デート・ア・ライブ 未来からの来訪者   作:問題児愛

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お久しぶりです。
アニメデアラ4期終了からの5期制作決定は激熱過ぎた!楽しみ過ぎる!

執筆の方はゲームばかりやっててサボりまくってようやく投稿したノロマな亀ですみません。


紗和フレンド Ⅰ

「――じゃあ早速、狂三さんを探してくれるかな?」

 

「は、はい!」

 

紗和の頼みに返事をした響は、狂三の居場所を探すためにその名を呼んだ。

 

「えっと……〈囁告篇帙(ラジエル)〉?」

 

戸惑いつつも口にした全知の天使〈囁告篇帙(ラジエル)〉は、響の眼前に一冊の本が顕現する。

 

「おおー!出ました!これが全知の天使……ごくり」

 

「戦い向きではなさそうな見た目だね」

 

「まあ本ですからね!でも全知ってやばくないですか!?この中に澪真さんの秘密も記されてると思うと思わずにやにやしてしまいそうです!」

 

「既ににやにやしてるけれど」

 

紗和に指摘されて、ハッと我に返る響。

今の顔を見られてたら澪真に引かれてたかもしれない。

気を取り直してコホンと咳払い一つ。

 

「……時崎狂三、居場所、検索!」

 

「……それで本当に狂三さんの場所が分かるの?」

 

半眼で響を見る紗和。

その響は、〈囁告篇帙(ラジエル)〉を開くと検索通りの知りたい内容が記されていた。

 

「あ、出ましたよ紗和さん!ビルの屋上で……え?複数の狂三さんが群がってるそうです!」

 

「出るの!?って、複数の狂三さん?……!」

 

紗和はハッと思い出す。

隣界で澪真と戦った時に見た、あの能力。

そして、複数の狂三。

影と時間の天使〈刻々帝(ザフキエル)〉の能力――【八の弾(ヘット)】。

過去の自分を再現する影の弾丸。

複数いるのは本体の狂三の他にも、過去の自分という名の分身体達がいるからだ。

分身体達を招集させて話し合いでもしているのだろうか?

 

「……狂三さんは分身体達を使って情報を集めてるのかな?」

 

「情報、ですか?それは何のです?」

 

「私には分からないけれど……なんとなくだけど、始原の精霊――澪真さんの母親に関する情報じゃないかな。未来の狂三さん曰く、澪真さんの母親と殺し合って死んだそうだから、現在(いま)の狂三さんの目的はその人の情報を集めて殺す……だったりして?」

 

「そんな物騒な計画立ててるんですか狂三さんは!?」

 

ギョッとして目を剥く響。

紗和は、冗談だよとクスリと笑う。

本当にそんな気がしてならないと紗和は予感している。

それに狂三の天使〈刻々帝(ザフキエル)〉は影と時間を操れる。

大規模な歴史改変を企んでいる可能性もあるような気がした。

過去に遡って始原の精霊を消し去り、全てを無かったことにするとか。

そうすれば私が精霊もどきにされて狂三さんの手で討たれることもなくなる。

……なんていうのは、私の妄想だけれど。

そんな事を頭の中で思い浮かべていた紗和に、響が訊いてきた。

 

「えっと、それで紗和さん。突撃隣の狂三さん方よろしく突入しますか?」

 

「そのふざけたネーミングセンスについてはノーコメントにしておくけど。澪真さんが事前に教えてくれたあの方法を使うのかな?」

 

「ふざけたって言ってる時点でノーコメントじゃないですよね!?そ、そうです!えっとたしか……〈封解主(ミカエル)〉でしたっけ?」

 

「それを私に言われても――」

 

しかしそこで紗和の言葉は中断された。

何故なら封印の天使〈封解主(ミカエル)〉が、響に呼ばれて顕現したからである。

虚空より現れた光り輝く錫杖――鍵の天使が、響の眼前に舞い降りる。

それを手にした響は驚き興奮するも、次に何をするべきか手に取るように分かり、〈封解主(ミカエル)〉を空間に差し込み左に回しながら口を開く。

 

「――【(ラータイブ)】」

 

すると、次の瞬間。

空間に孔のようなものが生じ、『扉』を作り出した。

おお!と再度驚く響。

その『扉』の出口はおそらく、狂三達が集う集会場へと繋がっていることだろう。

紗和も驚きつつも、その『扉』を覗き込みながら、何やらソワソワしていた。

『扉』の出口にいるであろう狂三に早く会いたいのか、今にも駆け出しそうだった。

そんな紗和を見て、響が苦笑しながら促す。

 

