なお、このSSに未登場の原作キャラは出ませんので悪しからず。
【………澪真】
「なに?」
澪真は笑顔で見つめてくる。
対照的に、澪は哀しげな表情を見せると、澪真の頭に手を翳した。
【―――すまない】
「………え?」
瞬間、澪真は意識が遠のいたような感覚に襲われた。
「………?」
次第に意識が薄れてゆく。
一体澪が何をしたのか分からない。
そのまま眠ってしまう気がした。
でも、このまま澪の腕の中で眠るのも悪くない、と思ったその時。
【私は君の言葉を信じられないよ】
「………っ!?」
【だから君は、私の悲願が成就するまで、眠っていてくれ】
「―――母っ、様………っ、」
澪の聞きたくなかった言葉に、澪真は絶望した。
信じられない、と。
澪は、澪真の言葉を受け入れなかった。
澪真は涙で視界を滲ませたのち、深い眠りについた。
【………っ、】
澪は、涙を流しながら眠りについた澪真を、申し訳なさそうに見つめたのち、彼女を隣界へと跳ばした。
本当は信じてあげたかった。
でも、不確かな存在を信じて、自分の計画に狂いが生じてしまうのを恐れた澪は、澪真を隣界に幽閉するという最低なやり方に出てしまった。
【本当に、すまない―――澪真】
最後に虚空へと消えた澪真に、謝罪の言葉を述べた澪も、虚空へと溶け消えた。
澪のこの選択が、最悪の事態を招くことになるとは、この時は思いもしなかった。
澪真が隣界に眠らされてから数日が経ったある日。
五河士道がとある目的で■■とデートをしていた。
弱気な発言をする■■に、士道は言った。
「―――お前を肯定するッ!」
握れ、と■■に手を伸ばす士道。
その手を取ろうと■■は手を伸ばして―――
ビシッ
世界に、亀裂が走った。
『………え?』
士道が、■■が。
■■を撃ち殺そうとする折紙と他の空飛ぶ人間達も。
その音に驚いて、空を仰いだ。
ビシビシビシッ
更に亀裂が走る。
そして―――ガラスの割れるような音が響き渡ると、虚空に謎の空間が現れ、そこから深淵が覗いた。
「………なんだ、あれ!?」
士道が叫ぶ。
空間震とはまるで違う、初めての現象。
そして、その深淵から悍ましい気配を感じた。
と、深淵から、真っ黒い【枝】が出現した。
その上には、誰かが乗っているような気がした。
「あれは………澪真、なのか!?」
「何!?それは本当か、シドー!」
その誰かが、澪真のような気がしたのだ。
あの時の銀髪は、闇色に染まり切っており。
希望に満ちていたその瞳は、真逆の絶望し切った瞳に変わっていた。
更には見覚えのない、真っ黒い【枝】と【根】が深淵から次々と現れては世界に広がっていく。
と、不意に澪真と目が合った。
「………ッ、澪真!俺だッ!!分かるか!?」
「……………」
返事はない。
代わりに―――真っ黒い【枝】が士道達に襲いかかった。
「―――ッ、■■ッ!!」
士道は叫び、■■を突き飛ばす。
霊装を纏わない■■の体は、容易く後ろに転がる。
その数瞬後、士道の胸を、真っ黒い【枝】が貫いた。
「……………あ」
あまりにも呆気ない最期を迎える士道。
この【枝】は、あらゆる力を無にするものらしい。
士道の中にある<■■■■>の力も例外ではなかった。
それを知らずに起き上がる■■。
怒りながら士道に文句を言おうとして、
「な、何を―――え?」
胸を【枝】に貫かれた士道を見て。
「シ、シドー―――!!!」
絶叫する■■。
【枝】に貫かれて動かなくなった士道。
それを見て、■■は悲しみに囚われる。
たった一人、自分を肯定してくれた彼の死は何よりも耐え難いものだった。
そして何より―――父様と士道を慕っていたはずの澪真が、彼を殺してしまったことに困惑すら覚えた。
やがて■■は、怒りを爆発させて澪真を睨みつけるが、
「……………え?」
臨戦態勢に入る前に、■■も【枝】に、胸を貫かれた。
「………シ、ドー………っ、」
■■も全ての力を無にされて、何も出来ずに、士道に手を伸ばすも届かず、命を落とした。
そこで、澪真は気がついた。
ほとんど無意識に伸ばした【枝】が。
貫いていたことに。
「………ぁ、」
最初に小さな声が洩れて。
「あああああああああああああああ―――――!!!」
