ということでコッソリ復活です( ˘ω˘ ) スヤァ…
紗和のあの時を見終えた狂三と紗和はしばらく無言でいた。
〈ルシファー〉に殺されかけた紗和を澪が救おうとしたが、失敗して怪物に変わってしまいそれを狂三が討ち果たした。
そして紗和に向けて〈ルシファー〉の残した言葉。
気になる事が多いものの、狂三は紗和の記憶を覗き込んだことで、彼女が本物であることを知った。
正確には、紗和の記憶と魂を持った、肉体だけは崇宮澪真が生の天使〈
それでも目の前にいる彼女は、紛れもなくあの時失ってしまったはずの紗和だった。
そう理解した狂三は、いつの間にか両の目から涙が零れ落ちていた。
「ごめん、なさい!紗和さん⋯⋯わたくし、は!わたくし、は⋯⋯!」
泣き崩れる狂三を、紗和は優しく抱き止めて言う。
「大丈夫だよ、狂三さん。私は、ここにいますから」
「⋯⋯紗和さんは、わたくしを、恨んでませんの?」
「そうだね。恨みがないわけではないけど、あの時の記憶を思い出せたから⋯⋯恨みよりも、怪物になった私が狂三さんを傷付けなくて良かったって安堵の方が強いかな」
狂三の問いに、紗和は偽りの無い思いを口にする。
それに狂三は驚く。
紗和が狂三を殺すつもりで会いに来たものだと思っていたからだ。
あの時の記憶を思い出しても、紗和は狂三を憎むどころか、逆に殺してくれてありがとうと言ってるようなもので不思議でならない。
もしやと思い、狂三が訊ねた。
「⋯⋯紗和さん、まさかとは思いませんが⋯⋯崇宮澪真に洗脳されてますの?」
「それはいくらなんでも酷いかな、狂三さん。これは私の想いであって、決して澪真さんの洗脳を受けてるわけではありません」
「ご、ごめんなさい!わたくしも紗和さんを疑うつもりは⋯⋯!」
「まあ、そう思われても仕方がないですよね。ですが本当に澪真さんが私に何かした、ということはありませんので安心してください。――それとも、狂三さんは私に殺されたい願望でもあるんですか?」
「そ、そういうわけではありませんわ!わたくしにはどうしても成さねばならないことがございますの。たとえ紗和さんであっても、わたくしを殺させて差し上げるわけには⋯⋯!」
「ふふ、冗談です。狂三さんが可愛かったのでちょっとからかってみただけです」
「⋯⋯っ!??」
狂三の頬に触れて微笑む紗和。
その頬を朱色に染める狂三。
だが気恥ずかしくもこの感じが懐かしくて思わず頬が緩んだ。
放課後のあの頃のようで。
互いに見つめ合いながら微笑んでいると――
「と、尊いです!」
「「⋯⋯え?」」
「お二人の間に何があったかは存じませんが、紗和さんの狂三さんへの愛がひしひしとこの私響に伝わってまいりました!愛の前に怨恨など塵芥なんですね素晴らしいですッ!!!」
「「⋯⋯⋯⋯」」
「尊すぎて推せます推せますとも!是非ともこの私をくるさわファンクラブの一員にしてください!この素晴らしいくるさわに祝福を!お二人の恋が成じy――」
「「てい」」
ズビシッ!
「あいだっ!?」
狂三と紗和のコンマの狂いもなく振るわれた手刀が響の脳天に叩き込まれ、響は謎の悲鳴を上げて涙目になりながら自分の頭をさする。
狂三は変な物を見るような目で響を見下ろし、
「⋯⋯なんなんですのアレは?」
「⋯⋯たまに意味不明なこと言う子なんだよね」
紗和が溜め息と共にそんなことを口にする。
けれど内心は満更でもなかったりする紗和。
昔、狂三さんがラブレターなる物を貰ったことがあったけど、その時に胸がモヤモヤする感覚に襲われたことがあった。
この気持ちが恋愛によるものなのか。
私の狂三さんが誰かに取られるのが嫌だったのか。
私にも分からないけれど、分かることはただ一つ――
⋯⋯私は、狂三さんのことが大好きだということ。
この気持ちに嘘偽りは一切存在しない。
だからなのかもしれない。
私が『真の意味』で狂三さんを憎めないのは。
私の抱く恨みや憎悪が中途半端なのは。
結局のところ私は、狂三さんに会いたかっただけだった。
そして隣界で未来の狂三さんと出会い、
単純かもしれないが、それだけで私は嬉しいのだから。
⋯⋯あれ?殺されたのに憎まず、あまつさえまた会えただけで嬉しい?
