巨影を知らない都市 作:ギガンティック芦沢博士
ユーコが変身するイングラムに搭乗し、廃棄物13号と攻防を繰り広げる主人公。
その時、とうとう方舟の解体が始まり、足場ごと海上へ落下してしまう。
破片の上に乗れはしたが、13号も無傷だった。
その時、13号の傍に漂うタイラントを発見。
冷媒を打ち抜き、13号ごと凍結させる。
次のパージから間一髪逃れ、主人公たちは荒れ狂う海を進み陸へと戻る。
なんとか上陸はできたものの、傷だらけの主人公は動けなくなる。
そんな彼を、黒服の男たちが取り囲んだ。
徐々に目が覚める。俺は真っ暗な空間で椅子にもたれていて、眼前には長方形の黒い板が浮かんでいた。
「……あ?」
「お目覚めかね」
板から発された機械越しの声音は、壮年の男性の響きがあった。まだ覚めきらない頭でぼんやりと辺りを見回すと、ほぼ同一の黒い板がぐるりと俺を取り囲んでいた。
それぞれ“01”から“07”までの数字が振られ、一様に『SOUND ONLY』と数字の下に記されている。上部には複雑な紋様が描かれており、それら全て赤い蛍光色を放っている。
……異様。あまりに異様。寝起きの頭が働いていないとしても、まるで状況が掴めない。
「シー、レ……?」
紋様の中に見つけた英字をそのまま読み上げる。
「
「ああ、失敬」
「カメさん、シャキッとしてください!」
呑気な俺をユーコの声が叱咤した。一つ息を吐き、妙に落ち着いた心を引き締める。見下ろせば、両手は手錠で拘束されていた。
「……ここはどこです?」
「ネルフ施設内だ。以前にも来たそうだな」
「ええ、まあ」
以前はエヴァと使徒の戦闘に巻き込まれた挙句に拘束され、検査と取り調べを受けた。しかし今回はそれとも様子が違うようだ。
「俺を誘拐した目的は?」
「我々が興味を持ったからだ。さあ、もう質問は控えてもらおう。こちらが聞く番だ」
有無を言わせぬ物言いに口を噤む。生殺与奪を握られている以上、下手なことはできない。
「単刀直入に問うが、キミはいったい何者だ?」
「……何者、と言われましても。巨影を追う
「駆け引きは無用。お前の行動は記録されている」
横合いからの声に顔を向ける。それに端を発したように、四方から声が上がり始める。
「エヴァとバルディエル……黒いエヴァとの戦闘があったろう。そこに居合わせたキミをネルフは監視していた。以前のシャムシエルとの戦闘と同様に」
「どちらもお前が関わることで興味深い現象が起こっている。エヴァは限界を超える性能を発揮し、ダミーシステムは停止に至った」
「一度なら偶然とも取ろう。しかし二度とあってはそうはいかん」
「更に言えば、対巨人部隊の専用装備であるはずの立体機動装置。どこからともなく取り出し扱ってみせた」
「自動車やバイクもそうだ。映像では突然現れ、消えたようにしか見えなかった」
「全て人ならざる業。人知を超えた力だ。ならばそれを扱うキミは果たして何者かと、そう問うているのだよ」
全て見られていた。その事実に堅く口を閉ざす。それがベストの行動ではないのだろうが、言い逃れる筋道も見当たらなかった。
「ここでの黙秘は有利に働かんぞ」
「左様、偽証も同様に無意味だよ」
増していく圧を浴び、視線を足元に落とす。
「全てを明かしネルフ、延いては我々に協力したまえ。そうすれば危害は加えん」
その言い様に顔を上げる。
「当然
沈黙が下り、俺に答えを迫る。冷たい汗が背を流れた。
「カメさん……」
ユーコの不安げな声音が耳につく。そして俺が出した答えは……
「……時間を、ください」
慎重、あるいは優柔不断とも言えるが、答えの先延ばしを求めた。これが通るとは思っていなかったが、しかし彼らは予想外に受け入れた。
「と、なろうな」
「仕方あるまい。では後日答えを聞こう」
「……いいんですか?」
思わずそう確認してしまう。
「構わん。しかしそう猶予は無い。人類に迫る危機はもはやコントロール不能になりつつある。誰よりもキミが理解しているはずだ」
「……巨影」
黒い板の向こうから、肯定を示す重い溜め息が聞こえた気がした。
「問答が過ぎたな。では、色よい返事を期待している」
そう言い残し、七つの板は同時に消失した。安堵の息を吐き椅子に深くもたれ掛かると、後方から足音がして振り返る。硬い靴音と共に闇の中から現れたのは、以前ネルフで取り調べを受けた際に相対した、かの白衣の女性だった。
「お久しぶり。また会えたわね」
「……ええ、光栄です」
恐らく俺はこの上なく渋い顔つきになっているだろう。不貞腐れるように前に向き直ると、背後から布らしき物で目隠しをされた。一瞬たじろいだが、抵抗は無駄と考え動きを止める。
「ごめんなさいね。みだりに内部を見られるわけにはいかないの」
