いているわけではない。

ただ、蓮の動きを封じるために過ぎないのだから。

澪真は蓮に背を向けると、響が消滅した場所へと歩き出す。

血の海の中央まで歩きそこで立ち止まる。

そして澪真は両の手を合わせて祈るような仕草をし、その『名』を口にした。

 

 

「さあ、やり直そう――〈輪廻聖堂(ルシフェル)〉」

 

 

すると澪真を眩い光が包み込み発光。

蓮と紗和はその発光の眩しさに目を細める。

発光が収まり、澪真の姿が露になる。

霊装は、光の霊力で編まれた白銀のドレスのようなもの。

天使は、神々しい光り輝く白銀の六対十二枚の『翼』。

かの神話に登場する神の御使いにして――神に最も近き存在の顕現を思わせた。

その神々しい澪真の姿に、紗和と蓮は思わず魅入ってしまう。

澪真は右手を前に出す。

 

「〈輪廻聖堂(ルシフェル)〉――【(ホーリド)】」

 

そう言うと澪真の背にある十二枚の『翼』が光り輝く。

そしてその光は澪真の右手に集まっていき――虹色の疑似霊結晶(セフィラ)が『生まれた』。

 

「「なっ……!?」」

 

驚愕の声を上げる紗和と蓮。

紗和に至ってはその力に既視感を覚えた。

胸の中にある漆黒の疑似霊結晶(セフィラ)と、あの虹色の疑似霊結晶(セフィラ)が似たような感じだからか。

一方、澪真は周囲を見回すと優しげにこう言った。

 

「……そうだね。みんなも、一緒に行こう」

 

すると澪真の右手にある虹色の疑似霊結晶(セフィラ)の輝きが一層増したように見えた。

そして虹色の疑似霊結晶(セフィラ)が光り輝き発光。

その発光が収まると、母胎で眠る胎児のように丸くなっていた少女が宙に浮いていた。

その容姿は――見覚えのある真っ白い少女。

蓮と紗和は有り得ないものを目の当たりにしたような顔でそれを見やっていた。

だってその少女は、蓮が先刻殺して消滅させた響にそっくりだったのだから。

膝を抱えたまま宙に浮いていたその少女が目を覚ます。

 

「………………ん」

 

真っ白い少女がまず視界に収めたのは、眼前にいた白銀の霊装を纏い神々しい白銀の十二枚の『翼』を広げた――

 

「………………天使?」

 

「デジャブを感じる台詞を言うね、ヒビキ」

 

「だ、だって天使にしか見えませんでしたからっ!ていうかなんで私生きてるんですか!?たしか蓮さんに胸を貫かれて霊結晶(セフィラ)の欠片が砕かれて死んだはずなんですが!?これは夢なんですか!?それとも実は私は死んでいてここは天国で天使がお迎えに――」

 

「てい」

 

ズビシッ!と澪真の神速チョップが響の脳天に突き刺さった。

 

「あいたっ!?」

 

あまりにも強烈な一撃に響は涙目で自身の頭をさする。

それから顔を上げて澪真に文句の一つでも言ってやろうとして――

 

「………………え?」

 

響は一瞬、言葉を失った。

何故なら響の体を優しく澪真が抱きしめてきたからだ。

それから澪真は響の頭を優しく撫でながら言った。

 

「お帰りなんだよ、ヒビキ。突然だけど今日から貴女は――レマの分身です」

 

「………………はい!?」

 

澪真から告げられた言葉に、響が悲鳴じみた声を上げる。

 

「そ、それってどういう意味ですか!?わ、私如きが……澪真さんの分身!?私なんて無銘天使すら顕現出来なかった準精霊のなり損ないの半端者なんですよ!どうして私に澪真さんの」

 

「ううん。今の貴女は半端者なんかじゃないよ。レマが生の天使〈輪廻聖堂(ルシフェル)〉の能力を以て、貴女を()()()()()()()()んだからね」

 

「生の……天使?」

 

「うん。万物を生み出す生の天使〈輪廻聖堂(ルシフェル)〉。万物を殺める死の天使〈万象聖堂(アイン・ソフ・オウル)〉と対を成す能力だよ」

 

「万物を、生み出す!?なんですかその神様にのみ許された権能みたいなチート能力は!?」

 

「そうでもないよ。だってレマは神様みたいに本物は創れないからね。所詮レマは【模倣(ヒクウィ)】しか生み出せない――偽りの神(ヤルダバオト)なのだから」

 

澪真の言葉に響の頭上は疑問符で埋め尽くされる。

模倣(ヒクウィ)】?

