巨影を知らない都市 作:ギガンティック芦沢博士
デストロイアから逃れた後、大塚の指示によって謎のUFOの撮影に赴いた主人公たち。
UFOの正体は分離状態のキングジョーのパーツだった。
主人公たちはキングジョーの攻撃を躱し続けるが、巻き込まれそうになった別の車を庇ったため、危機に陥る。
その窮地を救ったのは、五年前にも姿を見せたウルトラセブンだった。
キングジョーを追ってセブンが飛び去った後、クラシックカーのドアを開けて二人の安否を確認する。彼らは両名とも、医者のような白衣を着ていた。
「おい、大丈夫か!」
「う、うう」
呻き声を上げて後部座席の男が目を覚ます。
「ど、どうなったんだ……」
「キングジョー……あー、あのUFOみたいな奴にやられたんだ。大丈夫、もう飛んで行ったよ」
「そうか……その前に追突されたような気も……」
「大丈夫そうだな! じゃあ救急車は呼んでおくから! それじゃ!」
「カメさん?」
責めるような口調のユーコにこっそり返す。
「しょうがないだろこう言うしか! デッドゾーンに入ってたので、なんて通じるか!」
「それはそうですけど……」
彼らの死角になるところでユーコに変身してもらい、とんずらをここうとした俺に、目覚めた男の鋭い声がかかる。
「いや、確かにぶつけられた。その車だ。あんただ」
彼はよろける足で必死に車から這い出し、俺を指さした。気圧された俺は乗り込もうとした体勢で硬直してしまう。
「あー、なんだ、その」
「いやいい。あれのおかげで、助かった節もある。しかしこのまま、行かすわけにはいかない。条件がある……」
「……それは?」
彼は後部座席奥からトランクケースを必死に持ち出し、息を切らして座り込んだ。
「後ろの、トランクを開けてくれ」
言われるがままへこんだトランクを開くと、そこには長方形の大きなケースが入っていた。
「開けても?」
「ああ、面食らわないでくれ」
その言葉を受け恐々と留め具を外すと、中には長い円筒状の……有り体に言えばバズーカ砲にしか見えない物が収められていた。
「こ、これは?」
「見ての通りだ。肝心なのは、こいつだ」
彼が持っていたトランクが開くと、数発のロケット弾が姿を見せた。嫌な汗が流れて止まらない。
「誤解しないでくれ。これは、ライトンR30爆弾。あのキングジョーを倒せる、唯一の手段だ」
「キングジョーをって、あんた、あれを知ってるのか」
「詳しい話は省く。あんたにこれを託すから、キングジョーに撃ち込んでくれ」
危ない武器商人ではなくて一安心だったが、頼まれた内容はそれ以上に厄介なものだった。
「俺が軍人に見えるか? なんの説明も無くそんなこと」
「説明書が入っている。意外と簡単だ」
そんな無茶な、と思っていると、彼は脱力してぐったりと俯いた。慌てて近寄って片膝を突く。
「頼む、セブンでも奴には敵わない。私たち、人間の手で……」
そう言ったきり、彼は気を失ってしまった。脈拍などは正常なので、回復体位をとらせる。こうして俺の手に残されたものは、まるで非現実的な超兵器のみ。
「カメさん、どうするんですか?」
「……こうなったらもう、やるしかないだろ。行こう、セブンを追うんだ」
ユーコの変身する車に乗り込み、山道を下り始める。その中で救急への通報も済ませておいたが、これから向かう港町はキングジョーとセブンの出現で大規模な避難が始まっていると聞かされた。通話を切ったところで、ふと気づく。
「もしかして、巻き込まれたのは俺たちじゃないか?」
「……あ、確かに」
キングジョーはあの武器の存在を知って彼らを追っていたのではないかと、ふと思い当たった。
「どうします、それでもやりますか」
「……しょうがない、一度引き受けたからにはな。そもそも撮影しようとしてたんだ、その合間に一発ぶち込んでやるさ」
「あんまり無理はしないでくださいね」
「ああ、任せてくれ。それにほら、バズーカなら扱ったことあるし」
「え、そうなんですか!?」
うんまあ、
町はあらかじめ避難マニュアルでも形成されていたのか、俺たちが着いた頃にはもぬけの殻になっていた。ありがたく道路を横行しながら、上空のキングジョーとセブンの攻防を見上げる。
「ユーコ、オープンカーにできないか。天井を取っ払ってくれ」
「はい、それなら簡単です」
車体が一瞬光に包まれ、途端に強風が吹き荒れる。
「運転頼む! 真っ直ぐ!」
「はい!」
