デート・ア・ライブ 未来からの来訪者   作:問題児愛

37 / 37
デアラロスのためモチベ低下中⋯⋯アニメ6期やってくれないだろうか。

オラにデアラ成分を分けてくれー!

と、お巫山戯はこれくらいにして投稿遅くなってすみませんでした!
あと見事に終わりませんでしたねはい、登場人物多いと文字数が予想外の事態になりますねえ。


澪真トゥルーエンド Ⅲ

「――〈永劫瘴獄(ベリアル)〉!」

 

恍惚とした表情と共に魔王の名を呼ぶアイザック・ウェストコット。

世界の上書きを目的とした法の魔王〈永劫瘴獄(ベリアル)〉を顕現させる。

それに対するは崇宮澪――ではなく、

 

「やらせるかよ――〈永劫瘴獄(ベリアル)〉!」

 

崇宮真士だった。

崇宮澪真が封印したウェストコットの始原の魔王の力を、真士に切り分け与えた力である。

真士は完全ではないものの、始原の魔王の力をほぼ手にしているも同然の存在だ。

ならば真士の力は、ウェストコットの力と同格と言っても差し支えないだろう。

実際、互いの〈永劫瘴獄(ベリアル)〉の『闇』の『枝』や『根』が複雑に絡み合って拮抗している。

真士は愛する少女に向けて言った。

 

「こいつの相手は俺に任せて、澪はみんなを頼む!あっちには澪真がいるからな」

 

「うん。シンも気をつけて」

 

「ああ!」

 

澪と別れて、ウェストコットと対峙する真士。

ウェストコットは書の魔王〈神蝕篇帙(ベルゼバブ)〉を開き、疑似精霊〈ニベルコル〉をさらに追加で幾体も召喚していく。

真士は〈永劫瘴獄(ベリアル)〉の『闇』の『枝』や『根』を動かして〈ニベルコル〉を貫こうとするが、

 

「無駄だよ、タカミヤシンジ」

 

ウェストコットも〈永劫瘴獄(ベリアル)〉の『闇』の『枝』や『根』を動かして真士の攻撃を弾いていく。

その間に〈ニベルコル〉が紙飛行機型の〈神蝕篇帙・頁(ベルゼバブ・イェレッド)〉を真士に向かって飛ばしてくる。

だが、真士を守る暗く輝く『闇』の霊力の膜が防ぎ、傷一つつけることさえできなかった。

 

「ちょ、何よこいつ硬すぎ!?」

 

「あたしの攻撃全然通用してないんだけど!?」

 

「あんたを殺してお父様に褒めてもらう予定だったのにぃ!」

 

〈ニベルコル〉が口々にそう言うと、ウェストコットはふむ、と顎に手を当てた。

 

「なるほど、流石に〈ニベルコル〉では歯が立たないようだね。ならば君達は、イツカシドウを殺しに行きたまえ」

 

『はぁい!』

 

ウェストコットの指示に応えた〈ニベルコル〉は、下方にいる五河士道に向かって飛んで行った。

しかし、それを待っていたとばかりに本条二亜が笑い言った。

 

「そうは問屋が卸さないぜ――〈囁告篇帙(ラジエル)〉!」

 

二亜の書の天使〈囁告篇帙(ラジエル)〉が開き、そこから疑似精霊〈マリア〉を幾体も召喚していく。

それを見た〈ニベルコル〉が驚愕して目を見開いた。

 

「――⋯⋯は?何それ⋯⋯?」

 

「あたしと、同じ⋯⋯?」

 

「そんなのあり!?」

 

〈ニベルコル〉の言葉に、〈マリア〉がほくそ笑んみながら言った。

 

「当然です。あなたを生み出した魔王は、わたしを生み出した天使と表裏一体なのですから」

 

「DEMにできて〈ラタトスク〉にできない道理はありません」

 

「というわけで量産型同士、仲良く潰し合いましょうか」

 

ぐぬぬぬ、と納得のいかないような表情を見せる〈ニベルコル〉と、したり顔で胸を張る〈マリア〉。

と、突然空間に影の蟠りができたかと思ったら、その中から時崎狂三の分身体が幾体も這い出てきた。

 

「きひ、きひひひひひ!」

 

「『わたくし』もいることを、お忘れではありませんこと?」

 

「さぁさぁ、始めますわよ。『わたくし』たちの戦争(デート)を」

 

刻々帝(ザフキエル)〉を構えて笑う狂三の分身体。

〈ニベルコル〉と対峙するは、〈マリア〉と狂三の分身体。

量産型の美しき合奏(アンサンブル)の開演である。

そんな中、ウェストコットの傍に控えていたエレン・メイザースとアルテミシア・アシュクロフトが、士道達に向かって突撃してくる。

 

「〈エインヘリアル〉!」

 

レイザースピア〈エインヘリアル〉を顕現させたCR-ユニット〈ブリュンヒルデ〉と第一領域(ケテル)の〈神威霊装・一番(エヘイエー)〉を纏った鳶一折紙が、CR-ユニット〈ランスロット〉と第虚一領域(バチカル)の〈神威霊装・虚一番(シャーマーン)〉を纏ったアルテミシアに向かって飛んでいき、攻撃をしかける。

 

「鳶一、折紙!」

 

アルテミシアは折紙の一撃をレイザーブレイド〈アロンダイト〉で受け止めた。

 

「やっぱり私の相手は君なんだね」

 

「違う。貴女の相手は私だけではない」

 

「なに?」

 

折紙の言葉に、アルテミシアが眉を寄せると。

折紙の隣に一人の少女が現れた。

CR-ユニット〈ヴァナルガンド〉を纏いレイザーエッジ〈ヴォルフテイル〉を構えた――崇宮真那だ。

 

「魔王の力を手にしたあなたが相手では、折紙さん一人には荷がおめーと思いますからね。二対一で卑怯かもしれねーですが」

 

「ああ、うん。それは別に構わないよ。ただ――」

 

真那の言葉に、アルテミシアが挑発するように笑って一言。

 

「たった二人だけで私を抑えられるものなら⋯⋯ね?」

 

「「――ッ」」

 

余裕の笑みを見せるアルテミシアに、折紙と真那は表情を強ばらせる。

アルテミシアは左手を突き出して魔王の名を呼ぶ。

 

「――〈救世魔王(サタン)〉」

 

アルテミシアの声に呼応した『闇』の魔王〈救世魔王(サタン)〉の『羽』が彼女の周りを舞うと、その先端から一斉に『闇』の光線を撃ってきた。

 

「――ッ、〈絶滅天使(メタトロン)〉――【光剣(カドゥール)】!」

 

折紙がそう叫ぶと、『光』の天使〈絶滅天使(メタトロン)〉の王冠がバラバラになって飛び散り、『光』の『羽』となってその先端から『光』の光線を撃ち放ち、『闇』の光線とぶつかり合って相殺し打ち消す。

