デート・ア・ライブ 未来からの来訪者   作:問題児愛

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アニメの方は次で澪ゲームオーバーが終わりそうですね!アベマ勢の私はまだ六話だけれど( -ω- `)フッ

蓮久しぶり過ぎて復習しながら執筆してたら遅くなりましたすみません(*・ω・)*_ _)ペコリ


蓮パートナー

時を少し遡り、来禅高校の屋上で紗和と響の二人と別れた澪真と蓮は校舎の中へと入る。

蓮は階段を降り始める澪真に訊いた。

 

「⋯⋯それで、自分はこれから何をすればいいんだい?」

 

「これからの話?」

 

「ああ。ただ連れ回すだけではあるまい?」

 

「うん。レン義姉(ねえ)様にはやってほしいことがあるからね」

 

「ほう?それは何かな?」

 

「レマのパートナーになってほしいんだよ。――悪役として、ね?」

 

澪真のその言葉に、蓮は目が点になる。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯自分に悪役をやらせてもいいのかな?」

 

「別に問題はないんだよ。レン義姉様が好んでやりたそうなことは正義の味方(あっち)じゃなくて悪役(こっち)だろうからね」

 

「ああ、自分に正義の味方なんてものは似つかわしくないからね。しかし自分が悪役を演じるのは兎も角、貴女が悪役を演じるというのはどういうことかな?」

 

「それはね、必要なことだからだよ。母様やみんなを幸せにするためには必要なことなの」

 

「ほう?我が母や他のみんなを幸せにするためには、貴女が悪役を演じる必要があると?」

 

「うん。⋯⋯最終的にはレマ()()()、悪役の世界を目指せれば万々歳かな」

 

ボソッと呟く澪真。

最終的には澪真だけが悪役の世界?

何を言っているのかな?

そんな世界はありえないよ。

自分という悪役(ヴィラン)がいる限りはね。

 

「⋯⋯どうかしたの?レン義姉様?」

 

「え?ああ、いや。なんでもないよ」

 

「???」

 

澪真が不思議そうに小首を傾げる。

まあ、レン義姉様の思っていることは、レマには丸分かりだけれどね。

それに君を救うのはレマの役目じゃあない。

その代わり、君のやりたいことをやらせよう。

何れ父様が救うその時まで、ね。

と、澪真は誰かが屋上に向かう階段を上り、こちらへ向かって来るのを感じた。

蓮もその気配に気がつき、そちらへ視線を向けて――

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?」

 

一瞬固まってしまった。

固まってしまうのは無理もない。

何故ならば現れたのは――

 

「お疲れ様、もう一人のわたし」

 

そう、文字通りの()()()()()()()()()だった。

格好も完璧に同じだから既にどっちがどっちか見分けがつかなくなりかける蓮。

これからの二人の会話は澪真A、澪真Bとするとしよう。

 

「レマが隣界に行ってる間、何があったのか報告よろしくなんだよ」

 

澪真Aがそう言うと、澪真Bは頷いて語り始めた。

 

「『レマ』が隣界に行った翌日、母様とレマは本格的に教員として活動を始めたんだよ」

 

《回想》

 

教室に入って来た令音と、その手を仲良く繋いだ澪真Bが教卓の前に立つ。

生徒達がざわつく中、黒板にチョークを走らせる令音。

 

「⋯⋯村雨令音だ。担当は物理で二年四組(ここ)の副担任も兼任することになった。みんな、よろしく頼むよ。そして――」

 

再び令音が黒板にチョークを走らせて、書き終わると澪真Bのことを紹介した。

 

「⋯⋯彼女は私の親戚の娘でね、訳あって預かっているんだ。⋯⋯さあ、令真、みんなに挨拶したまえ」

 

「はーい!」

 

元気よく返事した澪真Bこと令真は行儀よく一礼して自己紹介をする。

 