フロントガラス以外、外界を遮る物の無くなった車上でカメラを構える。
四つのパーツがセブンを取り囲み、ヒットアンドアウェイを繰り返している。セブンはそれらを上手くいなし、時折頭部のスラッガーを投げ、額からは光線技を繰り出す。
「あれはエメリウム光線。ある程度威力を調整できるようです」
「ということは牽制か……あるいはキングジョーが速すぎるのか」
そう思えるほどに、セブンの攻撃はなかなか命中しない。
スラッガーを投合したセブンが少し体勢を崩した瞬間、キングジョーのパーツの一つが素早く突撃した。しかしセブンはそれを狙っていたようで、素早く反転し戻ってきたスラッガーを掴むと、その勢いに乗って回転しながら斬りつけた。
鮮やかな攻撃に感嘆が漏れるが、火花を上げるキングジョーのパーツはこちらに落下してきた。それを追うように、他のパーツも追従し急降下してくる。
「ちょ、おいおいおい!」
迫る巨大な影にアクセルを踏み込む。それらは沿道のビルに当たる直前で、機首を上げるように素早く切り返し、地面すれすれの高度で港へと飛び去っていった。直後、それを追うセブンも同じ軌道で港へと向かう。
「凄い! 良い画が撮れたな!」
「だ、大迫力でした」
「ああ、堪らんな! よし、追おう!」
「追うのはいいんですけどカメさん、ちゃんと撃てるんですか?」
「……運転いい?」
「はいはい。ちゃんと読み込んでくださいね」
「……はい」
ハンドルを手放し、助手席のトランクケースの中からマニュアルを取り出す。彼が言った通り、大きい字と簡単な語彙、見やすいイラストまでついたそれは、まるで高校生の作ったプレゼンテーション用紙のようだった。これで本当に大丈夫なのだろうか?
倉庫が立ち並び、コンテナを吊り上げる大型クレーンが列を成す埠頭に到着する。セブンは脛の部分まで海水に浸け、上空に留まるキングジョーを見上げていた。
カメラを回し始めると同時に、キングジョーのパーツが順序をもって降下してきた。まず、トランクスパンツのような形をしたパーツが海面に降り立つ。そこに最もUFOらしい形のパーツが乗り、アンテナが収納される。
「おお!」
次に極彩色を放つ胸部パーツが接着し、最後に俺たちを襲った肩から上のパーツが結合する。
頭部と胸部に灯った光が電飾のように煌めくキングジョーは、独特の起動音を上げながら、動作を確認するように両腕を上げた。その姿はブリキの玩具のようでどこか愛嬌があるが、それでいて表情の無い無機質な存在感と相反して、返って不気味なものを感じさせる。
「おおおお!」
しかし俺はそれを上回る興奮によって叫んだ。まさに合体ロボ。男の子のロマン!
「いやなんで喜んでるんですか!?」
「だって合体したぞユーコ! 合体!」
「合体が何だっていうんです?」
「わっかんないかなぁ、この高揚が!」
そうこう言っているうちに、セブンは気合の雄叫びを上げてキングジョーに駆け寄っていく。海水を派手に巻き上げながらの突進は、硬質な音と共に弾き返されるという結果に終わった。セブンが倒れ巻き起こった荒波が、岸壁に係留された大小の船を激しく揺らす。
「なんて硬さ、逆に弾かれるとは」
セブンが倒れている隙に、キングジョーは両腕を上げた姿勢で近場の倉庫を見下ろし、顔――と思わしき箇所――から放った光線で爆発、炎上させた。
それ以上は許すまいとセブンはキングジョーに飛び掛かり、もつれ合いの末、二体は港湾施設に倒れ込む。激しい爆炎と白煙が彼らを覆いつくす様をカメラに収める。
「カメさん、そろそろ爆弾の用意を」
「あ、ああ、そうだな」
こうは言ったが、正直俺はこの戦いをもっと見たいと思ってしまっていた。地響き、熱風、轟音、全てが琴線に触れ、その迫力に俺は恍惚としていたようだ。
しかしユーコの言うことももっともで、白煙の中から立ち上がったキングジョーに、確かにダメージは見受けられない。これ以上は徐々にキングジョー優位に流れるだけだろう。
同じく立ち上がったセブンと再びもつれ合いとなる中、俺は説明書通りにライトンR30をバズーカに装填していく。
「ええと、ここを目印にして……」
「カメさん早く!」
「急かすなって……よし!」
装填を済ませると、俺はシートの上に腰掛け、フロントガラスの上に砲身を乗せて狙いを定める。
丁度その時、顔に
「焦るな……よし……今だ!」
