「………え?」
澪真は、困惑した。
正体不明のモザイク人間(?)の言葉を聞いて。
モザイク人間は確かに言ったのだ。
私の力を使う不思議な精霊は、と。
それを意味するのは一つしかない。
「………母様?」
そう、澪真の力は、彼女の母親の力。
それを自分の力と称したということは、つまり澪真の母親となる。
母様と呼ばれたモザイク人間は、モザイク越しに何らかの動作をしたのち、
【ふむ…君に母様呼ばわりされるとはね。私は君に会うのは初めてなのだけれど】
「そうだけど、レマの力を自分のものだって言うんだもん!母様じゃないわけないんだよ?」
えっへん、と自信満々に胸を張る澪真。
モザイク人間は、やれやれ、といった調子でモザイク越しに何らかの動作をしたのち、
【君の言い分がよくわからないのだけれど………一体君は、何者なのかな?】
モザイク人間のその問いに、澪真は笑顔で答えた。
「レマは10年後の未来から来た、父様と母様の娘なんだよ」
【―――!?】
澪真の言葉に、モザイク人間は身体を震わせた。
10年後の未来から来た、にではない。
彼女に、父親がいるということにだった。
モザイク人間は暫く無言で澪真を見つめ、こう言った。
【10年後の未来から来た精霊、か。君の名前と、両親の名前を教えてくれるかな?】
半信半疑ではあるが、聞かずにはいられなかった。
もし私の力が、澪真の使った力が、自分の母親のものだというのなら。
その母親の名前は―――
「うん。レマの名前は、
【………え?】
「そしてレマの大好きな母様の名前は、崇宮
【………っ!?】
「それでレマの大好きな父様の名前は―――」
【―――シン、なのか?】
澪真が言うよりも先に、モザイク人間が答えた。
傍から聞いたら、答えには聞こえないが、澪真はすぐにわかった。
澪真はパアッと明るい顔をしたかと思えば、モザイク人間に抱きついた。
「やっぱり母様だった!父様をシンって呼ぶのは、レマの母様しかいないからね」
【………本当に、私はシンと………?】
「うん」
【君は、未来の………私とシンの娘………?】
「うん!」
【そう、か………】
彼女の存在が、自分の悲願の成就を意味する。
自然と笑みが零れた。
モザイク人間―――改め澪は、未来の娘、澪真の頭を優しく撫でた。
澪真は嬉しそうに笑って、澪をギュッと抱きしめた。
それからジッーとモザイクのままでいる澪を見つめて訊ねた。
「どうして母様は、正体を隠すような真似をしているの?」
【え?………ああ、すまない。訳あって今は『私』を見られるわけにはいかないんだ】
「そうなんだ。10年前の母様の顔が見れないのは残念だけど、レマは平気なんだよ」
【いや、私は精霊なのだから歳はとらないだろう?】
苦笑する澪。
精霊は歳をとらないらしい。
澪真の場合は、父親のシンが人間だからか、歳をとるらしい。
今度は澪がジッーと澪真を見つめて訊ねた。
【君―――いや、澪真は何をしに10年前に、ここへ来たのかな?】
「レマの目的?」
【うん】
「レマは友達を作りに来たんだよ」
【友達?】
「うん!レマのいた世界には、レマと母様と父様しかいないからね」
【………ぇ?】
澪は、一瞬聞き間違いかと思った。
澪真は言った。
10年後の世界には、彼女とその両親しかいないということを。
逆を取れば、三人以外存在しないということだ。
それはつまり、全てを犠牲にして幸せを手に入れたことを意味していた。
【………っ、】
シンを■■■■為とはいえ、全てを犠牲にして幸せを掴んでいる自分に嫌気をさした澪。
過去にも沢山の犠牲を出してきた澪だが、全人類を犠牲はやりすぎと思えた。
全人類………まさか、シンの■すらも?
そう思ったら急に胸が苦しくなってきた。
「母様………?」
【え?ああ、すまない。なんでもない】
「………?」
不思議そうに澪を見つめる澪真。
澪は迷っていた。
澪真の話がぶっ飛びすぎて、本当に信じていいのか、分からなくなってきていた。
澪真の話が本当ならば、澪はこのまま計画を進めてしまったら、同じ結末を迎えることになるだろう。
澪真の話がでっち上げだったり、未来の娘を騙った偽りの存在ならば、危険なのは確かだった。
澪は暫くの間無言ののち、澪真をどうするのか決めるのだった。
①怪しすぎるから隣界に幽閉する。
②もう一人の私に預けて様子を見る。
③計画に協力してもらう。
次回予告
バッドエンドルート
「お前は………澪真、なのか!?」
「シ、シドー―――!!!」
「屠れ―――<
【ああ、これが………身勝手な私が辿る、末路か】