巨影を知らない都市   作:ギガンティック芦沢博士

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前回までのあらすじ

故障した機龍の元へ走る主人公たち。
ゴジラとギドラの戦闘を潜り抜け、機龍の修理を始める。
ゴジラに狙われたとき、モスラとコスモス姉妹が現れ危機を脱する。
モスラの援護を受けて機龍に搭乗し、戦線に復帰。
ゴジラ、キングギドラ、モスラと機龍という三つ巴の混戦となる。


stage18:巨影大戦争 ④

「うおおぉぉぉっ!」

 雄たけびと共にゴジラに突進する。ゴジラも機敏に反応し、口腔の奥の青白いエネルギーをこちらに覗かせた。

()()()だ!」

 ゴジラの口元を目掛け、右手に残ったレールガンを撃ち放つ。ユーコのサポートもあってか、みごと口腔内に吸い込まれた弾頭が喉奥で火花を散らし、ゴジラはたまらず顔を伏せた。それと同時に溜め込んでいたエネルギーも霧散していく。

 その一瞬の隙さえあれば、機龍の機動力が彼我の距離を埋めるに充分だった。体を捩り、右半身からゴジラに衝突していく。

 しかしゴジラは、レールガンの連射が途切れた一瞬の内に体勢を立て直し、機龍の突進を真正面から受け止めた。

「ぐうぅっ……!」

 歯を食いしばり、満身の力を込めてゴジラを押し込んでいく。二体の足元で地割れのようにアスファルトが砕け、進路上のビルは次々に粉砕される。

 しかし……優勢とは感じられない。当たっただけで分かる馬力の差。まるで巨岩を必死に押すリスのような気分だった。

 その感覚通り、やがてゴジラの足裏がガッチリと地を掴み、勢いは減衰していく。より一層の力を籠めんと俺が強く踏み込んだ瞬間、ゴジラはひらりと身を躱して機龍の力を受け流した。

「なっ!?」

 予想外の技巧に出し抜かれ、機龍はゴジラに振り回されるようにたたらを踏む。続けざまにゴジラは剛腕を振るい、バックユニット右の砲身を破壊した。

「ぐっ!」

 機龍と意識を同調させているせいか、その衝撃が俺の体にも伝わったように感じる。これで直線軌道のロケット砲は左右ともに使えなくなった。

「右手でゴジラを掴んで!」

 ユーコの声に従って、体勢を崩されながらも右手を伸ばし、ゴジラの左腕を掴む。

「メーサーブレード展開!」

 右手のレールガンユニットからナイフのような刀身が飛び出し、先端がゴジラの腕に突き刺さる。突然走った痛みに、ゴジラは顔を上げて吠えた。

 更に、刀身から迸った電流がゴジラの全身を駆け抜ける。ゴジラは苦悶に呻き、その動きを止めた。

「よし……!」

 効いている、その実感から笑みが浮かんだ。しかし直後、黄色の電流の中に見えた青白い光に我に返る。

「退いて!」

 ユーコの警告にも反応しきれなかった。ゴジラは熱線でレールガンユニットを焼き切ると、押しやるように機龍の腹部へ前蹴りを放った。その衝撃は俺の腹部にも走る。

「うぐっ!」

 あまりに重い一撃に機龍は大きく吹き飛ばされ、俺は、さながら自動車事故にでもあったような感覚だった。

 頭からビルに突っ込み、降り注ぐ瓦礫で視界は埋め尽くされる。倒れ込んだ衝撃はコックピットを激しく揺さぶり、俺は強かに頭を打ち付けた。

「カメさん!」

「あ、ああ、大丈夫……まだいけるぞ、俺はな」

 機龍との繋がり、エヴァになぞらえれば“シンクロ”とでもいうのであろうか、その感覚が途絶えている。急ぎ操縦桿を握り直し、再び目を瞑って機龍に意識を溶け込ませていく。

 見えてきた光景は、仰向けになって見上げる夜空だった。周辺のビルも損壊が激しいため、都会らしくない広い漆黒だった。

 その中で、キングギドラとモスラが激しく衝突していた。圧倒的な機動力を誇るモスラはギドラの横合いを通過する度、斬りつけるように翼を打ち付けてギドラを苦しめている。

 しかし攻防の全ては紙一重で、今度はギドラの放った引力光線がモスラの翼に命中した。

「モスラ!」

 ユーコが叫ぶ。モスラは大きく姿勢を乱しこちらに落下してきた。そして機龍に衝突する直前、大きく翼をはためかせて、何とか落下を防いだ。吹き降ろす強風が、瓦礫まみれの街の埃を巻き上げる。

