戦姫絶唱シンフォギア赫鋼―アカガネ―   作:樹影

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22:太陰穿つ極光/極光阻む■■

 

 

「――――――その心臓、もらい受ける」

 

 その言葉を言い放たれるや否や、響の目に士郎の姿はブレた写真のような残像となった。

 静止した状態からの超高速移動。生身で動いただけで出るとは思えない爆音を轟かせ、盛大に巻き上がる土煙。

 周囲の瓦礫を砕いて散らせながらの疾駆は、彼女の動体視力で捉えきれるものではなかった。

 ただ、士郎が手にした真紅の槍の穂先が辿った軌跡が、まるで頸動脈の形容かのようにいやに眩しく網膜に残った。

 いや、シンフォギアを纏って向上した感覚でこれなのだ。生身で見ていたらそれこそ何一つ目に映らなかったかもしれない。

 

 ―――だから。

 

刺し穿つ(ゲイ・)………ッッッ!!?」

 

 途切れてしまったセリフが鼓膜を震わせたのと、目の前に現れた惨状のどちらを先に認識できたのかは、ついぞ判らなかった。

 

「―――……ぇ?」

 

 思わず、場違いに呆けた声が出る。

 朱い槍は、それこそフィーネの体を穿つ寸前。横から見れば、穂先のいくらかは胸の大きな膨らみに隠れて見えただろう。

 しかし、それよりも先に槍を突き出していた男の躰こそが至る所を貫き穿たれていた。四肢は無論のこと、肩口、腹、背など。それこそ、宙に縫い付けるかのように連なった刃が深く食い込んで音速を越えていた士郎の体を引き留めていた。

 

 ―――そう。連なった刃。

 ネフシュタンの鞭刃。

 フィーネの五体ごと四散していたはずのものが、しかし明らかに元の数よりも遥かに本数を増やして殺到していた。 

 

「ガ、フッ………」

 

 ゴバ、と士郎の口から血が固まりとなって吐き出される。

 しかし、それでも瞳に意志が宿っているのは瞠目すべきことだろう。本来なら無理矢理にかけられた制動の揺り返しで、そのまま全身が千切れ飛んでいてもおかしくなかった。

 だがさすがに動くことはできないのか、その眼力に苦痛を混じらせて、目の前のフィーネを睨むことしかできない。

 磔のままのフィーネは、手足を取り戻しながらそれを艶然と眺めていた。

 そして響の視界の端で、何かが猛然と飛翔して―――

 

「う、あぁあああああああああああああああああああああああっ!!?」

 

 ―――それを、無我夢中で掴んで止めた。

 ザリジャリギャリィッッ!!! 、とまるで急停止する列車の車輪のように掌を擦過し、やがて熱さに似たような鋭く刺さる痛みでようやくそれが鞭刃であることを認識する。

 装甲と防護を削って血をわずかに飛沫かせていくが、これが生身であったならば手首から先はとうに原形を失っていただろう。

 果たして抑え込まれた鞭刃は、士郎のこめかみからわずか数ミリの位置でその切っ先を静止した。

 

「づ、ぅ―――はぁっ! はっ、はっ、はぁっ、はぁっ、はぁ……」

 

 鞭刃を放り、息を整える。掌からはボタボタと血が零れるが、指は全て繋がっているしどれもちゃんと動いてくれる。

 どうやら皮が多少裂けた程度で済んだらしい。

 そのことに安堵を覚える余裕すらなく、何も考えられないままに顔を上げてみて―――

 

「………………え?」

 

 ―――今度こそ、決定的に思考が停止した。

 

 彼女の見る先、そこに立っていたのは紛れもなく、フィーネだった。

 上げた右腕にぐるりと緩く一巻き絡ませて、こちらに突き出すように放っているその立ち姿は黄金の装甲を確かに纏った長い金髪の女怪に相違ない。

 そこにはなにも違和感はない。鞭刃はネフシュタンのもので、ネフシュタンの鎧は今はフィーネと一つになっている。

 ならば、鞭刃を放った者がフィーネであるのは自明の理である。

 そう―――多数の鞭刃で空中に縫い付けられている士郎の眼前で、今も磔になっているフィーネの存在が無ければ。

 

「な、なにが……?」

「―――フフフ」

 

 混乱、困惑、唖然、愕然。

 それらがない交ぜとなって、酩酊すら覚えそうなほどに混沌としてきた響の耳朶を、眼前のフィーネからの笑い声が叩く。

 

「フフフ」

「フフフフ」

「ハハハ」

「アハハハハ」

「ハハ」

「ハハハハハハ」

「フフフフフフ」

 

「フフフ「ハハハハ」フ「ハハ」フフフ「アハハハハハ―――――」!!!!」

 

 ………違う。

 眼前だけからではない。

 右からも、左からも、後ろからも。

 四方八方から、全く同じ声音の嘲笑がズレながら重なり合って響き渡っている。

 まるで幾つものスピーカーを置いて、一つ一つの時間をずらしながら音声を再生しているかのように。

 

「っっ!!?」

 

 車に酔ってしまったかのような立ち眩みを覚えながら、響は声も出ないままに身体ごと振り返って辺りを見回していく。

 すると―――居た。

 右にも、左にも、後ろにも。

 どこを向いても、立っている。

 一人しかいないはずのフィーネが、自分たちを囲むように四方八方に佇んでいる。

 その手にした鞭刃で、それぞれが士郎を貫きながら、どこまでも愉しげに嘲笑(ワラ)っている―――!!

 

「―――……なるほど、な」

 

 響のみならず、奏達さえも硬直せざるを得なかった意識が、血を吐く様な掠れた声に引き戻される。

 いや、声の主は事実として喉奥から血を溢れさせながら、絶え絶えに言葉を紡ぎあげていた。

 

「切り離された肉体の、一つ一つが……独立した個体となったか」

「―――ガ、フ。……ふぅ。正確には違うな。あれらを統べるのはただ私だけ。

 一人の意思によって完全に統制された複数の肉体。信頼や連携などというものと同じ次元と思ってくれるな」

 

 フィーネは喉を貫いていた剣をついに引き抜き、眩しく艶やかな裸身をそのままに晒しながら己の足で立つ。

 そのまま突きつけられた槍を軽く弾いて落として、フィーネは士郎の顎に手をやって軽く持ち上げた。

 弾かれた朱槍は地に転がるよりも早く粒子となって消えていく。見ているだけで肌を削がれそうな威圧など、まるで幻であったかのように。

 フィーネが見下ろす、士郎の姿。枝に突き刺さって啄まれるだけの蛙のような有様になりながら、それでも瞳の力と輝きを失わずにこちらを睨みつける男。

 その様に、彼女は大切に寝かせた良酒を喉奥で転がすような愉し気な顔を浮かべる。

 そしてフィーネが顔の横までもってきた左手をパチンと鳴らせば、士郎の体に食い込んでいた無数の切っ先が一斉に引き抜かれた。

 

「フッ……!!」

「がっ……ぐああああぁっっ!!!」

 