トリガーを引くと、肩が外れそうな程の激しい衝撃が全身を駆ける。発射されたライトンR30爆弾は、白煙の線を空に引きながら、一直線にキングジョーへと向かっていく。
当たる。そう確信した刹那、キングジョーはなんと瞬時に分離して爆弾を回避した。
「なっ!」
「そんなのありですか!?」
ライトンR30は遠方の海面に落ち、機雷処理時のような白い水柱を高く打ち上げた。
煽るようにぐるぐると宙を旋回した後、再び合体しロボット体となったキングジョーは、ゆっくりとこちらに向き直った。その照準に入ったと悟り、心臓が一気に脈拍を早める。
「ああ、ヤバいかも……」
「逃げましょう!」
その前に、復帰したセブンがキングジョーの背中から飛び掛かった。キングジョーは勢いに押され前屈みになるが、そのまま手近な小型タンカーを掴み上げ、まるでバットを振るうようにセブンへと叩き付けた。再び海に倒れ込むセブン。
「なんてパワー! 防御に回避、キングジョー、恐ろしい奴だ」
「ど、どうしましょう」
再び馬乗りの姿勢になり、セブンにタンカーを振り下ろし続けるキングジョー。その背中にまた撃ったところで、先ほどのように回避されるのは明白だ。
歯噛みしながら事の成り行きを見定めていると、セブンの姿が海中に消えた。キングジョーもゆらゆらと周囲を見回しているが、その姿を見失っている。
「まさか、やられたのか……?」
「今度こそ、逃げますよ!」
キングジョーがこちらに振り向き、ゆっくりと歩み寄ってくる。その姿を見上げながら思う。本当にセブンは敗れたのか? 逃げるべきか、見極めるべきか。逃げて追い付かれないのか。全てを加味したうえで俺は……
「いや、このままだ」
逃げずに、新たにライトンR30を装填する。その間にもキングジョーはこちらに接近してくる。
「カメさん!?」
「たぶん大丈夫、なはずだ。確信は無いけど」
再びバズーカを構え、キングジョーに照準を合わせる。奴は愉悦に笑うように両腕を上げてみせた。
その瞬間だった。キングジョーの後方で水柱が天高く立ち上り、海中から姿を現したセブンが奴を羽交い絞めにした。
「セブン!」
「そうくると信じてた!」
キングジョーも必死の抵抗を見せるが、セブンは頑として力を緩めない。既に照準を済ませていた俺は、躊躇なくキングジョーの肩から上、分離したところで逃れられないパーツに向かって、ライトンR30を発射した。
キングジョー自ら近づいてきてくれたこともあって、瞬きも間に合わないほどの一瞬に爆弾は到達し、激しい爆発が奴の金色の体を覆いつくした。セブンはすかさず距離を取り、残心の構えを取る。
やがて白煙が風に流れると、キングジョーは爆弾を食らった姿勢のまま停止していた。そして腕と足を真っ直ぐに伸ばして気をつけの姿勢を取った後、そのままゆっくりと仰向けに倒れていった。
「よぉし!」
「やった!」
海に倒れたキングジョーの全身からスパークが漏れ出し、やがて激しく爆発、炎上した。熱と光の奔流に目を細め、ほっと息をつく。
全てを見届けたセブンが、肩を押さえて片膝をつく。やはりキングジョーはかなりの難敵だったらしく、疲労の色が隠せない。
しかしそれでも、俺たちは勝ったのだ。セブンと目が合い、互いに頷き合う。
――そう、勝ったのだ。
上空にそれらは現れた。
空がガラスのように割れ、そこから虹色の光が差し込む。同時に、幾何学模様を描く魔法陣のようなものが出現し、福音を思わせる鐘の音が響き渡る。
虹、福音。神秘的な現象のようにも見えるが、しかしこれまでの経験からくる直感だろうか。あるいは生理的に訴える何かがあるのか。全身をめぐる悪寒は際限なく高まる。
「なんだ……やばそうだな」
「ええ、間違いありません……巨影の気配!」
そしてそれらは現れる。地上に差した虹色の光から、徐々に浮かび上がる巨人の影。魔法陣が空に描き出していく巨竜の影。ユーコが叫ぶ。
「ダークロプス、ゼロ!」
埠頭に出現したのは、金色と黒色から成る、まるでウルトラマンのような造形をした、一つ目の巨人。
「シビルジャッジメンター、ギャラクトロン!」
海上に降り立ったのは、白を基調として金と黒が厳かに織り交じる、機械の巨竜。
肩で息をするセブンを挟み討つような形で、二体は戦意剥き出しに構えを取った。
説明書を読んだのよ
*
今回の選択肢
「今度こそ、逃げますよ!」 ~ 全てを加味したうえで俺は……
①逃げない→本編通り
②逃げる→セブンがめっちゃ急いで出てくる