「レマはね、村雨令真って言うんだよ。母様のお手伝いとしてこの学校に来たの。みんな、仲良くしてくれると嬉しいんだよ!」

 

笑顔でそう言う令真。

教室内がどよめき、『カアサマ!?』とか『苗字どころか名前も近いだと!?』とか『この教室に天使が舞い降りた!?』とか口々に言っていた。

と、令真は見知った顔を――五河士道を見つけると嬉しそうな表情で手を振る。

 

「あ、父様!」

 

「⋯⋯ッ!?」

 

士道がビクッと肩を震わせると同時。

 

『トウサマ!?』

 

そんな声と共に生徒達の視線が士道に集まる。

士道は非常に気まずそうな顔で令音に助けを求めようと視線を向けるが、

 

「⋯⋯そんな熱い視線を送らないでくれ、シン。今はあくまでも先生と生徒だろう?」

 

「ちょ、令音さんまで何を言ってるんですか!?」

 

あと両手を頬に当てて照れるんじゃねぇぇぇぇ!と内心で叫ぶ士道。

そんな表情(かお)をされたら誤解されてしまうだろうがっ!

だが時既に遅し。

『あの五河が!?』とか『謎の愛称で呼ばれてる⋯⋯だと!?』とか『五河死すべし五河死すべし五河死すべし!』とか口々に言っていた。

なんかやばそうな呪言混じってる気がするんだが!?

さらば、俺の平穏な学校生活⋯⋯などと士道が思ってるといつの間にか令真が居てこう言うのだ。

 

「朝から熱々だね、父様」

 

「なんでだよ!?」

 

「え?だって朝から母様と見つめ合ってるよね?」

 

「見つめ合ってもねぇよ!」

 

「本当に?」

 

「本当だよ」

 

「本当の本当に?」

 

「本当の本当に、だ」

 

「本当の本当の本当に?」

 

「本当の、ってしつけぇよ!」

 

叫ぶ士道に令真は――()()()()()()()ような表情を見せる。

彼女の予想外な顔に驚く士道。

令真も令音さんを取られるのが実は嫌だったのか?

普段の令真ならそんな顔しないだろうに。

戻って来た時といい、今といい、どこか令真が()()()()()()ような気がした。

 

「はい、ストップなんだよ」

 

澪真Aが〈回想〉を強制終了させる。

澪真Bは不思議そうな顔をして小首を傾げた。

 

「なに?」

 

「なに?ではないんだよ。『レマ』はレマを()()()()()()()じゃあないか。レマらしからぬ『レマ』には、レマをレクチャーする必要がありそうだね」

 

「うぐっ、ごめんなさい」

 

澪真Bが澪真Aに謝っていた。

⋯⋯なんだこのシュールな光景は?

自分は一体、何を見せられているのだろうか。

というより澪真が澪真を演じるとはどういう意味なんだい?

それではまるで澪真Bは澪真ではないということになるんじゃあないかな?

これは一体どういうことなのだろうか。

 

「それで、他にはどんなことがあったのかな?」

 

「うん。担当じゃない授業中に教室の扉をガラガラってして『父様!』って元気よく手を振ったり」

 

「うん。他には?」

 

「うん。男子トイレに向かった父様の後を追って、突撃したり」

 

「は?」

 

蓮が間の抜けた声を洩らす。

仮にも女の子の貴女が、男子トイレに突撃するはおかしいんじゃあないかな?

流石に澪真もその行為をおかしいと思うはずだ。

 

「うん。レマならやりかねない行動だね」

 

「は?やるというのかね!?」

 

「え?そりゃあ『父様のところにレマあり』だからね」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯そういうものなのかね」

 

蓮は思わず頭を押さえた。

如何にあの女の娘だからといって、あの女の愛しい人を追いかけて男子トイレにまで駆け込むのはやりすぎじゃあないかな?

