三年生三人がそれぞれの道に進んだ後の最初の七夕の時間軸です。
果南ちゃんが海外のどこでライセンスをとってるのかわからないので、そこは勝手な想像です。
「ふぅ。今日もいっぱい泳いだなぁ」
一日中潜りっぱなしで少し疲れたから砂浜に寝ころび、周りに誰もいないから思ったことを口に出した。
浦女を卒業してダイビングのライセンスを習得するためにグアムに来てもう三ヶ月。英語はそこまでできるわけじゃないから、最初はちゃんと生活できるか心配だったけど、鞠莉のおかげで簡単な英会話ぐらいならできたから何とかなった。まぁ、日本人のインストラクターさんがいたおかげはけっこう大きいけど。
ライセンスは取得したけど、最近は海外からお客さんも多いから、ちゃんと話せるようになるのも目的。それに、ここでインストラクターとして色々と盗めるところは盗まないと。
そんな訳で、もうしばらくはこっちにいないとね。まぁ、八月ごろには戻って仕事をしないとね。
「それにしても、こっちの空は綺麗だなぁ」
海のそばだからビルの光もなく星空が視界一面に広がる。内浦もけっこう見えたけど、こっちもけっこう見える。最近はこうして夜に砂浜に寝転がって星空を見るのが日課になっている。元々天体観測は好きだったしね。
でも、今日は特別な日。
今日は七夕で、曇ること無く晴れているから天の川がくっきりと空に広がってきらめいている。
「みんなはどうしてるんだろう?」
そんな星空にを見ながらなんとなしに呟く。
天の川の伝説で彦星と織姫が一年に一回しか会えないからか、なんとなくみんなに会いたい気分になった。まぁ、流石に会えないのはわかってるけど。
最近はバタバタしててあまり電話もできてないし、今日は久しぶりに電話でもしてみようかなん?いや、もうこんな時間だしみんな寝てるかも。鞠莉はたぶん大学の講義中だろうし。
それに、声だけじゃなくて面と向かって会ってハグしたい。
会いたいけど、会えないもどかしい気分。鞠莉とダイヤは「空は繋がっている」って言ってたけど、やっぱり近くにいないとね。
だから私は右手を星空に伸ばす。
そして、願う。
「またみんなと一緒に居られますように」
ピロン♪
「ん?」
すると、私のスマホにメールでも来たのか通知音がして、ポケットからスマホを取り出すと、ディスプレイを見る。
そこには千歌の名前が映っていた。
「なんだろ?……あっ!」
~ダイヤ~
「今日はこれくらいにしておきましょうか」
講義の復習を終えてノートを閉じると、時間はだいぶ耽り、そろそろ寝支度をする時間になっていた。
東京に上京して早三ヶ月。黒澤家の名に恥じぬように規則正しい生活を心がけ勉学に励む。大学に入学した当初はラブライブで優勝したグループの一人だからかたくさんの人に話しかけられましたが、今は幾分か落ち着いた。まぁ、それでも、時々その手の話はありますが。
窓から外を見れば今日は一日中晴れていたからか今も雲は無く、空はくっきりと見える。残念ながら高い建物が多いせいか明かりによって星はあまりよく見えませんが。それでも、一、二等級ほどの輝きの星はビルの明かりに負けずに輝いて見えており、その中でもひときわ輝いて見えるものが三つ。
「そう言えば今日は七夕でしたね」
その星がなんなのかは昔果南さんと鞠莉さんと三人で星を見ていた頃に果南さんに聞いていたからか、ぼんやりではあるけど思いだせた。流石にだいぶ前ですからそれら全てを完全に覚えている訳ではありませんが。
「もし、もっと早く仲直りしていれば去年は一緒に見れたのでしょうか?」
思う事はあの日から始まったすれ違いと、もしもの未来。
高校一年の時のすれ違いによって離れ離れになり、あれ以来果南さんともあまり話さなくなり、毎年のように行っていた天体観測も行わなくなった。もし、果南さんと鞠莉さん、それとわたくしが胸に秘めていたことをそれぞれちゃんと口にしていれば、すれ違うことは無かった。そうすれば、三人でもっと一緒に過ごせたかもしれません。
まぁ、過ぎてしまったことを悔やむのは今更ですわね。
それに、あれはあれでいい経験。気持ちを無理に隠さずに素直になる。もし、あれが無ければ今のAqoursは無かったでしょうし。
「果南さんも向こうで見ているのでしょうか?鞠莉さんは……昼だから無理ですわね。それに仮に夜でも忘れてそうですし」
お二人が今どうしているのか。ルビィたちに電話は時々していますが、お二人の場合は海外ですからいろいろ気を使うところですし。チャットでやり取りはしてますけど。
今日は久しぶりに電話でもしてみましょうか?