 その時、モスラを背後から追撃せんとするギドラを捉え、反射的に叫んだ。

「メーサー砲!」

 口を開くイメージを強く送れば、機龍の体もその通りにする。そして口腔内の二門の砲身から黄色の光線が放たれ、ギドラの体を穿つ。

「モスラはやらせない……!」

 不意を突かれたギドラは痛みに鳴き声を上げ、飛行には乱れが生じた。

 しかしそこで、腹部に重く掛かった圧力に光線が途絶えてしまう。がはっ、と肺の空気が漏れ出した。

 歩み寄ってきたゴジラが機龍の腹部を踏みつけていた。こちらを見下ろす凶暴な瞳と視線が噛み合い、強く睨み返す。

「ゴ、ジラァ……!」

 しかし、なんという質量か、まるで起き上がれる気配がない。まるで……山と戦っているようだ。

 ゴジラの背びれが発光を始める。口腔の奥に青い光が見えた……その瞬間。

 視界の外から突如飛びこんできた金色の巨影が、ゴジラに衝突して体勢を乱れさせた。

「ギドラまで……!」

 その飛び蹴りのような突進の勢いにゴジラは後退し、機龍の体が自由になる。

「ブースト!」

 その瞬間にバックユニットと機龍本体のブースターを点火し、最大出力で離脱する。背びれを地面に擦れさせながら後退し、距離を置いて姿勢を直立へと戻す。

 見れば、ギドラは身を宙に浮かせたまま、三本の光線を足元のゴジラへと、稲妻のごとく降り注がせていた。苦痛からくるものか、ゴジラの咆哮が轟き、ギドラの甲高い声がそれを塗り潰す。

 凄まじい光景だった。各所から黒煙が立ち上る都市の中央で、自然災害を象ったような超生物たちが、禍々しい光を放って激突している……

『先ほどは助かりました』

 コスモス姉妹の声に視線をやると、上空すぐそばでモスラがホバリングしていた。

「俺たちこそ。けど、これからが正念場だ」

「一体どうなるんでしょう……」

 二体の戦闘を正面に、ユーコが不安げにそう漏らす。

「勝った方が俺たちの敵になるだけだよ」

 ゴジラが勝とうと、キングギドラが勝とうと……俺たちはそのどちらかを、必ず倒さなくてはならない。

「都合よくウルトラマンが助けてくれるわけでもない……ユーコ、機龍はまだ使ってない武器があるよな?」

「分かるんですか?」

 驚いたようにユーコが問う。

「細かいところは分からないけど、なんとなく」

「……機龍の胸部に“アブソリュート・ゼロ”という兵器があります。絶対零度の光弾で物質を瞬時に凍結させ、分子レベルまで破砕。しかしエネルギーを大きく失います」

「もうそれしかないな。二対一で何とか隙を作れれば……」

『では、私たちがその役目を負います』

「危険ですよ? もし巻き込まれたら……」

「しかし他に適任はいません」

「大丈夫、モスラなら直前で躱せます」

 姉妹の言葉に、任せておけと言わんばかりにモスラが鳴く。俺は信頼を込めて微笑んだ。

「頼んだ。俺たちも外せないよな、ユーコ」

「……はい!」

 決心したようにユーコが応える。

 その時、戦況が動いた。

 ギドラの光線はゴジラの全身を包み込み、苦しめていた……しかし、その黄色の発光が徐々に、背びれへと集約されていく。

「まさか、吸収してる?」

 ユーコがうわ言のように呟く。

 ギドラは呆気にとられたように光線を止め、すぐさま離脱しようと翼をはためかせる。しかしゴジラは既にギドラの足を掴み、その自由を奪っていた。

 そしてゴジラはゆっくりと照準を合わせ……放った。

 青と金から成る、都市を昼のごとく照らすその光線がギドラを穿つ。数秒の間にギドラは眩い光に包まれ、都市の直上で大爆発を起こした。

 白とも赤とも、黄色ともとれる爆炎が街を包み込み、凄まじい爆風が湾岸都市に吹き荒れる。その中心に立つ影はたった一つ。天に昇る炎と煙に向かって、ゴジラは勝どきの如く大きく吠えた。

「腹ぁ決めるぞユーコ!」

「とっくに!」

 モスラがゴジラへと飛んでいく。機龍は大きく上体を屈め、バックユニットを射出する。まっすぐ飛来した群青のバックユニットを、ゴジラは正面から受け止めた。しかし充分な距離をとって加速し、今なおブースターが燃え続けるバックユニットはそう軽いものではない。ゴジラも踏ん張るものの、二本の足跡が瓦礫の中に刻まれていく。

 とは言えそこはゴジラ。やがて完全に停止し、ブーストの途切れたバックユニットを投げ捨てる。衝撃でユニットは爆発を起こした。

「今だ!」

 充分に接近したモスラが、ゴジラの正面で強く羽ばたき始めた。生み出された強風の中に、金色に輝く粒子が舞い踊っていた。

「あれは……」

「鱗粉です! 効果は――」

 その時、鬱陶しそうに唸ったゴジラが熱線を発射した。いや、厳密に言えば発射()()()()()()。金色の鱗粉の中で熱線は乱反射し、“線”の形をとらずゴジラの口元で小規模な爆発を引き起こした。

「あれです! 光線の無効化! アブソリュートゼロは光線とは性格が違うので、問題ありません!」

「なるほど、あれならゴジラの攻撃は届かない……モスラに意識を向けている隙に」

 胸部の装甲を展開し、巨大な砲門を剥き出しにする。

「そこに、叩き込む」

 深く息を吐き、操縦桿を握りなおす。

 ゴジラはつかず離れずいるモスラに苛立ち、既に機龍は眼中になさそうだった。集中し、狙いを定める。

「……今だっ!」

 叫んだ途端、身の内から湧き上がってきた得体の知れない()()が、俺の動きを止める。

「な……!?」

 体が熱い。眼球が奥から押し出されるような血の滾り……

 




このモスラは鱗粉を使っても大丈夫なタイプのそれです
そしてアブソリュートゼロ鱗粉へっちゃら論はでっち上げです
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