デート・ア・ライブ 未来からの来訪者   作:問題児愛

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長くなりそうなので実践訓練は次話に持ち越しました。
デアラ5期のアニメは次回狂三のあれとかあの夏とかウェスト何某さんがあれとか楽しみな話になりそうですねぇ、アベマ勢の私は九話見終わったとこだけど


十六話

翌日の放課後。

 

「どんなもんじゃーいッ!」

 

コントローラーを左手に預けた士道が、右手で握り拳を作り天高く掲げた。

琴里と令音の放課後強化訓練が実施されてから、休日を含めて一〇日間。

士道はようやく、ゲームのハッピーエンドを迎えていたのだった。

⋯⋯まあそれまでに、古傷を幾度も抉られたり。

村雨先生との禁断の関係!だとかで殿町とかに根掘り葉掘り聞かれたりとかで、どちらも地獄を見て平穏な日常は明後日の方へと消え去ってしまったが。

 

「⋯⋯ん、まあ少し時間はかかったが、第一段階はクリアとしておくか」

 

「ま、一応全CGコンプしたみたいだし、とりあえずは及第点かしらね。⋯⋯とは言っても、あくまで画面の中の女の子に対してだけだけど」

 

背後からスタッフロールを眺めていた令音と琴里が、息を吐くのが聞こえてくる。

 

「――お疲れ様、士道」

 

そんな優しい声と共に、士道に冷えた飲み物を差し入れしてきた。

 

「ああ、ありがとう――凜祢」

 

「ふふ、どういたしまして」

 

凜祢と呼ばれたゆるいウェーブのかかったセミロングの薄桃髪を揺らす少女が微笑む。

そんな彼女を、琴里が面白くなさそうに見つめて眉を顰めた。

 

「あまり士道を甘やかさないでちょうだい」

 

「別に甘やかしてるつもりはないよ、琴里ちゃん。私はただ、士道の()としてお兄さんを労っただけだから」

 

「あらそう。ならそういうことにしといてあげる」

 

「あはは⋯⋯」

 

不服な様子の琴里に苦笑いを浮かべる凜祢。

 

「――違うわよ凜祢お姉ちゃん。琴里はあんたが士道()()()()()ばっか構うから嫉妬してるだけ」

 

金髪サイドテールの少女がそう言ってくる。

すると琴里の顔がみるみるうちに赤く染まった。

 

「そ、そんなんじゃないわよ!?万由里、一体何を言って⋯⋯!?」

 

「無理しなくていいのよ琴里。私達、()()なんだから遠慮しないで甘えても」

 

万由里と呼ばれた彼女が、琴里に笑いかける。

うぐ、と言葉を詰まらせると恥ずかしそうに顔を逸らす。

 

「そうなの?ごめんね、琴里ちゃんの思いに気づけなくて。さあ、私の胸に飛び込んでおいで!」

 

「⋯⋯っ、だ、だからそういうんじゃ」

 

「焦れったいわね、私が背中を押してあげる」

 

「は?ちょ、待っ――きゃっ!」

 

万由里に背中を押されて琴里は吸い込まれるように、両手を広げていた凜祢の胸に倒れ込んだ。

 

「わっ!もう万由里ちゃんったら、急に押したら危ないよー。大丈夫、琴里ちゃん?よしよし」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯っ、」

 

凜祢は万由里に注意しながら、琴里の頭を優しく撫でる。

琴里は顔を真っ赤にしたまま恥ずかしそうに、されどどこか嬉しそうな表情でそれを受け入れる。

 

「あらごめんなさい。手が滑ったわ」

 

「いや背中押すとか言ってたよな!?」

 

「⋯⋯そうだっけ?」

 

「お前なあ⋯⋯」

 

とぼける万由里を、士道は半眼で見つめた。

仮称・強化訓練室に新たに来るようになった凜祢と万由里。

この二人との邂逅は、本日の朝のHR(ホームルーム)まで遡る。

 

 

《回想》

 

 

四月二〇日、木曜日。

 

「はーい、みなさーん。ホームルームを始めますよぉー」

 

いつもの調子で朝のHRを始めようとした岡峰珠恵教諭だったが、

 