ちなみに突撃してきた令真を見た士道はギョッと目を剥いて叫び、用を足していた男子生徒達が顔を真っ赤にしながら「いやん」と気持ち悪い声を発していたそうな。

澪真Aがうんうんと頷いて澪真Bに促す。

 

「他には?」

 

「うん。母様とお風呂に入ったり、母様の抱き枕にされたり⋯⋯っ」

 

「『レマ』?そこは恥ずかしがるところじゃあないんだよ。レマは母様の裸や抱き枕程度では動揺しないけれど――まあ()()()無理だろうけれどね」

 

「何?」

 

蓮は眉を顰めた。

澪真Bのことを澪真ではなく、『君』と言った澪真Aの言葉。

まさか本当に澪真Bは()()()()()()()()、なのかね?

疑念が深まっていく蓮を他所に、ハッとして澪真Aが独り言を呟き始めた。

 

「⋯⋯!⋯⋯え?あ、うん。分かったんだよ。その場所に向かえばいいんだね?うん、うん、分かった」

 

「⋯⋯澪真?どうかしたのかな?」

 

「え?あ、ううん!なんでもないんだよ」

 

「⋯⋯?まあ、別にいいけれど」

 

なんだろうか、澪真Bだけでなく澪真Aの様子もおかしい気がする。

今のはまるで――()()()()()()()()かのように思えた。

と、澪真Aは蓮を見た後、澪真Bに言った。

 

「レマは急用が出来たからレン義姉様をよろしく頼むんだよ」

 

「うん。『レマ』の世界に連れて行けばいいんだよね?」

 

「うん。『レマ』の世界に連れて行けばいいんだよ。そこで、()()()()()()が出迎えてくれるからね」

 

「うん。分かったんだよ、行ってらっしゃい『レマ』」

 

澪真Bは澪真Aを見送る。

⋯⋯リンネとは一体誰かな?

それに澪真の世界、か。

はは、はははははは!

面白いじゃあないか。

連れて行ってくれるのならば、大人しくついて行くとしよう。

精々後悔するといい。

悪逆の精霊である自分を、己が世界に招くということがどれ程愚かしい行為であるかをね!

そして隙あらば、貴女の大切な全てを奪ってやるさ。

と、蓮がそんなことを思っていると澪真Bが言ってきた。

 

「じゃあ『レマ』の世界に行こうね、レン義姉様」

 

「ああ、そうだね」

 

「――〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉」

 

蓮が頷くと、澪真Bは法の天使〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉の『根』と『枝』を虚空から出現させる。

澪真Bが『根』と『枝』を操ることで、虚空に謎の亀裂が現れた。

 

「⋯⋯ふむ。その中に飛び込めばいいのかな?」

 

「うん。この亀裂こそ本来行くことが出来ない『レマ』の世界に――第一一領域(ダアト)に繋がってるんだよ」

 

第一一領域(ダアト)?」

 

「うん。第一一領域(ダアト)は『レマ』に招かれたもの以外、訪れることすら許されない()()()()()()だよ。母様ですら『識ら』ない世界だね」

 

「ほほう?それはなんとも興味深い。是非とも自分を連れて行ってくれるかな?」

 

「もちろんだよ」

 

澪真Bが手を差し出すと、蓮がその手を取る。

あの女でさえ認識外の世界とは益々興味が湧いて尽きない。

しかしそんな世界に自分を招いて一体何のメリットがあるというのだろうか。

疑問に思いながらも蓮は澪真Bと共に亀裂に飛び込んだ。

視界が暗転する。

屋上に向かう階段に居たはずの澪真Bと蓮は――五河家の前に移動していた。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?」

 

蓮は素っ頓狂な声を洩らす。

『隣界』に移動すると思っていたからだろう。

だが着いた場所は『天宮市』の五河家の前だった。

⋯⋯いや、もしかしたらここは『天宮市』を模倣した世界なのかもしれない。

と、五河家の扉の前に誰かが立っているのが見えた。

来禅高校の制服を着た、緩いウェーブのかかったセミロングの薄い桃色の髪の少女。

その彼女は澪真Bと蓮に気が付き、優しく微笑んできた。

 