「でしょうね。問題ないです」
「ふんっ、私が見ちゃうんですからね!」
そう、これに関しては問題ない。目の代わりを果たしてくれる、背後霊のような存在が俺には憑いているんだ。
「今私のこと便利な幽霊って思いました?」
耳元で脅すようにユーコが囁く。今日一番の恐怖に体が震えた。
視界無しに廊下を移送されながら、俺の手錠を引いて歩く彼女と会話する。どうやら護送者は彼女一人らしい。この警戒の薄さは油断か余裕か、あるいは一種の信頼からくるものか。
「やっぱり、もう歩けるのね。しばらく杖の欠かせない体だったはずなのよ、あなた」
「……昔から頑丈なので」
彼女は静かに笑った。
「そう、良いことね」
……この粗雑過ぎる言い訳に乗ってくれはしたが、含みのある声音が空恐ろしい。その萎縮を隠すために違う話題を振る。
「あのゼーレって人たち、何者です。随分強圧的でしたけど」
「その名は覚えない方が身のためよ。あれで結構、あなたに譲歩していたわ。まるで顔色を窺うようにね」
「そんな雰囲気じゃなかったように思いますけど……なぜです? こうやって拘束されてる俺に」
「彼らはね、想定外のことが怖いのよ。使徒に限らず巨影が闊歩する現状が恐ろしくてたまらないの」
そう言う彼女の声はどこか愉悦を含んでいるようでもあった。
「だから未知の力を持つあなたのことを恐れもするし、同時に縋ってもいるの。エヴァですら対抗できない脅威のために、あなたを自陣に引き入れたいのね」
「……なるほど」
得心のいく話に頷いていると、彼女の手が俺の肩を押さえ、歩調を止める。電子音の後、エアーの漏れる音がした。恐らく独房の扉を開いたのだろう。そこに立ち入ると、彼女の気配が肉薄した。
「着いたわ。動かないでね」
彼女が正面から手を伸ばし、目隠しの後頭部の結び目を解く。そのとき、ふわりと煙草の香りが漂って、少しどぎまぎしてしまった。
「カメさん、少し顔赤いですよ。大丈夫ですか」
うっかり返事をするわけにもいかず、自己弁護できないまま目を開く。そこは簡素な造りの小部屋で、家具はシングルベッドと机、椅子のみ。窓は無い。まさに独房といった様相だった。
「狭い部屋で不便でしょうけど我慢して。協力を呑んでくれたらスイートを用意するわ。何かあったらインターホンで要件を伝えて」
事務的にそう言いつつ手錠を外す彼女。男の俺の方が当然体格は良いのだが、不用心すぎないか。
その視線に気づいたのだろう、彼女は外した手錠を弄りながら口元を吊り上げた。
「抵抗するつもりなら最初からそうしているでしょう? 従っているのは脱出するだけの力が無いか、あるいは提示された選択に迷っているからか」
彼女の白衣の背中が出口へと向かう。俺はその場に立ち尽くしていた。
「後者であることを祈っているわ。私も、きっとあの子も」
「あの子って……エヴァのパイロットの?」
「そう。あなたに感謝してたわ。おかげで友人が救えたって」
思い当たるのは、使徒に乗っ取られた三号機のエントリープラグ。
「……あの中にまた子どもを。それも、彼の友達を」
立ち止まった金髪の後頭部を強く睨む。彼女はポケットに手を突っ込み、壁の淵にもたれ掛かった。
「言ったでしょ、それが仕事なの」
「その仕事の片棒を担がせようとしてるわけですか」
彼女は溜め息を吐き、煙草を咥えて火を灯した。果たしてここは喫煙可なのか、とどうでもいいことに少し気が逸れる。
「片棒。言っておくけど、彼の仕事は人類を守ること。その中に含まれている時点で、あなたも言わば私たちの共犯者なのよ」
彼女はどこか苛立ちを抑えているような、そんな声音だった。
「私からすればあなたこそ。真実を知らず、まるで他人事のように、飾り立てた正論を吐くだけの愚者よ」
彼女が長く煙を吐く。俺は――愚者たる俺は、それを見つめながら己を振り返ることしかできなかった。
「これは……あなたにとってある種のチャンスなのよ。真実を知り、彼と共に人類を守る存在になれるかの」
彼女は携帯灰皿に吸い殻を落とし、再び俺に背を向けた。
「だから、期待しているわ。私も、あの子も」
扉が閉まり、硬く閉ざされる。
身の奥から湧き上がってくる熱いものを霧散させるために、椅子を思い切り蹴り上げた。
ユーコが少し怯えてしまって、俺はまた深い自己嫌悪に陥ることになった。
今回の選択肢
そして俺が出した答えは……
①沈黙→大まかに本編通り
②時間をくれ→本編通り
③実は宇宙人と同体化していて、その宇宙人の宇宙パワーを発揮しているに過ぎません
→全員困惑し一時審問がストップ
④実は僕は妖精の国の王子様で、たった一つの過ちでこの世に落とされた異端児で……
→可哀想なものを見る雰囲気