「いや、止めておきましょう」
ここで電話をすれば寂しかったのかと冷やかされるに決まっています。どうせ、お二人の方からしびれを切らして電話をしてくるでしょう。
ピロン♪
「あら?」
すると、机に置いておいたスマホに通知が来たようで、スマホを手に取ると確認をする。もしかすると、お二人のどちらからメールでしょうか?
そんなことを思いながらメールの差出人を見ると、千歌さんからでした。勘は外れましたか。それにしてもこんな時間に何でしょうか?
要件を確認するためにメールを開くと、そこに表示されたものに対して笑みがこぼれた。
「ふふっ。向こうは楽しそうですわね……あら?」
~鞠莉~
「Addio,Mari(マリー、さよなら)」
「Addio(さよなら)」
大学の友達と校門で別れて、私は一人歩く。
卒業してもう三ヶ月が経ち、私は充実した大学生活を送っている。小学生の頃は恥ずかしがって誰かにあまり話しかけられなかったけど、果南と鞠莉のおかげでだいぶマシになったから、こうして色んな子と話せる。
この後は特に予定がないから街をぶらぶらと歩く。ほんとは誰かと一緒にと思うけど、みんな何かしらの予定があった。一人でいるのも別に苦ではないけど、あの頃を思い出すとね。
それでも、ここには私だけだから気を取り直して歩を進める。
今日はどうしようかしら?
どこかの喫茶店に寄る?一人で寄ってもね?本でもあれば恰好はつきそうだけど、手元には教科書くらいしかないから却下。
何処かの服屋に入る?この前服を買ったばかりだから買わなくていいわね。
看板を見ながらその度に考えるけど、どこもピンと来ない。
「あら?」
すると、一軒の雑貨屋が目に留まる。
こっちに来てからまだ一度も入ったことのないお店だったから私は面白そうってことでここに入ることに決める。
中に入ると、ネックレスやペンダントといったアクセサリーがあり、値が張りそうなものはショーウインドーの中に、簡素なものは透明なビニールで包装されていくつも掛けられていた。
動物の形をしたものや、宝石を埋め込まれたものなど多種多様で、どれも造りが綺麗で見ている分には長くいられそうだった。
お店を見て回っていると、私はとあるショーウインドーに飾られたペンダントを見て足を止める。
“Aquila(わし座)”“Lyra(こと座)”“Cygnus(はくちょうざ)”
そこには星座をかたどったペンダントがあり、その中でもこの三つに目を惹かれた。
そう言えば、昔は天の川を見ようと三人で山に登ったこともあったわね。毎回勝手に出てきたから家に帰ったら怒られちゃったし、雨か曇りが多くてほとんど見れたこと無かったけど。それでも、一度だけ晴れて天の川を見られたっけ?あの時は綺麗だったなぁ。
この三つの星座は私たちと似ているわね。わし座は果南、こと座は私、白鳥座はダイヤかしら?二人に言ったら何か言われそうだけど。
「そう言えば向こうは夜か。二人とも星空見てるのかしら?と言うか晴れてるのかしら?」
二人のことを考えていたら、二人に会いたくなったきた。今から行こうかしら?いや、やめておこっと。
今の時間だと向こうは夜。果南はまぁ晴れていれば間違いなく見てるわね。ダイヤは寝てたりして。二人と、ううん。九人で見たかったわね。もっと早くに仲直りしていれば、去年見れたのかしら?ううん。去年は曇ってたわね。それにタラレバは意味無いし。
ピロン♪
「ん?」
すると、メールが届いたようで通知音が聞こえてきた。スマホを取り出すと差出人は千歌っちだった。何かしら?