それに気を取られていた折紙にアルテミシアが〈アロンダイト〉で斬りかかりに来るが、その一撃を真那が〈ヴォルフテイル〉で受け止めた。

アルテミシアの魔王の攻撃を、折紙の天使の攻撃で打ち消し、アルテミシアのレイザーブレイドによる攻撃を、真那のレイザーエッジで捌く。

中々にいい連携だが、アルテミシアにそれがいつまでも通用するかは怪しいところだった。

どちらにせよ厳しい戦いになるだろう。

折紙と真那は覚悟を決め、アルテミシアに突貫していった。

一方、エレンは飛んできたエリオットと交戦していた。

王の名を冠せしCR-ユニット〈ペンドラゴン(アーサー)〉と第虚一〇領域(キムラヌート)の〈神威霊装・虚十番(シェアリス・ハシェオール)〉を纏ったエレンが持つ剣の魔王〈暴虐公(ナヘマー)〉と。

神々の王の名を冠せしCR-ユニット〈ヴォーダン(オーディン)〉を纏ったエリオットが持つレイザーランスが、目にも留まらぬ速さで斬り結び合う。

凄まじい攻防が幾百、幾千と繰り広げられるが、キリがないので互いに一旦後方に下がった。

 

「流石はエリオット、やりますね」

 

「エレンこそ、流石は最強を名乗るだけあるな」

 

「当然です――と言いたいところですが、あなたが相手ではそうも言ってられませんね。本当は私の獲物でエリオットを始末したいところですが、私情を挟んで目的に支障をきたすわけには参りませんので」

 

エレンは〈暴虐公(ナヘマー)〉の刀身に暗く輝く黒光を纏わせると、ゆっくりと振りかぶり。

 

「最初から魔王(これ)の力でいかせてもらいます」

 

エリオットに向けて〈暴虐公(ナヘマー)〉を振り下ろし、暗く輝く斬撃を発生させた。

それをレイザーランスを構えるエリオットが迎え撃とうとして。

 

「〈鏖殺公(サンダルフォン)〉!」

 

少女の声と共に、光り輝く斬撃が飛んできてエレンの暗く輝く斬撃と衝突し、爆ぜる。

 

「無事か、エリオット!」

 

少女――夜刀神十香が現れてエリオットに声をかけてくる。

 

「悪いな嬢ちゃん、助かった」

 

エリオットがそう返すと、エレンが驚いたような表情を作り、十香を見た。

 

「⋯⋯まさか貴女も私の相手ですか、〈プリンセス〉――夜刀神十香」

 

「ああ。私の魔王を手にした貴様の相手は、私が適任だからな」

 

鏖殺公(サンダルフォン)〉を構えながら言う十香に、エレンは口角を吊り上げて笑みを作ると〈暴虐公(ナヘマー)〉の刀身の切っ先を十香に向けた。

 

「そうですか。私も相対した時の貴女は弱体化していましたから、本来の貴女と戦える機会が得られて嬉しい限りです。なので――簡単に終わらないでください⋯⋯ね!」

 

そう言って十香に突貫するエレン。

それを迎え撃つ十香。

 

「おいおい、俺もいるってことを忘れんじゃねえぞエレン!」

 

十香と入れ替わるようにエリオットのレイザーランスがエレンの〈暴虐公(ナヘマー)〉を叩く。

最強達の乱戦もまた、こうして始まった。

一方、士道率いる精霊八人と合流した澪が対するは、一三の魔王を冠した生の魔王〈永劫祭壇(ルシファー)〉の一二の『翼』を背に生やした幼い少女――崇宮澪亜。

士道は戦う前に対話を試みた。

 

「澪真!俺はお前とは戦いたくない!ウェストコットと手を切って、俺達のところに来ないか!?」

 

「父様を裏切るなんてわたしにはできないよ。それにわたしの名前はレマじゃなくてレアなのだけれど」

 

「違う!お前の本当の名前は澪真!崇宮澪真だ!お前はウェストコットの魔王の力に存在を書き換えられてるだけなんだ!」

 

「⋯⋯え?父様がわたしを騙してるって言いたいの?」

 

「そうだ!お前の本当の父親はあいつじゃない!お前は澪と――俺の霊力から生まれた娘なんだよ!」

 

自分で言って恥ずかしくなる士道。

そりゃあ、お前は俺の娘だ!って言ってるようなものだから。

一部の精霊達がニヤニヤしながら見てくるような視線を感じたが、きっと気のせいだろう。

澪亜はキョトンと目を丸くして士道を見つめた。

 

「――⋯⋯は?何を言ってるのかな君は?そんなわけ――っ!?」

 

ズキッ、と痛みだした頭に手をやり顔を顰める澪亜。

士道は澪亜のその様子に驚きつつ、澪に訊いた。

 

「澪、これって」

 

「ああ。どうやら魔王の力による改竄は、完全ではないらしい。私の〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉の根で彼女を貫くことができれば元に戻せるかもしれない」

 

「えぇっ!?あんな小さい子の中に、澪さんのあんな太いものを刺しちゃうんですかぁ!?あぁん!やだぁそんなぁ!」

 

「⋯⋯美九、ちょっと黙ってて」

 

澪の言葉に、誘宵美九が身体をくねくねさせながら興奮し、それを黙らせる五河琴里。

士道は苦笑しつつ〈鏖殺公(サンダルフォン)〉を顕現させながら言った。

 

「なら俺達は澪の天使が当てやすいように隙を作ればいいんだな?」

 

「うん。おそらくただしかけるだけじゃ防がれてしまうだろうからね。頼めるかな?」

 

「ああ、任せろ。みんなもそれでいいな?」

 

「「ええ」」

「「はい」」

「「うむ」」

「うん」

「はぁい!」

 

士道の言葉に、精霊達が返す。

痛む頭を押さえていた澪亜が、頭を振って士道達を見やる。

 

「⋯⋯忌々しいやつだ。わたしを(たばか)ろうとしたことを後悔させてやる」

 

「別に謀ったつもりはないんだけどな」

 

頬を掻く士道。

美九と七罪が頷き合い、行動に移した。

 

「さぁて、あげていきますよー七罪さん!」

 

「うん、分かった!」

 

美九は言って、光り輝く鍵盤を顕現させる。

七罪は首肯して、箒の天使〈贋造魔女(ハニエル)〉を【千変万化鏡(カリドスクーペ)】で光り輝く鍵盤に変身させた。

 

『〈破軍歌姫(ガブリエル)〉――【行進曲(マーチ)】!』

 

美九と七罪は鍵盤に指を走らせ、勇ましい曲を奏でていく。

すると、士道、澪、狂三、四糸乃、琴里、星宮六喰、八舞耶倶矢、八舞夕弦の八人に強化(バフ)をかけた。

澪亜は眉を微かに動かすも、何かしてくる気配はなかった。

余裕なのか、舐められているのか、どちらにせよこの機会を逃す手はない。

 

「澪と士道の娘だから、簡単にはやられないでしょうね。なら、」

 

琴里がそう言うと、炎の天使〈灼爛殲鬼(カマエル)〉を振りかぶり。

 

「――〈灼爛殲鬼(カマエル)〉!」

 

澪亜に向かって振り下ろし、光り輝く炎を撃ち出した。

迫りくる〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の炎を見つめていた澪亜は、その全身に『闇』よりも深い『深淵(アビス)』を纏うだけで身動ぎ一つなく琴里の一撃を受け止めてみせた。

 

「う、嘘でしょ!?」

 

驚愕の声を上げる琴里。

だがそれも無理からぬことである。

破軍歌姫(ガブリエル)〉の強化(バフ)に加えて、澪の力を貰って完全に力を取り戻した〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の一撃のはずだ。