「――と、その前にぃ⋯⋯突然ですが、このクラスに転校生が来ます!しかもなんと二人も!それでは入ってきて!」

 

「はーい!」

「はい」

 

珠恵が扉に声をかけると、少女と思しき声が二つして、教室の中に入ってきた。

一人は、ゆるいウェーブのかかったセミロングの薄桃色の髪を揺らす少女と。

もう一人は、天使の羽のような髪飾りでサイドテールに括られた金髪の少女。

教室内はシーンと静まり返る。

この世のものとは思えないほどの、絶世の美少女達を目の当たりにした生徒達は言葉を失って彼女達を見やっていた。

士道もまた、一〇日前に出逢ったあの子を彷彿させるような少女達に思わず見惚れてしまう。

同じ時に出逢った幼い少女――崇宮澪真もそうだが、あの子は美しいよりも愛らしいと言った方が適当かもしれない。

まず、ゆるいウェーブの薄桃髪セミロングの少女がチョークで名前を書いて。

 

「みなさん、はじめまして。園神凜祢です。これから、よろしくお願いします」

 

ほんわりした雰囲気。

くすぐったさを感じるような声。

優しいけど真っ直ぐな瞳。

そんな感じの少女。

次に、金髪サイドテールの少女がチョークで名前を書いて。

 

「はじめまして。私は聖堂院万由里。みんな、これからよろしく」

 

クールな雰囲気。

無愛想な調子。

涼しげに見下ろす瞳。

そんな感じの少女。

それにしても〝園神〟に〝聖堂院〟か。

どちらも荘厳な苗字だな、と士道は思った。

そんな士道の下に転校生の凜祢と万由里が来て。

 

「久しぶりだね――士道」

 

「え?」

 

久しぶりと凜祢に言われて戸惑う士道。

だがそうなるのは無理からぬことだ。

士道にとって凜祢と逢ったのは今日この時なのだから。

すると今度は凜祢の隣にいた万由里が眉を顰めて。

 

「え?じゃないでしょ、士道お兄ちゃん」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?」

 

『オニイチャン!?』

 

お兄ちゃんと万由里に言われて目が点になる士道。

生徒達と先生も驚愕の声を上げた。

それから

『あの金髪美少女転校生が、五河の妹だと!?』

『苗字が違うのに!?』

『違う!これはきっと五河がそう呼ばせてるんだ!きっと自分をお兄ちゃんと呼ばせて喜ぶ妹癖があるのだろうさ!』

とか口々に騒ぎ始める。

俺の方が聞きたいわ!と心の中で叫ぶ士道。

あと最後のは――おい殿町!妹癖ってなんだコラ!俺に新たな性癖追加してんじゃねぇぇぇぇ!

凜祢が不意に万由里の肩を抱き寄せてみんなに言った。

 

「【私と万由里ちゃんはね、士道の妹なんだよ】」

 

凜祢がそう言うと、途端生徒達と先生の様子が急変し。

『園神さんも⋯⋯だと!?』

『二人の美少女転校生が五河の妹とか反則だろ⋯⋯』

『くぅぅぅぅ!俺もあんな美少女達を妹に欲しかったぜ!』

などと口々に言って士道に嫉妬の眼差しを向けてくる。

何故だろう、苗字が違うのにってさっきまで気にしてたのに、凜祢が言った瞬間――まるで最初から、()()()()()()()()()()()()()()()()()()かのようであった。

⋯⋯?なんなんだ一体?

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯やっぱり、士道には()()()()みたいだね」

 

「え?」

 

俺には通じない?何がだ?

ボソッと呟く凜祢の言葉に、士道は不可解に思うのだった。

 

 

《回想終了》

 

 

突如現れた転校生の園神凜祢と聖堂院万由里。

この二人は士道の妹であり、琴里の義姉である。

そのことに疑問を抱き続けているのは⋯⋯俺だけ。

琴里も令音さんも――そして令真さえ凜祢と万由里が俺の妹であることになんの疑問も持っていない。

士道は知らないが、令音()令真(真士)は凜祢と万由里がどういう存在かを『識って』いるし、士道以外様子がおかしくなった原因も『識って』いる。

凜祢と万由里は、『未来の』凜祢と凜緒、鞠亜、鞠奈、万由里、そして蓮の六人が創った夢の世界――『疑似隣界』の中で令音こと崇宮澪が自身の霊力を切り分けて生み出した精霊達だ。