⋯⋯もしかして私の狂三さんが大好きという感情は親友としてではなくて――
「――さん!紗和さん!」
「え?」
「ぼーっとしていかがしまして?」
「あ、ごめんなさい。少し考え事をしてたみたいです」
「考え事ですの?もしかして響さんという方が変なこと仰ったからそのことですの?」
「うん。響さんに言われたからじゃないけれど、私の狂三さんを想う気持ちってどっちなんだろうなあって」
「へ?」
紗和の言葉に目を丸くする狂三。
それは一体どういう意味ですの!?
わたくしと紗和さんは同性ですわよ!?
ま、まさか紗和さんっていわゆる同性愛者だったりしますの!?
「別に同性愛者というわけではないですよ、狂三さん」
「!?」
「ただ⋯⋯そうですね。私の狂三さんを誰にも取られたくないという気持ちはあります」
「さ、紗和さん!?それって、」
「つまり狂三さんを独占したいタイプなんですね!もはやそれは愛としか言えまs」
「あなたは少し黙っていてくださいまし!」
「あなたは少し黙っててくれるかな?」
「はい分かりました!というか息ピッタリですね!?これはもう運m」
「「〈
「はいすみません調子に乗り過ぎましただからその黒光りするものをこちらに向けないでください撃たないでくださいお願いします何でも言う事聞きますからぁぁぁ!!?」
天使の顕現と短銃の銃口を響に向ける狂三と紗和。
全力の懇願をする響。
そんな様子を楽しげに見ていたものが口を開いた。
『大変おもし⋯⋯いえ、興味深いお話をしているところ悪いのですけれど』
「面白いって言いかけなかった未来の狂三さん?」
「「え?」」
未来の『わたくし』(狂三さん)?
狂三と響が同時に内心でそう呟いた。
『気のせいですわ。それよりもそろそろ本題に入りませんこと?』
「本題?⋯⋯ああ、そうだね。〈ルシファー〉の正体がまさかのあの澪真さんだったのは驚きだけど、どうしてあんな真似をしたのだろう?」
『それについてはわたくしが説明いたしますわ。ですから【
「私の分身体に未来の狂三さんが乗り移って説明するんですね。分かりました、それでいきましょう」
『あら、あら。流石は紗和さんですわね、わたくしの考えはお見通しのようで説明の手間が省けて助かりますわ』
紗和と未来の狂三は会話が成立しているのだが、傍から見たら紗和の独り言でしかない。
何故ならば、その未来の狂三とやらの姿は何処にも見当たらないからだ。
なので狂三が紗和に問い質す。
「⋯⋯ええと紗和さん?その未来の『わたくし』はどちらにおりますの?」
「え?あ、うん。これから会わせますから少し待ってくださいね狂三さん」
「これから会わせる⋯⋯?」
「はい。〈
そう言いながら紗和は短銃の銃口をこめかみに押し当てて撃つ。
するともう一体の山打紗和が現れて、ドレスの裾を軽く持ち上げて一礼した。
「お初にお目にかかりますわ。姿こそ紗和さんですが、未来の『わたくし』――の残留思念というものですわ」
「残留思念?」
「ええ。未来の『わたくし』は生憎姿どころか魂すらございませんの。これより来年の二月二〇日、始原の精霊・崇宮澪の手にかかって『わたくし』は殺されますわ。分身体ではなく本体の『わたくし』が」
『――ッ!!?』
今は四月二〇日で二月二〇日は丁度一〇ヶ月後になる。
「『わたくし』の敗因は、崇宮澪を影の中に閉じ込めたことですわ。あの女は逆に『わたくし』の全ての力を奪い取り、そして『わたくし』を突き破って這い出てきましたわ」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!!?何ですかそのグロテスクな登場の仕方は!?狂三さんの体を突き破ってとか想像しただけで卒倒しそうなんですが!?」
「うるさいよ。真面目な話してるんだから黙っててくれない響さん?」
「はいごめんなさい」
悲鳴を上げる響を黙らせる紗和。
たしかにグロテスクなシーンを思わせる内容だが、それよりも重要なことがあるのだ。
狂三は眉を顰めて呟く。
「⋯⋯つまり、崇宮澪に〈時喰みの城〉は通用しないということですわね」
「ええ、ええ、誠に残念ながら。『わたくし』が思っている以上に強大な存在であることは間違いありませんわ。それに、崇宮澪の娘・崇宮澪真さんにすら手も足も出ないようでは戦いにすらならないでしょう」
「⋯⋯ッ」
ギリッ、と悔しそうに歯噛みする狂三。
実際に〈ルシファー〉こと崇宮澪真との戦闘で勝ち星どころか一撃すら当てられていない。
こんなていたらくでは【
紗和が挙手して質問した。
「その澪真さんについてなんだけど、どうしてあの子はあんな真似をしたんですか?」