それを禍々しい霊力の膜を纏った状態のみで受けて無傷とか一体全体どういうことだというのか。

 

「やるではないか我らが娘よ!ならば我ら八舞の一撃を心して受けるがよい!」

 

「警告。泣いて謝るなら今のうちです」

 

「⋯⋯泣くのはそっちだと思うのだけれど?」

 

澪亜が余裕の笑みを浮かべて言ってくる。

可愛い顔して中々の挑発をしてくる澪亜に、耶倶矢と夕弦は頷き合い、額に青筋を浮かべると。

 

「呵々、その余裕いつまで持つであろうな!」

 

「覚悟。この一撃をもって後悔しなさい!」

 

そう言ったのち、各々の天使の名を呼んだ。

 

「〈颶風騎士(ラファエル)〉――【穿つ者(エル・レエム)】!」

 

耶倶矢が巨大な槍を顕現させ。

 

「〈颶風騎士(ラファエル)〉――【縛める者(エル・ナハシュ)】!」

 

夕弦が鎖を顕現させた。

だがそれで終わりではなかった。

耶倶矢が左手を、夕弦が右手を差し出しぴたりと合わせた。

すると耶倶矢の右肩に生えていた羽と、夕弦の左肩に生えていた羽が合わさって、弓のような形状を形作る。

次いで、夕弦の【縛める者(エル・ナハシュ)】が弦となって羽と羽の先端に結び――耶倶矢の【穿つ者(エル・レエム)】が矢となってそれに番えられる。

今度は耶倶矢が右手で、夕弦が左手で弦を左右から同時に引っ張り。

 

『〈颶風騎士(ラファエル)〉――【天を駆ける者(エル・カナフ)】!!』

 

そして同時に弦から手を離して巨大な矢を澪亜に向けて撃ち出した。

迫り来たる凄まじい風圧を纏った【天を駆ける者(エル・カナフ)】を見据えた澪亜は、左手を前に突き出して易々と受け止めてみせる。

大型ハリケーンもかくやという暴風の直中にあって、澪亜の体には傷一つつけられていない。

 

「ちょ、全然効いてないんだけど!?」

 

「驚愕。私達の全力を片手で受け止めるとか、出鱈目が過ぎます⋯⋯っ!」

 

涼しい顔で八舞姉妹の必殺の一撃を凌いでみせた澪亜。

それに愕然として悲鳴のような声を上げる耶倶矢と夕弦。

 

「むん⋯⋯ならばもう一度アレをやるしかないようじゃな」

 

六喰がそう言って、琴里を見やると。

 

「⋯⋯!そうね。アイザック・ウェストコットにも通じたあの一撃ならあるいは――!」

 

そう言った琴里も、六喰の意図を汲み取ったように頷いた。

 

「〈封解主(ミカエル)〉――【(シフルール)】!」

 

鍵の天使〈封解主(ミカエル)〉を顕現させた六喰は、その先端を琴里の胸に突き刺しカチリと回す。

(シフルール)】で力を解放させられた琴里は、澪亜に向かって渾身の一撃をお見舞いした。

 

「〈灼爛殲鬼(カマエル)〉――【(メギド)】!」

 

刃の部分が消え去り、棍の部分のみとなった〈灼爛殲鬼(カマエル)〉を右手に纏わせた琴里は、【(メギド)】の砲門から凄まじい熱量が集まっていき。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――⋯⋯ッ!!」

 

そこから炎熱の光線が撃ち放たれた。

空を真っ赤に染め上げるその炎熱の光線を、澪亜は右手を前に突き出して易々と受け止める。

右から【(メギド)】、左から【天を駆ける者(エル・カナフ)】。

共に必滅の一撃であるにもかかわらず、『深淵(アビス)』を纏った澪亜には傷一つどころかその禍々しい霊力の膜さえ突破できずにぶつかり合っていた。

澪亜が、それらを受け止めていた左右の手をグッと握ると、八舞姉妹の【天を駆ける者(エル・カナフ)】と、琴里の【(メギド)】は『深淵(アビス)』に飲み込まれて霧散してしまった。

 

『な――ッ!!?』

 

絶句する士道達。

天使の合わせ技も、澪の霊力を帯びていてもなお、澪亜の『深淵(アビス)』に対抗できないなんて、もはや打つ手なしか。

と、六喰が〈封解主(ミカエル)〉の先端を澪亜に向けながら言った。

 

「ふむん⋯⋯娘御の纏っておるあの膜が厄介なのはたしかじゃが――()()()しまえば関係なかろう⋯⋯!」

 

「ふむ、ならば試してみるといいよ。できるものなら、ね?」

 

両手を広げて泰然と構える澪亜。

その挑発に取り合わず、六喰は〈封解主(ミカエル)〉を空間に突き刺して左に回す。

 

「〈封解主(ミカエル)〉――【(ラータイブ)】」

 

空間を『扉』が生じ、その『扉』の出口は澪亜の真横に生じた。

それから六喰はその『扉』に〈封解主(ミカエル)〉を挿し込み、澪亜の纏った『深淵(アビス)』の膜に突き刺す。

そして六喰は〈封解主(ミカエル)〉を右に回した。

 

「――【(セグヴァ)】!」

 

澪亜の纏った『深淵(アビス)』の膜を『閉じ』ようとした。

しかし、何も起こらなかった。

 

「何じゃと!?」

 

驚愕に目を見開く六喰。

澪亜は邪悪な笑みを浮かべると、六喰の〈封解主(ミカエル)〉で『開い』た『扉』に右手を突っ込んで六喰の胸に触れた。

「きゃー!澪真ちゃんったら六喰さんのお胸を触っちゃうなんてエッチさんですぅ!」などと言った精霊がいたが、澪亜は無視してその名を唱えた。

 

「――〈万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉」

 

瞬間、澪亜の右手から『闇』が滲み出し、六喰の全身を飲み込んだ。

 

『六喰(さん)!?』

 

士道達が六喰の名を叫ぶ。

澪亜の未知の魔王の権能が六喰に何を及ぼすかは知らないが、嫌な予感がして叫ばずにはいられなかった。

完全に『闇』に飲み込まれた六喰を確認した澪亜は、六喰の胸に触れていた右手を離して『扉』から引っ込めた――その時。

 

「く、う、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――⋯⋯ッ!!?」

 

絶叫を上げた六喰の全身から禍々しい霊力の奔流が溢れ出した。

六喰の霊装が、混沌を具象化したような色を帯びていく。

封解主(ミカエル)〉が塵と消え、それと入れ替わるように、六喰の背後に『闇』で全身を彩られた巨大な鍵が顕現した。

その光景に、士道は見覚えがあった。

 

「まさか、六喰が⋯⋯反転しようとしてる!?」

 

「何ですって!?たしかにあの禍々しさは反転体と言っても差し支えないけど⋯⋯一体どうしてそうなるのよ!」

 

琴里が不可解とばかりに顔を顰める。

精霊が反転するなんて現象は、『絶望』させるような出来事がなければ起こらないはずだというのに。

その疑問に澪が、澪亜を見つめて呟いた。

 

「⋯⋯そうか。澪真、君の魔王の仕業だね」

 

「え?」

 