 間髪入れず、士郎の腹に叩き込まれたのは掬い上げるような軌道のボディーブロー。刃の食い込んだ傷口を的確に抉る一撃は、衛宮 士郎をしてただ無様に吹き飛ばされるがままとなった。

 数メートルを一息に飛び、叩きつけられる長身。その全身と、何よりも仰向けとなった口から盛大に溢れる生々しい赤色に、少女たちの停止していた思考と硬直していた肉体が一斉に再起動する。

 

「衛宮さん!!」

「若大将!!」

「士郎さん!!」

「アンちゃん!!」

 

 纏う赫を生々しい鮮血の紅で上書きした士郎に、少女たちが一斉に駆け寄る。そんな彼女たちを、しかし士郎は鋭く睨み返した。

 その口から、血と共に叱咤が飛ぶ。

 

「ッッ、バカ、やろう!! オレに、構っている場合、か……!!」

「でも……!」

 

 心配げな様子の響をよそに、士郎はよろめきながらも立ち上がる。

 体中の(キズ)は、すでに刃によって蓋をするように閉ざされ始めていた。だが、それがもはや気休めにもなっているのかさえ怪しい。

 満身創痍となった士郎へと集中する全員の意識。ともすれば、一人か二人は首を落とされていてもおかしくはないだろうほどどうしようもない間隙。

 そこに落とされたのは、刃ではなく憐れみと嘲弄が入り混じった声だった。

 

 

 

「ハ。そう急くな、戯れるくらいの時間は構わんとも。

 ―――なにせ、ちょうどよく『羽化』もできたところだしな」

 

 

 

 瞬間。

 言葉の内容を解すよりも先に、魂を直接鷲摑みにされるような感覚に息を呑む。

 

「―――………っっ!?」

 

 響は思わず、締め付けられているわけでもないのに喉元に手を伸ばす。

 悪寒という言葉で片付けるには圧倒的に過ぎる気配。

 まるで骨と肉と内臓を別々に捥ぎ取られたかのような感覚に、無意識的に行う当たり前の肉体活動すらたまさか覚束ない。

 ともすれば、膝から崩れ落ちなかっただけでも褒めるべきか。

 

「っつ、あああああああああああああ!!!」

「オォオオオオオオオオオオオオオオ!!!」

 

 ―――蒼ノ一閃

 

 ―――STARLIGHT∞SLASH

 

 

 その一方で、翼と奏は振り向いてそれをしかと見定めるよりも先にその武威を解き放った。

 響が襲われたのと同じ感覚。それを受けて、なお刃を振るう選択を選べたのは戦いの中で培われた矜持からか。……或いは、窮鼠のそれか。

 

 いずれにせよ、放たれたのは紛れもなく必殺の斬撃。

 反射的であるが故に加減も容赦も介在する余地はない。

 それらは互いに打ち消し合うこともなく、やがて一つとなって万物を十字に断つ光の刃となって飛翔し―――

 

「不躾。だがそれ以上に温すぎて眠気すら浮かぶ」

 

 ―――なにを為すこともなく、吞まれて消えた。

 

「な、に……?」

 

 愕然と、目を見開く翼。

 その瞳に映るのは、脈絡もなく表れて光を吞み込んだ『穴』。

 余人が思い描くだろうブラックホールそのままのなにかが、彼我の間に生じていた。その外周には、細長い八面体の結晶がまるで衛星のように『穴』の外周を旋回していた。

 と、その結晶が泡が弾けるようにそれぞれの軌道で飛び散り、向こう側へと姿を消す。そうすれば、『穴』はまるで靄が晴れるように霧消していく。

 

 そうして顕れたフィーネの姿。

 己と全く同じ顔の分身を左右に従えながら露わになったそれは、しかし決定的に変貌を遂げていた。

 より大きく、禍々しく、変貌した黄金の装甲。そのなかでひときわ目を引くのは、背より突き出た一対の翼。

 羽も皮膜もないそれには先ほどの『穴』を生み出していた結晶体を装飾のように納めている。形状としては翼竜の骨格然としていながら、フィーネ自身も総じて見た印象としては古代文明の遺跡に眠っていた神像を彷彿とさせる。

 そしてなによりも大きな変化は、これまで主武装として振るっていた鞭刃の色合いだ。

 鎖のような刃の連なりは鮮血のような紅から、黄昏時のような吞み込まれて二度と浮かんでくることができないような紫紺混じりの深い(アオ)へ。

 それはあたかも、彼と我の根本的な違いを示す貴き血(ブルーブラッド)を暗喩しているかのようだ。―――或いは、それこそ神の血(イー・コール)か。

 

 もはや『神威』とも呼べるような存在感を以て、フィーネは蹴散らすべき眼前の命をまるでバースデーケーキの蝋燭の火を見るかのように睥睨している。

 

「この程度で一々驚いてくれるなよ。そんなざまでは、ここから先の時代には適応できんぞ?

 ―――まあ、生き残れていたらの話だがな」

 

 直後、後光というにはあまりにも強くフィーネの背後が輝き始める。

 積乱雲の如く電光を伴い始めたそれは、

 

「カ・ディンギルが……!?」

「まさか、臨界!?」

「ク、ハハハハハ―――寿げよ。これより、新たな地平が幕を開ける」

 

 迎え入れて抱きしめようとするかのように両腕を広げながら、フィーネは高らかに笑う。

 と、『だが』、と続けながらフィーネの眼差しが刃のように細く鋭くなる。

 

「その道行きに湧く羽虫は、さっさと払って掃除せねばなるまいな」

 

 その言葉が引き金か。

 フィーネの左右を固めていた彼女の分身体が、一斉に飛び掛かってくる。

 

「―――っ!」

 

 息を呑んだのは、誰が最初だったか。

 分身と言えど、その能力は先ほどまでのフィーネと遜色はない様に見え、それが複数。

 背筋を粟立たせずにはいられない光景だ。

 

「「「フゥハハハハハハァ――――!!!」」」

 

 哄笑と共に放たれる鞭刃。

 掴みかかりに来る黄金の手指。

 一人一人に対してなお過剰に殺到する暴力の嵐に、少女たちは翻弄されつつあった。

 

「ぅ、づぅっ……!!」

 

 肩口を鞭刃が擦過した直後に、別方向から繰り出された拳打をどうにか受け止め堪えながら、奏は呻きとも舌打ちとも取れない何かを食いしばった歯から漏らしていた。

 現状は非常にマズい。どう足掻いても防戦一方、ただの一人相手でも圧されていたというのに、これでは―――そう考えていたその時、まるで思いがけず静電気に手指を弾かれたような感覚で違和感に突き当たる。

 

(………いや、ちょっとマテ。『なんで防ぎきれてるんだ?』)

 

 先ほどまで、自分たちはこれと同じフィーネ一人を相手に攻めきれなかった。

 それが集団という悪夢めいた形で襲われているというのに、拮抗できているという事実に矛盾を感じずにはいられない。

 確かにフィーネ自身は戦闘に関してはそもそもが門外漢であり、集団戦の連携に隙が生じやすいという事実は存在しているだろう。それは戦っていて実感として得ているものだ。

 だがそれに納得を得るよりも先に、疑惑が楔のように突き刺さる。なにせ、いくらなんでも都合が良すぎる。

 そも相手は複数人の態でありながらその実態はただ一人の意思により動くモノ、連携の得手不得手の常識など範疇にあるかも疑わしい。

 