偽りの神(ヤルダバオト)

響の疑問をよそに澪真が言った。

 

「そしてこの〈輪廻聖堂(ルシフェル)〉の能力を以てヒビキを――()()()()として生まれ変わらせたんだよ」

 

「疑似……精霊?」

 

「ちなみにヒビキの中にある疑似霊結晶(セフィラ)は、準精霊の頃のヒビキの中にあった霊結晶(セフィラ)の欠片とは大きさが全然違うからね。超パワーアップしてるんだよ」

 

「マジですか!?」

 

「うん、超マジ。試しに天使の顕現をしてみようか、ヒビキ」

 

「は、はい!」

 

響は興奮気味に犬の尻尾のようにアホ毛をブンブン左右に振る。

それを見て苦笑する澪真は、自分の中にいる未来の精霊の一人に頼み込んだ。

 

「――トオカ。貴女の力を貸してほしいんだよ」

 

『む?――おお、澪真か!いいぞ!存分に私の天使を使ってくれ!』

 

澪真にトオカと呼ばれた少女は嬉しそうな声で応える。

今から顕現させる天使だけは、トオカの協力無しでは扱えない力だった。

 

「うん。ありがとうなんだよ、トオカ」

 

澪真はトオカにお礼を言い、その天使の『名』を口にする。

 

「――〈鏖殺公(サンダルフォン)〉」

 

澪真の声に応えて、光り輝く両刃剣――物質の天使〈鏖殺公(サンダルフォン)〉が顕現した。

それから澪真は響に指示を促す。

 

「じゃあ、ヒビキも〈鏖殺公(サンダルフォン)〉を顕現してみて?」

 

「は、はい!」

 

澪真に言われて、心臓をドキドキさせながら響は天使の『名』を口にした。

 

「――〈鏖殺公(サンダルフォン)〉!」

 

すると響の声に応えて、澪真の顕現させた同じ天使〈鏖殺公(サンダルフォン)〉がその手に収まった。

 

「おおー!こ、これが精霊様にしか扱えない……天使ですか!!」

 

興奮したような声で叫び、歓喜する響。

無銘天使さえ顕現出来なかったのだから、そうなるのは仕方のないことだろう。

そんな響を満足そうに眺めていた澪真だったが、一つだけ忠告する。

 

「だけどね。レマが顕現している天使と同じ天使を使用した場合――威力も効果も()()しちゃうから気をつけてほしいんだよ」

 

「はーい!……って、なんですとぉぉぉぉぉぉ!?」

 

とんでもないデメリットを言った澪真に、絶叫する響。

それを聞いて、なるほどと紗和が頷いて口を開いた。

 

「澪真さんが〈刻々帝(ザフキエル)〉と〈狂々帝(ルキフグス)〉を使えなくなったって言ってたのは――私の力を半減させないために、なるべく使わない宣言だったんだね。ということは私も疑似精霊として生まれ変わらせられてたんだ」

 

「……サワの理解力の早さに気味悪さを感じたんだよ」

 

「ちょっとそれは酷くないかな?」

 

ムッと不貞腐れる紗和。

澪真は〈鏖殺公(サンダルフォン)〉を消した後、ごめんなさいと素直に紗和に謝った。

――と、痺れを切らしたように蓮が口を開いた。

 

「……ところで澪真。自分はいつまで我が母の天使〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉の『根』に貫かれたままほったらかされるのかな?」

 

「…………………………あ」

 

「……ほぉう?その反応……さては自分の存在を忘れていたね?」

 

「そ、そそそ、そんなことないんだよ!」

 

「その狼狽っぷりでは自白してるようなものだよ。だがまあ……自分は貴女の友を一度殺した怨敵であるからね。このまま放置されてもしょうがないか」

 

蓮がそう言うと、澪真が〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉を消して彼女を解放する。

あっさり解放されて驚く蓮に、澪真が駆け寄る。

そんな澪真を蓮は呆れたような顔で見つめた。

 

「貴女は馬鹿なのかな?せっかく封じ込めていた悪逆の精霊に自由を与えてるなんて、自分に殺されたいのかい?」

 

「逆に訊くけど、レン義姉様はレマ達を敵に回して、勝てる気でいるのかな?」

 

「………………」

 

澪真の切り返しに黙る蓮。

たしかに澪真と彼女の分身となった響、そして紗和を同時に相手取って勝てる見込みはないに等しい。

蓮は観念したように首を横に振って返した。

 

「いや、やめておくよ。流石に自分も、勝ち目のない戦いを挑むほど愚かではないからね」

 

「うん。分かればいいんだよ」

 

蓮の返答に満足して笑みを浮かべた澪真は、右手を差し出す。

蓮からは完全に敵意が消えた、そう思ったのだろう。

そんな澪真の手を笑顔で取った蓮は――途端悪い顔に変えて一言。

 

「本当に貴女は――馬鹿な精霊(ひと)だ」

 

「……え?」

 

澪真は蓮の予想外な言葉に小さく声を漏らす。

蓮の強い力が澪真を引き寄せ――ドッ。

 

「………………ぁ」

 

