巨影を知らない都市 作:ギガンティック芦沢博士
白衣の男たちから託されたライトンR30爆弾を携え、セブンとキングジョーの戦いを見定める主人公たち。
キングジョーの膂力と防御力の前にセブンは防戦一方だったが、隙を見て動きを封じ、その間に主人公はライトンR30爆弾を撃ち当てた。
かくしてキングジョーは斃れたが、疲弊したセブンの前に、ダークロプスゼロとギャラクトロンが現れる。
素早くカメラを構え、一つ目のウルトラマンのような姿のダークロプスゼロを撮影していると、それに合わせユーコが説明を挟む。
「ダークロプスゼロ、とあるウルトラマンを模倣して作られたロボット兵器です」
「ロボット……とあるウルトラマン?」
「それは読み取れないんですが……」
「そうか、あっちは?」
今度はギャラクトロンを撮影しながら聞く。
「シビルジャッジメンター、通称ギャラクトロン。別次元から転送されてきた謎のロボット怪獣です」
「別次元って……まあ、こっちはロボだよな」
ギャラクトロンは人型の竜のような姿で、後頭部には鉤爪付きの長い尻尾のような器官を備えている。真っ白な体表には幾何学的な紋様が薄っすらと見て取れた。
ダークロプスゼロと、ギャラクトロン。この二体に挟まれたセブンは、痛むだろう体に喝を入れ、構えを取る。しかし肩のプロテクターはあからさまに上下しており、見るからに疲弊していた。
その時、セブンの額に輝いていた緑のランプが点滅を始める。
「あれはいったい?」
「ビームランプの点滅はエネルギーの消耗を示しています。このままじゃ……」
まさにそれを見越したのか、ダークロプスゼロが素早く攻勢に出た。セブンと似た頭部のスラッガー二本を掴み、西部劇の早打ちのような速度で投擲する。セブンも即時に反応し、自身のスラッガーを逆手に持ち、ナイフのように振るってこれを弾いた。
しかしギャラクトロンの深紅の目から発射された、同色の光線がセブンを背後から襲う。激しい爆発の中にセブンの痛ましい声が聞こる。彼は吹き飛ばされて海へと倒れた。
「セブン!」
追撃は無かった。ダークロプスゼロとギャラクトロンは嘲笑するかのような所作で、海水を滴らせるセブンを見下していた。
僅かに期待していたが、この二体が敵同士で互いに潰し合う、という都合のいい展開にはならないらしい。
「くそ、こんなの卑怯だ!」
こんな悪態に何かを変える力は無い。その力たるライトンR30爆弾をトランクから取り出し、装填する。
しかし、いよいよ
「カメさん早く!」
そこで装填が完了し構えるが、すでに二体とも攻撃の準備はできている。止められたとして片方だけだ。瞬時に思考が巡る。
どっちだ、どちらを撃てば最低限のダメージで抑えられる……?
選択を迫られたその時、再び上空で何かが瞬き、そして気合の籠った雄叫びが
「なんだ!?」
見上げてまず目に入ったのは、二つの巨大な人影だった。彼らは飛び蹴りの姿勢で急降下し、まるで流星の如く赤く燃え立つ右足を、それぞれダークロプスゼロとギャラクトロンに叩き込んだ。二体は大きく弾き飛ばされ、ダークロプスゼロは海中へ、ギャラクトロンは港湾施設を破壊しながら倒れた。
突如現れた二つの巨影が立ち上がる。その一方、ダークロプスゼロを強襲した影を俺は知っていた。下半身は赤、上半身は青。肩のプロテクターはセブンとそっくりで、頭部の二本一対のスラッガーの形状もよく似ている。そして何より、彼はダークロプスゼロと瓜二つだった。
「ウルトラマンゼロ!」
ゼロ、五年前にも現れたウルトラマンの一人だ。鼻の辺りを擦るような仕草を見せる彼は、どことなく気障にも見える。
「そうか、ダークロプスゼロのオリジナルは彼か」
「はい。そしてゼロはセブンの息子です」
「セブンの? ……ウルトラマンにも親子ってあるんだ」
そしてもう一方のウルトラマン、こちらには見覚えが無い。恐らく前回の巨影災害時には出現しなかった個体だ。
「彼はウルトラマンレオ。宇宙拳法の達人で、セブンの弟子、そしてゼロの師匠に当たります」
レオというウルトラマンは、他のウルトラマンと比較して赤色の占める割合が大きく、左右と前に伸びる角を持つ頭部が印象的だった。彼は素早くセブンに近付き、立ち上がるのに手を貸した。
「セブンはレオの師匠で、レオはゼロの師匠で、ゼロはセブンの息子で……なんだか、家族ぐるみの付き合いなんだな」
などと小市民的な感想を述べていると、ダークロプスゼロとギャラクトロンが立ち上がる。それぞれが自分を害した者を敵と認識したのか、構えを取った。
これから始まる激戦を予感し、俺はバズーカを置いてカメラを構える。ウルトラマンが加勢に来た現状で、無理に戦いに加わる必要は無いはずだ。今こそ最大のシャッターチャンスだった。