「………、―――!!」

 

 攻防の合間、スキとなるのを覚悟の上で視線を巡らせて。

 奏は驚愕と同時に得心に至る。

 

 視線の先、跋扈する分身体で作られる壁の向こう側で―――堪えきれないような、邪悪な笑みがフィーネの美貌に浮かんでいた。

 

 瞬間、彼女は悪寒と共に空を見上げ………『それ』を見つけてしまった。

 

「……、う」

 

 焦燥と危機感と生存本能。

 油に浸した薪よりも激しく燃焼し始めたそれらは、奏にシンプルかつ余剰のない警告を反射として発せさせた。

 

「上だぁあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

 

 引き裂くような、奏の必死な叫び。

 それにフィーネ以外のその場の全員が弾かれるように天を仰いで―――絶望を、目の当たりにした。

 

「………………な、んだ?」

 

 クリスの口から、そんな疑問が漏れる。

 見開かれた両の瞳の先には、巨大な『穴』が口を開いていた。

 外周を巡る、八つの八面体。それが象る『穴』は、それこそ何もかもを呑み込むには十分だと思わせるものだ。

 しかしクリスが……彼女を含めた皆が、戦慄と共に思わず言葉を失ったのはその『穴』ではなく。

 そこから今にも生まれ落ちんとする、巨大な黒い『ナニカ』に対してだった。

 

―――DISTORTION GATE

 

 ソレは『穴』と同じく漆黒に染まりきった、丸い巨大な塊だった。

 空気すらもうねりながら巻き込み、引き裂きながら落ちんとする様は隕石を彷彿とさせるが、しかしこれはそれよりも冷たく、殊更に重く感じ取れてしまう。

 余人が頭に思い浮かべる『絶望』という言葉……それらを纏めて、纏めて、纏め続けて丸く固めたモノだと、そう言われたらそのまま信じてしまいそうですらある。

 そして、その『ナニカ』は這い出るように『穴』からこちらへと零れ落ちんとしていて―――

 

「っっっ!!?」

「させるとでも?」

 

 迎え撃たんと構えようとしたその時、嗤いを含んだそんな言葉と共に鞭刃が振り下ろされる。

 それを皮切りに、それこそ天のそれを認識したことこそがスイッチであったかのように分身体の猛攻が激しさを増す。それもただこちらを攻め立てるのではなく、行動そのものを阻害するかのようなものだ。

 その意図は明白だった。

 

「こいつら……!!」

「正気か!? このままだと、お前たちも―――!」

 

 言葉の最中で、翼はそもそもの前提が乖離していることに気付いてしまう。

 そう、目の前に立ちはだかるこれらは分身体で、しかもその意思はただの一人に基づくものだ。ならば一つや二つ―――或いはその全てが、まるでゴミ箱に放り捨てるゴミクズよりも簡単に使い潰してしまえる程度のものでしかないのか。

 その考察を深く思慮する暇すら与えないとでも言うかのように、分身体の攻撃はどこまでも苛烈になっていく。

 そして天の黒球は、咆哮のようにうねりを大きく鳴らして全てを押し潰さんと墜ちてきて―――

 

 

 

「―――ぅああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!」

 

 

 

 ―――その全てを吹き散らさんとするような雄叫びと衝撃。

 それは耳朶よりも先に叫んだ当人以外のそれぞれの全身を叩いた。

 

「なぁっ!?」

 

 背からそれを受けたクリスが振り向けば、そこには自身の体を砲弾のように射出する響の姿があった。

 自分と同じように抑えつけていた分身体たちを、無理矢理に振り払ったのだろう。その全身の装甲は所々がひび割れ、血が流れ出ているところも少なくない。

 

「―――、――――!!!」

 

 その上で、響の口からは力強く歌が紡がれている。それと共に、身を包む輝きは強まっていき、更には胸を張るような体勢で構えられた両腕の装甲がこれまでになく大きく展開する。

 まるで弓そのものを折らんばかりに引き絞るように後方へとスライドされる腕部装甲。絶唱に届く出力をたたき出してきたこれまでの打撃と比して、しかし比較にもならないほどの力が込められているのが傍から見ている身でも瞭然としていた。

 そうして響は、繰り出さんとする一撃にも負けないほどに力強い輝きを瞳に宿しながら―――奈落の底のような色に染まった『絶望』に挑みかかる。

 

 

***

 

 

 

「―――!! ―――!!!」

 

 胸の歌を紡いで響かせながら、響は数秒とかからず衝突する『絶望』を睨みつける。

 実のところ、どうしてこうなっているのか彼女はよく覚えていない。

 気づいたら体中のあちこちは痛いし、地に足はついていないし、両腕を振りかぶっていた。

 本当の意味での無我夢中とはこういうことなのだろうかと、場違いな感心を頭の片隅でしてしまっているほどだ。

 ならば後悔しているのかというと………当然、そんなものは微塵もない。むしろ、自分で自分の行動に納得したほどだ。

 

 そう、例えどんなに熟考を重ねたとしても。

 どれほどの選択肢を提示されたのだとしても。

 同じ状況で、同じことができて、それが最良だと思ったのなら。

 きっと何度でも、自分は同じように拳を振るうだろう。

 

 見据えた先……眼前はもう黒一色で、それだけで心臓を鷲摑みにされたように恐ろしい。

 ―――だとしても。

 

(胸の想いがある限り―――)

 

 最速で。

 最短で。

 まっすぐに。

 一直線に―――

 

 

 

「ぶ・ち・ぬ・けぇええええええ―――――――――っっ!!!」

 

 

 

***

 

 

 

 果たして。

 衝突の瞬間、確かに全ての音が消え―――刹那を挟んで、『絶望』が撃ち砕かれた。

 

 巨大な亀裂が奔り、裂けるとほぼ同時に千々に砕け散りながら消えていく巨大な黒。

 やはり単純な岩塊ではなかったのだろう、破片は砂よりも細かく崩れながら地面に降り注ぐよりも先に霧散していく。

 だが、それをまともに認識できるものはいなかった。

 

 激突と、破砕。

 その余波が、そのまま大地を席巻して盛大な煙幕を生み出していったからだ。

 それは士郎も、少女たちも、分身体たちも漏れなく包み込み、それにとどまらずフィーネ本人にまで届いてその視界を色濃く煙らせていく。

 

 立ち込める粉塵の暗幕。そこへ背から落ちていく響の体は、まるで襤褸切れのような有様と成り果てていた。

 特にひどいのは両腕で、装甲は完全に砕け散って無くなっており、インナーも裂けている上に全体が真っ赤に染まって血を滴らせている。

 よくよく見ればどこか腕そのものの形もどこか歪に変形しているように見えた。恐らくは、一か所や二か所の骨折どころではないだろう。

 だが、恐らくはこれでも被害としては軽度。ともすれば、腕の原型はおろかそのものが弾けて無くなっていてもおかしくはなかった。

 そして響の姿が煙の帳の只中へと呑まれていった直後。

 