「うん。流石は母様だ。名前が違うのはともかく、そう、わたしの魔王――いや、疑似魔王〈万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉の権能によるものだよ。万物を殺める死の天使〈万象聖堂(アイン・ソフ・オウル)〉と死の魔王〈極死祭壇(アティエル)〉を合成して新たに『創造』した疑似魔王さ。その権能は基本的には『死』だが、精霊の『死』とは単なる『死』ではなく⋯⋯『絶望()』。つまり精神的に殺して霊結晶(セフィラ)を本来の属性に戻す能力かな」

 

『なっ⋯⋯!!?』

 

絶句する士道達。

澪亜の言ってる通りならば、六喰は疑似魔王〈万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉の権能によって『絶望()』をもたらされ、精神的に殺されてしまいもう手遅れだということを示していた。

狂三は冷静に〈刻々帝(ザフキエル)〉の短銃の銃口を六喰に向けて撃った。

 

「〈刻々帝(ザフキエル)〉――【四の弾(ダレット)】!」

 

撃った対象の時間を巻き戻す影の弾丸。

それが六喰の身体に触れる前に、反転してしまった六喰が口を開いた。

 

「〈外掛主(ベルフェゴール)〉――【(ラハシール)】」

 

そう言うと同時、六喰の背後の鍵の魔王〈外掛主(ベルフェゴール)〉が左に回る。

瞬間、六喰の身体に触れようとした【四の弾(ダレット)】が跡形もなく霧散した。

 

「な⋯⋯今の、は⋯⋯?」

 

驚いた狂三は、消滅した【四の弾(ダレット)】のあった場所に目を向ける。

するとそこには、ただの霊力となって宙に漂う狂三の霊力があった。

これはまさか――【四の弾(ダレット)】の能力を『外し』てただの霊力に戻した?

封解主(ミカエル)〉――【(ヘレス)】の物質を無に帰す能力と似ているが、違う。

外掛主(ベルフェゴール)〉――【(ラハシール)】は、単純に万物を『外す』能力だった。

もう一つは、〈封解主(ミカエル)〉と違って鍵穴に挿し込む動作がなく、対象に触れずに能力が発動したという点である。

封解主(ミカエル)〉が単体に効果を発揮するタイプならば、〈外掛主(ベルフェゴール)〉は()()()()()()に効果を及ぼすタイプなのかもしれない。

範囲がどこまでなのか不明なため、かなり厄介な権能といえるだろう。

澪亜が手招きをするように手を動かすと、彼女に吸い寄せられるように六喰は導かれる。

澪亜は恍惚とした表情で闇色に染った六喰の髪を撫でた。

 

「ふふ、綺麗な髪色だ。やはり『光』よりも『闇』の方が美しい。そうは思わんかね、六喰?」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

六喰は何も応えない。

否――応えられないのだ。

精神を、心を殺された彼女には、何も残ってやしないのだから。

魔王を振るうだけの、心無き人形(エンプティ)となってしまったのだから。

虚無の瞳で見つめてくる六喰を、士道達が悲痛な表情で見つめ返していた。

変わり果ててしまった六喰に、絶望する。

ウェストコットは、その状況を愉しげに見つめて笑っていた。

 

「ははははは!レア、なんだその魔王は?精霊を反転させてしまう権能とは素晴らしいじゃあないか。顕現させたりはしないのかね?」

 

「ふふ、ありがとう父様。ただこの疑似魔王を顕現させても、()()()()()()()()()()()()()()()()。だから私が直接精霊に触れて疑似魔王の権能を付与したのだけれど」

 

「え?」

 

澪亜の言葉に、澪が眉を寄せる。

私になら防げる?仮にそうだとしても、何故そのことを口に出して言うのだろう?私達に知られてはまずい情報だというのに。

まさか君は――()()()()()()()

澪がそんなことを思っていると、澪亜が右手を掲げてみせて言った。

 

「父様がどうしてもって言うのなら、しょうがないな」

 

『――ッ!!?』

 

「開花の刻だ――〈万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉」

 

澪亜の呼び声と共に、『絶望()』の疑似魔王〈万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉が遥か頭上に現れ開花した。

澪亜の言葉が真実ならば、澪の天使で相殺できるはず。

澪は即座に左手を掲げてみせて言った。

 

「咲き誇れ――〈万象聖堂(アイン・ソフ・オウル)〉!」

 

澪の呼び声と共に、死の天使〈万象聖堂(アイン・ソフ・オウル)〉が遥か頭上に現れ開花した。

万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉の『闇』の粒と、〈万象聖堂(アイン・ソフ・オウル)〉の『光』の粒が触れ合うと次々と相殺して対消滅を引き起こしていく。

絶望()』と『死』の衝突は、小規模の空間震のようなものを作り上げていった。

あんなものに巻き込まれれば一溜りもないだろう。

 

「ふむ、やっぱり母様に防がれちゃったか」

 

「⋯⋯分からないな。どうして君は私の天使なら打ち消せるということを言ったのかな?」

 

「別にどうもこうもないよ。教えたところでどうということはないからね」

 

「なに?」

 

澪が眉を顰めると、澪亜が傍に控えていた六喰に言った。

 

「じゃあ――()()()

 

「〈外掛主(ベルフェゴール)〉――【(リタロート)】」

 

首肯した六喰はそう言うと、〈外掛主(ベルフェゴール)〉が今度は右に回る。

瞬間、辺り一帯に存在する全ての動きに制限を『掛け』た。

 

「⋯⋯は?ちょ、なにこれ!?」

 

「困惑。身動きが取れません⋯⋯!」

 

「私達の動きを封じたっていうの!?」

 

「あぁん!私達の動きを封じて一体どんな凄いことをするつもりなんでしょうかぁ!?」

 

「えっ、こんな状況で何言ってんのこの人⋯⋯」

 

精霊達が口々にそう言うと、狂三が舌打ちと共に呻くように言った。

 

「やはり〈外掛主(ベルフェゴール)〉は〈封解主(ミカエル)〉と違って、一定の範囲内に効果を及ぼすタイプでしたのね⋯⋯!」

 

「なんだって!?二亜ちゃんだけでなくくるみんの分身ちゃんやマリアどころか二べ子も動けなくなってるのはそーいうことか⋯⋯!」

 

二亜の言う通り、〈ニベルコル〉達も身動きが取れずに戸惑っている様子が見て取れた。

外掛主(ベルフェゴール)〉――【(リタロート)】とは、いわゆる〈封解主(ミカエル)〉――【(セグヴァ)】の範囲型と言っていいだろう。

士道は手をグーパーさせながら呟く。

 

「俺は動けるみたいだな」

 

「私とシン、狂三も動けるみたいだね。あとは六喰の魔王の権能によって動きを封じられてしまってるみたい」

 

士道、澪、真士、狂三の四人しか動けないという最悪な事態である。

一方、向こうはというと。

 

「⋯⋯ふむ。〈ニベルコル〉は使い物にならなくなってしまったが私は動けるようだね」

 

「私も問題ありませんね」

 

「私も動ける。これってウェストコットさんと澪亜の霊力を有してるから?」

 

「そうだね。〈封解主(ミカエル)〉と違って〈外掛主(ベルフェゴール)〉は敵味方関係なく効果を及ぼしちゃうから使い勝手が悪いんだ。けれど六喰を責めないであげて」

 

