冒険英雄譚“ヒロイック・テイル”   作:犬2

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貴方に告げる始まりの冒険。
精一杯生き足掻く彼と共に作者も頑張ります


第一章「始めての冒険」 一話目

 ガヤガヤガヤと騒がしい場所があった。

 

そこには、数十人の人間が居る。

座っている者と、忙しく動いている者。大別するとこうなる。

それらを言い換えれば、武装している者、していない者であった。

 

 此処は、冒険や英雄譚好きな店主が半道楽でやっている冒険者ギルド

通称「剣徒の寝座」と呼ばれる酒場宿兼仕事斡旋場である。

 

 

       ※   ※   ※

 

 

 アルコールの鼻を貫く様な匂い。血泥に数時間前まで塗れていた男達の異臭。

それらが混ざり合い一人の男の鼻をくすぐる。

 

 男の名は、ジーク。彼は首から下を覆うタイプの外套(マント)を羽織り

その下には上半身を覆うタイプの革鎧を着ていた。

随所に粗い加工が施され、片手での抜刀や鎧の脱着を可能にしている。

 

筋肉質なその体は、細身とは決して言えず、身長も高い。

顔のパーツ一つ一つは平凡だが、その瞳の鋭さは見た者にジークを忘れさせない強さを持っていた

 

そんな彼の机には元幅・・・・・・幅広の刀身のサーベルが置かれている。

鞘も古びており、刀身は僅かに削った箇所がある

抜刀の為に自分に合う様に弄っているのだ。

 

 ジークの周りの机は、不思議とポッカリ空いていた。

彼はこの酒場宿の古株である。実年齢を知っている者は誰も居ない。

数年前から年齢が変わらない事も有り、誰も予測出来なかった。

だが彼の腕が良い事は確かであり、逆らうモノも今この酒場には居ない。

 

 つまり、幾つかの独自のルールを持つジークの逆鱗に触れ

片腕を粉砕された者達とのイザコザも知っていたという事だ。

 

 

「・・・・・・はぁ・・・」

 

 

 そんなジークは静かに蒸留酒とツマミを・・・否。彼にとっては昼食を食べていた。

弱めの蒸留酒の喉を焼く感触を心地よく感じる彼を口に含んだ果物の風味のある酒がガツンッ!と殴る

くらりと、頭まで一本芯を打ち込まれた様な感触であった。

 

 口の中は洗浄されたのを感じながら、皿の上の大ぶりのパンチェッタ(生ベーコン)を、ブスリとナイフに突き刺し粗野に勢いよく喰らい付き・・・ブチィッと塊から引きちぎる!

口の中に入ったパンチェッタの強めの塩味ある脂が、蒸留酒で焼けた口内を撫でる。

 

良々良い子だ。と言うように肉の味わいがじわぁぁりと口の中へ広がっていくが・・・広がり過ぎる前に蒸留酒を一口。

甘ったれるな!と、またもや脳天までガツンッ!とアルコールが一瞬で登る。

・・・その味わいが心地よかった

 

「ふぅぅ・・・」

 

 昼間っから酒を飲んでいるジークは数日仕事に出ていない。休暇中だからだ。

冒険者ギルドに居る事から分かる通りジークはギルドに所属する冒険者であり・・・冒険者という事は冒険に出かける。

 

 時折勘違いする者がいるが冒険者とは何でも屋では無い。それは副職であり・・・

本来は、自費で前人未到の場所や、秘境に赴き探索する者達である。

ジークは数日前まで危険な動物・・・・・・魔力を蓄え異常発達した生物・・・通称魔物の生息する秘境の探索から帰ってきたのだ。

 

 数日前まで己以外敵しか居ない大自然に居たジークは英気を養っていた。

そこへ、ドスドスと大股で近づいて来る優男が居た。男は机に近づくと、ジークに声をかけた。

 

「おーい、ジークぅ。いつまでそんな事してるのさ」

 飄々としたその声と、態度。ジークはチラりと一目見る。知った顔であり長い付き合いだった。

 

「・・・どうした、店主。」

 店主と呼ばれた男は、ジークの机の空いた椅子に手を乗っける。 座っても?と言う店主に好きにしろとジークは返した。

 