蓮の一点に集めた濃密な霊力を帯びた左手の鋭い突きが、澪真の霊装ごと胸を貫いた。

失敗するかもしれない方法ではあったが、蓮の力は澪真の命に届いた。

それは蓮が、澪真の母親の分身であるからだろう。

澪真が蓮に掛けられた封印を完全に解いてたのも大きいか。

紗和が目を見開き唖然とし。

響は声にならない悲鳴を上げる。

蓮は澪真の中にある霊結晶(セフィラ)を手探りで漁るもそれらしきものはなく代わりに――まるで人間のような脈打つ『それ』に触れて、嗤う。

 

「はは、あはははははははは!ああ、なるほど。貴女はそういう存在だったか。ならば貴女の『これ』を握り潰せば、死ぬのかな?」

 

「……どう……し、て……?」

 

「どうして?それは簡単なことさ。貴女が、我が母の未来の娘だからだよ。理不尽な仕打ちをした我が母への復讐こそ自分の悲願!だから我が母の未来の娘である貴女も殺すのだよ」

 

「……ぅ……ぁ……」

 

澪真が苦悶の声を漏らす。

蓮がじわじわと澪真の命を握り潰そうとしているからだ。

そして――グチャッ、という音と共に澪真の命が握り潰されてしまった。

澪真の瞳から光が無くなる。

心臓を破壊された彼女が、生きていられるはずがない。

澪真の腕が力無く垂れ下がり、蓮の方に倒れこんでいった。

蓮は澪真の死を確認すると、胸を貫いていた左手を抜き取り付いた血を振り払う。

澪真の光を失った目を閉じさせ、地面に仰向けで寝かせる。

そして蓮は、高笑いを上げた。

 

「はははは、あはははははははは!ああ、これで自分の悲願の一つが成せた!次はこの隣界を出て、あの人を殺そう。その前に――目の前の障害を排除しないといけないがね」

 

「「……ッ!?」」

 

蓮の殺意が紗和と響に向けられる。

身構える紗和と響。

澪真を簡単に殺した蓮を相手に油断は命取り。

睨み合い、張り詰めた空気。

そんな重苦しい空気は一撃で切り裂かれることとなる。

なぜならば――

 

「てい」

 

ズビシッ!と蓮の後頭部に、神速チョップを叩き込んだ何者かがいたからだ。

 

「…………っ!?」

 

蓮は後頭部に鈍い痛みを感じて、振り返り――有り得ないものを見た。

その有り得ないものを、紗和と響も見た。

それはムスッと怒り気味な表情で蓮に言う。

 

「容赦なく殺すなんて酷いんだよ!レン義姉様!」

 

「……馬鹿、なっ!?どうして貴女が生きてるんだい!?自分が確実に貴女の命を摘み取ったはずだというのに!」

 

「レマは殺されても死なないからね。レマの『死』を観測した天使〈輪廻聖堂(ルシフェル)〉が、レマに『生』を与えるの。〈輪廻聖堂(ルシフェル)〉の主であるレマは『死と再生』を永劫に繰り返す運命なんだよ」

 

「…………………………は?」

 

澪真の言葉に素っ頓狂な声を漏らす蓮。

殺しても死なない?

『死と再生』を永劫に繰り返す?

それはもう生の天使というよりも――不死ではないか。

これには紗和と響も、澪真が生きていることに素直に喜んでいいものか分からなかった。

そして澪真もまた、生の天使〈輪廻聖堂(ルシフェル)〉の能力を不気味に思っていた。

不死――永遠の命など幸福なわけがない。

こんなものはただの――呪いでしかないのだから。

澪真はふぅと小さく息を吐いた後、蓮に問う。

 

「それでどうするのかな? レマの心が壊れるまで、レン義姉様は殺し続けてくれる?レマに『真の死』を与えてくれるの?」

 

「…………………………、」

 

澪真の問いに、蓮は暫し逡巡するが、やがて諦めたように首を横に振って降参するのだった。




オリジナル天使の能力紹介

輪廻聖堂(ルシフェル)
万物を生み出す生の天使。
万物を殺める死の天使〈万象聖堂(アイン・ソフ・オウル)〉と対を成す能力。

(ホーリド)
疑似霊結晶(セフィラ)を『生み』出し、疑似精霊に『生まれ』変わらせる。
疑似霊結晶(セフィラ)に応じて、疑似精霊が顕現出来る霊装と天使は異なる。

模倣(ヒクウィ)
万物を模倣し『生み』出す。
『生み』出せるのはあくまでも〝疑似〟であり、本物は『生み』出せない劣化版限定。

天使は、背に顕現する六対十二枚の『翼』。
この天使は『生み』出すことに特化しているため、戦闘機能はない。
主の『死』を観測すると、強制的にこの天使が顕現し、『生』を与える。
この天使の誕生に、主の母親の願いが関係しているとかしないとか。
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