「――あ!おかえり、澪真ちゃん!それと⋯⋯初めまして、になるかな?現在(いま)の蓮さん?」

 

「うん、ただいま!リンネ義姉様!」

 

「⋯⋯!?これは驚いた。貴女とは初対面だと思うのだけれどね。それに現在(いま)の自分とは、一体どういうことかな?」

 

「まあ、普通はそうなるよね。ええと簡単に言うと、()()()()()()()からかな、私達」

 

「未来⋯⋯だって?」

 

「うん。未来でね」

 

リンネと呼ばれた薄桃髪の少女が言う。

自分のことを『現在の』と言うのならば、まさか『未来の』自分がこの領域(世界)にいるというのかね?

それならば自分を『識って』いるのは当然ということか。

リンネがハッとして頬を掻きながら言った。

 

「あ、自己紹介がまだだったね。それでは改めて」

 

コホンと咳払い一つ、両手を広げて蓮を歓迎する。

 

「ようこそ、澪真ちゃんの世界――第一一領域(ダアト)へ!私はここの管理を任されてる一人の園神凜祢。⋯⋯正確には『未来の園神凜祢』だけどね」

 

「ほぉう?なるほど、自分と未来で逢ったことがあるという言葉に少し疑念を抱いていたけれども、貴女も未来の存在ならば納得だね。⋯⋯ああ、自分のことは既に『識って』いると思うけれど、蓮だ」

 

「うん。改めてよろしくね、蓮さん」

 

「ああ、こちらこそよろしく頼むよ、凜祢」

 

握手を交わす凜祢と蓮。

その様子をニコニコと眺める澪真B。

蓮は、顎に手を当てて凜祢に訊いた。

 

「ところで、貴女は澪真の世界の管理を任されている一人と言っていたけれど⋯⋯他にもいたりするのかな?」

 

「え?あ、うん。私を含めて六人かな」

 

「⋯⋯六人もいるのかね」

 

蓮は頬に汗を掻く。

一つの領域(世界)に六人の管理者とは些か過剰ではないかな?

それにこの第一一領域(ダアト)に入れる者は、澪真に招かれた者限定ではなかったのかね?

そんなことを思っているのを知ってか知らないでか、凜祢は蓮の疑問に答える。

 

「澪真ちゃんは完全に、この第一一領域(ダアト)の管理を私達六人に任せてるからだよ。そもそも澪真ちゃんがいる世界は、()()()()()『隣界』だからね」

 

「は?」

 

とんでもない情報を口にする凜祢に、蓮は間の抜けた声を洩らす。

いや本当に予想外だった。

もう一つの『隣界』があるということもそうだが、澪真がいる世界という言葉が蓮に衝撃を与えた。

と、凜祢が思い出したように言う。

 

「あ、もう一つの『隣界』じゃなくて――『虚界(クリフォト)』って澪真ちゃんが言ってたかな」

 

「『虚界(クリフォト)』?」

 

「うん。私達のお母さん――澪さんの『隣界』を模倣して作った澪真ちゃんの世界。それが『虚界(クリフォト)』。この第一一領域(ダアト)からじゃないと基本、行くことさえ不可能な『隣界』の裏世界だね」

 

「ほっほう?それを自分に教えてしまっていいのかな?今から『虚界(そっち)』に行って()()()崇宮澪真を殺しに行くかもしれないよ?」

 

「別に問題はないよ。むしろ本物の澪真ちゃんが、蓮さんを招いたんだからね」

 

「は?」

 

不可解な表情をする蓮。

だがそうなるのも無理もない。

自分が澪真を殺そうとしてることは知っているはずだ。

なのにそんな自分をこの領域(世界)に招き、本物の澪真が直々に逢おうとしている?