「えっと、先に行きますか?紗和さん」

 

「……いや。得体の知れない『扉』を潜るのは危険だから先陣は響さんに任せるよ」

 

「へ?あ、はい!僭越ながらこの響先陣を切らせていただきます!」

 

「うん。よろしくね」

 

「はい!行ってきます!」

 

元気よく『扉』の中へと突撃する響。

その後を紗和が続いて『扉』の中へと入っていき――

 

「ふぎゃ!?」

 

響が『扉』の出口付近で盛大に転けて顔からダイブした。

なるほど、響さんはドジっ子キャラか。

そんな事を思った紗和の耳に、聞き覚えのある声が響いてきた。

 

「あら、あら……珍妙なお客様がいらしましたわね、『わたくし』?」

 

「ええ、ええ。それに何も無い所で転けましてよ?」

 

「その際にスカートが捲れ上がってはしたないですわね」

 

「へ?あ、ご、ごめんなさい!」

 

狂三の分身体達が口々に言うと、響がハッと己の姿を見て飛び起きると、慌てた様子で捲れ上がったスカートの裾を直しながら謝る。

そんな響に、狂三の本体と思しき彼女が歩み寄ってきて、しばし無言で見つめる。

響はキョトンと、狂三を見つめ返して小首を傾げ訊いた。

 

「え、えっと。私の顔に何か付いてますか?」

 

「……そうですわね。強いて言うなら貴女――とても美味しそうですわね」

 

「………………はい?」

 

狂三の唐突な発言に、響が意味が分からないといった調子で目を瞬かせていると、

 

「――さっき盛大に転けた様だけど、大丈夫?」

 

『扉』に入って出口に向かっていた紗和が、響を心配するように言ってくる。

その声を聞いた瞬間――

 

「「「「「――――――ッ!!?」」」」」

 

狂三の分身体達だけでなく、狂三本人も目を大きく見開かせて『扉』を見た。

それは有り得ない物を見るかのような表情だった。

それもそのはず、狂三にとってその声は二度と聞くはずのないものだったのだ。

そんな彼女を更に驚かせる名前を、響が口にした。

 

「あ、大丈夫ですよ!鼻っ頭がちょっと痛いくらいです!心配して下さりありがとうございます、紗和さん!」

 

「「「「「………………っ!!?」」」」」

 

響の口にした名前――紗和。

その名前を、狂三が忘れるはずもない。

精霊になる前からのかけがえのない親友であり。

己が手で殺めてしまった少女なのだから。

そしてその紗和が『扉』の出口から出てきて、狂三の分身体達と狂三本人の視界に現れた。

狂三は唖然として、栗色の髪のおさげの少女を見つめて呟いていた。

 

「……紗和……さん?」

 

狂三の声に紗和が気がつくと、優しく微笑んで返してきた。

 

「狂三さん……やっと、貴女に会えた」

 

「……ッ!」

 

紗和の反応に、狂三は不可解に思い身構える。

やっと、貴女に会えた?

わたくしは紗和さんを手にかけた殺人鬼ですのに。

わたくしを見つけたらまず、どうして殺したの?と聞いてくるはずなのに。

わたくしに向けて来た感情が、あの頃の穏やかな紗和さんなのは明らかにおかしいですわ。

それに、わたくしと同じ霊装を纏い、わたくしと同じ時計盤を左眼に宿しているなんて有り得ませんの。

そう思った狂三は、次の瞬間には紗和に〈刻々帝(ザフキエル)〉の銃の銃口を向けていた。

それに紗和は驚いた様子で狂三に訊いた。

 

「……何の真似かな、狂三さん?」

 

「何の真似、ですって?それはこちらの台詞ですわ!貴女、紗和さんではありませんわね?」

 

「……それはどういう意味かな?」

 

「貴女は確かに見た目も、声も、わたくしの知る紗和さんですわ。ですが、なんですの?その姿は。まるでわたくしと同じ力を手にしているようにも見えますけれど」

 

狂三のその問いに、紗和は、ああ、と言って答える。

 

「この力はとある精霊さんから借りてるんですよ。どうして狂三さんと同じにしたのかは分かりませんが」

 

「とある精霊さん?その精霊さんは――〈ルシファー〉ですの?」

 

「……〈ルシファー〉?」

 

狂三が言った精霊――〈ルシファー〉に、紗和は聞いたことがないような顔で首を傾げた。

その反応に、狂三は予想外とばかりに驚いた様子で紗和を見つめ返した。

逆に紗和が〈ルシファー〉という精霊について、狂三に聞き返す。

 

