巨影を知らない都市   作:ギガンティック芦沢博士

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前回のあらすじ

古都上空まで上昇し、カメラを構える主人公。
世界中の人々の絶望を感じ取りながら、ザギとの戦闘を撮影する。
そんな中、古都に機龍が投入され、エヴァにマステマという新兵器が渡される。
そして機龍と初号機の放ったN2ミサイルが、ギャオスの群れに直撃した。


stage22:闇を祓う光の巨影 ③

 瞼を通過し眼球に突き刺さる閃光が赤色に変わる。目を開けば、遠方の空に二つのキノコ雲が立ち昇っていた。

「原、爆?」

『N2兵器。ネルフが総力を挙げてようやく生み出した、人類が持ち得る最高火力よ』

 白衣の彼女が淡々と語る通り、凄まじい威力で炸裂したそれは、古都から見える風景を一変させた。衝撃波は土煙として地上を駆け抜け、爆心地は草木の一本も残っていないだろう。空を黒々と覆っていたギャオスの群れも今や疎であった。

『今ので……一発につき約二百弱のギャオスの撃破に成功。北西と北東のギャオスはほぼ片付いた計算ね』

「す、ごい……!」

 この国に住まう人間として、いくら“クリーン”とはいえ核が使用されたことに思うところはある。しかし実在する恐怖が迫りくる中にあっては、思わず拝んでしまうような頼もしさを感じていた。

『機龍、続いて南西のギャオスにも発射。カウント……』

 機龍が向きを変え、カウントゼロに合わせ次弾を発射する。先ほどと同じように白線を引くN2ミサイルを、ガメラが首を振って見送る。

 間もなく炸裂し、再び激しい衝撃が大気を揺らす。

「ほんとに、アルマゲドンだな……!」

『人類が滅びればそうなるでしょうね』

 彼女の笑えない皮肉が轟音の中で聞こえる。それが収ると、こちらも北西北東と同様にギャオスはほぼ全滅していた。

「これなら……!」

『油断しないことね。あの爆発を受けて生き残った個体が来るわ』

 彼女の言葉に気を引き締め直すが、しかし確実にカメラを通した“リンク”は減少しつつあった。人類の予想以上の健闘に希望を見出し始めたのか、既に一部の者は絶望の淵……デストルドーの高まった状態を脱したようだ。全体から言えば極々僅かでしかないが。

『あまり、使うべきものではありません……』

 上空でザギを相手に舞うモスラから、コスモス姉妹の声が届いた。その声音は憂いを多分に含むが、同時に躊躇も孕んでいるように聞こえた。

『強すぎる力は自分たちや、地球さえ傷つけます』

「……俺もそう思うさ。でも、俺たちは……弱いんだよ。弱いから必死で……」

 何を言っても言い訳のようになってしまうが、それでも反論するしかなかった。

「巨影が現れて、人間はピラミッドの最上段じゃなくなった。もう余裕が無いんだ。何を持ってしても生き残る、そういう()()になってしまったんだよ」

 雰囲気だけだが、彼女たちは無言で頷いたように感じた。二人はきっと、人類の置かれた立場も理解しているはずだ。複雑な思いは誰もが抱える……この戦いの行方がどうあれ、人間はこの力の債務を抱え込むことになるだろう。

『あのモスラの巫女の双子……話しているの?』

「はい」

 白衣の彼女がインカム越しに自嘲的に笑う。

『感心はしてないでしょうね。けど、人類は()()()それを受け止めるわ』

 彼女の声の調子が切り替わる。

『打ち漏らしたギャオスは約二十、構成は成体から亜成体。各自準備して』

『了解!』

 初号機と機龍のパイロットがそれぞれ応答し、呼応するようにガメラも咆哮する。

 小さな影でしかなかったギャオスたちが夜闇から飛来し、街の炎に照らされ姿を晒す。三角形の扁平な頭部、禍々しい顔つき、翼竜のような翼……体格に個体差こそあれ、皆同様の特長を持ったギャオスたちは、N2ミサイルによって全身に少なからず傷を負っていた。数頭は羽ばたきもぎこちない。

 しかし、と俺は前回ギャオスと遭遇した際を想起する。

「大丈夫なんですか!? ギャオスには超音波メスがあります!」

 あらゆるものを切り裂くその光線に対し、しかし白衣の彼女は冷静だった。

『当然、対策はあります』

「対策?」

『街中をよく見て』

 言われた通り街を見下ろせば、大通りの各所に見慣れぬ大型トレーラーが停まっていた。荷台部分にはパラボラアンテナのような機器を搭載している。

「たしか……原子熱線砲?」

 それは以前、モスラの繭を攻撃した兵器と同じ物に見えた。

『あら、あれを知ってるのね。外観は似ているけど、これは音響兵器なのよ』

「音響?」

『まあ見てなさい』

 各機のパラボラアンテナが持ち上がり、ギャオスの舞う上空へと向けられる。そして青色の光が灯ると、鼓膜ではなく内耳に、脳に直接響くような“何か”を聞き取る。

「なんだ、これ……!?」

 そう言う間に、ホバリングで上空に留まるギャオスたちが一斉に口を開き、地上の三体――ガメラ、初号機、機龍に照準を合わせる。そして口元に黄色い光が収束し――それは弾けるように霧散した。例外は一つもなく、一筋の光線さえ古都に撃ち下ろされることはなかった。ギャオスは混乱の様相を見せているが、それは俺も同じだった。

「失敗した……!?」

『これが対ギャオスの新兵器、“反超音波発信装置搭載型メーサー車”よ』

「凄い、この反超音波、その、これがあれば!」

 非常に長ったらしい名前が頭に入らないが――

『人類が持ち得るものは全て投入する……これは総力戦よ』

 光線を封じられたギャオスたちは怒りに満ちた鳴き声を上げ、ならばと地上に降り注ぐように降下してきた。それに真っ先に対峙し、まさに火蓋を切ったのはガメラだった。

 ガメラが大きく空気を吸い込むと、口腔の奥から輝く炎が漏れ出し……それを一気に解放するように、強烈な火球を放った。

 そこに突っ込む形になった成体のギャオスが一瞬にして火に呑まれ、炎の塊と化して古都に落下し、爆発した。

「始まった……!」

 

 上空のザギが余裕のある態度でネクサスやモスラから目を離し、地上の様子を見下ろした。

「なんだ、なかなか人類もやるもんだ」

 ふん、とザギは嘲笑を飛ばす。

「だが健気な抵抗だ……お前も、じきに絶望に沈む」

 カメラを構える俺がザギの視線の先にいた。

 






すいません、忙しくて短くなりました
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