本物ということは、不死ではない可能性も高いだろう。

ならば『虚界(そっち)』にいる本物の澪真を殺せば殺せるはずじゃあないか。

邪悪な笑みを浮かべる蓮を見て、凜祢は首を横に振った。

 

「蓮さんも本物の澪真ちゃんと逢えば分かるはずだよ。勝ち目がない、って絶対に思い知らされると思うから」

 

「はは、それは楽しみだ。まあもっとも、殺す機会があれば遠慮なく殺させてもらうがね」

 

「⋯⋯⋯⋯」

 

凜祢は苦笑いを浮かべる。

ここは私が蓮さんを止めるべきなんだろうけど、相手があの澪真ちゃんならその必要すらないんだよね。

だって蓮さんが何度も殺してきた複製体(澪真ちゃん)は――本物の澪真ちゃんの()()()()()()()()存在なんだよなあ。

だからね、蓮さんが本物の澪真ちゃんを殺せる未来は存在しないんだよ。

 

「――それは見物ね。私達が束になっても傷一つ付けられなかった澪真を、あんたはどうやって殺すつもり?」

 

凜祢と同じく来禅高校の制服を着た、金色の長髪をサイドテールに括った少女がそう呟きながら何処からともなく姿を現した。

 

「!?」

 

驚く蓮とは対照的に、凜祢が笑顔で言う。

 

「あ、万由里ちゃん!」

 

「ん。凜祢()()()()()

 

凜祢の笑顔に、万由里は微笑して返す。

一方、蓮は凜祢と万由里を見比べて顎に手を当てる。

 

「⋯⋯ふむ。見た目はまるで姉妹ではないが、なるほど。貴女達は同じあの女の娘ということならば、便宜上では姉妹ということだね」

 

「うん、そうだね。蓮さんも私達にとってはお姉さんだよ」

 

「そうね。とはいえ殺人衝動真っ盛りな『現在(いま)の』あんたをお姉ちゃん呼びするのは抵抗あるけど」

 

「別に殺人衝動があるというわけではないけれどね。自分はただ、あの女に――我が母に復讐するための殺しを行おうとしているだけに過ぎないからね」

 

「『識って』るわよそんなこと。だからこそ、よ。この世界じゃなかったら今頃、私達は殺し合ってたもの」

 

「⋯⋯それはどういう意味かね?」

 

万由里の不可解な発言に、蓮が眉を顰める。

その疑問に凜祢が答える。

 

「それはね――()()()を守るために、澪真ちゃんがこの世界に敷いたルールがそれをさせないからだよ」

 

「⋯⋯ほう?そのある人を守るがため、この世界では殺し合いが出来ないと?」

 

「うん。『虚界(クリフォト)』までそういうルールがあるかは分からないけど」

 

「⋯⋯ああ、そういえばその『虚界(クリフォト)』を創ったのは澪真だと、凜祢は言っていたね?」

 

「うん。それがどうしたのかな?」

 

「⋯⋯なら()()()()()()()()()()の正体は――崇宮澪真ということになるのかな?」

 

「「!!?」」

 

驚く凜祢と万由里。

まさかもうそこまで理解してしまうとは思いもしなかったのだろう。

もっとも、『もう一人の始原の精霊』というのはこの世界でそう呼ばれてるだけであって、崇宮澪真は始原の精霊・崇宮澪の娘であることの方が真実である。

蓮は得心がいったように頷いた。

 

「先まで行動を共にしていた澪真が偽物か、あるいは分身体ならば自分が容易く殺せたのも理解できる。だが本物の澪真がもう一人の始原の精霊ならば⋯⋯生憎だけれど自分も勝てる気がしないね。なぜならその女は我が母に比肩するほどの存在と言っても過言ではないからね」

 

「⋯⋯そ。なら大人しく私について来てくれるってことでいい?」

 

「ああ。流石に自分も勝ち目の無い戦いに挑むほど馬鹿ではないからね。⋯⋯貴女は、万由里と言ったかな?」

 