ウェストコット、エレン、アルテミシア、澪亜の四人と〈外掛主(ベルフェゴール)〉の影響を受けたのは〈ニベルコル〉だけという最悪な状況だった。

外掛主(ベルフェゴール)〉は効果が一定の範囲内に及ぶのなら六喰がその場から動くことはないだろう。

ウェストコットと澪亜の狂愛父娘は、澪と真士の純愛カップルが抑えるだろうが、エレンとアルテミシアを士道と狂三だけで抑えられる自信はなかった。

なにせ、〈外掛主(ベルフェゴール)〉は本体の狂三にこそ影響が無いものの、分身体には影響を及ぼしているため、実質分身体抜きで戦わねばならないという状況であの二人を相手取るのはキツするのだから。

ちなみに本体の狂三が〈外掛主(ベルフェゴール)〉の権能を掻い潜れているのは、二つの霊結晶(セフィラ)の欠片をその身に宿していたからだろう。

と、澪が優しく微笑み士道に言ってきた。

 

「大丈夫。君の『声』なら、彼女達に大きな力をもたらせるはずさ。魔王の権能だって打ち破れる――そうだろう?士道」

 

「⋯⋯!そうか!ありがとう澪!」

 

澪の言葉に、ハッとして我に返った士道はお礼を言ったのち、すうっと息を吸い込み。

 

【――頑張るんだみんな!魔王の力なんかに負けるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――⋯⋯ッ!!!】

 

破軍歌姫(ガブリエル)〉の『声』を纏わせた声援を送った。

士道の『声』が響き渡り、〈外掛主(ベルフェゴール)〉に動きを封じられていた真那やエリオット、精霊達は凄まじい力を得て【(リタロート)】を打ち破った。

 

「し、士道さんの愛が、す、凄いです⋯⋯!」

 

『士道くんの愛のパワーでよしのんふっかぁーつ!』

 

「士道の愛、たしかに受け取った」

 

「兄様パワー全快でいやがります!」

 

「ほう、やるじゃねえか五河少年!」

 

「おお!私も感じるぞ!シドーの愛のパワーとやらを!」

 

口々にそんなことを言って力を漲らせていく。

照れくさそうに頬を掻く士道。

てか俺の愛だの兄様パワーって何!?

士道の『声』は、他の者にも届いていた。

 

「⋯⋯あ、う⋯⋯主、様⋯⋯?」

 

万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉の権能によって心を殺されてしまったはずの六喰だった。

 

【――ッ!!六喰!?】

 

士道が驚きつつも『声』で六喰の名前を呼ぶと、六喰の第虚六領域(カイツール)の〈神威霊装・虚六番(ラシャー・ハペギアー)〉と〈外掛主(ベルフェゴール)〉に亀裂が入る。

まさか、俺の『声』なら六喰を正気に戻せるのか!?

そんな予感がした士道はありったけの『声』を上げて叫んだ。

 

【――戻ってこい!六喰ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ――⋯⋯ッ!!!】

 

士道の『声』に応えるように、六喰の『闇』の霊装が、魔王がひび割れて砕け散り――第六領域(ティファレト)の〈神威霊装・六番(エロハ)〉の霊装に、鍵の天使〈封解主(ミカエル)〉に戻った。

正気を取り戻した六喰は、〈封解主(ミカエル)〉――【(ラータイブ)】で『扉』を生じさせ、士道の傍に一瞬で移動してくる。

 

「⋯⋯すまぬ主様。どうやら正気を失っていたようじゃ」

 

「⋯⋯六喰!」

 

士道は六喰の身体を抱きしめた。

驚いたように目を丸くする六喰。

 

「ぬ、主様?」

 

「よかった⋯⋯!六喰が戻ってきてくれて!もし、あのままどこか遠くへ行ってしまったら俺は⋯⋯っ!」

 

「⋯⋯むん。大丈夫じゃよ主様。むくは主様を置いてどこかへ行ったりはせぬ」

 

泣きじゃくる士道を優しく抱きしめ返す六喰。

その光景を温かい眼差しと――僅かに嫉妬の色を混ぜて見つめる精霊達。

澪もホッと安堵の息を吐き、澪亜の方に視線を向けて。

 

「あ、ぐぅ⋯⋯ッ!!?」

 

頭を抱えて蹲っていた澪亜が映り、澪は目を丸くさせた。

澪真にも士道の『声』が届いている⋯⋯?

そう、たしかに士道の『声』は澪亜に――澪真に届いていた。

だが流石に不完全といえど始原の魔王の権能か、疑似魔王と違って澪真を元に戻すとまではいかないらしい。

いや、疑似魔王だからではなく――澪真の力だったから、士道の『声』が六喰を捕らえて離さなかった〈万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉の呪縛から解き放つことができたのかもしれない。

 

「⋯⋯イツカ、シドウ⋯⋯ッ!わたしに、何をした⋯⋯!?」

 

忌々しげに士道を睨みつけ、澪亜がそんなことを言ってくる。

驚いた士道だったが、チャンスとばかりにその『声』を澪亜の耳に響かせてやった。

 

【俺は別に何もしてないぜ?それとも――俺がお前の本当の〝父様〟だってことを思い出したのか?どうなんだ、澪真ッ!!】

 

「――⋯⋯ッ、わたしを、レマと、呼ぶなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――⋯⋯ッ!!!」

 

絶叫のようなものを上げながら、澪亜は左手を掲げてみせたあと振り下ろしながら言った。

 

「屠れ――〈虚無地獄(デミウルゴス)〉!!」

 

澪亜の呼び声と共に、更なる『絶望』を顕現させる。

それは天から『根』を生やし、地上に向けて『枝』を伸ばしていく天地がひっくり返ったような世にも奇妙でおぞましい『樹』だった。

その漆黒の大樹は、ウェストコットと真士の法の魔王〈永劫瘴獄(ベリアル)〉を思わせたが、それが真っ逆さまに生えているのはあまりにも歪な『樹』である。

新たな『絶望』の顕現に、士道達の顔が強ばる。

そんな中、澪亜が――澪真が澪にだけ聞こえるように、彼女の脳に直接声をかけた。

 

『――気をつけて母様。この疑似魔王は法の天使〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉と法の魔王〈永劫瘴獄(ベリアル)〉を合成させて新たに『創造』したものだから。その権能は――あらゆる条理を無に帰す、法を殺す能力だよ。この『樹』、『枝』、『根』にあらゆる力は意味をなさない』

 

「え?」

 

『でも、母様の天使なら防げるから。どうか守ってあげて、みんなを――()()()

 

『⋯⋯!⋯⋯うん。ありがとう、澪真』

 

澪がお礼を澪真の脳に直接言うと、澪真は優しげな微笑みを浮かべたのち――澪亜に人格が戻った。

ほんの一瞬だけ、士道の『声』が澪亜を澪真に戻れる機会を作ったのかもしれない。

 

「さあ、往こうか――〈虚無地獄(デミウルゴス)〉!」

 

澪亜の言葉に、〈虚無地獄(デミウルゴス)〉が蠢動して『闇』の『枝』と『根』が一斉に士道達に襲いかかる。

 

「止めて――〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉!」

 