―――MEGA DETH FUGA

 

 反撃の一手がすでに、破城槌じみた吶喊で以って放たれていた。

 

「……、ほう」

 

 主観で見れば、あまりにも唐突だろう強襲。

 喉にいがらっぽく煩わしい粉塵のカーテンの向こうから、認識した時にはすでに目と鼻の先に弾頭の先端は迫っていた。

 それに対し、フィーネは薄い笑みと共にそんな一言を漏らすのみ。

 まるであからさまに過ぎるビックリ箱を開いたかのような反応の薄さで、それはそのまま迫りくるそれを脅威とは見なしていない証左であった。

 そして、それはまさに正しい反応だ。

 

 キン! と金属というよりもガラス質な音を響かせて奔る一閃。

 その軌道はおろか、所作すらまともに認識できない挙動は長大な弾頭を冗談のような綺麗さで縦に真っ二つに分割した。

 断面で挟み込むように、フィーネの両脇を通り過ぎる残骸。全速の列車が至近で通り過ぎたかのように金の長髪を振り乱されながら、しかし悠然と佇んでいる。

 ―――そんな彼女の左右を、

 

「おぉおおおおっっ!!」

「はぁああああっっ!!」

 

 双翼がそれぞれの切っ先で貫かんと挟み込む。

 切り裂かれた弾頭が左右を通り過ぎるや否やに突き込まれる槍と刀。

 ともすれば、お互いすらもろともに貫きかねないほどの意気を込められた刺突はしかし、

 

「「―――っ!?」」

 

 キン、と。

 手繰られるでもなく自ずから動いた鞭刃のそれぞれの切っ先によって受け止められてしまう。

 重なり合う四つの先端は、恐らく針の先ほどの面積しか接していないだろう。それがフィーネの意思によるものか鎧の機能による自動的なものかは判然としないが、いずれにしろ神業と言っていいだろう所業を児戯のような手軽さで実現できてしまう現実には戦慄を禁じ得ない。

 

 そうして、次の刹那。

 フィーネの左右に四対の光が奔った。

 少なくとも、翼や奏にはそうとしか見えなかった。

 そして一拍の後。

 

「「っぅあああああああああああああああああああああああああああああああ―――ッッッ!!!」」

 

 全身に迸る激痛に、双翼の歌姫に似つかわしくない悲痛な絶叫が響き渡る。

 力を失って崩れ落ちる二人の体からは手足や脇腹などから夥しいほどの鮮血をまき散らしている。

 倒れ伏しながら奏が睨みつけるのは、背から生えた異形の翼だ。そこには今、納まっていたはずの結晶体は存在していない。

 

(そう、か……ソレが、さっきの光線の正体……!!)

 

 そう、『穴』を生み出すときにも用いられた八面体の結晶。

 それがこちらの認識を超越する速度で撃ちだされ、シンフォギアの防護を普通の衣服のようにこちらの体ごと貫いたのだ。

 だが、それよりなにより奏の神経を逆なでするのは、フィーネがこちらを寸毛たりとも見ていないという事実に対してだ。

 

(クソッ……コイツにとっちゃアタシ達のことなんてコバエが纏わりつく程度かそれ以下ってことかよ……!!)

 

 歯噛みしながらも、しかしその悪態を曝け出すことすらままならずに背から地に沈むことしかできなかった。

 そしてやはりそれらを一顧だにしないまま、フィーネはある事に思考を巡らせている。

 それは、ある一つの疑問に対してだ。

 

(さっきのクリスの技……アレは確か二発で一組のものだったはず)

 

 しかし、先ほど自分に向かってきたのは一つだけだ。ならばもう一発は?

 そう考えていた矢先に、自身の頭上から煙幕を祓う豪風を伴って重低音が鳴り響いた。

 その正体は言わずもがな、今しがたその如何を疑っていたクリスの弾頭であり、その軌道にようやくフィーネは驚かされるに至っていた。

 

「まさか、カ・ディンギルを直接狙うつもりか!?」

 

 そう口に出して、次の瞬間にはその稚拙さに口角が嘲りに吊り上がる。

 あの程度の弾頭が直撃した程度では、カ・ディンギルが揺らぐことはない。そしてそれ以前に……

 

「あんなもの、落として散らすなど羽虫ほどの手間もかからんわ」

 

 その言を現実のものにせんが為、右腕を持ち上げたところでふと気づく。

 視線の先で、突き進む大型のミサイル。

 

 ――――――そこに、アカい影が見えたような気がした。

 

「………、なに?」

 

 疑問に動きが止まったその刹那。

 フィーネとその分身体を阻む様な一斉射がミサイルから降り注いだ。

 それを放ったのは―――

 

 

 

***

 

 

 

「―――おい、バカ。………いや、響っつったか」

「え?」

 

 いがらっぽい粉塵と、きな臭い噴射煙。

 二重の煙幕で殊更に周囲に隠されながら、クリスは振り返ることなくすぐ後ろで横たわる響へとそんな言葉を向けた。

 彼女が自身のすぐ傍に落ちてきたのはただの偶然で、煙っていたせいで受け止めることも出来なかったことに対しては密かに申し訳なく思っている。

 だが同時に、この僅かな幸運を感謝してもいた。―――そうでなければ、この言葉を言い残すことも出来なかっただろうから。

 

「………ありがとう。お前が最初にアタシに向かって図々しく踏み込んでこようとしなければ、アタシはきっとロクでもないままに終わってた」

 

 もし、コイツがしつこいまでに手を繋ごうとしてこなかったら。

 自分は間違いなく、ここにこうして立っていなかった。

 

 奏は己を絶対に赦さなかっただろう。

 ―――少なくとも自分は、その憎悪と殺意に応えていただろう。

 

 翼も受け入れようとはしなかっただろう。

 ―――少なくとも自分は、当然のように再び刃を向けていただろう。

 

 ………士郎はさて、どうだろうか。少なくとも、共に戦うことは良しとはしなかったかもしれない。

 ―――少なくとも自分は、殊更に彼を拒絶していただろう。

 

 けれど、そうはならなかった。

 あれほどに刃を向け合って。

 あれほどに血を流し合って。

 あれほどに傷つけあって。

 それでも、手を伸ばしてくれたから。

 手を繋ぐことを諦めてくれなかった奴がいたから。

 

「おかげでアタシは、アタシ様の大事なことを思い出せた」

 

 パパとママの夢のこと。

 そしてパパとママが大好きだったということ。

 ―――アタシ自身の、大切なもの。

 目を逸らし続けたモノを再びこの胸に抱くことができた。

 

 ………それだけでもう、満足だ。 

 

「だから、罪滅ぼし……てぇーか、自分自身の尻拭いかな。これは」

 