そして士道以外様子がおかしくなった原因は、凜祢が天使〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉の権能、あらゆる条理を捻じ曲げる能力を行使し、彼女と万由里が士道の妹、()()()()()()()()からだ。

まあ、あながち間違いではなかったりする。

五河士道は澪が胎を使って産み直した存在なのだから、彼女の霊力を切り分けて生み出した園神凜祢と聖堂院万由里とは、便()()()()()()()となるのだ。

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

「母様?」

 

難しい顔をする令音を、心配そうに見上げる令真(真士)

ちなみに令真(真士)は、士道の訓練なるものが終わってからは令音の膝上に座っている状態だ。

令真(真士)の頬がほんのり赤くなっている。

そんな令真(真士)を優しい眼差しで令音が見つめ、彼女(?)の頭を優しく撫でながら考え込む。

士道に法の天使〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉の権能が通じないのは、吸収能力(私の霊力)を有しているからだ。

彼にはもう一つ、炎の天使〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の――琴里の霊力がある。

私は今まで彼の中には私と琴里の霊力だけだと思っていたが、真実を知ったからなのか()()()()、別の誰かの霊力が在ることに気がつけた。

その霊力は、()()()()()()()()()

だからなのか今まで気づくことができなかったのかもしれない。

その霊力を有する者の名は――

 

「令音?何か考えごとかしら?」

 

「⋯⋯ああ、いや、なんでもない。気にしないでくれ」

 

「そ。じゃ、次の訓練は⋯⋯時間も押しちゃってるからもう生身の女性でいきましょ」

 

「⋯⋯ふむ、大丈夫かね?」

 

「平気よ。訓練相手にピッタリな美少女達がいるじゃない」

 

琴里がそう言って凜祢と万由里に目を向ける。

凜祢と万由里が目を丸くして。

 

「え?私達が士道の訓練相手になるの⋯⋯?」

 

「妹相手では訓練にならないと思うんだけど」

 

凜祢が困った顔をし、万由里が呆れた顔で琴里を見つめた。

 

「それもそうね。浅はかだったわ、別の人にしましょ。⋯⋯誰がいいかしら」

 

琴里がそう言うと、令音が手元のコンソールを操作し始めた。

机の上に並べられたディスプレイに、学校内の映像が幾つも映し出される。

 

「⋯⋯そうだね、まずは無難に、彼女などどうだろう」

 

「え?岡峰先生が士道の最初の訓練相手⋯⋯?」

 

「は?」

 

「先生を選んだ意図が分からないんだけど」

 

令音は画面に映し出された珠恵を指差し、それに凜祢と士道が困惑し、不可解そうに眉を顰める万由里。

実は凜祢と万由里には、令音の狙いが理解(わか)るのだが、理解(わか)らない振りをしているだけだったりする。

令音()の霊力から生まれた二人だからこそなのだが、流石に表向きでは初対面ゆえこういった演技をしているのだ。

一方、琴里は一瞬眉を跳ね上げ――

 

「――ああ、なるほど。いいじゃない、それでいきましょう」

 

「⋯⋯琴里ちゃん、悪い顔」

 

「一体何企んでるのよ琴里」

 

邪悪な笑みを浮かべる琴里に、苦笑いの凜祢と、半眼の万由里。

士道は嫌な予感がして、恐る恐る令音に訊いた。

 

「あ、あのぅ⋯⋯令音さん?さっきから先生がどうの訓練相手がどうの言ってますけど、流石に先生を訓練相手にするわけないですよね?」

 

「⋯⋯ああ、シンの予想通りだ。⋯⋯岡峰珠恵教諭を口説いてきたまえ」

 

「ですよね!流石に――って、はぁっ!?」

 

眉を寄せ、叫ぶ士道。

 

「何か問題でもあるの?」

 

ニヤニヤ笑って言う琴里。

 

「大ありだろうが⋯⋯ッ!んなッ、できるわけ⋯⋯っ!」

 