澪の声に応えるように、〈輪廻楽園(アイン・ソフ)〉が蠢動して『光』の『枝』と『根』が〈虚無地獄(デミウルゴス)〉の『闇』の『枝』と『根』を抑えつけていく。

澪亜は澪を睨みつけて叫ぶ。

 

「邪魔しないで母様ッ!」

 

「そうはいかないよ。他ならぬ君に――澪真にみんなを任されたのだからね」

 

『!!』

 

澪の言葉に、驚愕する士道達。

いつの間にそんなことになっていたのか、という風に。

澪亜は不可解そうに顔を顰めた。

 

「母様までわたしを、またレマって呼ぶの?⋯⋯もういい、母様だから無傷で取り戻そうと思ったけれど――」

 

澪亜の全身が『闇』と――『光』の混ざった『混沌』に包み込まれると、それが晴れて変貌を遂げた澪亜の姿が露になる。

『光』と『闇』が混ざってる髪色と霊装。

白銀の右眼、漆黒の左眼。

光り輝く六枚の右翼、暗く輝く六枚の左翼。

正しく『混沌』の疑似精霊の顕現であった。

 

「本気で母様を奪いにいくから、手足の一、二本は覚悟してね?」

 

澪亜がそう言った途端、彼女を包み込む『光』と『闇』の入り交じった『混沌』の霊力が膨張すると共に、〈万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉と〈虚無地獄(デミウルゴス)〉の帯びていた『闇』は『光』と混じって『混沌』の霊力を纏った。

『混沌』の霊力を纏った二体の疑似魔王の力が増して、拮抗していた澪の二体の天使を圧倒していく。

 

「く⋯⋯!」

 

澪は必死に澪亜の攻撃を凌いでいくが、捌き切れずに『混沌』の粒が士道達に降り注いできた。

 

【みんな、死んでもそれには当たるなッ!!】

 

士道の『声』が真那やエリオット、精霊達に強化(バフ)をかけていく。

士道の『声』で強化(バフ)をかけられた真士と澪もパワーアップしてウェストコットの魔王を、澪亜の疑似魔王を押し返していく。

澪亜は冷静な調子で左手を突き出してその名を唱えた。

 

「〈滅誘歌姫(リリス)〉――【夜想曲(ノクターン)】」

 

左翼の一番上が暗く輝き、『夜』を思わせる『音』を響かせた。

それは士道の『声』がかけた強化(バフ)を打ち消すほどの効果があった。

夜想曲(ノクターン)】とはいわゆる弱化(デバフ)の類のようだ。

士道の強化(バフ)を澪亜の弱化(デバフ)で打ち消されたため、本来の力に戻されて動きが鈍くなる。

その隙に逃げ遅れた精霊達に『混沌』の粒が降り注ぐ。

 

「――マリア!」

 

「――〈氷結傀儡(ザドキエル)〉!」

 

『〈颶風騎士(ラファエル)〉!』

 

二亜が〈アリア〉で、四糸乃が〈氷結傀儡(ザドキエル)〉の氷の壁で、耶倶矢と夕弦が〈颶風騎士(ラファエル)〉の風で防ごうとするが、澪亜の疑似魔王〈万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉の『混沌』の粒をどうこうすることなどできやしなかった。

『混沌』の粒に触れた〈マリア〉は反転して〈ニベルコル〉に変わり、氷の壁と風は霧散して消滅する。

そして二亜、四糸乃、八舞姉妹は為す術なく『混沌』の粒に当たり次々と反転してしまう。

士道はすかさず〈破軍歌姫(ガブリエル)〉の力を纏わせた『声』で四人の精霊を正気に戻そうとした。

 

【戻ってこい!二亜!四糸乃!耶倶矢!夕弦!】

 

「やらせないよ――〈虚無地獄(デミウルゴス)〉」

 

士道の『声』が四人の精霊の正気を取り戻させようとするが、澪亜の〈虚無地獄(デミウルゴス)〉の『混沌』の『根』が四人の精霊の身体に巻きついた。

これを意味するのはただ一つ――士道の『声』による力を無に帰されたということ。

『混沌』の『根』が巻きついている限り、四人の精霊に士道の『声』は届かないだろう。

くっ、と悔しげに顔を歪める士道。

だが『混沌』の『根』が巻きついている以上、反転した四人の精霊もまた魔王の力を使えないことを意味しているため味方が敵として立ちはだかることはないのは幸いか。

もっとも、澪亜にはその四人の精霊の魔王の力を振るえるから関係のない話ではあるが。

 

「さて、一気に畳み掛けるとしようか」

 

そう言った澪亜が両手を広げると、混沌霊装(カオス・ドレス)から『混沌』の帯が三本伸びてきてウェストコット、エレン、アルテミシアの胸を貫いた。

 

「ほう?」

 

「なんと!」

 

「これは⋯⋯!」

 

ウェストコット、エレン、アルテミシアも澪亜のように纏っていた『闇』の霊力が『混沌』に変わり凄まじい力を帯びる。

 

「ふはははははは!まだこれほどの力を隠し持っていたのかレア!――〈永劫瘴獄(ベリアル)〉!」

 

「ぐ、お⋯⋯ッ!!?」

 

ウェストコットの〈永劫瘴獄(ベリアル)〉も『混沌』の霊力を纏い、『混沌』の『枝』と『根』が、真士の〈永劫瘴獄(ベリアル)〉の『闇』の『枝』と『根』を圧倒し始めた。

 

「驚くほどに身体が軽いですね。エリオットと〈プリンセス〉の動きがゆっくりに見えてしまうほどです」

 

「なんだと!?」

 

「おいおいマジかよ!流石にこいつはやべえな⋯⋯!」

 

『混沌』の霊力を纏ったエレンの段違いな動きに防戦一方になってしまう十香とエリオット。

 

「まだ強くなれるとか、本当にデタラメな子だね」

 

「く⋯⋯っ!」

 

「ち――ッ!」

 

『混沌』の霊力を纏ったアルテミシアもまた段違いな動きを見せ、次第に追い詰められていく折紙と真那。

一気に戦況が不利になってしまい、士道は何ができるのか高速で思考を巡らせて探そうとするが見つからない。

そうしている間にも、『混沌』の粒が精霊達に襲いかかってくる。

精霊達は逃げ切れないと判断して迎え撃つことにした。

 

「――〈灼爛殲鬼(カマエル)〉!」

 

「〈封解主(ミカエル)〉――【(セグヴァ)】!」

 

「――〈贋造魔女(ハニエル)〉!」

 

「〈破軍歌姫(ガブリエル)〉⋯⋯!」

 

琴里は〈灼爛殲鬼(カマエル)〉の炎で焼こうとするが。

六喰は〈封解主(ミカエル)〉で『閉じ』ようとするが。

七罪は〈贋造魔女(ハニエル)〉で変身させようとするが。

美九は〈破軍歌姫(ガブリエル)〉の『音』の壁で防ごうとするが。

『混沌』の粒にはまるで通用せず、炎と『音』の壁は霧散し、『閉じ』ることも変身させることもできずに琴里達にも降り注いでしまう。

そして『混沌』の粒に当たってしまった琴里、六喰、七罪、美九の四人も次々と反転してしまった。

 

【琴里!六喰!七罪!美九――⋯⋯ッ!!!】

 

「――〈虚無地獄(デミウルゴス)〉」

 