 撃鉄を起こすように、目を眇めて見上げながら睨みつける。

 その先には、濃厚な煙の切れ目から覗く巨大な塔。

 何処までも高く天を衝き、紫電と共に輝く様は更に先へと手を伸ばして太陰を握り潰さんと猛り狂う獣の唸りだ。

 その姿を見つめるだけで背筋には寒気が走り、胸の内が掻き毟りたくなるほどに締め付けられる。

 

 クリスにとって、アレは解りやすい『罪』の証明だ。

 裏で暗躍し、ここまでの事態を引き起こしたのは紛れもなくフィーネだが……己が罪業までを押し付けられるほど、彼女は厚顔にはなれなかった。

 

「―――悪ぃーが、ブチ壊すのは任せる。その代わり、今ぶっ放そうとしてる分は任せとけ」

 

 言いながら、シンフォギアの装甲を意識する。

 彼女の扱う技の中には。リフレクターを展開するものもある。それを絶唱で極限まで出力を向上させ、同時にこちらからも砲撃することで威力を減衰、相殺する。

 それがクリスの狙いだ。

 無論、防ぎきれるかどうかは賭けである。

 そうでなくとも絶唱のバックファイアに、何よりも荷電粒子砲の一撃を真正面から受け止めるのだ。……恐らく、どんなに楽観的に見ても五体満足ではいられないだろうし、まず間違いなく命はない。

 ―――だとしても。

 

「それをやる理由も、手段も―――そして意志も、アタシにはあるんだ」

 

 だから、クリスは迷いなくそれを選んだ。

 贖罪からの自己犠牲ではなく、前に進むための清算として。

 父母と―――そして、己自身の夢となった、『歌で世界を救う』ということを、叶えるために。

 

「ま……って、クリ、ちゃ……」

 

 両腕を使えない響が、呻きながらも体を起こそうと藻掻いている。

 そんな彼女に申し訳なく思いながら、クリスは両足に力を込めながら最後のミサイルに火を点けた。

 背面の発射台を離れる白い弾体。加速を始める寸前のそれに飛び乗るため、僅かに身を屈める。

 

「それじゃあ―――」

 

 後は頼んだ、と。

 そう告げる寸前。

 

 

 

「いや、悪いがそれはオレが使わせてもらおうか」

 

 

 

 こちらの体を抑えつけるように、肩を足場にしてミサイルに飛び乗る誰かがいた。

 

「っ、え?」

 

 戸惑いは一瞬。

 だがその一瞬が、どうしようもなくその後の展開を決定づけた。

 息を呑み、見上げたクリスの目に映るのは、天へと昇ってグングンその姿を小さくしていくミサイルと、鎖を巻きつけてそれにしがみつく一人のアカい影。

 瞬間、クリスは激発して叫んだ。

 

「っっっ、なにを……なにをヤってんだよっっっ、アンちゃんっっ!!」

 

 

 

 一方で、地に転がる響はその一部始終を見ていた。

 見ていることしか、出来なかった。

 クリスが犠牲になろうとしているところも。

 士郎がそれを肩代わりするところも。

 

「そん、な……衛宮さん……」

 

 自分なら、止められた。

 自分にしか、止められなかった。

 クリスも、士郎も、ここにいる自分なら止めることも出来たはずなのだ。

 けれど、肝心な時にこの両手はほんの少しも動いてはくれなくて。

 

「あ―――」

 

 大きく武骨な背が、遠のく。

 血よりも紅く。

 夕日よりも朱く。

 錆などよりもなお鮮やかに赤い。

 赫い鋼のような背中が、彼方へと。

 

「あ、ああ―――」

 

 誰かと繋ぐための手。

 繋いだ手を離さないための手。

 けれど、今はその手は繋ぐどころか、延ばすことすらままならない―――

 

「あああ―――……」

 

 だから、結局。

 立花 響は。

 いつかのように/これまでのように。

 ただ無力に、誰かの終わり(ケツマツ)を見送ることしかできないのだ。

 

「あああああああああ―――――――ッッ!!!!」

 

 少女の慟哭も、地鳴りと風切り音にかき消される。

 それこそ、彼女にその無力を知らしめるかのように。

 

 

 

***

 

 

 

停止解凍(フリーズアウト)全投影連続層写(ソードバレルフルオープン)

 

 眼下へと降り注ぐ、剣雨の砲撃。

 それらがフィーネと分身体の動きを阻害したのを細かくは見ないままに、士郎は天上を見上げる。

 俄かに頭をよぎるのは、置き去りにした少女たちのことだ。

 

 怒らせただろう。

 悲しませてしまったかもしれない。

 呆れてしまっただろうか。

 ……いっそ、愛想を尽かされてしまったならそれに越したことはないと、そう考えてしまうのは流石に無責任か。

 そう考える士郎は、しかし心苦しさや罪悪感はあれど迷いも後悔も微塵も抱いていなかった。

 故に。

 

「―――投影、開始(トレース・オン)

 

 紡ぎなれたその一言で、あらゆる意識(みれん)切り替えた(きりすてた)

 刹那、瞑目と共に己が裡へと埋没する意識。踏みしめるように辿り着く己の心象。―――無限の■■。

 

「………、」

 

 引き抜くように、紡ぎあげる幻想。

 それは常よりさらに強く、常よりさらに精密に。

 総身を駆け巡る力の奔流は、それだけで衛宮 士郎という存在そのものを軋ませる。

 引き裂く電圧のように。

 押し潰す水圧のように。

 櫛削る激流のように。

 融け滴らせる熱のように。

 魂を練る巡礼のように。

 ―――その全てを踏破して、弾丸のように己の掌中に装填する。

 

 そして。

 文字通りに瞬きの間でそれらを終えて、刮目する。

 

「―――ああ」

 

 そうすれば、広がるのは惑星(ホシ)の丸みさえ見晴るかすほどの俯瞰の絶景。

 強化された視覚は、満月の明かりだけで無人無灯の街並みを十全と睥睨する。

 思わず漏れた感嘆の声は、美しいからでも圧倒されたからでもない。

 自分がここで生きていたということを、改めて実感したからだ。

 

「だが、オレは異分子だ」

 

 それは誰がなんと言おうとも、紛れもない事実。

 並行世界からの漂着者。

 『衛宮 士郎』は、本来どうあってもこの世界のあらゆるものと交わる筈などなかったのだ。

 

「そういう意味では、お前とは同類なのかもな……フィーネ」

 

 己が掲げた、何よりも譲れないもの。

 その為に、衛宮 士郎はあるべき場所から追放され。

 その為に、フィーネは悠久ともいえる時の中にしがみついた。

 本来ならいるはずのない者……いるべきではない者という意味なら、なるほど。どうにも似ているような気はする。

 

「ああ、お前を撃ち砕くのは残念ながらオレの役目ではないが……」

 

 言いながら、直下へと視線を移す。

 遥か下方でいよいよ(まばゆ)くその電光を迸らせる砲口を睨みつけながら、士郎はミサイルからその身を離した。

 髪と外套の裾を嵐のように荒ぶらせながら、士郎は口の端を強い笑みに釣り上げて、五指を広げた右手を翳す。

 