「ん。そういえば自己紹介がまだだったわね。私は万由里。 〈雷霆聖堂(ケルビエル)〉の管理人格よ。特技は気配を消すことで、今は澪真の世界――第一一領域(ダアト)の管理者の一人にして、『隣界』と『虚界(クリフォト)』を行き来するのに必要な(ゲート)を守る役割を担っているわ。ついでに『虚界(クリフォト)』の案内人でもあるわね」

 

「ふむ。いきなり現れたあれは貴女の特技だったか。貴女も自分のことは既に『識って』いるだろうけれど、蓮だ。よろしく頼むよ、万由里」

 

「ん。改めてよろしく、蓮」

 

握手を交わす万由里と蓮。

その様子をニコニコと澪真Bと凜祢が眺める。

 

「それじゃあ私は蓮を連れて本物の澪真に会いに『虚界(クリフォト)』へ行ってくる。またね、凜祢お姉ちゃん、澪真」

 

「うん。またね、万由里ちゃん!」

 

「うん。またなんだよ、マユリ!」

 

蓮を伴って『虚界(クリフォト)』へ向かう万由里を見送る凜祢と澪真B。

それから暫くして、二人の姿が完全に見えなくなったのを確認した凜祢が言った。

 

「――もう大丈夫だと思うよ。()()姿()()()()()()

 

「⋯⋯ああ」

 

澪真Bは()()()を発して返す。

それと同時、澪真Bの身体を光が包み込み――青髪の少年の姿へと変貌した。

そう、この姿こそが()の本当の姿なのだ。

先までは正体を隠すために箒の天使〈贋造魔女(ハニエル)〉の変身能力で姿を崇宮澪真に変えていただけなのだから。

そんな彼に向かって凜祢が優しく微笑む。

 

「改めて、おかえり――()()

 

「ただいま、凜祢」

 

青髪の少年――崇宮真士も優しく微笑んで返した。

 

 

 

 

 

一方で、万由里に連れられて『虚界(クリフォト)』へ入った蓮は、本物の崇宮澪真と邂逅していた。

ああ、やはりそうだったか。

蓮は正体が予想通りの少女を見て頬に汗を掻く。

髪は濃い銀色と、深淵(アビス)の如き漆黒が入り混じった長髪。

原初の光のような白銀の右眼と、深淵の如き闇の左眼。

光と闇の霊力が入り混じった混沌霊装(カオス・ドレス)

第一一領域(ダアト)第虚一一領域(■■■)を有する混沌領域(カオス・アーマー)

そして、生の天使〈輪廻聖堂(ルシフェル)〉――白銀の六枚の右『翼』と、生の魔王〈永劫祭壇(ルシファー)〉――漆黒の六枚の左『翼』を背にする少女。

その少女に向けて、蓮は不敵な笑みを浮かべて口を開く。

 

「⋯⋯()()()()だね。よもや貴女が、もう一人の始原の精霊だったとは驚きだ。〈デミウルゴス〉――いや、崇宮澪真?」

 

もう一人の始原の精霊。

識別名――〈デミウルゴス〉。

蓮にそう呼ばれた澪真は、優しく微笑み返す。

 

「⋯⋯ああ、三〇年ぶり、とでも言っておこう。そして、ようこそわたしの世界――『虚界(クリフォト)』へ。歓迎しようじゃあないか⋯⋯レン義姉様」

 

三〇年の時を経て、悪逆の精霊()混沌の精霊(崇宮澪真)は相まみえるのだった。




蓮パートナーはこれにて終了です。

澪真の世界・第一一領域の管理者は六人。

判明したのは園神凜祢と万由里の二人。

まあ、あと四人が一体誰なのかはだいたい察しがつくと思いますが笑

崇宮真士と五河士道が同時に存在するとはこれ如何に(すっとぼけ)

次回からは本編に戻ります。
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