慟哭した。
どうして自分はあの二人に気づけなかったのか。
どうしてあの二人を殺してしまったのか。
理解出来ずに、ただ泣き叫んだ。
そこへ、
『化け物めッ!!』
空飛ぶ人間達の罵倒と、無数のミサイルが飛んで来た。
しかしそんな攻撃、通るわけもなく、【根】に阻まれたミサイルは力を無にされ、ただ地に落ちていく。
『なっ!?』
澪真の見たことない不可思議な力に愕然とする空飛ぶ人間達。
そんな彼女達に、全てに絶望した澪真がその名を呼んだ。
「屠れ―――<
真っ黒い【枝】と【根】が蠢動。
それらは空飛ぶ人間達を一人残らず貫いていった。
彼女達の纏う
そして、一瞬にして同士を殲滅されて固まっていた折紙の胸にも、<
それから暫く、無差別に全てを蹂躙していた<
【―――<
対極の絶対の力を纏った<
だが<
また<
お互いの力が同格なのだろう。
【ああ、これが………身勝手な私が辿る、末路か】
澪がそう言いながら、澪真に歩み寄ってきた。
すると、澪はモザイクを消して髪の長い少女の姿を露にした。
「………母、様………っ、」
「すまない、澪真。君を信じてやれずに、隣界に閉じ込めてしまって」
謝りながら、澪は闇色に染まり切った澪真を抱き締める。
澪真も、澪の温もりに涙を流しながら抱き締め返した。
この温もりは、あの時の冷たさを感じなかった。
やっと、認められた気がしたからだった。
だが、時既に遅かった。
「………あれ?」
澪真の体が、光の粒に変わり始めた。
「澪真、消えてしまうのか………?」
「………そうみたいだね………なんで?」
自分が消える原因が分からず、困惑する澪真。
澪は、その意味を理解したのか、下方に目を向けて、
「………シンを殺してしまったのが、原因だね」
「シンって………え?」
澪真も、士道に目を向けて、
「やっぱり父様は、レマの父様だったの?」
「ああ。彼はシンだよ」
澪が頷くと、澪真の目から滂沱の如く涙を流した。
この時、忘れていた母親の言葉を思い出した。
五河士道に恋をしてはいけない。
それは過去の父親に恋をするなという意味だったのだ。
なら、その父親を殺したのだ。
消えるのは、当然の報い。
「澪真。消える前に、私の願いを聞いてくれるかな?」
「………え?」
唐突な澪の発言に、驚く澪真。
一体どんな願いだというのか。
澪は目を伏せて言った。
「最後まで身勝手ですまない。私は、シンのいない世界で生きていけないんだ。だから―――」
更に胸に手を置いて。
「私を………殺してくれ」
「―――ッ!!?」
それは、あまりにも残酷な願いだった。
父親だけでなく、母親も手にかけろというのだ。
子である澪真には、とても辛いものだった。
けれど、
「それが、母様のお願いなの?」
「ああ」
「本当に、後悔しないの?」
「ああ。むしろ今、君に消されない選択の方が、後悔しかないよ」
「………そう、なんだ」
母親がそれを望んでいるのなら、その願いは叶えてあげたい。
だから、澪真は躊躇わなかった。
「わかったんだよ。母様がそれを望むのなら、レマはやるよ」
「………すまない。私の願いを聞いてくれてありがとう、澪真」
そう言って、澪は<
そして、澪が澪真から離れようとしたが、澪真はさせまいと澪の胸に飛び込んだ。
「………え?澪―――真………っ、」
澪真は澪に抱きついたまま、<
それから笑って、
「どうせ、死ぬなら………母様と一緒が、いいん………だよ」
「澪、真………」
消えるのが必然なら、母親と一緒がいい。
澪真の、最後のわがままだった。
澪は、そんな澪真を愛おしく思い、残っているはずのない力を最後に振り絞って抱き締め返す。
澪真は満面の笑みで告げた。
「―――ずっと、一緒………だよ?」
「………ああ。シンも、入れて、ね。………ずっと………永遠、に」
その言葉を最後に、澪と澪真は絶命。
その後、澪真は完全に光の粒に変わってこの世から消滅していった。
三人はこれからも共にいることだろう。
死後の世界にて、永遠に………
次回予告
BADEND回避ルート
②もう一人の私に預けて様子見する。
もう一人の私と澪に言われて跳ばされた先にいたのは、眠たげな顔をした女性がいる■■■■■■の中だった。