「その一撃。この身が防ぎきることを皮肉と受け取れ」

 

 

 

***

 

 

 

 その様子を、フィーネは地上から見上げていた。

 

「バカが……魔術などというものが使えるとはいえ、生身が天体を砕く荷電粒子に晒されて秒とこの世に残れると思うのか……!!」

 

 吐き捨てながらも、その脳裏には警鐘が鳴り響いていた。

 なにせ、あの男は文字通りに意味で底が知れない。ともすれば、あの位置から全てを台無しにできる一手を放つとも限らないのだ。

 

(念には念を、か)

 

 故に、その思惑を潰さんと身構えたその時。

 

「………!?」

 

 自身の体の、あらゆる動きが阻害された。目を見開いて驚愕するフィーネは、瞬時にその原因に思い至る。

 般若もかくやという表情を浮かべ、歯車を錆びつかせたような動きで振り向く様は名作ホラーも裸足の恐ろしさだが、そんなことにも頓着せずにフィーネは自身の予想通りにしかし舌打ちを強く響かせる。

 

「風鳴、翼ぁ……!!」

 

 見れば、アームドギアの刀を杖のようにする形で、彼女はその切っ先をフィーネの影に深々と突き刺していた。

 

 ―――影縫い

 

 習熟させたその技で、それこそ影そのものを楔で縫い付けるように縛り付けながら、翼は俯けていた顔を上げてフィーネを睨みつける。

 その両頬は、瞳から溢れ出す涙で濡れて、付着していた泥や埃を押し流していた。

 

「士郎さんの……邪魔は、させない……!!」

 

 その胸中にはどれだけの葛藤が暴れ、それをどれほどの覚悟で抑えつけているのか。

 フィーネはそれを慮る気もなければ、そもそれに思い至る余裕もない。

 

「きさ―――ま?」

 

 途切れた言葉の合間に、血肉を貫く凄惨な音色が混じる。

 ぎこちなく視線を前に戻せば、今度は奏がこちらの腹に深々と槍の穂先を突き入れて抉っていた。

 彼女もまた、こちらへと顔を上げる。

 

「……ハ。ステージの上に手を伸ばして触れるなんざ、マナー違反の極みだってアンタもよく知ってんだろ?」

 

 力強く笑って見せるその顔は、やはり自ずから流す涙に濡れそぼっていて。

 瞬間、フィーネは頭の中でブチリとなにかが力任せに千切れる音をたしかに聞いた。

 

「――――――さかしいんだよォッッ!! 色恋に酔った雌餓鬼どもがァアアアアッッ!!!」

 

 激情と共に放たれた満腔の叫び。

 その勢いのまま、全ての縛鎖を引き千切りながら両手を振り上げて込めた力を足元に叩きつけた。

 

「あぁあああ!!」

「が、ああああ!!」

 

 抉れ、弾け飛ぶ地面と瓦礫と共に、吹き飛ばされる翼と奏。

 それに嵌めもくれず、荒々しくフゥーッ、と細く息を吐くフィーネ。

 そして、ハッと気づきながら上空へと視線を向けなおす。

 それと同時に、

 

 

 

「―――熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!!!」

 

 

 

 高く、高く、高い場所(ソラ)で。

 眩く巨大な一輪の花が咲き誇っていた。

 

 それは、フィーネも過去に幾度か記録として見た覚えのある士郎の防御。

 しかし、自身が知るそれとは違い七枚の羽……いや、花弁がまるで秋桜(コスモス)を彷彿とさせる形で広がっている。

 恐らくは、あれが完全なる形での展開なのだろう。

 そしてその憶測は正しい。

 これこそ、不毀の絶世(ドゥリンダナ)の投擲を防ぎきった、ギリシャはトロイア戦争で名高き絶対防護の盾の再現。

 聖剣の鞘を除き、士郎が扱いうる最強最硬の防護……その最大顕現である。

 

 眩く美しい防護が満月に重なるように夜空を席巻すること数瞬。

 カ・ディンギルが、いよいよその威を解き放った。

 

 

 太陰を穿ち、砕かんとする極光。

 極光を阻まんとする、熾天の円環。

 ―――矛盾の再現もかくやと言わんばかりの激突が、ここに始まった。

 

 

 

***

 

 

 

「          」

 

 視覚と聴覚を持っていかれたのは、光の砲撃が叩きつけられた瞬間かそれともその寸前か。

 熱の感覚ごと、皮膚の機能も削ぎ落される。

 情報と受け取るための入力機関が軒並み機能しなくなった(こわれはてた)ため、状況の把握は文字通りの手探りだった。

 

「     、      」

 

 まず、砲撃がぶち当たっただけで一枚目と二枚目が諸共に弾け飛んだ。三枚目もすでに破れ、四枚目は綻んで風前の灯火だ。

 そしてその余波。

 大気を無理やりに通電させる電雷と軒並み燃やし尽くす炎熱は、生物ならば消し炭にするどころかそれすら残らずシャボン玉と弾けて消える。

 それは壁ごしの士郎にも容赦なく襲い掛かり、その表層を嬲っていく。

 或いは、爆炎で体を構成した大蛇が獲物を呑み込めば、こうなってしまうのかもしれない。………衛宮 士郎の現状は、まさにそんなものだった。

 

「         」

 

 だが、士郎は一切の戸惑いも頓着も生じさせない。

 否、既に五感と言う外界を感知する機能が焼失している以上、反応を示さないのは自然と言えば自然か。

 今の彼に在るのは己という意識と、円環を維持するために自壊しかねないほどの負荷で駆動する魔術回路、そしてそれらを一纏めにする襤褸屑のような肉体(うつわ)だけだ。

 無事な四肢はすでになく、受け続けている損傷を士郎は正しく把握しながら、その全てを無視して己にとっての最善を続けている。

 

 五枚目が、融け落ちた。

 

「          、」

 

 ギシリ、と。

 軋み続けている回路と肉体に、自ずから力を込めてさらに軋ませる。

 何かが砕けて剥離したようだが、今は使っていないので問題ない。/すでにひつようはない。

 

 ザリザリ、と。

 削れていくのは回路か、意識か、魂か。

 出し惜しみは必要ないので、消費していく端から残ったものをくべていく。/もうなにものこらない。

 

 そして。

 六枚目が、破砕した。

 

「                            、ォ」

 

 最後の一線。

 最後の一枚。

 ―――最期の、攻防。

 

 残った全てを注ぎ込み。

 すでにほとんどの機能が消えたはずの右目に、しかし己の意思と信念を光と灯して。

 錬鉄の魔術使いは、相対する極光をその鷹の目で確かに睨みつけた。

 

「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!」

 

 砲撃の爆音を掻き消さんとするほどの、最後の咆哮。

 しかしそれは、断末魔というにはあまりにも雄々しく、激しく、力強く―――

 

 

 

***

 

 

 

 実のところ。

 極光と円環の鬩ぎ合いは数秒とかからなかった。

 むしろ、人の身で対天体級の攻撃をいくらも阻めたことこそが信じがたいほどの偉業だろう。

 だが果たして、カ・ディンギルの一閃は七枚羽の花を毟るように散らして突き進む。

 それはフィーネの狙いの通りに月へと奔り、幾許かの時を置いてから、遂に月を砕いて見せた。

 ―――しかし。

 