「あっ。ふふっ」
メールを見て笑みがこぼれる。
そして、すぐにまた通知が入る。
「ふふっ……みんな元気そうね。そうだ!どうせだしみんなの分買っていこっと」
~千歌~
「望遠鏡をここにセットしてと」
「千歌ちゃん、調節大丈夫?」
「うん!任せて!」
高校三年生になってもう三か月が経った。クラスがいくつもあるからみんなと別れちゃうのは仕方ないけど、よーちゃんと梨子ちゃんとは一緒のクラスになることができた。善子ちゃんたちも三人一緒のクラスになれたらしくて、みんな楽しい生活を送っている。
今日は七夕ってことで、三津浜に六人集まって星を見ることにした。明日は休みで、合宿の時みたいにみんなチカの部屋で寝る予定だから遅い時間になっても大丈夫……なはず。
ただ星を見るだけだとつまらないから、果南ちゃんの家に行って果南ちゃんのお祖父ちゃんから果南ちゃんの望遠鏡と双眼鏡を借りてきた。で、今はピント合わせ中。
「それにしても晴れてよかったね」
「善子ちゃんの不幸のせいで雨が降るんじゃないかってひやひやだったずら」
「何よ!人を」
「よっちゃんの不幸よりも私たちの幸運が上回ったってことかもね」
「リリーまで……まぁ、確かにこういう時は雨降ることは多いけど」
「そんなことより、星見よ?」
「そんなことって」
梨子ちゃんたちは借りてきたのとか家にあった双眼鏡を持ってそんな話をしていた。そして、双眼鏡で星を見始める。
チカも早く見たいから準備を早く終えないと。
「それにしても、いつ振りだろうね。こうやって星を見るために集まるのって?」
「うーん。果南ちゃんが高校に入ってからはやってなかったから中学生の頃振り?」
千歌の記憶だと、果南ちゃんが受験勉強の息抜きにって、寒い中連れ出されて見た時だったような?空気が澄んでて星が綺麗に見られたのは良かったけど、すごく寒かったことは覚えてる。あと、よーちゃんが寒さで大惨事だったのも。
「そっか、そんなに経つんだね」
「だねー」
よーちゃんと喋りながらピントを合わせて……あっ、いい感じにあったかも。
「よーちゃん、こんな感じでいいかな?」
「ん?……うん!完璧であります!」
よーちゃんにのぞいてもらうと、よーちゃんからもお墨付きをもらうことができた。一応今回合わせたのはこと座のベガ。アルタイルかデネブでもよかったけど。まぁ、理由はなんとなくなんだけど。
「ピント合ったよー」
「ほんと!でも、双眼鏡でも結構綺麗に見れるよ?」
「ふっふっふ。甘いよ梨子ちゃん。望遠鏡はもっときれいなんだよ!」
「果南ちゃんの良いやつだからね」
「そうなの?」
「まぁ、見てみて」
「うん」
梨子ちゃんは信じてないのかそんな反応で、だからとりあえず見てもらうことにする。
「あっ、ほんとだ。双眼鏡よりくっきり見える」
「ほんと!リリー、私にも見せて!」
「善子ちゃん、慌てなくても」
「そうだよ。と言いつつ花丸ちゃんがちゃっかりのぞこうとしてる」
梨子ちゃんの反応を聞いて三人も望遠鏡のそばに寄る。
「それにしても、本当に晴れてよかったね」
「うんうん。天の川もこんなにくっきり見えるし」
「あっ、そう言えばこんなに綺麗に天の川を生で見たの初めてかも」
「そう言えば、去年は曇って見られなかったもんね」
よーちゃんと空を見上げていると、三人と換わった梨子ちゃんが私たちの会話に加わる。そう言えば、東京だと場所によっては晴れててもビルの明かりで見えないんだっけ?もったいないなぁ。あっ、でもそれだけ内浦が田舎ってこと?
「まぁ、内浦でもひさしぶりに七夕の日に見られたわね」
「そうだね。でも、どうせならお姉ちゃんたちとも見たかったかも」
「うん。どうせなら九人で見たかったずら」
三人は交代しあいながら望遠鏡をのぞき込み、見ながら私たちの会話に加わる。
たしかに、三人とも一緒に見たかったかも。でも、三人とも遠くにいるし……。
あっ、そうだ!
「千歌ちゃん?」
「この景色を写真に撮って三人に送ろう!」
「あっ、それいいかも」
「うん。私も賛成」
「いいわね。どうせなら私たちの写真も送りましょ?最近は電話ばっかだし」
「その最近もだいぶ前な気もするけど」
「海外は流石に電話代が高くなっちゃうからね」
チカの提案にみんなも乗り気で、スマホを取り出すと何枚も写真を撮る。星空の写真や、私たちの写真を撮り終えるとメールを作ってと。
「じゃぁ、送るね」
「うん」
三人に向かって送信ボタンを押す。ダイヤちゃんと果南ちゃんは夜だからもしかしたら寝てるかもだけど、まぁ明日には返信が来るよね?鞠莉ちゃんは今昼間なはずだからきっとすぐに返信が来るはず。
「ところで、どの写真送ったの?」
「ん?これと、これと」
善子ちゃんに聞かれて、星空の写真と、自撮りで撮った六人の写真数枚を見せる。
すると、よーちゃんがハッとした表情をする。
「あっ、まずいかも」
「ふぇ?」
何がまずいのかわからず首を傾げると、四人も写真を見て何か気付いた様子でハッとした表情をする。
何?何がまずいの?
「よーちゃん教えーー」
ピロン♪
「ん?果南ちゃん?」
よーちゃんに聞く前に通知音が響く。もう返信が来たのかと思えば、メールじゃなくてAqoursのチャットの方だった。
カナン『勝手に人の望遠鏡使うなー』
「あっ」
写真の一枚にはっきりと果南ちゃんの望遠鏡が写っていた。果南ちゃんのだし、よくよく考えれば果南ちゃんにも聞くべきだった!お祖父ちゃんから許可が出たからそれで安心しちゃってた。
チカ『ごめんなさい m(_ _)m』
ダイヤ『無断使用でしたか。あっ、今年はくっきり見えて綺麗ですわね』
マリー『果南が激おこぷんぷん丸w』