「ジーク、回り込んで言うのも無駄だから言おう。仕事があるんだ」

 そう言った店主をジークは見つめる。僅かに眉を潜めて。

ジークと店主は長い付き合いだ。ジークの好みの仕事も知っている。逆に嫌いな仕事もだ。

 

 好みの仕事なら、適当に一声かけて終わるだろう。こんな風にわざわざ己の素を訪れない。

好みの仕事でも、重大な仕事・・・・・・他者に聞かれて困るならこんな所で話さない。

個室で話すだろう。

 

つまり、今この状況はジークが嫌で、だけど重要度の低い依頼。という事だろう。

 

「カス依頼は受けん」  即答であった。

 

 ジークは、ペッっと、唾を店主の顔に吐いてやろうかと一瞬思ったが、長い付き合いで友好な相手には流石に自重した。

詰まらない依頼も、退屈な仕事も、胸糞悪い仕事も御免だが、仲の良い男に喧嘩を売る程の事では無かったからだ。

ゴキュッゴキュッと喉へ流し込む蒸留酒の灼熱の香りが鼻からゆっくりと流れ出る。

 

「・・・うん・・・まぁ。その通りだし君がそう言う事も知ってる。」

 口篭る店主を、ジークはジィィっとその目で見つめた。

店主が態々ジークの罵倒を聞く為に来たとは思えない。自分を頷かせるカードがあると知っていた。

だから、口篭る店主を顎で指し、ジークは先を促す。

 

「とりあえず、依頼内容だけ話すね」

 一枚の紙を店主は取り出した。依頼書と呼ばれるソレは、ジークに馴染みあるモノである。

 

 依頼書はその難易度によって色が僅かに違う。染紙とは言っても捨値のモノだ。

そんな捨値でも、難易度が高くなる度に紙の値段は高くなるが・・・

見せられた紙は、最底辺の色紙である。

 

「依頼内容は、教導と護衛。この街から少し離れた所に子鬼(ゴブリン)の集団生活跡らしきモノを発見」

「その調査と、そこに住むのが敵性生物の場合、殺害・・・・・・を行う少年達の護衛と教導だ」

 

 ジークは、ゆっくり眉が心なし垂れ下がる。

無愛想なジークの顔に変化がある等、よっぽどであった。

 

「子供のお守りをしろと?」

「そうだ。ジーク。子供のお守りとオムツから、パンツに履き替えさせてやってくれ」

 

 この言葉にジークは目にみえて垂れ下がる・・・が途中で顰める。

ジークは考える。店主は気の良い奴だ。自分に害のある依頼を持っては来ない。

自分でなければ行けないか。自分が行く事で利益のある依頼だ。

 

更に言えば店主は冒険譚を好む。考えて考え抜いて・・・・・・

ジークは店主に顔を近づけ、周りに聞こえない様に呟いた

 

「・・・・・・暗殺依頼か?」

「違うそうじゃない!!!!!」

 

 ガチャァン!と勢いよく立ち上がる店主に周りの冒険者がビクゥッと飛び跳ねる。

依頼の話をされれば耳に入れたくなるのが冒険者の性だ。

周りでこっそり聞き耳を立てている奴らだろう。

 

すまないすまないと、驚かせた冒険者たちに店主は謝りつつ再度着席する。

 

「ジーク・・・これは、唯の初心者冒険者の護衛と教導ってだけだ。裏も何も無いんだ。」

 

 店主の言葉を聞き。ゆっくりと咀嚼する。

 

 自分で言うのも何だが初心者を任される様な人格者では無い。

気に食わない依頼人に依頼を達成した上で、追加納品として鉄剣を胃袋にご馳走した事もある。

大抵、自分の気に食わない相手は犯罪に何度も手を染めており厳重注意で現在は済んでいた。

 

「・・・店主。己は察しが悪い。どうして己に声が掛かったのか。言ってくれないか?」

 

ジークは、子守なんぞ・・・と思う心を沈めると店主の瞳を見つめ、問う。

一言、一言に店主への信頼があった。

名前も名乗らない。年齢も知らないが・・・・・・冒険を愛する同志だと思っていた。

 

 先程、食べる為にナイフを突き立てたパンチェッタを店主はどけた。

そして、ジークへ顔を近づける。先程ジークがした様に周りに聞こえない様に呟く

 

「場所が遺失遺跡なんだ」

 




という訳で第一話投降致します。
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