「っっ!!? 仕損じた、だと……!!?」

 

 砕いただけ。

 より正確に言えば、まるで半分に割ろうとして盛大に失敗したビスケットのように、真円の極一部を割って欠かせた。

 恐らくは、阻まれたことでいくらか照準を狂わされたか。威力そのものも、減衰させられたのかもしれない。

 それはフィーネが思い描いていた目標とはかけ離れた、言ってしまえば彼女からして無残な結果に終わった。

 

 だが、それを響は見ていなかった。

 腕をだらりと下げながら、立ち上がる彼女が見つめるのは、炎に巻かれながら地に落ちる一つの影だった。

 まるでそれは己の翅が燃え上がった蛾のようで―――その姿が、人の形にしては歪に見えるのは気のせいなのだと、自身に必死に言って聞かせていた。

 

「あ、あぁ………」

 

 けれど、どちらにしろ同じこと。

 その影は。

 フィーネの野望を阻んだ彼は。

 ずっと胸に焼き付いていた、憧れていた背中は。

 ―――衛宮 士郎は、紅蓮に抱かれながら裁きを受けた亡者のように墜ちていく。

 

「衛宮さぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああんっっっ!!!」

 

 

 

***

 

 

 

 ああ、あんな見えを切っておいて……無様な結果だ。

 士郎は何も見えず、聞こえず、感じ取れなくなった体でただそんなことを考えていた。

 

 カ・ディンギルの一撃がどういう結果を生んだのか、すでに彼には知る由もない。知る術がないと、そういうほうが正しいか。

 ただ、なんとなく落ちていることが解かるだけの中で、士郎は最後になるだろう思考を巡らせている。

 

(悪い、な……皆。あとは、頼―――)

 

 そこで、気付く。

 

◆◆◆

 

『そうやって、ちょっとずつ道が重なっている人と手を繋いで、一緒に考えて、協力して、助け合っていくことができたら―――』

 

◆◆◆

 

(………………………、)

 

◆◆◆

 

『シロウの夢が、士郎だけのものではなくなりますよーに!!!』

 

◆◆◆

 

(………ああ。そうか)

 

 いつか、一人の少女が語って見せた夢想。

 遠い日に、一人の少女が祈った願い。

 それは。

 

(―――なんだ。当の昔に叶っていたんじゃないか)

 

 そうして。

 余人にはもう判別すらできないだろう柔らかな笑みを浮かべて。

 一人の男が、憂いも未練も遺さず墜ちていく―――。

 

 

 

***

 

 

 

「そん、な……」

「ヒナ!!」

 

 誰もが言葉を失った中。

 小さなモニターに映し出されたその顛末に、未来は口元を両手で覆いながら崩れ落ちた。

 それを慌てて創世たちが支える。

 

 その後ろで、白猫がケースの中からニャーニャーと甲高く声を上げている。

 ただの偶然か、それとも何かを察しているのか。

 弦十郎には、何故だかそれが悼むような響きを伴っている錯覚を得ていた。

 

「約束……したじゃないですか……また、料理を教えてくれるって……先生、先生……!!」

 

 そこからは、もう声にならなかった。

 嗚咽を漏らしながら未来は泣き崩れ、それを他の友人二人と共に支える弓美もまた、連続する事態の変化と見知った人物の散華に涙を滲ませている。

 そうして、おもむろに視線をモニターへと戻せば、そこには。

 

「………あれ? なにしてんの、響?」

「……響?」

 

 聞こえた親友の名に、未来もまた涙に濡れた瞳のまま、モニターを覗き込む。

 彼女が目を逸らしていた時間は、三分と経っていない。

 ……だが、たったそれだけの短い時間の間に、事態はあまりにも急激な変化を遂げていた。

 

 

 

***

 

 

 

 砲撃の余韻も去り、歪な満月の他にはただ静かな夜空が戻っている。

 その下で、少女たちはそれぞれに現実に直面していた。

 

 奏は、空を見上げながら胸元を握りしめていた。

 翼は、歯を食いしばりながら俯いていた。

 クリスは、悪態をつきながら泣いていた。

 そして、響は―――

 

「―――………」

 

 虚無。

 その表情は、そう例えるに相応しいものだった。

 どうしようもない無力感と、堪えきれないほどの悲しみ。

 それらがまるでパレットの上で薄めることなく混ぜ合わされた絵の具のように、グチャグチャの混沌とした色合いで以って渦巻いている。

 故に発露すべき感情(かたち)が定まらず、結果として白紙のようにただぼうっと立ち尽くすばかりだった。

 それは響本人にはもはやどうしようもないもので、だからこそ。

 

「―――ハッ。無駄死にをしたければそこらで首でも吊ればいいというのに。

 余計な手間を掛けさせてくれる」

 

 外様からの嘲弄が、文字通りに火を点けた。

 

「……なん、だと……もう一度、もう一度言ってみせろ!! 貴様ァッッ!!!」

「何度でも言ってやろう。あの男は徹頭徹尾に無駄しかない」

 

 激昂する翼に、フィーネは「見よ!」と右の人差し指で天を衝く。

 

「カ・ディンギルはいまだ健在、些かの傷も付いてはいない。そして次弾のチャージは既に始まっている。

 ……そら、つまりは何の意味もないだろう?」

 

 そう、フィーネのその言葉はなにも間違ってはいなかった。

 カ・ディンギルは動力源であるデュランダルが健在である以上、その使用に何ら支障はない。

 現状はせいぜい、幾許かの猶予が引き延ばされたにすぎないのだ。

 なるほど、このままでは確かに士郎の犠牲は無駄となるだろう。

 

「結局、あの男は何もかもが無駄でしかなかったのだ。おそらくは、元居た場所でもそうだったのだろうよ。

 アレが助けたお前たちも、これから私が軒並み潰す。そうなれば、全てが賽の河原の如くだ。

 ―――徹頭徹尾、奴の人生は徒労でしかなかったというわけだ」

 

 そこから響き渡る哄笑は、ご丁寧にも分身体たちの口からも発せられていた。

 どこまでも見下し嘲笑うフィーネの様相に、翼も奏もクリスも赫怒を眼差しに乗せて睨みつける。

 そして激するままに口々に言葉をぶつけようとした、その時。

 

 

 

「………………なにを、言っている?」

 

 

 

 ゾワリ、と。

 背筋を凍てつかせて砕くような怖気が全員の口を噤ませた。

 それこそ、思わずフィーネまでもが分身体もろとも押し黙る。

 

 息を呑んだ三人がほぼ同時に振り向いた先。

 怪訝な顔でフィーネが見据えたモノ。

 

「ねぇ、何を言っているの?」

 

 それは、響だった。

 奈落のような瞳のまま、ダラリと下がった腕をそのままに一歩一歩フィーネへと向かっていく。

 

「お、おい……」

 