「さあ来るぞ来るぞ……!」
余裕が生まれてきた俺の胸は期待に膨らむばかり。ファインダーにゼロを捉え、ダークロプスゼロを捉え、順にレオ、セブン、ギャラクトロンと……
そしてゼロとダークロプスゼロが同時に動き始めた。
海面を蹴立て接近した両名が同時に拳を繰り出す。それはクロスカウンターの形でお互いの顔に決まり、両名は少しよろめいて距離を取った。
これとほぼ同時にギャラクトロンとレオ、セブンの戦闘が始まった。ギャラクトロンは早々に目から光線を放ったが、セブンは横に転がり、レオは華麗な側転でこれを回避した。そしてレオが素早く接近し格闘戦を仕掛ける。
レオの繰り出した拳がギャラクトロンの胸に直撃し、少し後ずさりさせる。しかしその巨体の印象に違わず、ギャラクトロンにダメージは見受けられない。今度はギャラクトロンが右腕の鉤爪を振るうものの、レオは屈んでそれを回避した。その時セブンのスラッガーが飛来するが、ギャラクトロンは左腕の装甲で直撃を防ぐ。
激しい衝突音にカメラを向ければ、ゼロとダークロプスゼロは息つく間もない接近戦を展開していた。互いに拳を繰り出せばそれをガードし、ハイキックを躱し、ともに深手を負うことがない。まさに一進一退の攻防だった。
「ああ、すっげえ! どこ撮りゃいいんだオイ!」
「カメさん、こういう時ほんとに人が変わりますよね」
火照った頭でもそれは自覚していた。叔父との血縁を感じざるを得ない瞬間だ。
競り合いの中、ゼロの拳がダークロプスゼロの腹に直撃する。これはダメージになったようで、ダークロプスゼロはたたらを踏んで後退する。腹部に手を当てて俯く姿勢をとるが、奇襲をかける形で目から光線を発射した。
ゼロの足元の海面が爆発し、白く巨大な水の壁が立ち上がる。しかしゼロは素早い反応でバク転し直撃を避けていた。そして彼は水壁を突き破り突撃を仕掛けるが、ダークロプスゼロは空に飛び上がってこれを回避した。
ゼロも間髪入れず跳び上がり、上方へ向け飛び蹴りを放つ。ダークロプスゼロはまさに瓜二つの構えで迎え撃ち、空中で両者の足裏が激突した。激しい衝撃波が押し寄せ、風圧に前髪が浮かぶ。
しかし応酬はそこで終わらない。互いが目にも止まらない速さで両足を繰り出し、幾度となく激しいスパークが彼らの間で散る。そのまま彼らは上昇し、豆粒のような大きさになってようやく離れ、空中戦にもつれ込んだのをカメラで確認した。
「はぁー……これ以上は撮れないか」
ようやく一息つき、感嘆の溜め息を漏らす。巨影同士の戦いは大概が重厚で重みのあるものになるが、ウルトラマン同士の話になると別のようだ。
しかし対ギャラクトロン戦はまさに前者の様相を呈していた。ダークロプスゼロのような俊敏性は無いものの、防御力と火力に優れるギャラクトロンは、レオとセブンを相手に一歩も引けを取っていなかった。
レオが主体となって攻撃に徹し、セブンは後方からアシストする。彼ら師弟のコンビネーションは見事なものだったが、逆にギャラクトロンも危険な攻撃は的確に防いでいた。
事態が動いたのは、ギャラクトロンのこれまで見せなかった攻撃からだった。右腕の鉤爪に付いている砲塔から突如として電撃が放たれ、レオはこれを紙一重で躱したものの、セブンは足元に食らい膝から倒れてしまった。
「セブン!」
ユーコの声は多分に心配を含んでいたが、セブンは倒れながら額のビームランプに手をかざし、緑色の細い光線、エメリウム光線を地面すれすれに繰り出した。
「うおっ!」
俺たちの頭上を通過したエメリウム光線は、ギャラクトロンの足に命中し体勢を崩す。その隙を見逃さず懐に潜り込んだレオは、背を向けるような姿勢からショートレンジの体当たりを叩き込んだ。
「鉄山靠!?」
とても生身の当身とは思えない、まるで爆発のような音と共に、ギャラクトロンは大きく歩調を乱し後退していく。レオはそのままギャラクトロンを追撃し、町中へと戦場はもつれ込んでいく。
カメラでその様子を追う俺の頭上を跨ぎ、セブンが加勢に向かった。真下から見上げたウルトラマンの迫力は凄まじく、コンクリートを砕きながら駆けるセブンの後ろ姿を見やって、心臓付近に手を当てて笑いを零す。
「行こう! 追おう、ユーコ!」
「はい!」
カメラを手放し、アクセルペダルを深く踏み込む。セブンの残した足跡を辿り、戦いの行く末を見届けるべく走り出した。
今回の選択肢
どっちだ、どちらを撃てば……
①ダークロプスゼロ→超短時間で選択すれば実際に撃てる
②ギャラクトロン→ 〃
なお初見では確実に撃てない、とか面白そう