「本番ではもっと難物に挑まなきゃならないのよ?」

 

「――っ、そりゃ、そうだけど⋯⋯っ!」

 

士道が言うと、令音がポリポリと頭を掻いた。

 

「⋯⋯最初の相手としては適任だと思うがね。恐らく君が告白したとしても受け入れはしないだろうし、ペラペラと言い振らしたりもしなさそうだ。⋯⋯それとも自分の妹達に、琴里や凜祢、万由里に訓練相手をしてもらう気かね?」

 

「ちょっと待ちなさい令音!」

 

「ん?」

 

「ん?じゃないわよ!何当然のように私も加えちゃってくれてんの!?」

 

「あはは⋯⋯。でも、私達じゃ訓練相手は務まらないと思うんだけどなあ」

 

「そうね。私達は士道お兄ちゃんのこと大好きだからきっと――どんな要求をされても受け入れるかもしれないし」

 

「――ッ!!?」

 

万由里のとんでもない発言に、士道がギョッとして目を剥いた。

どんな要求も⋯⋯!?それはつまり――なんでもということなのか!?

士道がそんなことを思っていると、琴里が冷ややかな眼差しで見つめてきて。

 

「うっわ、何妄想してんのよ気持ち悪い」

 

「い、いや別に俺は⋯⋯ッ!」

 

「ええっ?士道が妄想の中で私達をめちゃくちゃにしてるの!?」

 

「は?」

 

「妄想の中で私達三人はきっと、姉妹丼よろしく士道お兄ちゃんに美味しくいただかれてるんでしょうね」

 

「――⋯⋯はっ!?」

 

澄まし顔でとんでもないことを言う万由里に素っ頓狂な声を上げる士道。

俺にとっては三人共に妹だが、琴里にとっては凜祢と万由里は義姉だから姉妹丼ならぬ義姉妹丼――って俺は何言ってるんだ!?

士道がそんなことを思っていると、令真(真士)は小首を傾げて。

 

「しまいどんって、なに?」

 

「はっ!?」

 

士道はしまった!というような顔で令真を見る。

九歳の子供がいるのにこの話は不味かった――って、

 

「いやこれは俺のせいじゃねえ!」

 

「あんたがいかがわしい妄想するからよ」

 

「し、しとらんわっ!」

 

「⋯⋯その割にはどもってるよ士道?」

 

「うっ!?」

 

凜祢に言われて言葉が詰まる士道。

〝姉妹丼〟と言った張本人(万由里)はというと、

 

「令真。あんたには早すぎる内容だから、『識る』必要はないわ」

 

「うん、分かった!」

 

「ふふ、いい子ね」

 

そんな感じで令真に釘を刺していた。

聞き分けのいい令真の頭を優しく撫でたりもしていた。

実際は、令真(真士)の頭を撫でる行為なので、令音()の無言の圧に万由里は冷や汗を掻いていたりするが。

ちなみに真士は〝姉妹丼〟の意味を知っている⋯⋯というか三〇年もの間、某百合っ娘アイドルといれば嫌でも知ってしまうというものだ。

そう言えば昔彼女は、

『真士さんはだーりんと瓜二つ!それはつまり両手に花ならぬ!両手にだーりんも可能!世界に一つだけの極上のハッピーセットじゃないですかぁ!これはもう!逃す手はありませんよぉぉぉ!』

などと意味分からんことを言ってた気がするが、澪には黙っておくか。

多分言ってはいけない気がする⋯⋯うん、絶対アウトなやつだ。

それから、なら女子生徒にするか?と令音に訊かれて士道は新たなトラウマが生まれかねない予感がしたので、結局先生を口説くことに決定したのだった。




日付間違えてたので隣界編エピローグの四月二〇日水曜日を四月一九日水曜日に変更しました。
本編に戻ってきたのでまた中々話が進まない感じになると思いますが苦笑

追記、一部、修正しました。
士道が既に澪の霊力持ってることをすっかり忘れてました。霊力を封印する能力もとい吸収能力。一部でも澪の霊力を手にした十香が法の天使〈輪廻楽園〉の権能を掻い潜ってたように、澪の霊力を有する士道に通じないのは道理となりますかね。
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