 すぐ傍にいたクリスが声をかけるが、それだけだった。

 否、それしかできなかった。

 彼女も、翼たちも満身創痍であるはずの響を止めることを出来ず、まるで凍り付いたかのように見送ってしまう。

 

 一方で、やはり響はゆっくりと歩を進めていた。

 その足が踏みしめているものを確かめるように。

 いま踏み砕いたのは、校舎のどの辺りだったか。

 いま視界をよぎった黒い灰は、或いは何某かの成れの果てか。

 ああ、そもいま歩いているこの場所は、一体学園のどの辺りだっただろうか。

 もう、何もわからない。

 それもこれも―――

 

「全部、あなたのせいじゃない」

 

 たくさんの人の命を奪ったのも。

 自分たちの居場所を壊したのも。

 大切な日常を台無しにしたのも。

 ―――この胸に燻ぶる、熱いものを点してくれた人を、喪わせたのも。

 

「全部、全部、ぜんぶ……」

 

 ギチギチ、ギシギシ、と耳障りに軋む音が鳴る。

 それは響の両腕からで、もはや壊れたはずのそれを、しかし彼女はゆっくりと持ち上げ始めていた。

 

「……、」

 

 その姿に何を感じたのか。

 フィーネは声も仕草もなく、己の分身体二体を差し向けた。

 距離は一瞬で詰められ、剣のように構えられた鞭刃を左右から突き立てんと迫っていく。

 

「っ!? たちば―――」

 

 焦燥に翼が名を呼ぼうとしたその時。

 

 

 

「―――ぜんぶ!! お前が奪ったんだろうがあああああああああああ――――っっっ!!!!」

 

 

 

 憤怒を叫びと共にぶちまけながら。。

 一瞬にして総身を漆黒に染め上げながら両腕を振り上げ―――直後、無数に突き出た槍の穂先が蠢動しながら二体の分身体を一瞬で微塵に砕き散らした。

 

「なに……?」

「な……響……?」

 

 想定外に、眉を顰めるフィーネ。そしてそれ以上に驚愕して、呆然と名を呼ぶ奏。

 そして言葉すら失う翼とクリス。

 その全てに構わず、ギャリギャリギャリと幾つもの穂先を蠢かせて擦り合わせながら、響は……立花 響と呼ぶべきであった存在は、両眼を紅く煌かせながら牙を剥いて胸を逸らした。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■!!!」

 

 いつかの如く、しかしそれよりも更に烈しい咆哮。

 文字通り身も心も漆黒に染め抜いた、獣の顕現。

 果たしてここに、少女は破壊と暴虐の化身に成り果てた―――。

 

 

 

 






 というわけで、何とか年内に更新できました。
 ……いや、それ以前に相も変わらず更新遅くて申し訳ないです。
 どの口で今年中に第一期終わらせると言っていたのか……(滝汗)

 それはさておき、カ・ディンギル第一射。
 その攻防と顛末はこんな感じになりました。
 ぶっちゃけ、原作通りだったら例年通りクリスちゃんで年末を締めてたことになるんですよね……

 ともあれ、今回の大筋は連載前から決まっていたものだったりします。
 予定外だったのはフィーネの分身&覚醒ネフシュタンですかね。
 分身の方はマンガ版からの抜粋ですが、ぶっちゃけ流し読みからの完全なうろ覚えなので仕様とかは全然別ものかもしれません。

 そしてカ・ディンギルとロー・アイアスの激突。
 ……これ、アイアスが封殺しても全然よかったかもしれませんが、そうすると第二期が始まらなくなるので結果だけは原作通りに。ひどい理由ですまんな士郎。

 そしてシメは暴走響。
 両腕大ダメージからのオリジナルバージョン。
 ガングニール・グリードコインヘン!(嘘)
 ……暴走状態で、アンバランスなくらいに武装が過積重になってたりするのもちょっとロマンですよね。



 と、ここからはFGO雑談で。
 ぶっちゃけ、今年のぐだぐだは夏イベのおまけシナリオだけだと思ってた(古い話題でスマン)

 ガチャの方はぐだぐだからクリスマスまで概ね爆死しました。
 ……ぐだぐだの方はイベ礼装も全然出ませんでした。(遠い目)
 ただ、太公望は来てくれました。
 Q系がこれから結構使い勝手よくなってくれそうな感じですが、こうなるとやっぱりスカディは欲しかったな……
 あと、伊吹童子狙って回したら金時が来てくれて綱さんが宝具5になりました!
 ……ちゃうねん……嬉しいけどそうじゃないねん……(複雑

 で、前回からの追加鯖がこちら↓

・ハロウィンエリちゃん’s(術・剣・一号・シンデレラ)
・キャスギル
・パーシヴァル
・ゼノビア
・金時
・切嗣
・蘭丸X
・サンタマルタ
・ヴラド(槍)
・太公望

 パーシヴァルとゼノビアはキャストリアシステム対応してるので、使い勝手が良さげ。……ただ、前者は既に水着メルトがいるので活躍できるか微妙だったり。クリスマスではお世話になりました。
 あと、サンタマルタって妙に五感が良くて好き……だけど、今後使う機会があるのか……(汗

 あとツングースカのレイド戦、参加した皆さまお疲れさまでした。
 自分もそれなりに倒しましたが、百体倒したっていう人も結構見かけるので自分はまだまだだなと……

 ちなみに、ビーストⅣのレイドは【水着キアラ(三臨)・水着ダロリンチ・Wキャストリア】の編成でオダチェンありで3~4Tで回してました。
 たまに取り巻きが一体か二体取りこぼしてましたが、それでも概ねは倒せまくれました。
 決着戦は結局令呪でコンテニューしてなんとか勝ちました。
 ぶっちゃけ、あともう一戦くらいあるかと思ってたんですが、まあ何とかなってよかった。

 ……あと、絆ポイントが大変おいしゅうございました。これなら星見のティーポット50個くらい暮れても良かったのよ?
 ……ビーストⅣ戦前に使い切っちゃたし……
 まあ、それでもキャストリアの絆礼装ゲットして、水着武蔵ちゃんも絆11になったので大変うれしいです。
 これアップした日の18時にはエピローグ公開ですが、果たしてどうなるのか……うん、冒頭のシオンのフラグが回収されそうですんごい怖い(震え声)



 何はともあれ。
 今年はこれにて。
 本年もまことにお世話になりました。
 ここまで来たなら、来年こそ第二期に移れるよう頑張りますので、見捨てずに応援していただければ幸いです。
 ……現在、オリジナルのリハビリとして短編を一つ執筆しているので、出来上がったならそちらも読んでいただければ嬉しいです。いつになるかは不明ですが。

 コロナも落ち着きを見せたと思ったら今度はオミクロン株が出てきたりとかで相も変わらず油断できませんが、どうか皆さまお体にはお気をつけてください。
 それでは、今回はこの辺で。
 来年もどうかよろしくお願いいたします。
 ―――皆様、良いお年を!!



 ………クリスマスのイベ礼装のメリュ子がツボに嵌まっててつらい。
 可愛い(可愛い
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