士道の『声』もやはり澪亜の〈虚無地獄(デミウルゴス)〉が無に帰して琴里達に届かない。

これで八人の精霊が〈虚無地獄(デミウルゴス)〉の『混沌』の『根』に捕まり、反転したまま気を失っている状態だった。

ウェストコット達の更なるパワーアップで真士、折紙、真那、エリオット、十香がやられるのも時間の問題か。

狂三も『混沌』の粒のせいで分身体を使うに使えない状態の中、なんとか〈ニベルコル〉を抑えているものの、数で圧倒的不利なためそう長くも続くまい。

澪も必死に澪亜の二体の疑似魔王を抑えようとしているものの、『混沌』の『枝』や『根』の攻撃を受けて霊装は切り裂かれ身体の至るところを鮮血で染めていった。

絶望的な状況の中、士道は諦めそうになってしまう。

『絶望』の表情を見せる士道を、澪亜は愉快そうに見つめて笑った。

 

「あはははははは!どうかねイツカシドウ?これがわたしを謀った罰さ。ねえ?今どんな気分?大好きな精霊達を奪い取られて『絶望』した?」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯、」

 

今の士道に、返す言葉は一つもなかった。

俺にはもう何もできないのか⋯⋯?

みんなのために俺にできることはもう何もないのか⋯⋯!?

澪亜は細く息を吐き、士道に死刑宣告する。

 

「さて、これで終いだ。さらばだ――イツカシドウ」

 

澪亜は両手を前に突き出してその名を唱えた。

 

「〈万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉――【蕾砲(ヘネツ)】」

 

すると虚空から手の平大の極死の蕾が顕現しては開花し、その中心から『混沌』の死の光線が撃ち出された。

 

「――ッ!!?」

 

士道はそれに似たものを知っていた。

それは時間遡行する前の世界で、澪が十香に向けて放ったものと瓜二つのものだったのだから。

如何に一〇の霊結晶(セフィラ)をこの身に宿している士道であっても、アレを浴びて無事でいられるはずがなかった。

 

「「「「士道⋯⋯!」」」」

「兄様⋯⋯!」

「士道さん⋯⋯!」

「シドー⋯⋯!」

 

悲鳴のような声を上げる澪、真士、折紙、エリオット、真那、狂三、十香。

今から向かったところで間に合わないし、何よりもそれをウェストコット、〈ニベルコル〉、エレン、アルテミシア、そして澪亜の二体の疑似魔王がさせない。

士道が『混沌』の【蕾砲(ヘネツ)】に飲み込まれそうになった――その時。

 

 

――まだ、諦めるのは早いよ――士道。

 

 

そんな少女の優しげな声と共に、士道の全身を無数の霊力が包み込んだ。

 

「え?」

 

士道は間の抜けたような声を洩らす。

それと同時、『混沌』の【蕾砲(ヘネツ)】が光り輝くオーロラのような不思議な色を帯びた霊力の膜に衝突して――霧散した。

 

「なに?」

 

澪亜は不可解とばかり顔を顰めて士道を――否、士道と()()()()()を睨みつける。

士道は目の前に突如現れた六人の少女の背を見つめて、唖然とした。

一人目は、緩いウェーブのかかった薄桃色の髪のセミロングと青と白を基調とした聖母のような霊装を纏った少女。

二人目は、その少女より少し濃い桃色の長髪と赤と白を基調とした霊装を纏った幼い少女。

三人目は、黒鉄色の長髪を一部金色に染めた、全身にコードを巻き、コードで編まれた翼を広げた霊装を纏った少女。

四人目は、アッシュブロンドの長髪と、どこか〈フラクシナス〉を彷彿とさせる霊装を纏った少女。

五人目は、サイドテールに括った薄金色の長髪と黒を基調とした金のラインが入った霊装を纏い、背に大きな羽を広げた少女。

六人目は、赤紫色の長髪と漆黒のドレスの霊装と背に葡萄の果実が実ったリースのような輪がある少女。

四人の疑似精霊と二人の人工精霊。

士道の危機を救ったのはそんな少女達だった。

 

「⋯⋯っ、凜祢!凜緒!鞠奈!鞠亜!万由里!蓮⋯⋯!」

 

「うん、私だよ士道――って、凄い顔してるけど大丈夫!?」

 

「パパはなきむしさんだね」

 

「⋯⋯別にあんたのために来てあげたわけじゃないわよ」

 

「などと言ってますが、本当はいてもたってもいられなかった心配性の鞠奈なのでした」

 

「感動の再会に浸るのはまたあとでになりそうね、士道」

 

「やれやれ、悪役の自分が正義の味方をする日が来ようとはね」

 

泣きながら士道に名前を呼ばれて、園神凜祢、園神凜緒、或守鞠奈、或守鞠亜、万由里、蓮が振り返りながらそう返してくる。

澪亜は眉を寄せながら言った。

 

「ああ、そういえば君達もいたね。まあ、邪魔をするのなら纏めて始末するだけの話だがね」

 

邪悪な笑みを浮かべる澪亜。

士道は袖で涙を拭うと、澪亜を見やる。

 

「悪いがそんなことは俺がやらせねえよ。これ以上、お前に俺の大切な精霊を奪わせてたまるか!」

 

士道の言葉に応えるかのように、士道の全身を纏った光り輝くオーロラの霊力が膨張すると、手を掲げてその名を口にする。

 

「――〈凶禍楽園(エデン)〉!」

 

士道の呼び声と共に、彼の背後から天を衝く巨大な塔が顕現した。

〝世界を一からやり直す〟権能を有する広域結界型の疑似天使〈凶禍楽園(エデン)〉。

だがそれだけではない。

士道は手を前に突き出して告げた。

 

「来い――〈ガーディアン〉!」

 

士道の声に応えるように、白や赤、黒の外套を纏った天使の如き翼を持った存在が次々と召喚されていく。

その姿形は凜祢に似ているものの、個々に意思はなく命じられたまま行動する存在である。

士道は〈ガーディアン〉達を見やって言う。

 

「みんなの援護に行ってくれ」

 

士道の言葉に、〈ガーディアン〉達は頷き十香とエリオット、折紙と真那、狂三の下に向かっていった。

澪亜は〈凶禍楽園(エデン)〉を見つめて言った。

 

「〈凶禍楽園(エデン)〉の権能は、世界を一からやり直す能力か。ならばイツカシドウを殺せば、やり直しが発動してイツカシドウの死はなかったことになり〈凶禍楽園(エデン)〉を顕現させた瞬間に時が巻き戻る」

 

「ああ。これでお前は俺を殺せない。〈万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉は封じてやったぞ」

 

「そうだね。けど――〈虚無地獄(デミウルゴス)〉ならどうかな?殺す対象が『法』だから、〈凶禍楽園(エデン)〉の権能も無に帰せると思わないかね?」

 

「⋯⋯くっ!」

 

澪亜の言葉に、士道は顔を歪めた。

澪ですら追い詰められるほどの疑似魔王だ、士道達にどうこうできるものではないだろう。

凜祢と凜緒の疑似天使が通用しないのであれば、鞠奈、鞠亜、万由里、蓮の力も通用するとは思えなかった。

せっかく凜祢達が力を貸してくれたのに、もはやここまでか。

 

「それじゃあ、これで本当に終いだ」

 