「……〈ルシファー〉って誰ですか?」

 

「……〈ルシファー〉は始原の精霊に次ぐ最悪の精霊ですわ。かつて精霊になる前のわたくしを殺そうとしてきた人類の敵にして、その精霊も自らを〝世界の敵〟と称しておりましたの」

 

「狂三さんを殺そうとした!?……〝世界の敵〟。その〈ルシファー〉という精霊さんの見た目は、どんな感じでしたか?」

 

紗和が続けざまに訊くと、狂三はこう答えた。

 

「それは『闇』の如き黒い精霊でしたわ。見た目は幼くも、その強さは始原の精霊に匹敵する怪物ですわね」

 

「……え?」

 

狂三の言った〈ルシファー〉の容姿に、紗和は目を見開いて驚く。

『闇』の如き黒い精霊は兎も角。

見た目は幼くも、という狂三の発言に胸騒ぎする。

その精霊はまさか――反転した澪真さんなの?

ドクン、と紗和の心臓の鼓動が大きく鳴る。

心当たりがあるような素振りを見せた紗和を、狂三が鋭い視線で見つめ問い質した。

 

「紗和さん……〈ルシファー〉を知らないと言う割には、その反応はおかしいですわよ。わたくしに何か隠そうとしていますの?」

 

「……えっと。確証はないから、とりあえず狂三さんには教えられないかな」

 

「……紗和さん。もしや〈ルシファー〉と思しき精霊を庇うおつもりですの?」

 

「……別にそうじゃないけれど。あの子と〈ルシファー〉が同一人物とはとても思えなくて正直困ってます」

 

「あの子、とは紗和さんに精霊の力を貸している精霊さんのことですの?」

 

「うん。その子は愚かなほど優しくて、狂三さんの言う精霊〈ルシファー〉でもなければ、人類の敵とも〝世界の敵〟とも似つかわない精霊さんですね」

 

紗和がそう言うも、狂三の疑念は解消されてはいなかった。

何故ならば、紗和に狂三と同じ力を貸せるほどの精霊の正体が、始原の精霊に匹敵するものであると確信出来るからだ。

そしてその精霊は紗和を騙して利用しようとしている可能性が高い気がしてならなかった。

紗和は狂三の親友であり、狂三を丸め込む為の餌として紗和を、あるいは紗和の姿をした何かを作り、こうして狂三に会わせているのだと。

疑わしい目で見つめてくる狂三に、紗和は困ったように肩を竦ませて訊く。

 

「……どうすれば私が山打紗和だと信じてくれるのかな?」

 

「そうですわね。貴女がわたくしと同じ力を扱えるのであれば、あの方法がありましてよ」

 

「あの方法?……!?」

 

ハッとして狂三の狙いを悟った紗和。

その方法とは――【一〇の弾(ユッド)】。

撃った対象の記憶を伝える影の弾丸。

狂三は紗和の記憶を見て、紗和本人かどうかを確かめる気だったのだ。

紗和はフッと真剣な表情になると、狂三に問うた。

 

「狂三さん、あの日に私に起きたこと、知るつもりなんだね?」

 

「ええ。本当に貴女がわたくしの知る紗和さんならば、断りはしませんわよね?」

 

狂三も真剣な表情で言い、紗和を見つめ返す。

二人の間に張り詰めた空気が流れているのを、邪魔をしてはいけないと思い静かに眺めていた響の喉がゴクリと鳴る。

そして紗和は、そう、と短く返すと、いつの間にか右手に手にした短銃を握り、狂三の下へと歩み寄った。

狂三もまた、覚悟を決めているのか、紗和から逃げずに待っている。

紗和が狂三の隣まで行くと、狂三に寄り添ったかと思ったら自分のこめかみに銃口を突きつけて告げた。

 

「いいよ、狂三さんが望むなら。――【一〇の弾(ユッド)】」

 

そう言って紗和は、自分のこめかみを撃ち抜き、狂三の頭をも撃ち抜く。

こうして二人の意識は吸い込まれるように闇に落ち。

そして知ることとなる。

紗和の記憶から垣間見えたあの日の出来事を。

始原の精霊と黒い精霊〈ルシファー〉の存在を。




紗和フレンド Ⅱ

「ヤマウチサワ。悪いけど君には死んでもらうんだよ」

「アレは最も危険な怪物だよ。どの精霊よりも凶悪かつ決して遭遇してはならないモノさ」

「その子は殺させないよ、トキサキクルミ」

「お前は――〈ルシファー〉ッ!!」

「大丈夫かい、狂三?アレは私が押さえておくから、そっちは頼んだよ」

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