「それは崇宮澪の行いを正当化させるためですわ」
「正当化?」
「ええ。
『なッ!!?』
絶句する。
澪真は母親の行為を正当化させる為に、過去に干渉し事実を捻じ曲げていたのだ。
では彼女が〝人類の敵〟と、〝世界の敵〟と自称して母親と敵対していたのも、母親を〝正義の味方〟に仕立て上げる為のものだというのか。
狂っている。
子は親に似るというが、その通りだった。
響が恐る恐る手を挙げて訊いた。
「そ、それが本当でしたらまさかとは思いますが私や紗和さんを助けたのも計画とやらの駒としか思ってなかったりします?隣界にいた時に澪真さんピースが揃ったとかなんとか言ってましたし」
「⋯⋯そうですわね。澪真さんの計画には欠かせない存在であることには間違いありませんわ」
「嘘⋯⋯」
「けれどそれだけじゃあ未来の狂三さんが手を貸してる理由にはならない。だとしたら他にもそうするに値する何かがあったりするのかな?」
紗和の言葉に
「ええ。澪真さんには叶えたい悲願が三つありますわ。一つ目は、崇宮澪を『真の意味』で幸せにすること」
「うん。澪真さんの母親大好きオーラは凄いからそれは大体予想ついてたけれど⋯⋯『真の意味』ってどういうことなの?」
「それについては三つ目を語る時にお話し致しますわ。次に二つ目は、崇宮澪に関わった全ての者を幸せにすること」
『⋯⋯え?』
てっきり母親以外はどうなってもいいと思っているものだと三人が思っていたからだ。
狂三が目を瞬かせながら言う。
「あの女の娘にしては意外ですわね。わたくしや紗和さんを殺しかけておいてわたくし達の幸せを願うなんて一体どういうつもりですの?」
「⋯⋯わたくしもそれを聞かされて耳を疑いましたわ。けれどあの子の瞳は真剣でとても嘘を言ってるようには思えませんわ」
「⋯⋯それが未来の狂三さんが手を貸している理由なんですか?」
「ええ。澪真さんは
途端に
そんな彼女を心配そうに響が訊ねる。
「⋯⋯未来の狂三さん?どうかしましたか?」
「⋯⋯いえ、なんでもありませんわ。最後に三つ目ですが⋯⋯⋯⋯っ、」
「⋯⋯⋯⋯?未来の『わたくし』?三つ目は口に出すことさえ憚られるものなんですの?」
「そういうわけではありませんわ。ただ三つ目の悲願を――
『――――ッ!!?』
言葉を失った。
聞き間違いではないかとさえ思った。
崇宮澪真の消滅。
それを澪真本人が望んでいるということに。
泣きそうな顔で響が言う。
「ど、どうして澪真さんは自らの消滅を望んでいるんですか⋯⋯?」
「⋯⋯私にも澪真さんが死にたがりな理由は分からない。だけど未来の狂三さんの言葉通りなら――崇宮澪を『真の意味』で幸せにする行為そのものが=崇宮澪真の消滅に繋がってるんじゃないかな?」
「⋯⋯母親の幸せの為ならば、自分はどうなってもいい⋯⋯それが澪真さんの悲願だというんですの?」
「ええ。澪真さんはそういう子ですの。あの子は崇宮澪の娘であると同時に、
そう語る
「⋯⋯気になってましたけど、〝あの方〟とは誰のことなんですか?未来の狂三さんとはどういったご関係で?」
「へ?」
「そうですわね。未来の『わたくし』をその気にさせる〝あの方〟、一体どんな殿方でして?」
「はいはーい!私も凄く気になります!というか恋の匂いがします!かなり濃厚な恋の匂いが!」
「そ、それは――」
「――レマも気になるんだよ。〝あの方〟って一体誰のことかな未来のクルミ?」
『⋯⋯⋯⋯ッ!!?』
唐突な澪真の登場に、場が凍り付いた。
次回で紗和フレンドは終了予定です。
紗和フレンド IV
唐突に現れた澪真に警戒する四人。
そんな彼女達に澪真が言った。
「クルミとサワにチャンスをあげるんだよ。レマに傷を負わせることが出来たら、今回は見逃してあげるね」
「おいで――〈永劫祭壇〉」
生の天使〈輪廻聖堂〉の対をなす生の魔王〈永劫祭壇〉を顕現させる澪真。
これに狂三と紗和が奮闘するも、流石は始原の精霊の娘といったところか⋯⋯傷一つ付けることすら敵わない。
そんな状況を覆すべく、紗和はとんでもない行動に出る。
「狂三さん!私と――キスしてくれませんか?」
「⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?」
「〈混沌霊装・三番〉」
「参りますわよ!〈刻々帝〉!――〈狂々帝〉!」
白と黒、黄金と薄青、天使と魔王。
混沌領域に踏み込んだ時崎狂三は/山打紗和は、始原の精霊の娘・崇宮澪真に挑む。
追記、久しぶり過ぎてあとがきで書いてた狂三の霊装番号を間違えていたので四番→三番に直しました(*・ω・)*_ _)ペコリ
こんな調子では狂三ファンの方々に殺されるカタ:(ˊ◦ω◦ˋ):カタ