澪亜は〈虚無地獄(デミウルゴス)〉の『混沌』の『根』を動かして士道の胸を貫こうとして。

 

「――〈鏖殺公(サンダルフォン)〉!」

 

聞き覚えのある声の少女が、知っている剣の天使〈鏖殺公(サンダルフォン)〉の名を叫びながら――〈虚無地獄(デミウルゴス)〉の『混沌』の『根』を切り裂いた。

 

「え?」

 

「なに?」

 

士道は目を見開き驚いて、澪亜も顔を歪めて乱入者を睨みつける。

あらゆる条理を無に帰す〈虚無地獄(デミウルゴス)〉の『根』を切り裂くなど、如何に〈鏖殺公(サンダルフォン)〉の権能であってもそれは不可能のはずだ。

何せ〈虚無地獄(デミウルゴス)〉の権能が、〈鏖殺公(サンダルフォン)〉の権能をも無に帰すのだから。

だがそうならなかったということは一つしかない。

その乱入者は――()()()()()()()()()()()ということになる。

夜色の長髪を靡かせた、第一〇領域(マルクト)の〈神威霊装・十番(アドナイ・メレク)〉の霊装を纏って、剣の天使〈鏖殺公(サンダルフォン)〉を手にした少女が口を開いた。

 

「無事かシドー!――ぬ?澪真が心配で追ってきたのだが⋯⋯これは一体どういうことなのだ?」

 

澪真がやってきたもう一つの世界、そこから来た――もう一人の夜刀神十香だった。

 

 

 

 

 

時を少し遡り、凜祢達の力で澪亜の〈万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉――【蕾砲(ヘネツ)】を凌いで士道を守ってみせた光景を目の当たりにして、狂三は安堵の息を吐いた。

まさか彼女達が現れて守ってくれるという展開は予想外だった。

ならばわたくしのやるべきことは、〈ニベルコル〉を始末して士道さんの援護に回らないとですわね。

とはいえ、〈万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉の『混沌』の粒が絶えず周囲を舞っているため、下手に【八の弾(ヘット)】を使って分身体を作ったとしても『混沌』の粒に当たった瞬間に反転してしまいかねない。

一体どうすれば――

 

「何よそ見してんのよあんた!」

 

「分身体抜きのあんたなんか敵じゃないんだから!」

 

「きゃははははは!死・ねぇぇぇぇぇッ!!」

 

「ち⋯⋯!」

 

〈ニベルコル〉が紙飛行機型の〈神蝕篇帙・頁(ベルゼバブ・イェレッド)〉を狂三に向かって飛ばしてくる。

狂三は〈刻々帝(ザフキエル)〉――【一の弾(アレフ)】で自分に加速(バフ)をかけて高速で飛び回り、〈神蝕篇帙・頁(ベルゼバブ・イェレッド)〉を躱して行くが。

 

「く⋯⋯!」

 

如何せん数が多すぎて躱すに躱し切れず数発掠ってしまう。

二つの霊結晶(セフィラ)の欠片を有しているとはいえ、ウェストコットのパワーアップは当然、〈ニベルコル〉にも影響を及ぼしている。

事実、〈ニベルコル〉も『混沌』の霊力を纏っているし、〈神蝕篇帙・頁(ベルゼバブ・イェレッド)〉の威力と速度も段違いだった。

ただ、如何に『混沌』の霊力を纏っていようとも〈ニベルコル〉は澪亜の〈万象祭壇(アイン・ソフ・コーシェク)〉の『混沌』の粒には耐性があるわけではなかった。

故に狂三は〈ニベルコル〉から逃げると見せかけて、『混沌』の粒の方に誘き寄せて消滅させる手段を取っていたのだが、その手はもう通用しないため現在は他の手を考えながら逃げ続けているわけなのだが。

 

「⋯⋯え?」

 

突如、無数の霊力の弾が飛んできて〈ニベルコル〉を撃墜していった。

驚く狂三の目の前に、幾体もの〈ガーディアン〉が現れた。

 

「⋯⋯あら、あら。これは――凜祢さんの〈ガーディアン〉、ですわね」

 

「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」

 

〈ガーディアン〉は無言で狂三を見つめた(?)のち、〈ニベルコル〉に向かって霊力の弾を撃ち出して次々と撃墜していく。

 

「は、はあ!?ちょっと何なのよあんたら!?」

 

「あと少しでその女をやれたってのにぃ!」

 

「邪魔すんじゃないわよぉぉぉぉぉ――⋯⋯ッ!」

 

〈ニベルコル〉の〈神蝕篇帙・頁(ベルゼバブ・イェレッド)〉と、〈ガーディアン〉の霊力の弾が激突する。

お陰で狂三は落ち着いて作戦を練ることができる。

だが、その一瞬の気の緩みが、背後から降り注いできた『混沌』の粒に気づくのに遅れてしまう要因を作ってしまった。

狂三はハッとして振り返った時にはもう、眼前に『混沌』の粒が迫り躱す猶予さえなかった。

 

「しまっ――」

 

狂三の身体に『混沌』の粒が触れようとしたその時。

 

 

「〈狂々帝(ルキフグス)〉――【巨蟹の剣(サルタン)】」

 

 

そんな言葉を発した少女が『混沌』の粒を、()()()()()()()()()

澪亜の疑似魔王の力を切り裂くということは、その者はおそらく澪亜の霊力を有しているのだろう。

だが狂三を驚かせたのは、そこじゃなかった。

その声は、かつて狂三が殺してしまった親友が発していたものと同じだったのだ。

そう、その有り得ないはずの声が狂三のすぐ傍から聞こえたのである。

まさ、か⋯⋯いえ、そんなはずは⋯⋯!

書の天使〈囁告篇帙(ラジエル)〉で調べても、崇宮澪真が彼女に関わった記述は一切なかったのだから。

だがもし、もしその彼女が現在()ではなく――()()()()来たのであれば、『識る』ことができなかったのも理解できる。

狂三はゆっくりと少女の声がした方に向き直り――

 

「――⋯⋯っ、()()⋯⋯()()⋯⋯?」

 

「はい。間一髪でしたね――()()()()

 

栗色の長髪をおさげに束ねた少女――山打紗和が穏やかな表情を浮かべながらそこにいた。

狂三の見知らぬ格好を、第虚三領域(シェリダー)の〈神威霊装・虚三番(ラシャー・ピガル)〉の霊装を、真っ白な軍服を纏った格好で。

空間の魔王〈狂々帝(ルキフグス)〉の軍刀(サーベル)と短銃を手にして。

狂三のような左眼の金色の時計盤のように、左眼に薄青色の時計盤が刻まれていた。

そして、澪真の手によって『創造』された、山打紗和の魂と記憶を持った――疑似精霊として。




前話で伏線のようなものを用意して、この回で凜祢達降臨!活躍は次回になりますが!
ただしオリ主ちゃんのチート疑似魔王達をぶちのめす役は最初から決まってて、狂三&紗和の親友コンビと並行世界十香なんですよね。
まあ、触れたら即死or即反転!とどんな力も無効化!な鬼畜疑似魔王コンビはオリ主ちゃんの霊力なしだと攻略不可なクソゲーですからね(白目)
次回で澪真トゥルーエンドを終わらせられるように頑張ります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。